ファクター・・・因子(または因数)、つまりは閑話シリーズ。
要はまた、話しが長くなった。
園(その)はファクターへ 壱
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「それで、私を呼び出したからには、ちゃんと説明をしてくれるのだろ?」
幽香を寝かし付け自分も眠りに付こうとした時、大事な話しがあると紫に言われた私は、月明かりの下で彼女と向き合う。
背後には深い森が、何処までも広がっている。
静けさの中には川のせせらぎだけが聞こえ、夜鳥の羽ばたきも虫の鳴き声も聞こえない。
だが、不思議と寂しさは感じられず、静けさに包まれることで心地好い安息感を覚える。
しかし、それはなんら不思議なことではないのだろう。
一切の不穏を孕まない静寂が安らぎを与えるのは、ある意味で当然と言えよう。
―――あぁ、喧騒もなければ不穏な影もないのだから、眠りに付くにはとても良い加減だ。
辺り一面を見渡せど暗闇と森が広がるだけで、何処までも殺風景な場所なのだが、森の入口にはこの時代では当たり前となるだろう、木で仮設された小屋が唯一存在した。
今はそこで、幽香が静かな寝息を立てている。
「あら、せっかくの再会なのだからと、お互いつもる話しでもゆっくりしたいと思ったのは、私だけなのかしら?」
向かい合って立つ紫はクスリと笑い、私の顔を見上げた。
「ふむ、それも確かに悪くはないが・・・」
頷きながらも肩を揺らして、私は紫の視線と目合わせた。
すぐ正面に立ち、こちらを楽しそうに見上げる紫と、それを見下ろすように立つ私。
互いの距離は近く、こちらから彼女へと手を伸ばせば、容易に触れることが出来るだろう距離。
そして、それは彼女からしても同じだと言える。
「確かにつもる話しはあるだろう・・・だがこの場合、先ずは説明が必要なのだと、君は思わないかね?」
「貴方ってヒトは・・・つくづく女心の分からない男なのね?」
私の言葉に紫は呆れ顔を造ると、心底と疲れた様子で言った。
「それはすまない・・・しかし紫、生憎と私は男なのでな?女心が分からなくとも、それは仕方がないと言うものだ」
それに娘の女心を理解するのは、男親として反則な気がする。
「・・・」
「・・・分かった、私が悪かった。だからお願いだ、そんな目で私を見ないでくれ」
「分かってくれたのなら、それでよろしいのですわ」
澄まし顔で言って、紫は私の手を掴む。
「急に私の手を掴んで、どうしたのだ?」
「別にどうって訳ではないですわ・・・ただ、立ち話もなんだから座りましょうかとね?」
私の言葉に紫は柔らかな笑みを浮かべると、手を引きながらゆっくりと歩き出した。
「待て紫・・・君に手を引かれなくとも、私は自分で歩けるぞ?」
「ふふふ・・・いいえ、これでいいのよ」
何がそんなに楽しいのか、紫は私の手をより力強く引きながら、顔に浮かべた笑みを深めた。
「さぁ、ここに座ってくださいな」
「いや、座ってくださいなと言われてもだな・・・」
手を引かれ先導された場所を見てみれば、まだ切断されてから幾日も経ってはいない、真新しい切り株が二つ並んでいた。
「ところで紫、君は座らないのか?」
自身が指定した場所に到着したと言うのに今だ立ち続ける紫を不思議に思い、私は切り株を見下ろしながら聞いた。
「えぇ、もちろん座りますわよ?でも先ずは、貴方が先でいいの・・・だから早く座ってちょうだい」
グイグイと私の手を強く引きながら、紫は切り株をぽんぽんと叩く。
「まてまて・・・分かった、分かったからそんなに強引に引っ張るな」
やれやれと頭を振りながらも、私は切り株に腰を下ろした。
「まったく、君はいったい何がしたいのか・・・って、少し待て紫?」
愚痴をこぼすと同時に、膝の上には少しの温もりとわずかな重みが加わった。
「あら、何かしら?」
その返事は、互いの息いきづかいが聞こえるほど近い距離から、とても眩しい笑顔で返された。
「いや、『何かしら?』ではなくてだな・・・何故に君は、私の膝の上に腰を下ろすのだ?」
「何故って、ここは昔から私の特等席ですもの・・・何処かの誰かに取らちゃう前に、ちゃんと唾を付けておかなくちゃね?」
まるでそれが当たり前の行為なのだと、優越感と達成感で満ち足りた表情で私にそう言うと、紫は満足げに笑みを深めた。
