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改訂の第二(完了?)
旅立ちの前に己の名へ











―――高々と宙に舞う深緑色のローブ。


頭上を覆う木々の隙間から射す僅かな日にの下に晒されたのは、雪の様な白い肌と、腰元まで下された長い銀の髪。

そして何よりも特徴的なのは、銀の美しい髪から覗かせる長く尖った両の耳。

その容姿たるは、例えようがないほどにエルフ。


・・・そう、確かにエルフだ。

間違い様など皆無なほど、完璧にエルフだ。

だが、その容姿から繰り出される発言が、かなりいただけない。


これは私の個人的な考えだが、エルフとはもっとこう・・・知的かつクールでなくてはならないと思う。

まぁ、こちらの勝手な理想像ではあるが、この場にて私のエルフに対する幻想は物の見事にブロークンしたとだけ告げておこう。


「オッと、失礼・・・あ゛ぁーー・・・コホンッ。いやいや、肝心の自己紹介がまだだったね?」

唖然とする私に気付いたのか、咳ばらいを一つ。

「私の名は『エンリ』。再生を司るこの森が生み出した最初の娘であり、森に住まう命在者達全ての長。つまりは、皆の女神様だと思ってくれても・・・私はいっこうに構わないよ?」


「・・・承知した、森の長よ」

当然だが、最後のは聞かなかったことにする。


「・・・普通にエンリで構わないよ。むしろ名前で呼んでくれないか?」


「ふむ・・・改めて承知した、エンリ。あぁ、この響きは実に・・・はて、この続きは何だったのだろうか?」

知らず知らずに口から出た台詞だったが、途中から思考に雲が掛かり続かなかった。


「・・・今のさっき知り合った仲なのに、私に聞かれてもわかる訳が無いじゃないか?」


「む、それはすまない・・・今の発言は忘れてくれ」

確かに彼女の言うとおりである。

「して・・・君は先程、森に住まう命在者全ての長と言っていたが・・・」

そこまで喋ると、彼女は私の言葉を遮った。


「ん?あぁ・・・それならちょうどいいね。せっかく知り合ったのだから、君に私の家族達を紹介しようじゃないか」

言うや彼女は私に背を向け、「着いて来たまえ」と続けると歩き出した。


「まぁ、少し待ちたまえ・・・」

そんな彼女の背中に私は待ったを掛けた。


「・・・何だい?」

私の言葉に彼女は立ち止まり、不思議そう表情で振り返った。


「一つ、当たり前のことを聞くが・・・」

その不思議そうな表情に向け、私は改めて問う。

「エンリ・・・君はそんな簡単に、私を信用して良いのかね?」


「何でだい?」


「オイオイ・・・君はおかしいと思わないのかね?」


「おかしいって・・・いったい何に?」


「いや、何にではなくてだな・・・こんな言い方は失礼だと思うが、君は紛いなりにも長と呼ばれる立場なのだろ?」


「あぁ、そうだよ・・・そんで、それがどうか?」


「・・・」

エンリよ・・・その、『アンタなに可笑しなこと言ってんのよ?』みたいな表情は止めてくれ・・・

「・・・いや、なんでもないさ・・・だから気にしないでくれ」


「了解。じゃあ、改めて行こうか・・・名無し君」


「まぁ、取り敢えず待つんだエンリ・・・君に一つ聞くが、その名無し君とやらはいったいなんだ?」

まさかとは思うが、名無し君とは私のことだろうか?

だとしたら、それは聞き捨てならんぞ?


