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奇術師の予言
作:七夕夜想曲



第十一話 三人の推理


「・・・ということです。」
しばらくしてから哀が話し終えた。
「・・・その銃を撃った人って誰だか分からないの?」
「分かりません。姿が見えなかったから。」
「・・・そう・・・ありがとう哀ちゃん。ジェイムズに報告しなくちゃいけないから・・・それじゃ、お大事にね。」
そう言うと、ジョディは部屋を出ていった。
「・・・まぁ、無事で何よりだったな。」
「あら、右腕のけがを無事と言うならの話しだけど。」
新一の言葉に、哀はツンとしたように返した。
「相変わらず可愛くねぇな、おまえも・・・」
いつものやりとりである。
「・・・そういえば・・・」
哀は続けた。
「今思い出したんだけど、その人の名前をベルモットが言ってたわ、確か・・・赤井なんとかって。」
「・・・ひょっとして、赤井秀一じゃないか?」
新一が言った。
「確か、その名前だったと思うけど・・・」
哀がそう言うと、新一の顔に不敵な笑みが広がった。

「・・・なるほどな・・・」
その頭の中では全てのことが、一本につながっていた。









「・・・帰ったぜ。」
「おお、工藤、小っこい姉ちゃんは大丈夫なんか?」
博士の家に帰ってきた新一に、平次が聞いた。
哀の怪我が思ったより軽かったので、新一はいったん博士に家に戻ったのだった。
博士は哀に付き添っている。
「ああ、二週間ぐらいで退院できるらしいぜ。データの方は?」
ソファーに座り一息ついたところで、新一が言った。
「組織の活動内容の部分は全部暗号化されてて、あんまり読めなかったけど、薬のデータだけは解読してやったぜ。」
快斗はそう言って一枚のフロッピーを渡した。
「サンキュー。明日、灰原に渡してとくよ。」
新一はフロッピーをポケットに収めた。
「それから、もう一個進展があったぜ。『パンドラ側の組織』は四十年前までは、
『ブラックバード』と同一で、そこから分かれた支部的存在だった・・・この意味は分かるよな、新一?」
新一を含め三人は不敵な笑みを漏らしている。
仕事の時のその顔だ。
「ああ、『パンドラ側の組織』が『ブラックバード』から分かれたもので、その目的が不老不死なら、
もとの『ブラックバード』の目的も不老不死っていうことがほぼ確実って事だ。
それから薬品研究ってことを考慮すると、奴らの目的はおそらく不老不死薬。
APTXはその過程で偶然造られた失敗作。そういうことだろ、快斗?」
「ああ、それからおまけに『パンドラ側の組織』の名前は『ブルーバード』・・・」
快斗が頭を振っている。
「・・・どこが幸せの青い鳥なんだか・・・それとも大黒はビートルズファンだったのかな?」
その冗談に新一は乾いた笑い声を上げている。
「なんやねん、ビートルズファンって?」
意味が飲み込めない平次が二人に聞いた。
「ポール・マッカートニーの曲の中にあるんだよ。『BLACKBIRD』って曲と『BLUEBIRD』って曲が。」
新一が、四十年近く前の洋楽の曲名を引き合いに出し説明した。
平次は知らなかったらしい。
「なるほど、西の高校生探偵は、家柄、西洋文化に弱いってわけか。」
快斗が茶化すように言った。
「やかましい!どいたろか、快斗!」
慌てて快斗が平次を落ち着かせにかかる。
「・・・まぁ、ええとして。お前の方はなんか収穫あったんか、工藤?」
「・・・まあな。」





新一は二人に、哀から聞いた話と、変声機を拾った事を話した。
「そんで、その機械は?」
平次が聞いた。
新一はそれを丁寧に取りだした。
「・・・現場に落ちてたままの状態で持ってきた・・・」
平次はハンカチでそれを取り上げ、隅から隅まで、電源ボタンの周りの『No.931615』という文字まで観察した。
快斗もそれに倣った。
「・・・にしても変な奴もいるもんだな。わざわざ死んだ人のふりしなくてもいいのに・・・」
そう言った快斗に対して平次が言った。
「お前も人のこと言えんな快斗、お前の場合は探偵的な思考に弱いっちゅうわけか。」
「そりゃ、俺、怪盗だもん。」
平次と比べて快斗は呑気なものだ。
「この変声機、電源が入ってないんやで、工藤は現場からそのまま持ってきたんやから
そん時も電源は切れとって、そいつは使った後、電源を切ったっちゅうことや。変やと思わんか?」
快斗がしばらく考えてから言った。
「・・・なるほど。そいつはすぐ逃げたはずだから、電源を切るのはおかしい。
つまり変声機は使われなかったってことか。でも変声機を使ってないってことは、
誰が撃ったんだ?まさか幽霊が撃ったって言うんじゃないだろうな。」
「んなわけんねーだろ。赤井さん本人が撃ったんだよ。その可能性しか残ってない。」
新一が言った。
「なんや、赤井はんは生きとんか?」
「ああ、どうもそうらしいな・・・おそらく自分が生きていることを隠しつつ、
奴らにプレッシャーを与えるために、わざと変声機を現場に残したってとこだろう。」
ふと新一が、時計を見ると九時を回っていた。
「そろそろ帰った方がいいな。蘭達も心配してるだろうし・・・」
「そうだな・・・そうだ、新一。俺達も泊めてもらってもいいか?言うの忘れてたけど、そのつもりで来たんだ。」
突然の提案。
この突発ぶりは、大阪組にも引けを取らないだろう。
「・・・構わねーけど、もっと早く言えよ・・・」












─深夜
哀は寝付けないでいた。
(部屋の外に誰か居る・・・)
あの気配を感じ取っていた。
組織の構成員独特のあの気配を・・・・・・








─翌朝
RRRRRRRRRRR・・・
午前七時。
新一は携帯電話の音で目が覚めた。
「・・・もしもし・・・」
『あら、新ちゃん起きてた?』
電話からする声それは・・・
「・・・母さん?起きてたじゃねえよ、今ので起こされたんだよ・・・」
『ごめん、ごめん。それで今どこ?探偵事務所に電話しても出なかったから、どこか行ってるんでしょ?』
「俺の家だけど、どうかしたか?」
『あっそうなの、じゃあ、あと一時間したら、そっちに着くから。』
「・・・は?おい、ちょっと待てよ、服部や快斗たちが泊まりに来てんだぞ!」
『あら、快斗君もいるの?丁度いいわ。それじゃあ、一時間後にね。」
「おい!」
新一の抗議もむなしく電話は切れていた。
「新一、今の誰から?」
蘭が起きてきた。
「母さんから・・・『一時間後に来る』って。」



その後、新一と蘭は急いでみんなを起こす羽目になった。








補足
ビートルズ・・・THE BEATLES  1962年から1970年に渡って活躍した、ジョン・レノン(John Lennon)ポール・マッカートニー(Paul McCartney)ジョージ・ハリスン(George Herrison)リンゴ・スター(Ringo Starr)の四人によって結成されたロックグループ。

あとがき
ビートルズの『BLACKBIRD』は彼らの『THE BEATLES』というアルバムに、『BLUEBIRD』はポールが
ビートルズ解散後に結成した『Wings』の『Wings Over America』というアルバムに収録されています。
どちらもとても良い曲です。
次回は優作と有希子が登場します。
どうぞ楽しみに。
ご意見・ご感想・ご指摘等をご遠慮なくお願いします。
今後も『奇術師の予言』をどうぞよろしくお願いいたします。











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