一、
俺の名前は剣山 零時。近頃高校二年生になった自分では平凡な高校生と思っている平和な心の持ち主だ。そんな俺は、友達である、後鳥河 瑞樹と共にちょっと遠出をして、ちょっと高そうなレストランに入った。
「・・・おい、俺はそこまで金ないぞ?」
「大丈夫。貧乏な人にもここのレストランは優しいのだよ、零時君。ほら、貧乏人の君にはこのケーキセットがお勧めだね?」
「けっ、坊ちゃんのお前はいいよな・・・。」
「いや、小遣いを無駄遣いするのが間違いじゃないのか?」
瑞樹は俺に真剣そうに言ってくる。ふん、俺は無駄遣いをしているとはこれっぽっちも思っちゃいない。どちらかというと美少女関係の人形に金を使っているお前のほうが無駄遣いしてると思うぞ。うん、機械は人間を裏切らんだろう。
「へぇ、でも可愛い女の子なんか興味ないの?趣味は?」
「趣味は機械関係だ。興奮するときは見たことも無いロボットなんかの断面図を眺めたときだな。」
「・・・なら、ロボットの女の子とかなら興味あるの?」
それは・・・まぁ、ロボットだからな。女の子だが、ロボットだ。いや、なに、俺だって興味が無いといえば嘘になるが、やっぱり、ロボット>女の子という具合だ。あ〜、それなら道端にロボットの女の子とか落ちてないかな?
俺がそんなことを考えていると、近くをウェイトレスが通っていった。その服装を見て俺の馬鹿な友達はにやにやしている。
「どう?可愛いと思わない?ぐっと来ない?」
「さぁね?俺はドラ○もんがウェイトレスしてくれたほうがいいね。」
「わかんないやつだなぁ。」
はぁ、俺は何でこんな奴と知り合ってしまったのだろうか?いや、根本的に家が隣だからか?まぁ、こんな性格している割には結構もてるんだがな。俺ももてたいものだ、ロボットに・・・・。
「全く、お前もこんなレストランに男と来ないで彼女と来たらどうだ?」
「いやいや、彼女なんかつくったら面倒なだけだね。自由にいろんな事できないし、時間だって無くなる。勿論、可愛いと思う女の子もそら、現実にも居るけどね・・・ほら、あんな子とかいいよねぇ。」
夢見る乙女のような感じで殺人的眼差しを送る先には気の強そうなウェイトレスが注文を聞いていた。まぁ、可愛いといえば可愛いんだろうな。だが、俺としてはあれよりも・・・
「俺はあっちの物静かなほうがいいな。ロボットっぽいし・・。」
俺の見る先には銀髪の外国人らしき女の子が注文をとっていた。
「そうかな?僕はやっぱりあっちだなぁ。あ、そんなことより・・・」
そう、俺のこれからが変わったのはこいつが話を変えて話し始めたことがきっかけだったのだろう。俺はその結果、平凡というなんとも得がたいものを捨てなくてはいけなくなったのだ。
「・・・実はさ、このレストランは表じゃ普通なんだけど、ある事をするとね、裏のレストランに連れ込まれた挙句にそのある事をした人間をね・・・。」
「ロボットにでも改造するってか?は、そんなことだったらいいねぇ。受けてみたいよ。」
馬鹿らしくて聞いてられなくなった俺は立ち上がった。
「お〜い、まだ話は終わってないぞ!」
「あ〜わかってるって、お前の話をきちんと聞くために今からトイレに行くんだよ。その間にお前は好きなウェイトレスでも呼んで注文でもしてろよ。」
俺はそういって先程から我慢していた尿意をなくすためにトイレに向かったのであった。
長い付き合いだから分かるが、あいつの話は本当に長い。一度、話を聞き始めたら絶対には立ってはいけないという雰囲気が出来上がり、トイレに行こうと思ってもなかなかそうはさせてくれない。まぁ、話すことはどうでもよさそうなことなんだが、色々と世話になっていたりもするのでそこはきちんと聞いておかないと失礼だと俺は思っているわけだ。
「あ〜、出た出た。」
そんなことを俺は呟きながら瑞樹がいるテーブルへと歩いていこうとしたのだが・・・。
「きゃっ!!」
俺の右足の進行方向に一人のウェイトレスが水をこぼしやがった。あの気の強そうなウェイトレスだ。そして、俺はそのこぼした水に思いっきり足を踏み入れ・・・・こけた。
「うわっ!!」
それだけならまだいいだろう。俺はそのまま何か掴むものはないかと思って水をこぼした相手の衣服の一つを思いっきり掴んだのだ。ま、当然の事だと思って欲しいね。誰だって頼りたいものさ・・・・。
「きゃぁぁ!!」
まぁ、当然のように俺の全体重を支えることが出来なかったその衣服は破れた。それが、スカートだと気がついたのは俺が何とか立ち上がったときであった。
「零時、グッドだ!!」
スカートが取れた女の子へとみんなの視線は当然のように注がれている。俺は慌てて手に持っていたものをそこいらへ頬り投げたのだが・・・・。
「・・・お客さん、ちょっと来てください。」
店長らしき男が出てきて、
「え・・・な、ちょ・・・。」
しりもちをついていた俺をあっさりと抱えあげて店の奥へと連れて行ったのであった。
「零時!!お前は最高の友達だぁ!!」
と、後ろからは瑞樹の感極まった声だけが追いかけてきている。
「・・このレストランの噂を知っていますか?」
「え・・・?」
抱えられたまま唐突にそんな話をしてきた。まぁ、その話は瑞樹から聞くこととなっていたのだが・・・・・。
「知りませんが?」
「そうですか、残念でしたね・・・知っていれば故意にスカートをズリ下げようとはしないでしょうにね。」
それは間違いだ。俺はズリ下げたくてズリ下げたんじゃない。勿論、あの馬鹿のために下げてやったわけではないぞ!!あのウェイトレスが水をこぼしやがったんだ!!俺のせいじゃな〜い!!