「なんだって・・・君の名前だよ、名無し君?」


「だから待て。いつの間に私の名は、名無し君とやらになったのだ?」


「んーー・・・それは今さっきだね。ちなみに命名は私だよ?」

少し考える仕種をした後、エンリは良い笑顔で答えた。


「・・・」

は、話せば話すほど頭が痛くなるではないか・・・

「・・・だ、だから待て。良いかねエンリよ?私が聞いているのは、いつ名付けただとか誰が命名したか?などの話しでは断じてない」


「そうは言われてもねぇ・・・人に名前を聞いておきながら自分の名は名乗らない君には、面倒臭いから名無し君呼ばわりで十分だと私は思うけどねぇ?」

言うやエンリは、皮肉めいた笑い顔を私に向ける。


「む゛ッ・・・そ、それはすまなかった。どうやら名前に関しては、完全に私の落ち度のようだ。誠に申し訳ないと、謝罪しよう」

私は謝罪の念を込めながら、エンリに小さく頭を下げた。


思い返しみれば、エンリの言うとおりであった。

名を尋ねる時は、先ずは自分から。

それは、どの世界であっても共通の礼儀だった。


「ちゃんと分かってくれたなら、私は気にしないさ・・・それで、君の名は?」


「・・・」


「・・・どうかしたのかい?もしかして君には、何か名乗れない理由でもあるのかい?」


「・・・いや、そんな訳ではないのだがな・・・」

先程まで完全に忘れていたが、何を隠そう私は記憶喪失。


クソッ、こんな重大なことを忘れていたとは・・・

もはや自分の脳天気さ加減に、言葉も出ないぞ。


「・・・エンリよ、少し私の話しを・・・いや、事情を聞いてくれないかね?」


「・・・それくらい、別にかまわないよ」

私の雰囲気で悟ったのか、エンリの表情は真剣な物へと変わる。


「・・・すまない」

私はエンリに小さく頭を下げ、目覚めてから現在に至るまでの経路の一つ一つを、自身で確かめるかのようにゆっくりと話し出した・・・

















私と彼女は向かい合い、木で造られた椅子に腰を下ろし、体を休ませている。

目の前に座るエンリは足を組み、背中を反って伸びをする。

出たところが強調され、彼女体付きが意思せずとめ視界に入り込む。

スラリと伸びる長い足は無駄な肉を感じさせずに引き締まりつつも、同時に女性的な柔らかさを感じさせる。

少し視線を上げれば目に映る、括れた腰周りと大き過ぎずも決して小さくのない豊かな胸元は、女性として一つの完成系であることを体言していた。


「何処を見てるんだい?」


「・・・別に私は、やましい気持ちで見ている訳では断じてないぞ?だから気を悪くしないでくれると、非常に嬉しい」




―――少し前・・・


自分の事情について一通りの説明を終わらせ、改めて先程の落ち度を謝罪した私に、エンリは笑顔で返してくれた。


「気にしなくていいさ・・・それに、そんな事情があるなら尚更だよ。今後どうしたら良いかどうすべきかで悩むくらいなら、私に着いて来るといい」


それに対し、私がどういう意味かを聞くと、エンリは簡単に説明をしてくれた。


「私には特別な能力チカラが在ってね・・・そいつを君に使おうと思うんだよ・・・あぁ、別に危ないことはしないさ。危険性とか後遺症もないよ?」

説明を聞くところ、どうやら彼女には不思議な能力が存在するらしい。

しかし、エンリの能力で解決出来るのなら、わざわざ移動するのは何故だ?

何か特別な場所、または準備なり儀式が必要となるのだろうか?


っと、

「ふふふ・・・違う違う。こんな場所もなんだし、ついでに私の家でのんびり休まないか?」

私の思考が読めたのかは知らないが、柔らかく笑いながら言った。


・・・そして、今に到る―――




「へぇ・・・じゃあ君は、私の体を眺めて何を考えてたんだい?」


「ふむ・・・それはだね、君が自分のことを美人だ女神だのと呼んでたからな・・・」


「間違ってるかい?」


「いやいや、そんなことはないさ・・・君はとても美しい。これは間違えようがなく事実だ」

私は笑いながら言う。


「それはどうも」

私の返事に気を良くしたのか、エンリは優雅に笑って返した。

その仕種からして、一枚の絵画のようだ。


一目見れば誰もが思う。

整った目鼻立ちと、強い輝きを持った金色の瞳。

その上、先程私が確認したとおりのスタイルまでをも所持して、誰が美しくないなどと言えようか?


・・・だが、だからこそ不思議に思う。

物事とは優劣を付けるに当たり、先ずは他者と比較することから始まる。

故に彼女・・・エンリの家に着いた時は、心底驚いたものだ。


―――何故なら・・・


「ところで、私の家族とは仲良くなれたかい?」


「はて、どうだろうか・・・生憎と、私は動物の言語は理解出来ないのでね」

言って私は、膝に乗せた一匹の子犬を撫でた。

私達の足元にはリスやウサギなどの小動物が群がり、エンリの到っては肩に小鳥達が止まって羽を休めている。


そう・・・


―――そこには、私と彼女を除いた人と呼べる存在は皆無であった・・・


「ハハハッ、それに関しては私も同意するよ。その子達の言語は、いくら頑張ろうとも分からず仕舞いさ・・・」


「ほぅ・・・それはなかなか興味深い。ならばエンリ、いったい君はこの子達と、どうやって仲良くなったんだね?」

普通に考えてしまえば、動物達に懐かれた程度の話しだろう。

だが私は、不思議と聞かずにはいられなかった。


「あぁ、それはねぇ・・・」

私の疑問にエンリは目を閉じると、手を掲げ私に向ける。

「それはね?こうやったのさ・・・」


―――ッ!!?


・・・全ては一瞬で、その一瞬は全て・・・

私の内部へとナニカが入り込み、そのナニカは私の全てを理解する。

世界へと生まれ落ちる意味。

そして、生を終える意味。

それらは全て、私を私へとナス、ありとあらゆるモノへと繋がっていく・・・


「・・・今のは?」

私の体に不快な感覚は一切ない。

唯一存在するのは、ただただナニカを受け入れたと言う結果だけ。

それだけが、ただ感じられる・・・


「・・・」

返事はなく、エンリは目を閉じたまま俯く。


「エンリ・・・どうかしたのかね?」


「いや・・・どうもしないさ。そう、どうもね・・・」

エンリは震える声で繰り返し、顔をゆっくりと上げると、

「だから君は・・・『エミヤ』は何も気にする必要はないよ・・・」

そう応えながら、儚くも微笑んだ。


気付けば閉じていた目は開かれていた。


そして、そこからは涙の滴が一つこぼれた・・・








/ 2








――英霊・エミヤ・・・

叶うはずも無い理想を追い求め、ただひたすらに戦い続ける生涯はあまりにも痛々しかった・・・

正義の味方など、所詮は都合の良い物語りの中にだけ意味が存在する、迷惑な幻想に過ぎない。

そんなことは誰もが承知で、分かりきったものだった。


―――それなのに・・・


それなのに何故、彼は自らのいっさいを省みず駆け抜けることが出来たのか。

何故、彼は正義の味方なんて在りもしない幻想を、命をとしてまで目指したのか。




「エンリ・・・何故、君は泣いているのだ?」

エミヤの声は私の心に波紋を呼ぶ。


「すまない・・・君の過去を見てね。そのおかげか、涙が出てしまったみたいだよ」

正直な話しをすれば、彼の魂から呼び出した情報に泣いてしまった訳ではなく、世界が彼に課した罰に対してなのだが。

「まぁ、結果として君の名が分かったから、覗いといて良かったね・・・」


「では・・・私の名が分かったのか?」


「そうさ、君の名は『エミヤ』。ちなみに、私が持つ特別な能力は『知る理解するまたは解明する』ことさ」

私はエミヤの顔を見据えて聞いた、

「それで君は、エミヤは何が知りたい?」


エミヤ・・・君は己の過去を知ったら、再び理想を求めるのかい?

