表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

始終

作者: 藤野

本当に見た夢をそのまま書き出しました。

「一人鬼ごっこ」と合わせてお読みください。

 こんな夢を見た。

 記憶に残るどの校舎とも違う建築物をそうと認識していた。白く塗装された壁、リノリウムの床。一歩毎に靴の滑り止めとの摩擦が空間に響くのを聞いていた。

 階段の踊り場に差し掛かった時、見知った顔が二人現れた。AとBは談笑しながら降りてきたが、ふいに、目前に迫った一大事に話題を変えた。三人は言葉を交わすことはなく、ただすれ違った。二人の陰から、女が現れた。

 その女には一目見た時から苦手意識を強く感じていた。何かにつけて関わる毎に、誰かの後をついて回っているのを見る毎にそれは増した。意識的に接触を避けるようになるまで、時間はあまりかからなかった。女も自分が避けられているという自覚はなきにしもあらず、別にもともと執着していたわけでもなかったから、気にした風でもなく、最低限の関わりしかしていなかった。だが、なぜかその時に限っては様子がちがっていた。

 「今度は、あんたの番」と、そう言って女が肩を叩いた。ぽんと、叩くというより触れる程度の弱い接触であったのに、殴られるよりも強い衝撃が肩を襲った。どうしようもない悪寒が全身を総毛立たせた。

 硬直している間に逃げ出した女を追う。厄介なものを押し付けられた。逃してはならない。こんなもの、うけとるわけにはいかない。走れども走れども距離は縮まらず、終わる兆しが見えない中で、またAとBにあった。

 どちらでもいい。

 AとBの腕を掴むと、逞しく鍛えられた筋肉独特の弾力のある感触がした。二人の様子は変わらなかった。しかし、理解していた。目の前で、二言三言会話が交わされた。二人は返すことはせず、その場から立ち去った。

 今日は何も良いことがない。こんな日は早く帰るに限る。また巻き込まれる前に、返される前に、触れられる前に。いますぐに、帰ってしまおう。

 校舎から出ると、むわりと湿気を多く孕んだ、湯気にも近い熱気が全身を襲った。じっとりと背中が汗ばんでいく。肌の露出したところが、強すぎる日差しを受けて、薄っすらと赤く色づいていた。もう夏か、と初めて思った時、また冷たいものが襲ってきた。

 何も映し出さない空虚な瞳、歪んだ口元をさらに歪ませて作った弧、狂気に満ちた表情。

 「許さない」

 目の前が、真っ暗になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