秘本竜馬伝 心に空を恋う男(2/4)縦書き表示RDF


秘本竜馬伝 心に空を恋う男
作:L.B.



出会い


利次が気づいたときには、目の前はただの闇が広がっていた。
自分が、目を開けているのか、閉じているのか分からなくなるほど、利次は動揺していた。
体を動かそうとしても動かない。
それどころか、手足の感覚すらないことも気づいていた。

「何でこんなことに…」

思い返そうとしても記憶が混濁し、何かを考えることがつらくて仕方がない。
目の奥が熱く、くらくらする。

「いッ…」

突然、後頭部に刺すような痛みを感じた。

『誰が・・・るか?』

え?


『誰が殺したか、知っとるか?』

せんせ、か?

記憶。
脳の奥に吹っ飛んでいた過去の記録が、突然フラッシュバック。

そうや、ガッコで、せんせと話してて…。

彼が何かを言った途端、目の前の空間が左右にぶれ、壊れた。
壊れた、という言葉がまるでぴったりのその状況。
ほんの3メートルむこうにいた先生が、一瞬で崩れていった。

せんせは、何を言うたんやっけ……。

坂本竜馬の話してて、そんで、

「誰が、殺したか…」

なか・・・なか・・・

「『中岡慎太郎』…?」

って、誰や。

利次は、それが誰だか分からないようだった。

中岡慎太郎。
竜馬とともに幕末を生き、竜馬とともに何者かによって殺された人物。
何者かによって殺された、とされる人物。
その彼が、竜馬殺しの犯人。

「かぁーっ!!もぉちょい台本読んどくんやったー!!」

誰やー!!中岡慎太郎!!

利次は、全身の痛みを忘れ、叫んでいた。
そして、戻ってくる痛みに後悔し、身悶えた。

突然、遠くで声がした。

「おい、こっちの方で声が聞こえたぞ!!」
「誰ぞおるんかも知れん」
「はよせんか、イヌヒコ」

誰か、おるんか?

どうやら、ついぞの叫びが良かったようだ。
誰かが利次の存在に気づき、助けに来たようだ。

て、言うか、おれ、どんな状況なんやろう。
目は見えない、(て、言うか血、出てる?)
手足は動かない。
後頭部には激痛。

ここ、どこ?

最初に出てくるべき疑問が、彼の考えの中にやっと出てきた。彼の場合、自分より先に他人のことが気になる性格だったため、彼にとって今、最も重要な問題は後回しにされていたのだ。


手足の感覚がないことを抜きにしても、こんだけ体が動かんのやから、何かにはさまれとるんかもしれん。


「紐はくくったか?!ええの!?」
「ほな、引け!!イヌヒコ!!」

その瞬間ものすごく大きな何かが、自分の上から少しづつ取り除かれるのが分かった。

「誰かおる!ゆっくり引っ張り出せ」
「待て。あの血見てみぃ、もぉ死んどるやろが」

生きてます、一応。

「ほなさっきワシが聞いた声は何やったんぞ」
「この白いんが崩れる音やったんちゃうんか」
白い?
「それに、お前こいつが生きとったとしても助からんぞ」

かといって見殺しはきついです。さっき助けようとしてくれたやないですか。
続けて。続行してください、その作業。

利次は、作業の続行を願って精一杯の声を振り絞った。

「い、きてま…助けて」

くれたら嬉しいなぁ。
あなたたちは命の恩人になるチャンスをつかんでいます。そのチャンスを、ぜひ、引っ張ってみてください。もれなく僕の今までにないくらいの感謝を捧げます。

「ほら、今助けてて聞こえたやろが、イヌヒコ、もっと引っ張れ!!」
「知らんぞ、お前が面倒見ろよ!!」
「面倒でも看病でも何でもしてやるわ」
「ついでに━━━━もな!!」
「もちろんじゃ!」

何?聞こえなかった。

ずるっという音とともに利次の体はその大きな何かのしたから引っ張り出された。

ほっとするとともに、引っ張り出されたことによる言いようもない激痛に襲われ、利次は気を失った。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう