第45章:期待
「ありがとう!」
コナンと哀は、話を聞かせてくれたボランティアスタッフの女性に頭を下げる。そして、光彦たち4人が入った店に目をやった。
「まだ、中にいるみたいね」
「ああ、そうだな」
2人は、その店に入ったが、客は誰もいないし、4人の姿もなかった。
「変ね」
「ああ…」
「あの…おばさん…さっき、ここに小学生が4人、入って来たでしょ?」
コナンは、子供らしく、店先に座っていた婦人に訊く。
「え?…ええ、少し、話を訊かれたけど、すぐに出て行ったわよ」
店の婦人が笑顔で答える。
「2人は、あの子たちのお友達?」
「うん…でも、どこ行ったんだろ?」
コナンと哀は、顔を見合わせた。
「君たち、江戸川君と灰原さんかな?」
店の婦人の言葉に、また、コナンと哀は、顔を見合わせる。
「そうだけど…」
コナンが答えると、その婦人は、ニコッとすると、封筒を差し出した。
「これ、預かってるよ、吉田歩美ちゃんから…」
「え?」
2人は、怪訝な顔になったが、コナンがその封筒を受け取った。
封筒を開け、中身を見たコナンの顔が不思議な表情になった。
「どうしたの?」
「これ」
コナンの表情を不審げに見ていた哀が声をかけると、彼は、封筒の中に入っていた1枚の紙を彼女に差し出した。
それを受け取って読む哀の顔が、呆れた表情になったかと思うと、吹き出して笑い始めた。
「あの子たち……」
『いつも、勉強で2人には、おせわになっているので、きょうは、ぼくたちだけでレポートを作ります。2人は、ゆっくり、デートしててください。午後3時になったら、東3番通りにある、戸田というお店に集合してください。 吉田歩美 円谷光彦 小嶋元太 東尾マリア』
「やっぱり、なんか企んでたわね」
「ああ。でも、これで済むと思うか?」
「いいえ」
「だな」
2人は、顔を見合わせて、ニコッと笑った。
「ま、せっかくだし、アイツらの言う通りにさせてもらうか」
「そうね」
コナンがスッと、哀に手を差し出す。
哀は、フッと微笑むと、その手をとった。
*****
コナンと哀が散策を始めた頃、他の4人は、歩美の母方の叔父、戸田雅人の店にいた。
「歩美。用意は、できてる。で、その2人は?」
「3時にここへ来るようにって、伝えてあるよ」
歩美の叔父は、優しい笑顔で姪の顔を見ている。
「歩美ちゃん、本格的だね」
「すっごいですねえ…こんなに立派な撮影機材、初めてです。それに、スタジオも凄いです」
マリアと光彦が感心している。
この戸田の店は、写真館。
デジカメやスチールカメラのプリントサービスを始め、カメラや撮影用機材、フィルムなど、写真やビデオに関するものを扱う店だった。
ただ、観光地にあるため、表の作りは、江戸末期の写真館といった風情で、「戸田写真館」の文字も、右から書いてある大きな看板を掲げている。
そして、なんといっても、撮影用スタジオがあり、衣装のレンタルをしている近所の店と提携していて、扮装をしての撮影も引き受けていた。
「それで、おじさん、衣装も用意できてるの?」
「ああ、歩美のご希望通りのもの、用意しているよ」
「ありがとう!えへ、楽しみ〜っ」
「なんだか、背筋がぞくぞくするんだけど、気のせいかしら?」
「え?おめえもか…俺も、なんだか、背筋が寒い…」
歩美が戸田写真館でご機嫌な頃、哀とコナンが散策しながら、そう言って、顔を見合わせた。
*****
「それで、歩美、ここで何すんだ?」
スタジオの真ん中に集まった4人。そのうち、元太が歩美の顔を見て怪訝な顔をしている。
「もう〜っ!元太君、聞いてなかったの?今まで、何をするつもりでいたのよ!?」
呆れ顔の歩美、その隣で、同じように呆れていた光彦が元太の方に向き直った。
「コナン君と灰原さんに写真のモデルになってもらうんですよ」
「モデル?」
「そうだよ。ほら、結婚式の衣装、何着か用意してもらったから、コナン君と哀にそれを着てもらって、写真撮るの」
光彦、歩美の順で元太に説明をする。
「そやけど、歩美ちゃん…レポートの方は、どないすんのん?」
マリアが遠慮がちに訊いてくる。
「それはね、写真を撮って、この写真館の仕事を取材したってことにするの」
「……そんなんで、ええんかな?」
得意満面に答える歩美に、マリアは、苦笑した。
「大丈夫だよ。私、前にここに来た時、お店のお手伝いしたことあるから、それでレポートも書けるし…」
歩美は、今回は、どこまでも、リーダーだった。
「後は、コナン君と哀が来たら、有無を言わせずに着替えさせること…コナン君は、光彦君と元太君でお願いね。哀は、マリアちゃんと私で着替えさせるから…」
「任せといてください!」
「おう!」
光彦と元太が、大きな声で返事をする。
「コナン君、哀、まだかな…」
歩美は、ワクワクしながら、2人がやってくるのを待っていた。
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