いや、そんなことは聞くまでもない話しだ。

アノ理想は、エミヤにとって全てなのだから・・・

だけど、それではあまりにも満たされない。


だからエミヤ・・・




―――私が君に、全てを話すことはないだろう。





















「それで、エミヤは何が知りたい?」


「ふむ、何がか・・・取り敢えず確認をするが、私の名はエミヤで良いのだね?」


「あぁ、それは間違いないよ」


「エミヤ、か・・・そうか、私の名はエミヤと言うのか・・・不思議だな、この名を口にした途端、私の胸に懐かしい物が感じられる・・・」

心の中に存在する大切なナニカが、少しだけ満たされた。


「それは良かった。それじゃあエミヤ・・・次は何が知りたい?」

エンリは私の言葉に嬉しそうに微笑むと、再び問う。


「次か・・・それではエンリ、私の失った記憶に付いて教えてくれないか?」

名を知っただけで得たアノ心を満たされる喜びは、まだまだほんの些細なものだろう。

これから全てを思い出した時、私の心はどれ程の喜びを感じられのか・・・


「失った記憶ね・・・それは具体的にどんなことだい?」


「・・・具体的にとは?」


「そうだねぇ・・・」

私の問いに考えながら、真っ直ぐに見詰めてくるエンリの瞳。

その瞳に映る本当の色が何なのかは、私には知るよしも無い。

「これからの君に出来ることと、これからの世界でエミヤが属する種に付いてかな?君には悪いけど、他については答えるつもりはないから」


「答えるつもりがない、だと・・・それは何故なのだ?」


「それは簡単な話しさ、エミヤ。君はね、再生されたんだよ・・・その昔、どこかの遠くの世界でエミヤと呼ばれた存在からね」


「・・・なんだと?」


「あ゛ぁーー・・・わかりやすく言うと、今のここに居るエミヤは複製、いや復刻版をうたってるヤツみたいな物かな?」


「・・・」

そんな馬鹿な・・・

「待てエンリ・・・それはつまり、この私はかつての私から再生された、全く別の同一人物だとでも言いたいのかね?」

まるで悲劇の物語に多様される、世界と戦う主人公のようではないか。

こいつは些か、冗談が過ぎる。


「まっ、そんな感じのもんだね。エミヤにはまだ説明してなかったけれど・・・ここ再生の森を簡単に紹介すると、魂の再製工事みたいな場所なんだよ」

そう言って、エンリは私から目を逸らす。

「魂には本来終わりが存在しない。何故なら輪廻なんて物が存在するぐらいだからね・・・でもね?それでも世界から拒絶された、廃棄された魂はどうなると思う?」


「・・・」


「エミヤの記憶にあるだろうけど、人はいらなくなった物をどうする?リサイクルショップとかでやってるじゃないか・・・もう必要のない物はね、ソレを必要とする別の誰かに売られるんだよ」

吐き捨てるように・・・まるで呪詛を詠むかのように、エンリは私に突き付ける。


「馬鹿な・・・そんな馬鹿な話しは聞いたことがないぞ、エンリ・・・」

私が世界に不要だと?

私が世界から売られたと言うのか?

「そんな、そんな馬鹿な話しが存在するのかッ!!私は今もここに存在して・・・人として生きているのだぞッ!?」


「・・・うん。それについても一つ教えとくよ・・・エミヤはもう、人間と呼ばれる生き物じゃないよ」


「・・・まさか、本気で言ってるのか、エンリ?」

私はエンリを睨みつけた。

「私がもう人ではないだと?笑えない冗談は止してくれエンリ・・・もし、もし君が言うよいに人ではないのなら、いったい・・・いったいこの身は何者だと言うのだッ!!?」


「・・・本当さ。君はもう人じゃあない・・・今になっては、ただの化け物の類さ」


「クッ・・・まさか、この私が化け物だと?人の形をした手足が付いているのにか?人の言葉を喋り、先程まで君と談笑していたこの身が、もはや化け物だとッ!!」

純粋な生命でもなければ人でもなく、もはやただ化け物だと言うのかッ!!!


「そうだよエミヤ・・・例え姿形が人に類似していようと、君は人間とは違う存在なのさ・・・でもね、エミヤ?」

言ってエンリは、ヤレヤレと首を振った。

「逆に聞くけど、何故君は自分が人間だと言えるんだい?」


「・・・どう言う意味だ?」


「簡単な質問だよ・・・エミヤ、君はつい先程まで、自分の名前にかんする記憶すらなかったんだよ?なのに君は、いったい何を根拠にして自分が人だと言えるんだい?」

エンリは興味深そうに私に目をむける。


「・・・」

私はただ黙り、何も答えられなかった。


「ふむ・・・どうやら君は、自分がここまで感情的になっている理由すらも分からないみたいだね・・・」


「・・・あぁ、そのとうりだよエンリ・・・君の言うとうり、私は自分が分からない・・・」

私は自らの頭を抱え、まるで救いを求めるかのように、弱々しいく言葉を吐いた。

「もし、もしもそれが事実なら・・・私はどうしたら良いのだ?教えてくれ、エンリ。私は何故このような・・・いびつに歪んだ存在になってしまったのか・・・」


「・・・着いて来るといい」

エンリは腰を上げ、私に背をむけた。

「エミヤ、君には再びチャンスが与えられた・・・それを生かすも殺すも君次第。だが、君は選ばなくてはいけない・・・」


「選ぶ・・・だと?」


「そっ、選ぶんだよ」


「まいったな・・・君はこんな、こんな紛い物の私に向かって、いったい何を選べと言うのだ?」

そもそも出来損ないの複製品な私に、何かを選ぶことなど許されるのだろうか?