と、そんなことを思っていたのだが、急に話せなくなってきた。まぶたが重くなってきたのだ。
「なぁに、直済みますよ・・・・貴方は栄えある、第一号のお仕置きされる人です。それでは、良い夢を・・・・。」
そして俺は意識を失ったのであった。いやぁ、参ったね・・・まさかレストランの店長に誘拐まがいの事をされそうになるなんてね。
「・・・え・・・」
「つま・・・が・・・い・・。」
誰だろうか?誰かが話をしている。
「・・・・ん?」
俺は目を覚まして辺りを見渡した。自室かと思ったが、どうやらここはどうやらあのレストランの中のようだ。料理の匂いなんかが漂ってきている。
「あ、目を覚ましましたよ、店長。」
「そ、そうかね?」
俺は目を覚まして驚いたね・・・何故かって?そりゃ、誰だって吹く何も来てない状態で目が覚めたら驚くだろうね。いや、まぁ・・・白い布が俺の体にかかっているからいいだろうがね。
「いや、零時君だったかな?目覚めはどうかね?」
なにやらばつの悪そうな顔で俺を抱えていった店長らしき男は、俺を心配そうに見ている。はて、何かされたのか?いや、されたのは間違いないが、何をされたんだ?
「あの、俺なんで裸なんですか?」
そのことを尋ねると、辺りに居るスタッフなんかは凄く申し訳ない顔をして俺を見ている。なんだ、マジで俺はロボットにでもなったのか?
「零時君、落ち着いて聞いて欲しいんだ・・・。君はこのレストランの噂を聞いていないといったよね?」
「ええ、知りませんが?まぁ、友人から聞こうとしたところだったんですが・・・。」
そうかと呟いて店長さんはため息をついた。なんだ、この葬式みたいな感じの雰囲気は?
「実はな、このレストランには掟というものがあってウェイトレスのためにあるんだが・・・まぁ、それが簡単に言うとウェイトレスにちょっかいを出したものは問答無用でこのレストランの地下にあるある特殊な大鍋の中に放り込まれるんだ。」
って、なんじゃそりゃぁ!!どうせそんなことされるならロボットのほうがまだましじゃねぇか!!
「ほ、放り込まれたらどうなるんですか?」
俺は恐る恐る尋ねてみた。俺が生きているということは鍋に放り込まれる前か、鍋に放り込まれた後である。後なら、放り込まれて死ぬことは無いだろうが・・・時間差でくたばるかもしれんな。
「・・・・魔法使いになって、罪を償ってもらうことになるんだ。お、おい!!大丈夫か、零時君!!誰か、きゅ、救急車を呼んでくれ!!」
二、
俺は目を覚ました。どうやら今度は病院に居るらしい・・・・はは、魔法使いだってよ、ありえないね。それならまだ、二足歩行のロボットが銃持ってどんぱちやってるほうが現実性があるね全く。
「はぁ〜。」
「ちょっと・・・。」
俺のベッドの近くにはあのウェイトレスが居た。なんとも居心地の悪そうな顔でパイプ椅子に座って俺の顔を見ている。全く、このウェイトレスのドジのせいで俺の人生は変わったのか?嘘だと思いたいところだ。だが、このウェイトレスがいるということは、間違いないんだろうなぁ。
「・・・あんた、何でこんなところに居るんだ?」
「・・・え、いやだって・・・・その、店長が傍にいろだって。何か聞きたいことがあったら困るだろうからって・・・。」
そうか、やっぱり俺は信じられないがその魔法使いというものになったんだろうよ。無理やりね・・・・。
「本当に俺は魔法使いになったのか?」
「ええ、本当よ。あの鍋の中に入った人間はまずまちがいなく、凡人じゃなくなるわ。元から魔法を仕える一族とは違ってね。」
なにやら考えたようで、俺に更に言ってきた。
「でも魔法仕えたほうがいいでしょ?ね、いいよね?ちょっと使い方を覚えれば簡単だし、私が住み込みで貴方に魔法を教えてあげるからさ!!」
どうやら、この感じはまちがいなく、あれだ・・・。自分の失敗をもみ消そうとがんばっている。だが、残念だったな・・・・。
「残念だが、俺は凡人のほうが良かった。そんな特別で使い方がめんどっちい、魔法よりも、単純にガン○ムを操作したい。それに、俺はあんたよりもどっちかというとドラ○もんに来て欲しいもんだ。」
「そ、そんな・・・」
「残念だが、俺は別にあんたの力は必要ない。魔法なんかいらないから、凡人に戻してくれ。あ、そだ・・・電話を貸してくれよ、電話して店長にどうやって凡人に戻れるか聞くからさ・・・・。」
そういってみたが、今は私服のウェイトレスは俯いたまま、黙ったままだ。
「お〜い、どうした?」
「・・・・りなの・・・。」
「は?」
「だから、それは無理だって言ってるの!!」
んな、怒った口調で言わんでも・・・・・なにも怒られるようなこといってないし・・・。
「それはどういう意味だ?」
「残念ながら、あのレストランはもう無いわ。店長は既に逃亡してるし、店の何人かの魔法使いも一緒に居なくなってる。ほかのスタッフは記憶を一部分だけ消されて、そのまま働いてるけど・・・。」
「な、なぜじゃぁ!!」
「それが、魔法を使ってる者の掟なの!!失態を侵したのが弟子だったら、その師匠も同じような償いをしないといけないし、今頃一族の何処かで下請けでもやってると思うわ。」
「じゃ、俺はどうなるの?」
「そこは・・・大丈夫よ、私が何とかして貴方をサポートするからさ!!」
「じゃ、凡人には戻れないの?」
「・・・残念ながら・・・でも大丈夫だって!!私が何とかしてみるから!!」
ああ、なるほど・・・俺の凡人としての生活は終わりを告げたようだな。
何か悪いことしたのか、俺?これまでの生活だって人様には迷惑を掛けられたことはあったが、迷惑を掛けたことはなかったぞ?小さい頃はガン○ムのプラモの代わりにネジを眺めて我慢してたし、苦手な体育もこれまでがんばってきたっていうのに!!それともなにか、前向きに考えたらこれは神様からのプレゼントか?他人には無い、特殊な能力と綺麗な女の子がプレゼントされたのか?ちょっとまてぃ!!それなら、それならせめて・・の○太のようにドラ○もんを送ってくれよぉ!!
