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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

皆様から愛されているご主人様は私の純粋な愛を受け取ってくれるでしょうか

作者: 朝倉妃妬美

一月九日(火)

「ご主人様〜」

 扉が開くと同時、可愛らしい声がボクの部屋に響く。

「ご主人様早く起きてください〜。今日から学校ですよ〜」

 声の持ち主はしきりにボクの身体、ベッドを揺らす。

「ん・・・もう少し寝かせて」

 昨日は“冬休み最後の日だ!思いっきり遊ぶぞ!”とふざけて遊び惚けていたのが悪かったのか、今日は目覚めが酷く悪い。

「何言っているのですか〜!もうお食事のご用意はしていますよ〜。早くしないとお味噌汁が冷めちゃいます〜」

 ボクの身体はベッドからは出ないものの、ピク!と動く。

「お味噌汁?今日の朝ご飯は和食?」

「そうですよ〜。ご主人様が大好きな卵焼きも、ちゃんと作っておきましたよ〜」

「起きる・・・」

 寝ていた身体は無意識のままシーツを押し退ける、がベッドからは起き上がらない。

 目の前には少女が立っていた。さっきの可愛らしい声は彼女のものだ。名前は釘宮くぎみやエリか平野ひらのエリ。

 二つ名前があるのは・・・説明が面倒臭いのでパス。

 エリはいわゆるボクのメイドだ。といっても人間界で“お帰りなさいませご主人様〜”と言って客を出迎えている、安っぽいメイドではない。エリにはツンデレ要素はないし、ドジっ娘や妹属性はかいむ皆無。可愛い顔して凶器を振り回すようなヤンデレでもない。

 彼女は俗に振り回されていない、純粋なボクのお手伝いさんなのだ。

「おはようございます〜。ご主人様〜」

「おはよう、エリ。今日も清々しい・・・ふぁぁああ・・・」

 あくびが出る。身体は起きていてもまだ眠気が・・・

「もぉ〜昨日はいつまで起きていたのですか〜。ご主人様は朝が弱いから早寝しないといけませんよ〜?」

 エリの声を聞いていると、また眠気が襲ってきた。彼女の特徴的な甘い声は、脳が覚醒状態のときは癒しなのだが、半覚醒状態だとこれ以上の子守唄は無い。

「さぁ〜早く食堂に来てください〜」

 子守唄・・・子守唄にしか聞こえない〜。でも起きて卵焼きを・・・出来ればボクを叩いて強制的にベッドから引きずり出してくれればいいのだけど、エリは優しいからそんな事、絶対に出来ないだろうなぁ〜。いや、もう目はほとんど覚めているのだけど・・・そうだ、エリをいつもみたいに・・・

「エリ・・・ちょっとお願いがあるのだけど・・・」

「何ですか〜ご主人様〜?」

 エリがボクの顔を覗き込む。彼女はピンク色のパジャマの上に、赤い有名ブランドの上着を着ていた。

「キスして」

「はにゅあ!?」

 声かどうかもわからない台詞が、エリの口から漏れる。

「ご、ご主人様は・・・な、何をおっしゃりますのですよ!」

 驚きのせいか、呂律ろれつも文法もなっていない。

「エリがボクにキスしてくれたら、このベッドからおりて食堂に向かうよ」

 笑いを堪えながら、ボクは淡々と呟く。

 エリは可愛い。ボクの冗談を真剣に受け止めてくれて、思ったとおりに彼女は反応してくれる。

「私がご主人様にせ、接吻なんてできませんです〜」

「え?してくれないの?エリのボクへの愛は、そんなにもろ脆いものなの?」

「だ、だって・・・」

「問題ないよ。唇を重ねれば、それで終わる事」

 ボクは役者に為れるのではないだろうか!内心ではエリの困り果てている姿に大爆笑しているが、それを顔に出さず淡々と冷静な言葉が吐いているのだから。

「ご、ご主人様が良いと言うのなら・・・」

 エリはベッドに腰掛け、ボクと同じ高さに唇を持ってくる。

 寝ぼけているフリ寝ぼけているフリ・・・と目を閉じておく。

 ボクの顔に、暖かい吐息のかかり、それでエリが戸惑いながらも着実に近づいてきている事がわかった。

「早く・・・ボク寝ちゃうよ・・・」

「えぇぇ〜!寝ちゃダメです〜!起きてくださいです〜」

 エリの唇がボクの唇に重なる。あ!味噌味・・・

 エリの可愛らしい唇はボクが奪った!エリはボクのものだ!