「いやいや、だから待て。とても残念なのだが、君が何を言いたいのか私には良く分からない・・・っと言うか紫、私の膝の上はいつの間に君の特等席になったのだ?」
疑問形で応えた紫に、私は少しだけ頭痛を覚えた。
「だいたいの話しこんなつまらない男の膝上などを、いったい誰が取ると言うのだね?」
「貴方には分からなくとも、私にはちゃんとした理由がありますのよ?」
「ほう、君にはちゃんと理由が存在するのか・・・では聞くが、その理由とはなんだね?」
「それは・・・ヒ・ミ・ツ、ですわ」
言うや紫は片目を閉じて、チッチッと舌を鳴らしながら指を振った。
「・・・」
指を左右に揺らしながらおどけて言う紫に、私は無言でジト目を向ける。
「まぁ嫌だ・・・そんな冷たい目で、私を見ないでくださる?」
「・・・嫌なら早く退きたまえ」
私はジト目を向けたまま、冷めた口調で言った。
すると・・・
「ふぅ・・・ほんと、ここは落ち着くわね・・・」
ため息を一つこぼしては、紫は私から視線を外して、まるで何も聞いていなかったかのような表情で夜空を見上げた。
「いきなりため息など吐いて、どうしたのだね?」
「別にどうもしないわよ・・・ただ、久しぶりに落ち着けたなって、そう思ったの・・・」
そう言って紫は、私の胸にその華奢な背中を預けると、
「それに、おっきくてすごく温かいなぁ・・・」
幼い頃を思い出させる舌ったらずな口調で、蚊の鳴くようなとても小さな声で呟いた。
「・・・そうか」
紫の呟きに応える言葉が何も浮かばず、私はただ相を打つことしか出来ない。
あまりにも弱々しいと・・・とても危うい背中を預けられたと、不覚にも思えてしまったから。
「ねぇ、エミヤ・・・私が貴方の下から巣立って、ずいぶんと経ったわよね?」
夜空を見上げたまま、紫は静かに語る。
「十年、いえ二十年は経ったかしらね・・・時間なんてものは、言葉にしたらたかが二十年だけど、私からしたらされど二十もの年月なのよ・・・この意味、貴方には分かるかしら?」
「・・・時間の経過と呼ぶものは、個人個々によって受け取る意味が異なる。だからどんな年月であれ、長くもあり短くもあるのかもしれない・・・しかしだ、君が私に求めているのは、こんな能書きではないのだろ?」
「・・・貴方、相変わらず嫌な性格をしてるのね?」
顔を向けずに返されたその言葉は、不思議と嫌味には聞こえない。
「む、嫌な性格と言われてもな・・・私は君の言葉を解釈したままに応えただけなのだが、何処か気に障ったかね?」
「気に障った訳ではないけれど、もっと素直に言えばいいのにと、私は思うわね・・・でも、それがエミヤらしくて嬉しいわ」
「嬉しいか・・・残念ながら、それが私らしいと言われても、自分では良く分からんな・・・」
密着した体から伝わる温かさに、私は微笑みながら言う。
「それでだ、君が一人で過ごしたと言うたかだか二十年されど二十年のあいだに、いったい何があったのだね?」
「ふふふ・・・最初から素直にそう言えばいいのよ」
紫は嬉しそうに笑うと、体を揺らして足を振った。
「小さな頃から貴方に護られて、私は汚れを知らずに大人になったわ・・・けど、それは体が成長しただけだったのよね?」
「ふむ、体だけが成長か・・・君が述べているのが心は未発達と言う意味なら、それはどうだろうか?」
「あら、違うのかしら?」
「いや、決して違くはないだろう・・・だが、同時に正しくもないのだろうと、矛盾したことを私は思うんだ」
自分でも良く分からない気持ちを、私は自問しながらも伝える。
「これは個人的な解釈なのだが、心の成長とは一定の段階や特定の年齢で止まるものだと考えられる」
一つ二つと記憶を掘り返しては、肩を揺らして紫の頭を撫でた。
誰が最初に言ったのかは分からないが、男子は十代の半ばから後半に向かう境目で、精神年齢が固定されると言う解釈がある。
だが不思議なことに、女子は男子と違い十代を過ぎても精神が成長を続け、成熟までに長い期間を要するとも言われている。
何故、性別によってそのような違いが生じるのかと考えてみれど、残念ながら私には分からない。
しかし、これは人間を対象にした話しであって、妖怪である紫を対象にはしていない。
ならば人間と妖怪の違いに、心身の成長はどう関係してくるのだろうか?