「・・・・。」
「ほ、ほら・・・ね?私、貴方の努力に答えるからさ?」
いや、そりゃあ、世の中嬉しいって奴も居るだろうさ?だけどさ、せめて・・・せめて・・・俺はロボットの女の子が着て欲しかったな。ふ、無駄なことだって思ってるさ。神様、俺が神様になったらロボットを量産して魔法使いを根絶やしにしてやるぜ・・・・。ま、復讐するにもどうするにも、俺はどうやら、魔法という教科を新たに勉強せにゃならんのか?やっぱり、ロボットのほうが良かったなぁ。
「と、とりあえず・・・・貴方の家に案内してくれない?」
「・・・は、わかったよ。で、住み込みって言ったって、どうやって俺の家に住むんだ?俺は仕方ないとして、俺の家族が何か文句を言うかも知れんぞ?」
俺がそういうと、そのウェイトレスは胸を叩いた。まぁ、胸もあるほうなんじゃない?
「そこのところは大丈夫よ。店長・・・まぁ、私の師匠が貴方の家族の記憶をちょこっとだけ書き換えたからね。」
はは、なんかとっても面白くない展開になってそうだな。こりゃ、急いで家に帰ったほうがよさそうだ。
そして俺は家に帰りついた。扉を開けていつものように入る。後ろからはウェイトレスが俺と同じようにして入ってきた。
「零時、大丈夫だった?」
出てきたのは俺の母親。く、やっぱりウェイトレスを見ても何も言ってない・・・。
「いや、まぁ・・・・。」
そして俺は自分が何で病院に入っていたのかを知らない。いや、倒れたのは覚えてるんだが、家族にはなんていわれているんだろうか?まさか、本当の事を言ってしまったとは思えないが・・・ま、ここはやっぱりウェイトレスに聞いたほうがいいだろう。
「・・ちょっと、俺の事はなんて家族に言ったんだ?」
「え・・・そ、それは・・・。」
俺たちが話していると母親が目ざとく見つけたらしい。
「あら、やっぱりその子が大事なのねぇ?いつも彼女なんかいらないって言ってたあんたがこんな可愛い子連れてくるなんて母さん、嬉しいわ。不良に囲まれていたところを助けるなんて、意外と見所あるじゃない?」
「は・・・?」
おやおや、そんなことになってたんですか・・・。俺は物言いたげな視線を隣のウェイトレスに送るが、無視された。
「じゃ、お母様・・・零時君とお話があるんで、上に上がってますね?」
「ええ、息子をよろしくお願いするわね?」
俺はウェイトレスに引っ張られるようにして自室に入ったのであった。一応、鍵を掛けておこう。
「なぁ、何でお前が俺の彼女になってるんだ?」
「そ、そんなことはどうでもいいじゃない!!私みたいな可愛い子が彼女になってるんだから構わないでしょ?」
いや、俺は彼女にするならドラ○ちゃんのほうがいいね。
「まぁ、あんたが自分の事を可愛いと思うのなら思っていればいい。で、これから俺はどうすればいいんだ?あんたが魔法を俺に教えてくれればそれで終わりなんだろう?」
簡単に考えていた俺が間違いだったかもしれないな。俺の質問にウェイトレスは反抗するようにして答えた。
「確かにそうだけど、そう簡単には終わらないわよ!魔法を甘く見てるんじゃないの?」
「じゃ、じゃあ・・・俺はずっとあんたと居ないといけないのか!今日だけとか明日だけとか、一週間後とか・・・そんな短い期間で終わらないのか!」
「ま・・・そうなるわね。」
い、いやじゃぁぁ!!いやじゃぁぁぁ!!そんなのいやじゃぁぁぁ!!