 危ない台詞が普通に吐けるボク。

「・・・これでいいですか〜?」

 目を開けると、唇を既に離していたエリは頬を赤めていた。

「うん!バッチリ起きた!姫のキスで覚醒した!」

 ベッドから飛びおりる。

「でもさぁエリって結構大胆だね」

「え?」

「ボクはキスしてとは言ったけど、別に唇にしてとは言ってないよ。頬でも額でも良かったよ」

「えぇぇぇぇええ〜!?」

エリは声をあげる。

「だって、だって〜キスといえば唇かと〜」

「いただきました!」

 ボクは唇を一舐めする。

「ご主人様〜オヤジ臭いです〜」

 エリは頬を膨らます。

「さぁ、食堂に行こうか。エリの卵焼きを食べに!」

「あ〜!ご主人様〜」

「・・・それにしても寒いね〜。冬だから仕方ないかな?」

「それ〜冬のせいだけではないと思います〜」

 エリは頬を先程以上に赤める。

「何でご主人様、服着てないのですか〜?」

「え?服?ボク、ちゃんと服着ているじゃん?」

「それは服って言いません〜!下着です〜!」

 エリは言いながら顔が真っ赤になる。

 そういえば昨日、パジャマに着替える途中で“別に明日また脱ぐ訳だし、下着のままで寝ても問題ないか”とそのままベッドに潜り込んだのだ。忘れていた・・・どおりで寒いわけだ。

「何でもいいので服を着てから来てくださいね〜!そのままの格好でしたら私が欲情・・・じゃない〜!ご主人様が風邪引いちゃいますから〜!」

 なかば逃げるようにエリは部屋から出て行く。

「可愛い!」

 エリの後ろ姿を見て一言。ボクのオヤジ臭さは今に始まった事ではないのだ。



「ご主人様には羞恥心が無いのですか〜!」

 私は今、廊下を歩いています。ご主人様の下着姿を見てしまったからでしょうか、頬が少し熱いです。

 私のバカ!今更何を恥ずかしがっているのですか。既にご主人様と同居して五年は経つというのに〜キスぐらいで頬を赤めて・・・

「でも私がご主人様にキスしたなんて〜学校で広まったら・・・私はご主人様ラヴの人に殺されちゃうです〜!」

 絶対にばれてはいけないのです!ご主人様は学校でもモテモテなのです。

 こないだ学校でただご主人様と手を繋いでいただけで、

「貴女は手塚の何なの!?」

 と上級生の方に呼び出されちゃいました。流石にご主人様のメイドですと、地雷が無数に埋まった大地を駆け抜けるような事はせず、そのときはご主人様に助けられました。

無論、私がご主人様と同居している事は絶対無比ぜったいむひの隠し事なのです。

「そういえばご主人様のもう一つの苗字は〜手塚だったのですね〜。私はいつも家ではご主人様と呼んでいますし〜。学校では生天目先輩と呼んでいますから〜」

 ご主人様は時々オヤジ臭い台詞を言われますけど、まだ十七歳の高校二年生なのです。ちなみに私は十六歳の高校一年生。一歳年上なのです。

 手塚、生天目、この二つの名前は実は両方とも、ご主人様の苗字なのです。理由は簡単、少しでも男女差別をなくす為です。

 そもそも私が生まれる前の人間界は男女差別が多かったのです。酷い人の場合、自分が男女差別をしている事に、気づきもしていなかったのです。他にも昔の人間界は、偏見や事実とは異なった情報による異種差別がかげ陰ながらあったのです。

 そんな差別の世界、人間界の転機は魔界との交流。そして初めに差別をなくすための方法として挙がったのが、この二名ふたな制度なのです。

 昔の人間界では結婚すると、基本的に片方の苗字に変える必要がありましたが、今ではこの制度で結婚しても変える必要が無い、又は両方の苗字を名乗る事ができるのです。

 私も苗字は釘宮と平野の二つがあります。同級生からは平野、上級生からは釘宮と呼ばれています。本当は統一した方がいいのですけど、今更呼び方を変えてとは言えませんし・・・

