ここは帝丹中学校3年A組の教室。
私たちは”しっかり”と成長して中学3年になった。私たちというのは、少年探偵団の3人と私のことで江戸川君は含まれていない。
そう。小学1年の時に私たちは組織を壊滅させることができ、解毒剤を完成させ、彼は工藤新一に戻ったのである。
そして、私も解毒剤を飲んだのだが、宮野志保に戻ることが出来なかった。
それからも研究を続けたが、未だに原因が解らず宮野志保には戻れていない・・・。
でも、戻れなくて良かったなんて思ってたりもする。
「・・・ちゃん。哀ちゃん。」
「えっ・・・あっ歩美ちゃん。」
考え事をしていた私は、歩美ちゃんへの返事が遅れてしまった。
彼らが小学校を卒業したときに、私と彼は3人にすべてを話した。
工藤新一に戻ってすぐに話しをするつもりだった彼を私は「彼らにはまだ早すぎるわ」と嘘を言って止めた。
本当は私がまだ彼らと一緒にいたいという思いがあったからだ。すべてを話してしまったら3人は私から離れていくだろうと。
でもそんな私の予想を裏切り、彼らは
「哀ちゃんは哀ちゃんだよ。」
「そうです。灰原さんは何も悪くないじゃないですか。」
「灰原は何があっても俺たちの仲間だぜ。」
と私を受け入れてくれた。
そしてそのときから私は吉田さんのことを「歩美ちゃん」と呼ぶようになった。
他の二人は相変わらずの呼び方だけど・・・。
「哀ちゃん、またボーッとしてたけど体調悪いの?それとも悩み事でもあるの?」
「大丈夫よ。最近ちょっと寝不足なだけ、悩み事なんてないわ。」
悩み事がないなんて嘘。私は今までにないくらい悩んでいる。
でも、ごめんなさい。歩美ちゃんには恥ずかしくて相談出来ないわ。
「本当に?哀ちゃんいつもそうやって言って一人で抱え込んじゃうじゃん。歩美は哀ちゃんの親友のつもりだよ、たまには頼ってよ。」
わかってるわ。だけどさすがにこのことだけは相談できない、というかしたくない。
だって恋の悩みなんてなんだか恥ずかしくて。だから私は
「本当に大丈夫だから。心配いらないわ。」
と、嘘をついた。
「わかったよ。でも悩み事があるときは相談してね。」
そう言った歩美ちゃんは哀しそうな表情で自分の席に戻ろうとしたが、
「待って。」
歩美ちゃんの表情を見た私は無意識の内に言葉を発してしまった。
引き止めてしまった以上、もう相談するしかないだろうと私は思い、顔が赤くならないように緊張しながら歩美ちゃんに言った。
「歩美ちゃんに相談したいことがあるんだけど・・・話聞いてくれるかしら。」
「もちろんだよ、哀ちゃん。」
そう言った歩美ちゃんの顔はとてもにこやかで、それを見た私はいつの間にか恥ずかしさが消えていた。
「でもここじゃ話しにくいから場所を変えましょう。」
私は歩美ちゃんの手を取って教室から出た。
私たちは、校舎から出て中庭に来た。
ここは人があまり来ないし、校舎からも見えないので内緒話をするには絶好の場所だ。
そしてベンチに腰を下ろした。が、私はなかなか話を切り出せずにいた。
しばらく沈黙が続いたが歩美ちゃんはなにも話そうとせず黙っている。私から話し始めるのを待っているかのように・・・。
私は勇気をだし話し始めた。
「あ、あのね、私たぶん円谷君のことが好き///」
私はなんとか声を出して言えたと思う。
「そうなんだ〜って・・・えぇ〜〜〜〜!!」
歩美ちゃんはいきなり大きな声を出した。私はあわてて
「歩美ちゃん!声が大きいわよ///」
「だ、だって哀ちゃんが急に変なこと言うから。」
「変なことって、私は真剣なのよ///」
「・・・」
「・・・」
また沈黙になってしまった。しばらくして歩美ちゃんが話し始めた。
「哀ちゃん、本当に光彦君のこと好きなの?」
歩美ちゃんが先ほどとは違い、真剣な表情で聞いてくる。
私は頷くことしかできなかった。
「そうなんだ。歩美、哀ちゃんはコナン君・・・今は新一さんか・・・のことが好きなのかと思ってたよ。だからさっき驚いちゃって。」
「そうね。確かに昔は工藤君のことが好きだったと思うわ。でもそれは、頼れる人が彼しかいなかったからだと思うの。でも今私の周りには頼れる人がたくさんいる。その中で私は円谷君を意識し始めて、好きになったんだと思う。」
「そうなんだ〜。それで?」
「それでって?」
歩美ちゃんの言ったことの意味が分からず私は疑問文を疑問文で返してしまう。
「だ〜か〜ら!それで哀ちゃんはどうしたいの?彼女になりたいの?光彦君とイチャイチャしたいの?」
歩美ちゃんの言葉に私は顔を赤くしてしまう。
「べ、別にそんなつもりはないわよ///」
「えっ?!じゃあなんで歩美に相談したの?」
歩美ちゃんの言葉に私は冷静さを取り戻した。たしかにそうだ、なぜ相談したのだろう?何を相談しようとしたのだろうか?