「ま、運命だと思って諦めて・・・私だって、男の部屋に住まないといけないんだからさ。」
俺はウェイトレスを掴んで、持ち上げ、階段下りて、玄関から放り出した。全く、普段からこんなに力が強いのなら、もっと違う性格になってたかも知れんな。
「こっちも結構だ!!大体、運命ってなぁ・・・お前が水こぼしたのが悪いんだろう!!ぶっちゃけ俺はあんたの事を目障りで仕方ないと思ってる!!じゃあな、あの店長に言ってくれ。『不必要です、運命だと思ってしみじみくらします』ってね!!」
俺はそういってあちらさんが何かを言ってくる前に玄関を閉めた。そしていつものように二階へと上がって自室にこもってネジを眺める。
「・・・これも運命だ。一人のほうがなんとかなるだろうよ。」
さて、これでせいせいしたってもんだ。全く、被害者はどう考えたって俺のほうだろうよ・・店長さんも全く、何であんな小娘を俺のところにやったんだ?魔法でこの際、ロボットでも召喚してくれれば良かったのに・・・・くそ、腹立つなぁ。
そんなことを考えていたら扉をノックするような音が聞こえる。
「零時、貴方の彼女が玄関先で泣いてるけど・・・?女の子は守らなきゃ。」
へ、俺が守るものはロボットと、両親が決めた門限ぐらいだ。守りたい奴が守ればいいじゃねぇか。俺は門限を守るのも難しいんだぞ?そんな俺が誰を守るって言うんだ。全く、玄関先で泣くなんて迷惑極まりない。
「・・・・はぁ、全く・・・門限だって守れないんだぞ、俺は・・・・。」
三、
結局俺は母親の言ったことを正しく守ってあのウェイトレスを再び家に入れた。
「全く、泣いたら何でも解決できると思ってるのか?そういうものは、三歳までと、彼氏の前だけだぞ。赤の他人の家の前で泣くんじゃない・・・。」
「うぅうぅ・・・」
さて、世間の皆様が見たらどっちが悪いって思うかな?どうせ、俺だと答えるだろうよ。はぁ、全く・・・・今日はついてないな。
「俺が魔法を全て覚えて使い方を間違えなければいいんだろう?そうすれば、お前の師匠であるあの店長の元へお前は帰れるんだな?」
そう聞くと確かに頷いたようだ。はぁ、どうやら妥協点は見つかったようだ。つまり、俺がその魔法を全て覚え、使い方を間違えなければ全てはすむのだ。迷惑極まりないが、しょうがない。
「泣いてないで早く魔法を教えてくれよ。」
「うぅ・・・ぐすっ・・・わかった。」
全く、気が強いのかと思ったら弱いじゃないか。こりゃ、瑞樹に人は見た目で判断しちゃいけないって言ったほうがよさそうだな。しかし・・・・
「前々から思ってたんだが、あんた、名前はなんていうんだ?」
「・・・ひぐっ・・名前?」
「ああ、名前だ。きちんとした奴だぞ?」
「・・・セレネ・ルーナ。」
ああ、そうかい・・・しかし、会話が全く弾まないな。そりゃ、弾むような会話のネタを持ってないし、唯一、話すことができるのは魔法の事ぐらいだろうな。まぁ、俺自体がそれを知ったのは初めてだったし、俺は魔法よりも機械のほうが好きだ。
「なぁ、セレネ、魔法ってどういうのだ?」
「・・・想いを具現化できる力よ・・・・思っていることを実現しようとするとその力が助けてくれる。まぁ、ここで見せたほうが早いわね・・・。」
おもむろに立ち上がると右腕を掲げ、俺に言ってきた。
「例えば、暗いから火が欲しいなぁって思えば・・・・」
右腕から炎が出てきた。マジック?こりゃ、宴会でちょうどいいかもしれんな。
「ほら、こんな感じで炎が出せるの。零時もこのくらいなら直にできると思うわ。」
「へぇ?」
俺は真似して右腕を掲げてみた。結果、凄い量の炎が出てきた。
「ちょ、なにしてるの!!急いで消して!!」
「ああ、はいはい!!」
その炎を俺は消した。いや、消そうと思ったら消えの他で別にかまわんだろう?まぁ、天井が凄く黒焦げになってしまったのだが・・・・。
「驚いたわね、こんな簡単に出すなんて・・・。」
「そ、そうだな・・・・なんで出たんだ?」
二人して悩んでいると、今度は安全な方法で習うことにした。まず、知識を手に入れるところからはじめるとするか・・・。
「じゃ、実践は危ないから知識を教えてくれ。何をどうすればいいのかとか、遣う点での注意とか・・・。」
何故かあたふたしているセレネ。どうかしたのだろうか?
「ち、知識ね?だけど・・・私、ちょっと苦手なの。小さい頃から練習ばっかりでなんとなくしか覚えてないし・・・・。」
おやまぁ、近頃の子どもは勉強熱心ではありませんね、奥様・・・・つまり、セレネは実践向きのアウトフィールド派ってやつなんだろうな。
「じゃ、基本的にやっちゃいけないこととかも知らないのか?」
「それは・・・わかるわよ。やっちゃいけないことと、やっていいことぐらいの判断ぐらい簡単よ。」
そういうことなら少しだけ、安心できる。そだ、こういう魔法ってもんは仕える回数が決まっていたり、特定の条件のときしか使えないってのがおちだ。一応、何回ぐらい使えるのか聞いてみよう。
「なぁ、魔法って何回使えるんだ?」
「何言ってんの?回数制限なんて無いわよ。だから、使用するときにやってはいけないこととやっていいことが存在するのよ。じゃ、早速教えるわ。まず、やったらいけないことは・・・・。」
俺は黙ってセレネの話を聞き始めた。その話は意外と長く、母親が何回か俺たちの事を呼んでからようやく話をやめたぐらいだ。
「・・・とまぁ、こんな感じね。今日はこのぐらいだけど、明日からはきちんと教えるからそのつもりでね?」
「へぇへぇ・・・。」
そういって俺たちは1階に降りたのであった。まぁ、先生の話を聞くよりも良かったが、どうにもこうにも、納得いかないな・・・何故俺の部屋でわざわざ教えるんだ?