 差別をなくす試みはいいけど、ただ単に二つ苗字があって、ややこしくなっただけだよ〜平野おかあさん・・・

 そういえば、ご主人様はもっと不思議な呼ばれ方です。大体の人は生天目先輩か生天目と呼ばれます。が、三年生の方からたまに、手塚と呼ばれているのです。それも四月の頃は生天目と呼んでいた方があくる日当然、手塚に呼び方を変えるのです。確かに手塚もご主人様の苗字ではありますが、今まで生天目と呼ばれていた方が突然変えるのです。何か呼び名が変わる法則でもあるのでしょうか。

 食堂に着きました。食堂といっても食事を食べる部屋という意味で、部屋自体は学校の教室四個分ほど広さにポツンと職人に作って頂いたテーブルが置いてあるだけなのです。テーブルの上では私がご主人様を起こす前に作っておいたお味噌汁が湯気を立てています。

「平野お母さんは〜本当に金銭感覚がゼロなのだから〜」

 私は部屋の光景を見て呟きました。

 冗談かと思いますが、私とご主人様が住むこの家は、五年前に平野お母さんが、最高の建築家と最高の設計士を呼んで建てさせた、クリスマスプレゼントなのです。

 お母さんは子供の頃から、欲しい物はすぐに手に入る環境だったので、金銭感覚が殆どゼロなのです。いえ、確かにこの人間界にある全ての空いた土地を買い占めても、まだ余るほどの大金が実家にあるにはあるのですが・・・

 以前、お母さんと買い物をしていますと、泣いている親子がいました。

「どうしたのかしら?」

 お母さんが尋ねると、どうやら事業に失敗して借金が重なり、明日生きるだけでも精一杯らしいのです。

「それは大変ね・・・少ないけどいる?」

 お母さんは何の躊躇いもなくその親子に一億円を渡した事は今でも忘れません。このときから、平野お母さんの金銭感覚の無さに気づきました・・・

 私は二つしかない椅子の一つに座ります。

「ご主人様〜早く来てくださいよ〜。お味噌汁冷めちゃいます〜!」

 広い食堂で、私の声が虚しく木霊こだましました。

 ご主人様はたまに、私を騙すような悪戯をします。先程のキスをしたのが、いい例だと思います・・・でも、ご主人様の今までの悪戯で、一度も私は傷ついたりしていません。むしろ・・・

私はご主人様を愛しているのです。でもこれは片思いなのでしょうか?

よく小さい子供は好きな子をいじめると言いますが、ご主人様もそれなのでしょうか?

もしそうなら・・・

 


「いただきます!」

 ボクは椅子に座る刹那、箸を握りそう言った。

「あぁ〜!ご主人様〜ずるいです〜!私は食べずに我慢していましたのに〜」

 エリは可愛らしく怒る。

 ボクはエリに言われたとおり、服を着ている。と言っても冬物のコートを羽織っただけ。

 コートの中は勿論、下着である。このまま外に出たら露出狂と呼ばれても文句は言えない姿だ。

まぁ、今はエリを騙せたらいいのだ。それより・・・

「お!ボクの大好物、卵焼き!」

 卵焼きの方が優先である。ボクは箸で切り分け、一口。

「うっまい!」

 口に広がる味覚神経を刺激する卵焼きの風味。

彼女の卵焼きは最高だ。人間界だろうと、魔界だろうと、彼女の卵焼き以上のそれを作れる人など、存在しない。絶妙の焼き加減に加え、美味しく食べて欲しいという、彼女の気持ちが溢れんばかりに入っているのだ。口に含んだ瞬間、鬱な気分も吹き飛ぶ。彼女の卵焼きを食べたあとは、他の卵焼きは食べられなくなるほどだ。