全く何をしようとしていたか分からない自分に呆れてしまった。
「そうね・・・この話はおしまい。教室に戻りましょう。」
私はそう言って教室に向かおうとした。しかし歩美ちゃんは動こうとしない。そして私に言った。
「哀ちゃん、告白しよう!」
歩美ちゃんの言葉に私は驚き、そして呆れてしまった。
「だから、私はそんなつもりはないってさっき言ったでしょ。」
「わかってるよ・・・それはさ〜光彦君が哀ちゃんのこと好きなのは知ってるけど、もうすぐ卒業だよ。たしかに高校も同じだけど、他の中学校から来る女の子もいるんだよ。光彦君が人気あるの知ってるでしょう?他の女の子に取られちゃってもいいんだね?」
歩美ちゃんの言葉に一瞬心に痛みを感じたが、別に円谷君が誰とどうなろうと私には関係ない・・・。
「本当にいいんだね?」
「ええ。円谷君が誰と付き合おうと私には関係ないわ。」
そう。関係ない・・・。
「本当に?」
「本当によ。」
関係・・・。
「そっか。じゃあ私、告白しちゃおっかな〜?光彦君に。」
「だめよ!」
また無意識に言ってしまった。歩美ちゃんの顔をみるとしたり顔だった。まんまと彼女に乗せられてしまったのである。
「ほ〜ら、やっぱり哀ちゃん自分が彼女になりたいんじゃん。まったく、素直じゃないんだから。」
「うるさいわよ///あとで覚えてなさいね!」
私は彼女に乗せられたことが悔しくて言ってやった。
「ふ〜ん、そういうこと言っちゃうんだ?別にいいんだよ?光彦君に言っちゃっても、哀ちゃんの気持ち。」
「・・・分かったわ。今回は私の負け、告白すればいいんでしょ?」
円谷君のことになると私は歩美ちゃんにも勝てないみたいだ・・・。
「そうそう。じゃあ今日の放課後ここに光彦君呼んでおくから、哀ちゃんは先に行って待っててね。」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!今日の放課後って!そんな急に・・・。」
歩美ちゃんの言葉に私はあわててしまった。
今日の放課後まであと2、3時間しかないじゃない!いくらなんでも無理がある。
心の準備とか告白の言葉とか・・・って告白する気まんまんじゃないのよ、私・・・。
それにしても今日の放課後は無理だ。とにかく今は歩美ちゃんを説得しなくては。
「善は急げっていうことわざ知ってるでしょ?」
「知ってるけど・・・何も今日じゃなくてったいいじゃない。卒業まで時間もあるし。それに・・・私の準備だってできてないし///」
「別に準備なんていらないよ。哀ちゃんの素直な気持ちを光彦君に伝えれば良いだけだよ。」
そんなことは私も分かっている。でもそれができないからこうして歩美ちゃんに相談しているのよ!!私は思わず心の中で叫んでしまった。
「じゃあ、せめて明日にしましょう?お願いよ、歩美ちゃん。」
私は手を合わせてお願いしている。いままでこんなことは一度もない。
さすがに歩美ちゃんも初めてみる私の姿に
「分かったよ。じゃあ明日ね。絶対だよ!」
「ええ。明日ね。はぁ・・・。」
私は歩美ちゃんに聞こえないようにため息をついた。
正直歩美ちゃんに相談したことを後悔していた。
でも心のどこかで円谷君の彼女になれるかもしれないということを喜んでいる自分がいた。
次の日・・・
「哀ちゃんおっはよ〜。」
「ふぁ〜あ。おはよう歩美ちゃん。」
私は欠伸をかみ殺して挨拶を返した。
「哀ちゃん、準備してきた?」
歩美ちゃんは朝からハイテンションで私に聞いてきた。
「え、ええ。も、もちろんよ・・・。」
私はとっさにそう答えてしまった。
昨日、家に帰ってからもずっと考えていたが、告白なんていままで一度もしたことなかったからなんて言えばいいか分からなかった。
そんなこんなで結局なにも考えていない。
「勝負は放課後だよ。頑張ってね。」
「ありがとう。やれるだけのことはやるわ。」
歩美ちゃんに勇気づけられ、私は素直になることを決めた。
そして時間が過ぎ、放課後になった。
私はまず円谷君を中庭に呼び出そうとした。
「円谷君!ちょっといいかしら?」