体の成長が人間と違うのかどうかは、今さら深く悩むほどではなく、かつての紫を思い出すだけだ。
だが、紫の心はどう成長したのだろう?
人間よりも長い時間を生きること、それがイコールで余裕を持った成長をするとしたら、紫の心はまだ少女のままかもしれない。
そして、今は夢を観ているだろう幽香。
あの少女がこれから先、紫と同じ過程を歩むかどうか・・・分かりもしない先のことなど、この場で考えるだけ無意味だろうか?
今はまだ汚れを知らない心に、汚れのない環境だけを与え続けることは、不可能なのだろうか?
そもそも心の成長とは、本来はなんだろうか?
肉体は成熟を迎えた紫と、これから大人になる幽香。
二人の歩みを見守ることで、私の心はどう変化していくのだろうか?
「なのに我々は日夜つれづれなる時を過ごし、時には戸惑い歎く・・・そして、成長を終えたはずの感情が膨れては縮んだりを、忙しなく繰り返す。私達はその度、無意識にそれは何故なのだろうかと考え、また新たな悩みをその心に宿す」
自身の心に向けると同時に紫へと告げられた言葉は、実に不毛な自問と自答の応酬。
「未熟さとは可能性だろうか・・・また、可能性とは成長なのだろか。自身にすら分かりもしない葛藤と、いずれ君が迎えるだろう心の成熟は、今の君が望むべき在り方なのだろうか・・・」
長々と言いながらも、首を傾げたくなる言葉。
―――これは、なんと言う支離滅裂だろうか・・・
噛み合わせの悪い歯車が音を響かせ、ギチギチと軋むような単語の羅列。
言葉が言葉と呼べる意味を持つのなら、私の口から出たこの言葉は言葉に在らず。
意味もなく単調に詠まれ、ただ無意味に綴られた不協和音。
西洋音楽に例えるならばなおのこと悲惨で、基本とする自然的短音階を持たず、実際に奏でるべき旋律的短音階と和声的短音階も存在しない酷く空虚な音が、ただリズムを持って口からこぼれるだけ。
―――だが、言わずにはいられない。
「明日の行方など、向かう先など決して見えない。だから何度も悩んで・・・悩んで悩んで悩み抜け。きっと、それだけが答えだ」
この言葉は何も紫だけではなく、私自身にも当てはまるのだろう。
そして、今だ幼い幽香やまだ見ぬ誰か、はては生涯出会うことのない誰しもにも、この言葉は当てはまるのだろう。
「何度も悩め、ね・・・それしかないのは分かってたけれど、改めて言われると嫌になるわね」
「確かに、嫌になるのも仕方ないのだろう・・・だが、君には己を貫いて欲しい。本来ならば誰もが挫折する道程を、様々な苦楽を噛み締めながら自分こそが未来の担い手だと、君らしく誇らしげに歩み続けて欲しい」
「・・・うん」
紫は子供っぽい口調で応えると、コクリと小さく頷き、私の胸に頭を乗せた。
「だが紫、これだけはずっと承知していて欲しい・・・」
どうしても言わなきゃならない・・・いや、伝えたい言葉があった。
だから私は、胸に乗った紫の頭を優しく撫でながら、ありのままに告げた。
「例え体が離れていようと、私は君を一人にはしないと言うことを・・・これから君が踏み出す歩みが、如何に苦渋の道程であろうと関係はない。そこに差し掛かった時、君の有様が優秀さなどは皆無であろうとも、私は君らしい不完全さを見守ることを約束する。だから紫、これからもずっと君らしい君を見続ける為に、私は君の後ろに居続けるつもりだ・・・私と言う存在を君に押し付けるつもりはないが、この言葉を忘れずにいてくれたら嬉しい」