そして夕食時。俺には一人の兄が居るが、この家には住んでいない。とっくに自立しており、会うとしても特別な行事のときぐらいである。そして父親はいつも帰ってくる時間帯が遅い。必然的に夕飯は母親と二人で取ることになっている。
「・・・けど、『女の子?そんなことよりネジいじってたほうが楽しい。』といってたような零時がねぇ・・・彼女作るなんてねぇ・・・。」
「ははは・・・お、俺だって女の子が嫌いってわけじゃないよ。」
本心ではちょっとばかりうるさくて、面倒な相手と思っているだけだ。
「だけど、本当にセレネちゃんは可愛いわねぇ?聞いた話じゃ、外国人だって?」
「え、ええ・・・そうです。はははは・・・。」
実際のところはどうなのか知らないが、いや、俺としてはどうでもいいが、さっさと二階に上がったほうがよさそうだ。
「ごちそうさま。」
「いつものように早いのね?」
そのことに対しては何も返事せずに俺は二階に上がったのであった。
「はぁ、今日はつかれたな・・・・こういうときは、これに限るな。」
俺はそういって白紙の紙を一枚机の中から取り出して絵を書き始めた。まぁ、あれだ・・・メカの断面図を書いたりすると頭の中がさえたりするんだ。ちょうど一枚書き終わったところでセレネが俺の部屋を開ける。
「零時、何書いてるの?」
「ああ?たんなる落書きだ。別に落書きぐらいしたって構わないだろう?」
「そうだけど・・・・。」
俺の後ろから覗き込むような感じで俺の手元を見ていたセレネは呟いた。
「へぇ、見た目と違ってそんな繊細に書けるんだぁ?」
「ま、まぁね・・・・小さい頃から絵は描いてたほうだし、こうすりゃ、一人でも構わないしな。暇なときは大体、一人で絵を描いてるぞ?」
「ところでさ、あたしの事どう思ってる?」
突然、真剣そうな感じの声を出してセレネは俺に尋ねてきた。いや、まぁ、はっきり言って『邪魔』と答えたい。絵を描いているときに話しかけられたりするのは俺がもっとも懸念することだ。しかし・・・・
「まぁ、居てもいいな。セレネがいないと色々と大変だろうからな。」
「本当にそう思ってる?」
「ああ・・・・。」
まぁ、嘘だとしても俺の絵を褒めたし・・・ま、まぁ・・・人に褒められたぐらいで有頂天になるってのもどうかと思うのだが、それはそれだ。
「じゃあさぁ、私は貴方にとって何番目に大事な存在?」
「はぁ?」
何故、今日あったばかりの相手にこんなことを聞くのだろう・・・。そうだなぁ、俺の中でセレネは何番目だ?優先順位って奴が俺の中には存在しないしなぁ・・・
「さぁ?とりあえず、居ないとまずいとは思ってるぞ?」
「・・・・。」
ちょっとばかり不服そうな顔をしたセレネは俺に右手と左腕を三角にするようにしてその手の隙間から覗き込むような感じで俺を見た。
「・・・・どうやら、本当みたいね・・・零時、これからはバンバン鍛えてあげるから、そのつもりでね?」
不適に笑うセレネを見て俺はため息をついたのであった・・・・。なぁに、人間、溜息なんてつきまくるさ。そのためいきがちょっと勘弁してくれよといいたそうな感じでも、人ってものはがんばらないといけないものさ。そんながんばる俺に何かをくれ、神様。
「はは・・・・がんばってみるよ。」
そこへ、母さんが上がってきた。
「零時、セレネちゃん・・・お風呂沸いたわよ?」
「ああ、そう・・。先に言っとくが母さん、俺は一人ではいるぞ?」
「あらそう?二人はとっても仲良しだと思ったけど・・・流石にそこまでは発展してないのね?残念だわ。」
こんなことをいう母親に対して俺は流石に溜息しか漏れてこなかったのであった。まぁ、これだけは受け入れたくない運命だな。噂になったら困る。
四、
その夜は満月だったのでなんとなく部屋の窓から見えている満月を見ていると風呂からあがったセレネが俺の隣にやってきた。
隣に来ただけだったから黙っていると・・・。
「何か話したら?せっかく綺麗な女の子が居るっていうのに?」
「へ、自分の事をきれいといってりゃ世話ないわな。なぁ・・・・・いや、なんでもない。それより、魔法の勉強でも教えてくれ。」
「・・・わかった。」
これまで部屋にはほとんど人が入ったことなんて無かったのだがな。ま、それはいいとして、さっさと魔法とやらをマスターしてこの小うるさい女には退場してもらうか。
だが、日常とは思ったようにいかないことを俺は知っていたのだが、まさか、まさか勉強するのにここまで障害が出るとは思わなかった。それは、今からちょっとだけ先の話だ。
零時、公園に行くわよとセレネにいわれ、俺は付いていったんだが、場所が悪かったとしか思えない。
「セレ・・・」
「しっ!!黙ってて!!」
俺らの視線の先に居るのは闇よりも暗いフードをかぶった性別不明の謎の人物であった。なにやら、俺たちを見ているようだ。いや、でもどうやって?