私は恥ずかしさを隠すように強い口調になってしまった。
「灰原さん?どうしたんですか?」
「いいからちょっと来て!」
円谷君は明らかに戸惑っている。それはそうだ。なぜ私が怒っているのかが分からないからだ。
まぁ私は怒っていないのだけれど、円谷君にはそんなことは分からない。
ましてや告白されるなんて全く思っていないだろう。
私は円谷君を引っ張るようにして中庭まで来た。
そして向かい合った。そこまではよかった。
しかし円谷君と目が合った瞬間、私は恥ずかしくなり下を向いてしまった。
私が怒っていると思っている円谷君が遠慮がちに声を出した。
「はい・・・ばらさん?僕あなたに怒られるようなことしましたか?」
円谷君は不安そうに聞いてくる。
「それに今日の灰原さん朝からなんかおかしいですよ?」
あなたのせいなのよ!なんて声に出しては言えず・・・。
また沈黙だ・・・。ここまできても私はなかなか言い出せない。
このままではだめだ。それはわかっている・・・でも勇気が出ない。
私は顔を上げれずにいた。
しばらくして落ち着いてきた私は顔をあげて言った。
「別に怒ってなんかいないわ。あなたに話したいことがあっただけ。それに・・・おかしいのはあなたのせいなんだから。」
「えっ?最後の方が良く聞き取れなかったんですけど。もう一度言ってもらえ・・・」
「いいから私の話を聞きなさい!」
「・・・」
思わず口走ってしまったことを聞き返されてしまったので、私は声を張り上げてしまった。
円谷君は黙ってしまったが、私は一呼吸おいて話を続けた。
「まず・・・これから私のことを名前で呼びなさい、もちろん呼び捨てよ!いいわね?!」
結局私は素直になりきれなかった・・・。
「いいですけど・・・どうし・・・」
私は円谷君に返される前に次を言った。
「次に・・・私もこれからあなたのことを光彦って呼ばせてもらうわよ!それもいいわね?!」
ふぅ・・・とりあえず言いたいことは言えたはず。これで円谷君にも伝わったかしら?
どこぞの探偵みたいに鈍感でなければ伝わっているはずね。
そして、円谷君はうれしそうな顔で言った
「もちろんいいですよ!」
よし!私は円谷君の表情を見て、私の気持ちが伝わったと思った。
がしかし・・・。
「でも、どうしたんですか急に?」
・・・・・・だめだ、伝わっていなかった。円谷君もどこぞの探偵のように鈍感だったようね・・・。
うれしそうだった顔も今見ると不思議そうな顔をしている。
やっぱり素直に言葉にしなきゃ伝わらないみたいね。こうなったらあれしかないわ・・・。
「あら?分からないの・・・こういうことよ。」
そう言った私は円谷君に近づき、さらに顔を近づけていく。
そして・・・
チュッ
「は、は、はい、ばらさん///」
彼が驚いて顔を真っ赤にするのも無理はない・・・。
なんたって私は彼にキスをしたのだから///
キスと言っても頬にだけど・・・。
そして私は彼に言った。
「私・・・あなたのことが好きっ!だからこれからは私の彼氏になってもらうわよ!」
やっぱり恥ずかしくて強い口調になってしまったが、しっかりと素直な気持ちを伝えることができた。
しばらく彼は驚いた顔をしていたが、しだいに笑顔になった。
私がその顔に見とれていると・・・急に腕を引かれ、気づけば彼の腕の中・・・。
今度は私が驚いて顔を赤くする番だった。
それと同時に初めて感じる人の体温に、心が温まっていくような気がした。
「僕うれしいです!あなたが僕を好きになってくれて・・・。それにあなたはいつも哀しそうな横顔をしていたから、こうやって抱きしめてあげたいって思っていたんです!」
円谷君の言葉に私は涙がこぼれそうになり彼の胸に顔を隠した。
「あり・・・が・・・とう、円・・・谷くん」
「光彦って呼んでくれるんじゃないんですか?哀・・・」
「そうだったわね・・・光彦・・・」
私は涙を拭い顔を上げた。
そして、光彦と目が合い視線が絡み合って・・・・・・
END
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