第一章
地球という星は今私たちが知っている歴史を歩んでおらず、大地の5割は砂漠と化していた。
そして食料難などにより国々は乱れ、10歳以上の子供に刀などの武装が義務づけられている
西の外れの街、ウェスタル
その小さな街に住む25歳のニート、ルーク=ヴァンガードという男がいた。ルークは1日じゅうバーに通っていた。マスターの前に座る。マスターは店主の孫娘のシルビアが経営している。「あなたもそろそろ仕事を探さないとじゃない?」
「実はゼクトで試験を受けたんだぜ。」
「えっ、警察になる気なの?」
「別に… 適当にな。」
「ふーん。」
ゼクトとは今でいう警察であり、帝都グラヴァゴールが管理をしている。
バーに一人の男が入って来た。
「お、おいっグラヴァゴールから使節団が来るぞ!」
それは凶報であった。
「なにっ!なんでこんな小さな街に…」
一時間後、馬の駆けてくる蹄の音が近づいてきた。街のものは万が一の為に臨戦態勢を敷いていた。
サッサッ
砂に足を取られる間もないほどの速さでウェスタルに使節団が到着した。
「この街の食料を5割分けて貰おうか。」
それが使節団の最初の一言であった。
「なんだって!?そんなことしたらこっちも暮らしていけなくなるだろ!」
「わざわざこんな街に来てやったんだ。それだけでも感謝しろよな。へへっ」!」
「なんと言おうとムリだ!」
「テメェと話しても無駄みたいだな。長を出せ!」
「……長を呼んでくれ。」
野次馬の一人が長を連れてきた。その長は50代の男でどこか強そうな印象を受ける。
「私の出る幕ではないと思ったが… 私は争いが嫌いだ。とにかく話で決めよう。条件は呑めんが…」
「どいつも同じこと抜かしやがって!」
バーの帰り道、ルークはその会話を聞いていた。その近くには野次馬が
「ルーク、お前ゼクトに入るんだよな。ならどうにかしてくれよ!」
「いや、それは…」
退くに退けなくなったルークだが、刀を持っていなかった。仕方無しに転がっていた剣を拾い、使節のもとへ走った。
「この街の食料は渡せない。悪いが帰ってくれ。」
ルークは後先考えずに言ってしまった。
「ルーク、やめろ!」
長は怒鳴った。
「ここまで来たら退くことなんてみっともねぇこと出来ないんだ…」
「プライドの為に死ぬのか?」
「俺には守りたい・・・ひ、いや物があるんだ」
「…行け。もう俺は止めん。」
「…分かった」
すると使節団の奥から偉そうな男が出てきた。
「話は済んだかね。今度はこちらからだ。まず貴様の名はなんだね?」
「ルーク、ルーク=ヴァンガードだ。」
「我が輩の名前はハイゼンベルクだ。まぁ君に言っても仕方ないか。」
すると部下の一人が、『ハイゼンベルク卿!そんな約束をしても宜しいのですか。」
「我が輩が負けるとでも?こんな事に時間を費やしている時間はないのだよ。さぁ始めるぞ。」
「あ…ああ」
そんなんでルークは戦うことになった。
相手は腰元のフェンシングを引き抜き、歩いて近づいて来る。ルークはそれに怯まず、相手が近づくのを待った。だが内心は
【相手の自信たっぷりの発言は勝つ自信もあるということだろう】と感じていた。もうルークのなかでは死という選択肢しか残されていなかった。
ハイゼンベルクはある程度の間合いを取った瞬間、腰のフェンシングに手をかけると肉眼では見えない程の速さで一突き。ルークは運良く小石につまずき、脇をかすめた。
「クソっ 急所を外してしまったか。まぁいい、いたぶってやろう。」
「あと少しで死ぬところだったぜ。今度はこっちから行くぜ!」
ルークは威勢よく斬ろうと剣を持った瞬間に、7歳の時に記憶が戻った。
「ここは… 森のなかか?そういえばここで俺は稽古をしていたんだ…」
「何をしている。早く斬りかかって来い。」
その声の主は親を失い、さ迷っていた俺に剣術を教えてくれた男だった。
「あぁわかってるよ。」
「その態度はなんだ! せっかく拾ってやったのに… 私が馬鹿だった。」
というと男は一人で森を降りていった。だがルークは追いかけようとしなかった。それは男の性格が気にいらなかったからだった。
「ちっ 腹立つなぁ。アイツいつか倒してやるからな!」
ルークは男と逆に進んだ。この出来事によりルークは18年後のハイゼンベルクとの戦いまで剣を握ることは無かった。
しばらく歩いていたその時、狼がルークの背後から近づいてきた。急いで逃げ出したルークだったが眼前は小高い崖になっていた。だがルークは物怖じせず跳んだ。下には岩場が続いていた。ルークは最悪なことに着地に失敗し、岩に頭をぶつけた。
その瞬間だった。ルークの脳に感じる閃きにも似た感覚が走り抜け、記憶がさか戻る。
しかしその記憶は全て稽古の記憶だった。さっきの男との稽古で彼の動きが止まっているかのように見えた。そして体が勝手に彼の動きを真似ていた。
気がつくとルークの目の前にハイゼンベルクがいた。稽古の記憶はほんの一瞬のことだったらしい。
ハイゼンベルクはルークの一瞬の隙を見つけ、今までより鋭い突きを繰り出した。その時7歳の自分が頭を岩にぶつけて閃きを感じたのと同じ感覚が全身を走った。驚くことにハイゼンベルクの突きがスロースピードで見えた。その突きをルークは余裕でかわす。
『何なんだ、この感覚は!?』
とルークは思った。
次の瞬間ルークは体を乗っ取られる不思議な感覚が走る。すると体が勝手にハイゼンベルクの突きと同じスピードで突きを繰り出した。だがルークの意志で急所を外したが相手はかなりの致命傷を受けた。
「どういうことだ!? この私が負けるなどあり得ん!」
ハイゼンベルクは声を張った。
「約束だ。素直に帰って貰おうか。」
近くで見ていた長が口を開いた。
「この私に刃を向けたこと覚えておけ。 グラヴァゴールに目をつけられ、この街は潰されるぞ!」
ハイゼンベルクはそういうと団員に肩を支えられながら帰っていった。
「驚いたな。まさかお前があんな剣術を持っていたなんてな!だがこれからまた戦争になるな…
この身勝手な長を許してくれ。」
「別にそんな風に思ってないよ。 屈してたらプライドなんてないから…」
「そうか。成長したな…」
長は下にうつむきながら帰った。
この後起こる戦争によりルークはさらなる死闘をその先にあるものとは……
第二章に続く… |