「うまいよ!流石はエリだね!」

「ご主人様に褒められて嬉しいです〜。早起きして作ったかいがあったです〜」

 エリはにっこりと微笑む。

「ホント、エリはいいお嫁さんになるよ!」

 お味噌汁をチュルチュルと、可愛らしく飲んでいたエリは頬を赤める。

「お嫁さん何て〜嬉しいです〜」

 エリはそっとボクの肩にもたれ掛かる。髪のいい匂いがする。

「可愛いね・・・エリは」

 エリはボクのメイド、でもそれ以上に彼女は、五年間一緒に暮らしている恋人パートナーなんだ。彼女は母親譲りの語尾伸ばしを除けば、容姿端麗の少女。一緒に過ごしていて好きにならない奴はヤバイ。エリはボクの事をどう思っているのか、あまり知らないけど、ボクはエリが好きなんだ。だから小さい子供みたいに意地悪しちゃうのだ。

「ご主人様〜先程は私に一つお願いしましたよね〜今度は私のお願いも聞いてくれますか〜?」

「何?言ってみて」

 エリは真剣な顔で深呼吸。

「ご主人様は〜私の事〜好きですか〜?」

「・・・」

 ボクは無言。アレ?今好きな人が好きかどうか聞いてきたよ、ボク?“え?”みたいな自分もエリが好きだった・・・と匂わすような台詞を!台詞でなくとも“ボクはエリの意外な問いに瞬時驚き、頬を赤く染めた”みたいのがあってもいいのではないか、ボク!素で無言ってどうよ?

もしかして今まで学校の人達に告白され過ぎて慣れた?

ボクはエリ一筋だ〜!だから貴女とは付き合えない、と素直に言っては、せっかく勇気を持って告白してきたに申し訳ないと、無言を突き通し、

「もしかして、他に好きな人が・・・?」

 と向こうから察知してもらうという、最悪な返答を繰り返してきたせいか!

「ご主人様〜?」

エリは悲しそうな顔をしてボクを上目遣いで見ている。

ヤバイ・・・これでは今までの二の舞だ!

「と、当然だよ!そのために母さんとエリの親・・・特に平野お母さんはボク達にこの豪邸で二人暮しをさせてくれているのだよ。エリ以外にボクは誰を愛せばいい?他に愛している人なんていないよ」

 ボクはエリの頬におもむろにキスをする。母さんとエリのお母さんゴメンなさい。言葉の繋ぎにありもしないでっち上げをして。ボクは何故親がボク達だけでこの家に住ませているのか知らない。好きな人と一緒なので、嫌ではないのだけど。

 それよりボクって、すぐに言葉が出てくるよな〜詐欺師に向いているかも。

「はにゃぁ〜!」

 エリは嬉しそうに声をあげる。

「私もご主人様の事を愛しています〜」

「そうそう!好きという気持ちは絶対に隠さない!片思いなんて臆病者がする事!人は当たって砕けろ!他にその人が好きと言うなら、丑三つ時に呪ってやれ!」

「それはダメだと思います〜!」

 食事そっちのけ。

 でも、時はボク達の愛の語らいを邪魔する。

 そろそろ学校に行く時間が近づいてきた。


 

 相思相愛でした・・・ご主人様は私を愛してくれていました。

 そうと知れば、私はご主人様に相応しい女にならなければいけません。まずはこのバカみたいな語尾伸ばしを直さないと・・・

 この語尾伸ばしは、釘宮お母さんの口調を小さい頃から真似していたため、今でも語尾を伸ばさないと落ち着かないのです。いえ、まだ私は普通に喋れている方だと思います・・・釘宮お母さんはもっと酷いですから。

 あぁ、ご主人様の愛を知って嬉しい気分なのですが、それを一気にマイナスにしてしまう事が。

 実は私、お恥ずかしながら、自分の制服を無くしてしまったのです。いつもクローゼットに入れている筈なのですが・・・

 昨日、明日は学校です〜!と叫びながら一生懸命探したのですが見つからず、今に至ります。

 私はベッドメイキングのため、ご主人様の部屋にいました。自分の事より、ご主人様のお世話の方が大事なのです。

 大丈夫、きっと見つかりますよ、私。

「エリ、一々いちいち自分の部屋に帰るのは大変だから、ボクの部屋で制服に着替えたら?」

 ご主人様は既に制服に着替えていました。

 あぁ!ご主人様は何て優しいのでしょう。私に気遣ってくださって!ですが、今私の制服は・・・

「はい!」

 ご主人様は何かを私に渡します。

「・・・ってえぇぇえぇぇえええ〜!?」

 ご主人様の手には!私の制服!