突如、セレネは腕を掲げ、燃え盛る炎を相手にぶつけた。いや、ぶつけたという表現がぴったりだ。あたったら、こんがり丸焼けになっていただろう。そう、あたっていたらの話だ。相手はそれをひらりと避けた。後ろにあった公園の花壇が煙を上げて炎上。まぁ、火は直におさまったみたいだから消防車も要らないだろう。
「セレネ、危ないだろうが?」
「あんたは黙ってて!!」
更に加速するかのように先ほどとは違ったものをセレネは腕から出した。今度は水だ。夏に当たったらさぞかし気持ちいいこと請け合いの水流が移動していた黒フードへと直行。今度は見事に命中した。まぁ、水しぶきが相手に直撃してもさほど威力は無いだろうがね。
「おい、花壇に水をやるならわかるが・・・。」
「零時、あんたは黙っててっていったじゃない!!」
あ〜、酷いや。うん、なんて酷い人なんだ?ふ、さすがの俺の心もナイフでずたずたにされた挙句、唐辛子とマスタードをつけられた気分だ。じゃ、実況のほうにお仕事回りますかね。
おっと、相手は先程よりもセレネに近づいたぞ。
「これならっ!!」
それを真っ向から迎え撃とうとするセレネ。今度は腕から電撃ですか。全く、人間びっくりショーって奴ですね。ウェイトレスやら無いでそっちやったほうがいいと思いますが?ああっと、放たれた電撃は壊れていた電球にヒット!!一瞬だけぴかってなりましたが、お陀仏ですね。
「くそー!!」
さて、そろそろチェックメイトってところですね。あ、ここにきてようやく相手が紐っぽいものを取り出しました。鞭ほど太くないみたいですし、これは高速用なのではないかと思います。
「・・・・。」
「きゃあ!!」
可愛くいったつもりでしょうが、駄目なもんはだめですね。うん、相手はセレネをまるで赤子の手をひねるかのようにゲッチュしてしまいましたね。あ、近くの電柱に吊るされましたね。
「零時!早く逃げて!!」
逃げる?どこに?俺の視界に入ってくる相手は既にいろんなところを壊しちゃったりしているから、逃げ道なんて無いぞ?いや、ピンチだな。
「おい、にげれねぇぞ?」
「なんでもいいから、はやくっ!!」
なんて勝手な奴なんだ!!だんだんとこっちに相手が来ているのが目に見えるが、いやぁ、一般人の俺には何も出来ないね。ははっ、どうしたらいいだろう?
「なぁ、魔法使いなら何か出来るんじゃないのか?」
「・・・まず、目とか閉じなくていいから集中して!!自分の思い描いたものを実態させるように!!それが基本で全てよ!!はい、私は魔法の全てを今貴方に伝授したわ!!」
おいおい、それで本当に魔法を習得したって奴なのか?
「・・・・・。」
「!零時、逃げて!!」
相手が腕振り上げたときに逃げろっていわれたってどこに逃げるんだろうか?とりあえず俺は俺なりに魔法という奴を使ってみることにした。ええとだな、集中して見て、思いを具現化させる?はっ、なら・・・こんなのどうだ?
「・・・・!!」
俺が思ったとおりのものが姿を現した。それは見事、相手を捕らえた。え、何を出したのかって?とりあえず相手を押さえつけたほうがよさそうだったので、地面からとあるロボットの腕を出してみたのさ。ふふっ、他にも色々思いつくことが出来るぜ?ロボットの手でくすぐったり、テレビを出して相手を笑わせたりな。
俺はもはや暴走状態といっても過言ではなかっただろう。手に入れた力をおもちゃのようにして使っていった。公園の中の遊具は全て姿を消し、塀もなくなり、公衆用のトイレも姿を消した。残ったのは電柱に縛られているセレネと俺、そして色々やって笑わせて気絶させた相手だけだ。誰も、口を開こうとしていない。
まず口を開けたのはセレネだった。
「れ、零時、貴方・・・何者なの?」
「何言ってんだ?俺は不幸にもお前に魔法使いにされた一般人だ。」
本当に気絶したのか魔法の力によって作り出された木の棒で相手をつついてみる。
「・・・ん。」
「あ・・。」
「零時、気をつけてよ!!」
首を上げたときに相手のつけていた黒のフードが後ろへと取れて顔が見える。
「あーっ!!」
いきなりセレネが大きな声を出し、俺を驚かせた。いやぁ、あの声をここまで大きくしたらご近所さんに迷惑ではないんだろうか?ほら、見たことか・・近くの犬が『うっせんじゃ!!ぼけが!!』っていってるじゃねぇか。
俺が抗議の声を上げようとすると、目の前の黒フードが俺に話しかけてきた。おや、何処かで見たような顔だな?
「・・あの、剣山さんですよね?ほら、ファミレスで間違って魔法使いにされたって噂になってますよ。」
「貴女は・・?」
これは失礼しましたとチロリと舌を出して答えた。
「ソル・プロミネンスと申します。以後お見知りおきを剣山さん。」
そういって今度はセレネのほうを見始めた。
「まぁ、今日昨日じゃ腕は上がらないのね?基本的な技しか未だに使えていないなんて、それで貴女はどうやって剣山さんに魔法を教えるの?もしも、もしもだけど・・・私が本当に『古代魔法振興会』の一人だったらどうしてたの?そんなことじゃ、あっという間におしまいよ。」
何を言っているのか俺にはさっぱりだったが、どうやら、セレネが怒られているようだ。まぁ、いわゆる仕事を失敗した部下を怒っている上司といった感じだろうか?