「なぁーに、ただ簡単な選択をするだけだよ・・・まぁ、着いて来ればすぐに分かるさ」


「・・・承知した」

















―――そこに存在したのは、どこまでも澄み切った小さな池だった・・・


わずかに吹く風に揺られ、いっさいの濁りもない水面に小さな波紋をが生まれる。

見ているだけで吸い込まれそうな透明感。

その水面に映る自分の姿を眺めながら、私は選択を迫られた。


「さて、簡単な質問をするけど・・・エミヤ、君は歪んだ自分を受け入れて、人の世界で生きたいかい?それとも、ここで静かに暮らすかい?」

そこでいったん区切り、エンリは口の端を吊り上げた。

「ちなみに・・・ここで暮らすを選択した場合は、私達は将来的に再生の森でアダムとイブになるかも知れない・・・まぁ、私はそれでもいっこうに構わないよ?」


「エンリ、その落ちは流石に引っ張りすぎだ・・・」


「別にいいじゃないか・・・ブーブーッ!!」


「・・・」


「ハイハイ、わかってますよ・・・話しを戻すけど、エミヤはどうしたい?」


「私は・・・こんな私にも何か、出来ることがあるのだろうか・・・」

自分の名しか分からず、自分が理解出来ない私に・・・いまさら現世に生を受けて、意味があるのだろうか?


「ほうほう・・・いやぁーーまったく、悩み多き年頃だねぇ君は」

エンリは興味深そうに何度も頷いた。

「さて、エミヤ・・・君が何を出来るのかだけど、そんなのはね?そこらじゅうに、腐るほどあるのさ。だから立ち止まって悩むだけ無駄。全身全霊を以って、前進あるのみだよ」


「・・・そうか」


「む゛っ?どうやらその顔は信じてないねぇ・・・」

エンリはため息を吐き、私に笑って言う。

「命無き物にしろ命在る者にしろ、そこに存在するだけでなにかが変化する。これは全てに対して言えることだよ?」


「ふっ・・・君が言うと不思議と出来そうな気がするよ・・・ありがとう、エンリ」

そうだった、かつて誰かが言っていた気がする・・・

「出来るか出来ないかはどうだっていいもので、結局はやるかやらないかだったな・・・そうか、考えてみれば簡単な話しだったのだな・・・」


そう、至極単純な話しだった。


記憶から抹消された過去の一瞬も・・・


今この一瞬すらも・・・


そして、遥か先の未来で迎えた一瞬ですらも、そう・・・


―――その全てが、等しく私なのだ・・・


「決まったのかい?」


「あぁ・・・」

私はエンリに微笑む。

「答えはとうに得ていた。私は行くよ・・・この心が望むままに」


「そうかい、ならコレは選別がわりだよ・・・」


―――ッ!!?


自分の唇にしっとりとしながらも柔らかく、ひんやりとしながらもほのかに温かいナニカが触れた感触。

同時に、私の中にいくつもの記憶が蘇る・・・


―――投影魔術、強化魔術、戦闘経験、そして何故か虎・・・


・・・と、虎だとッ!?


「・・・な゛、何をするんだね君はッ!!?」


「ん?何って・・・強いて言うなら、ナニかな?」


「クッ・・・この卑猥な廃れエルフめ・・・」

私の中で再び、エルフに対する幻想がブロークンした。


っと、

「まぁ、何はともあれさっさと行くといいよ。そら、思い立ったらなんたらキック」

言うやエンリは私を蹴飛ばす。


「―――ぬおぉ゛ッ!?」

その結果、私は背中から池にダイブした・・・


「さてエミヤ、これで君とはお別れだ・・・それから、さっき君に私のチッスで返した記憶だが、アレは君の全てではない。だから探すんだ・・・想像し、理解し、幻想を創り上げるんだ・・・」


冷たい水の中へゆっくりと沈でいく体・・・

遠ざかるエンリを見上げながら、私はハッキリと思った。


―――エルフに対する幻想が『三度ブロークンしたッ!!』と・・・


「あ、ちなみにあのチッスは私の初チッスだから、未来永劫大切にしてくれよ?それから、もしかしたらいつか何処かで再会するかもしれない・・・だからその時まで操立てしてくれても、私はいっこうに構わないからね?」




―――知ったことかッ!!!


















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