「な、な、な、何でご主人様が私の制服を持っているのですか!」

 ご主人様!私が言わずとも、何に悩んでいるのかわかっていらっしゃるのですね!これこそ以心伝心!

「え?何でって・・・ボクがエリの部屋に入って盗んできたから」

「はい〜?」

 ご主人様、今何といいましたか?

「盗んだ〜?先程ですか〜?」

「うんうん。冬休みが始まって、直ぐに。帰宅部だから今日までは必要ないと思ったから」

「・・・何故ですか〜?」

「そんなの、好きな娘の持ち物だからに決まっているよ。実は長い休みのときはいつも盗んでいた。これ、エリの匂いが染み付いているから」

「ちょっと〜ご主人様〜!その台詞〜かなり危ないです〜!」

 ご主人様が私の制服を盗んでいたのですか!ご主人様はそこまで私を思って・・・いいえ!ダメです窃盗は!と言うよりご主人様は人として危ないです!

出来ればご主人様だけの隠し事として、私には秘密にして欲しかったです・・・

「ははは!いつもは元の場所にコッソリ返すのだけど、もうエリが好きって言ったし、隠す必要ないと思ったから。さぁ!着替えるよ」

「え!?ご主人様〜!何で私のパジャマ脱がしているのですか〜!制服ぐらい一人で着替えられます〜!」

「いいじゃんいいじゃん!好きな娘は着せ替え人形だよ!」

「訳がわかりません〜!ちょっと〜!私達が相思相愛だとわかってから〜ご主人様〜開放的になっていませんか〜!?」

 下着姿になった私は、そう叫ぶ事しか抵抗できませんでした。

「お!エリ、また胸が大きくなったね!」

「え?あ、ありがとうござい・・・って〜!ご主人様、何故揉んでいるのですか〜!?やめてください〜!」

 ご主人様が壊れてしまいました。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 何とか・・・制服に着替えましたが、かなり疲れが出てしまいました。

「もぉ〜そんなに興奮しなくていいのだよ!」

「興奮してないです〜!とにかく〜私はカバンをとって来ます〜」

「カバンならここにあるけど」

「カバンも盗っていたのですか〜!ご主人様の愛は異常です〜!」

 ご主人様からカバンを受けとります。

「いいじゃん!ボクはエリが好きなんだよ。好きな人にはアタックアタック!」

「ご主人様は〜単に私の体を触りたいだけじゃないのですか〜?」

 頬を膨らませて呟きます。

「・・・ゴメンね」

 ご主人様は私を抱きました。小さい私の身体はしかとご主人様の胸の中に入っています。ご主人様の暖かい吐息が私の首筋にかかります。

「ちょっとふざけていた。ボクは好きな娘には悪戯したくなるんだ」

「ご主人様〜その台詞、音だけだとエロいです〜。せめていじめちゃうにしてください〜」

「そうだね・・・でも別にエリの身体に触りたい・・・のは触りたいけど、それは好きだから、ね」

 ご主人様の唇で私の口は塞がれました。

 唇を重ねていると、ご主人様の体温が私に移るようでした。

 温かい・・・もう、ご主人様と離れたくないです。

 ご主人様は微笑みます。

「それにしても男の人はいいよね〜制服でスカートを穿かなくて。今の季節、スカートは捲れるし寒いし・・・何より、下着が見えちゃうよ!」

「そんなに嫌なら、下に体操服を穿けばいいじゃないですか〜」

「え〜!面倒臭い・・・それにボク、生天目サユリが下に体操服なんて、絶対引かれる。ボクは豪快な娘、そういう印象があるからね」

 ご主人様はくるりと回ります。遠心力でスカートが捲れ、けれどギリギリで見えませんでした。

「さぁ、そろそろ高校に行こうか!ボクらの学び舎、桜丘高校女学校さくらおかこうとうじょがっこうに!」

 ご主人様は腰まで伸びた綺麗な黒髪を、窓から入ってきた冷たい風になびかせました。


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