「・・・で、でも・・・ソルさんだって零時に負けちゃったじゃないですか!!」
何がでもなのか知らないが、セレネの性格上、反抗したいのだろう。それに対して相手は溜息を漏らした。
「戦闘中に魔法の方法を教えてたけど、あれが他の人だったらもっと詳しく教えてたはずよ?剣山さんが理解できたから良かったけど、貴女じゃ無理じゃないの?それに、剣山さんと一度、手合わせしたら分かるわ。剣山さん、悪いけどあの子の束縛を解いてあげる?」
「え、ええ・・・。」
拒否していたら話が進まないだろうから、話から置き去り気味の俺はセレネを拘束していた紐を取った。紐は瞬時に消え、ちょっとだけ俺を驚かせた。
「とりましたよ?」
「よし、それなら・・・はじめましょうか?剣山さん、今から貴方の師匠はセレネじゃなくて、私。以後、何を言われても必ずいうことを聞くことわかった?」
「・・・はぁ?わかりました。」
「じゃ、零時君・・・このわからずやと戦って。その子もどちらにせよ貴方と戦うために広いこの公園に来たんでしょうから・・・・自分の考えが間違ってたことに気がつくわ。」
頭に疑問符かかげてる俺に目の前に立っているセレネも頷いた。
「そうね、簡単に言うなら力試しみたいなものかな?どのくらいの素質があるとか、どこまで使えるのか・・・ま、そんな感じの試験だよ。」
「そ、そうなのか?」
「大丈夫、手加減はするから・・・」
この呟きをソル師匠は聞いていたのだろう。くわっとその目を開けて、セレネに攻め口調で言ったものだ。
「セレネ!!本気でいかないと貴女、大変なことになるわよ!」
「わ、わかりました。」
うん、今度なんでこんなにソル師匠とやらがセレネに対して厳しいのか教えてもらおう。ああ、早く帰ってねてぇよ。
五、
セレネと対峙し、俺は先程の戦いを頭に浮かべる。そして、ソル師匠に対してやったように相手の動きをまずは捕らえることにした。
「・・・え!!」
なんと、一発でセレネを捕らえることが出来た。さて、これで終わりなのか?
「終了、零時君が攻撃しても構わないけど、したら確実にセレネは昇天するでしょうね。どう、自分がどんな人物の師匠になるのか分かってた?」
「え・・・う、嘘・・何で避けることができないの・・?」
茫然自失といった感じでセレネはソル師匠の顔を見ている。やれやれといった感じのソル師匠は今度はぼさっとたっている俺に話しかけてきた。
「零時君、君は既にどんな魔法でも思いつくままに使うことが出来る。古代魔法だって使えるし、禁じ手だって使える。この意味が分かるかな?」
「どういう意味かよくわかりませんが?」
「君は魔法使いの敵でもあるのだ。」
「話が分かりません。」
「そうか・・・今のところ、魔法使いは平和を愛している。まぁ、もともと・・・魔法には種類があって、一つが発動させたものを操作しないといけないものが現代魔法で、君は複数魔法が使える古代魔法って物が使えるんだ。古代魔法は危険なため、使用が禁止されている。」
よくわからんな。それのどこが魔法使いの敵になるんだろうか?
「つまり、そんなことを魔法でしてしまえば争いが起こりやすくなる。世界を征服するのも簡単だし、そんなことになったら平和を愛しているといっている魔法使いたちは黙ってはいない・・・。」
成程、それはそれでかなり巻き込まれ気味の迷惑だな。まさか、コップいっぱいの水がこうまで俺の人生を狂わせるなんて・・・。
「で、俺はどうなるんですか?まさか、今ここで仕留められるとかありませんよね?」
その質問にソル師匠は苦しそうに答えた。
「うぅむ、実際のところはそうなのだが・・・。」
わぁお、俺、命狙われてる?
「だが、残念なことに君に倒されてしまった私がどうこう言うことじゃないな。うん、そうだな・・・私はこれからどうにかして君を助けたいと思うし、一見するとさえない男だが、君にも未来ってものがあるだろうよ。それに、意外といいやつみたいだからな。ただし、たまに私は零時君のもとにやってくるからな。そのつど、試験はするから、くれぐれも世界を滅ぼそうとなんて考えないでくれよ。」
そういって消えてしまった。残ったのは公園の残骸と未だに茫然自失のセレネだけだ。
「おーい、セレネ?」
「・・・・。」
「セレネ、そろそろ帰ったほうがいいと思うぞ?公園は更地になってしまったんだし、かえって寝ないと俺は明日から学校なんだからさ?もしもーし?」
「嘘よ・・・あれだけがんばって・・・がんばって練習したのに・・・・初心者に負けるなんて・・・」
おいおい、今度は泣き出しちまったよ。何、俺の所為?これって俺の所為ですか?
「泣くなよ・・・。」
「あんた・・なんかに・・・負けるなんてぇ・・・だって、私は、私は・・・師匠から『きちんと教えておくんだぞ!!零時君がどのようになるのかはお前しだいだからな』って言われたのよ?これじゃ、教える意味ないじゃない!!力の加減だって完璧!逆に教えて欲しいぐらいだわ!!」
「そ、そんなこと無いぞ。セレネがいなかったら今頃、大変なことになっていたと思うし、お前だってがんばったんだろ?それに、まだほとんど何も俺としては教えてもらってない気がするんだが・・・?」
何で俺が慰めないといけないんだ?俺、何か悪いことしたのか?
「ええと、俺にはお前が必要なんだ(多分)お前が泣いていたら俺が(周りから泣かしたと言われて)とっても困る。それにお前は(泣いているより)笑っているほうがいい。ここ数時間だったが、お前の表情の中で俺が一番好きな顔はお前の笑っている顔だ。だからさ、お願いだから笑ってくれないか?お前が・・・セレネが笑ってくれるなら、俺は何でもするから・・・。」
おいおい、ここまでいってやったんだからそろそろ泣き止んでくれないか?早く泣き止んでくれないと俺の良心が痛みに痛んで、真っ白になっちまう。
俺を見上げるセレネの顔はプライドとやらをずたずたにされたような奴の表情であった。目が死んでいる・・・いや、死んだ魚のような目だ?どっちだ?それとも意味は一緒か?
「ほ・・ん・と?」
かすれた声でそんなことをセレネは俺に聞いてきた。
「何がだ?」
「私が・・・私が巻き込んだ上に、勝手に敵扱いされても?」
「終わったことだ。終わったことは変えられない・・・いや、変えちまったら今の俺は存在しないからな。」
少しだけ、セレネの顔に生気が帰ってきた。さて、もうちょっと帰ってきてもらうかな?そろそろ、門限って奴があるだろ?
「じゃ、本当に私が必要なの?今のところ、まだ勉強も足りてないし、実践も既に零時のほうが上・・・本当にそんな師匠が必要なの?」
いや、それは・・・どうだろうか?だが、ここまで言ったんだから言わないといけないんだろうな。
「ああ、俺にはお前が必要なんだろうな。現に、俺はお前が悲しんでいればこうやって色々と気を使わねばならない。まぁ、これが運命って言うのなら、しょうがないんじゃないか?」
「そう?私だったらそんな運命はイヤだけど・・・・」
俺もいやだね。まさか、まさか・・・レストランに行っただけで講までなってしまうとはどれだけ俺の運命はひねくれてんだといいたいな。俺としては異世界に行って謎のロボットを操るエースパイロットにでもなりたかったんだがな。
「それにだな、魔法使いといっても、普段はそう、大差ないんだろ?普段魔法を使えなくしてしまえば、俺は一般人のままだ。だから、その問題も解決したってことだ。」
「じゃ、魔法使いに狙われてる問題は?」
そう、それが一番厄介な問題なんだろうな。ソル師匠がどうにかするって感じだったけど、あの人信用していいのか?先程、会ったばかりの人間だ。本当に信用していいのか分からないが、あの人が言っていたことを思い出す。
「ま・・・それは簡単だ。俺がそんなことを考えなければいいんだ。つまり、俺が平和ボケしときゃ問題は無い。」
「そんなもんなの?」
「そうだ。お前が心配することは無い。お前は単なる俺の魔法使いの師匠。それ以外は無い。俺を魔法使いに仕立て上げたドジなウェイトレスじゃないさ。さ、早いところ帰らないと母さんが心配してるだろよ。いや、勘違いされるからさっさと帰ろう。」
言ってて恥ずかしくなってきたので俺はセレネの手を引いた。
「零時・・・」
「何だ?」
「ありがとね・・・・。」
完璧に元気が出たからいいだろう。ま、これから変なことがあるだろうが、俺は俺だ。いや、何か襲ってきた場合はセレネが何とかしてくれるに違いない。いや、何とかしてもらわないと困るな。
「なぁ、『古代魔法振興会』ってなんだ?」
「それはね、メンバー全員が黒いフードを頭からかぶってて、魔法使いの一族から除外され、組織的に・・・古代魔法を使って何かをやらかしたい人々の事よ。全員が全員、かなりの実力者って聞いたことがあるわ。」
ふぅん?俺もかなり変な場所に足を踏み入れた・・・いや、引きずり込まれたものだな。
「零時・・・。」
突如、声色が変わったセレネに名前を呼ばれ、俺はちょっと戸惑った。
「何だ?」
「以外と手、暖かいね?」
そういわれたので俺は手を離した。
「な、何で手を離すの?」
「ふん、たまたまだ。ちょっと焼きが回ってお前の手を握っちまっただけだ!!それに俺は冷たい手を握りたいの!!機械っぽいのが好きなの!!人間よりもねじのほうに興味があるんだ!!」
「ちょ、恥ずかしがらなくてもいいじゃない?同じ屋根の下に住むんだからさ?」
「け、一人で言ってろ!!俺は・・・」
笑っているセレネの顔を見たらまぁ、しょうがないかもしれないと思ってきた。はぁ、全く・・・どうしたもんかね?
「セレネ、俺は・・・別にお前を慰めたわけじゃないぞ?それに、お前が心配そうな顔してたから手を握ったんじゃなくて、俺の心が不安定になるだけだったから手を握っただけだ!!つまり、俺は自分のためにこうしただけだ!!」
「それって、慰めてくれたってことじゃないの?」
「違う!!俺は・・・別にお前のために言ったわけじゃないの!!」
ニヤニヤしながら聞いてくるセレネはなんだか嬉しそうだ。へ、へん!!俺はお前の笑顔を見たら、嬉しくなるだけだったから笑顔にしただけに過ぎない!!まぁ、お前が笑顔じゃない顔になったら俺が笑顔にするだけさ。最も、俺が間違えてお前を怒らせてしまったときは勘弁してもらいたいが・・・。
|