「・・・」
その言葉に紫は振り返ると、キョトンとした表情で私を見上げ、
「ごめんねエミヤ・・・すごく嬉しいけど、私はそんなの絶対に嫌よ」
笑いながら首を横に振った。
「むぅ・・・い、嫌なのかね?」
勝手な言葉だとは分かっていたが、こうもハッキリと拒絶されると、少しだけショックだ。
「えぇ、嫌ですわ・・・だってそれじゃあ、私達は対等ではないんですもの」
「対等ではないとは・・・それはいったい何処が?」
「何処って・・・貴方が私の後ろなんて、申し訳ないけどお断りですわね」
「・・・成る程」
拒絶は拒絶でも、その理由は何も私が嫌な訳ではないようだ。
「後ろ立たれるのがお断りなのは良く分かった・・・では紫、君にとって私はどう言った立ち位置が理想だね?」
多少なりだが、紫の言葉に心が軽くなった私は、その真意を聞いてみた。
「貴方と言うより、私達が理想とする在り方ね・・・えぇ、そんなの考えるまでもないわ」
ポンと手を一度だけ叩くと、当然だと言わんばかりの表情で紫は私に応えた。
「どうせなら私達は、共に歩まなきゃつまらないですわ」
「・・・共になのか?」
「えぇ、共に二人で歩んで行くのよ?」
「そうか、二人で歩むのか・・・あぁ、確かにそれが理想的だ」
何かを心に抱き合い、共に支え合いながら歩む旅路は、確かに理想と言えよう。
「しかし、その場合は幽香の存在を忘れられては困る。それと、一つの問題があるのだが・・・君達が将来的に生涯の伴侶を得た場合、その距離感だと私はともかくとして、相手側からしたら少しやりづらい関係になるぞ?」
「あら大変、もうこんな時間だわ・・・夜更かしはお肌に悪いから、早く寝なくちゃ駄目よね?」
言うや紫は手を叩き、私の膝上で猫のように丸くなると、
「そんな訳ですので、これでお休みなさい」
そう言って、素早く目を閉じた。
「・・・」
オ、オイオイ・・・何故、いきなり会話を切る?
「・・・って、少し待て紫。何故に君は、いきなり寝ようとする?」
それに、まだ話しは本題に入っていないぞ?
このまま勝手に寝てもらっては、些か困ると言うものだ。
「・・・」
「こらこら、私の話しを聞いてるのか紫?まだ話しは終わっていない・・・いや、始まってないのだぞ?それよりもせめて、寝るのは自分の寝所に戻ってからにしたまえ。こら八雲紫よ、人の話しを聞いているのか?」
肩を揺すれど反応はなく、手や頬を軽く叩けど目を一向に開こうとしない紫に、私は何度も声を掛けるのだが、紫はなんの反応もせず狸寝入りを続ける。
っと、
「・・・すぅ、すぅ」
そんな私を尻目に、紫の口からは次第に寝息が聞こえ始め、狸寝息は空寝から本当の眠りに変わった。
「あぁ、頼む紫・・・もう寝ても構わないから、せめて場所を選んで寝てくれ・・・」
まだ幼い幽香とは明らかに違う紫の温もりと柔らかな感触に、理由は何故だか分からないのだが『私がこの娘の親ではなかったら、きっと今頃は大変なことになっていた』と、少しだけ心配な気持ちになった。
―――年頃の娘を持つ男親は皆、娘の無防備さに悩むのだろうか・・・
そんな、実にくだらないことを考えながら、今宵の夜は更けていった・・・
★
静寂の夜は明け、眩しい太陽が空に昇った―――
朝日と共に紫が目を覚まし、やっと体の自由を取り戻した私は、幽香を起こしに小屋の中へと入る。
するとそこには、私の外套に包まりながら眠る少女の姿はなく、部屋の隅っこで膝を抱えては入り口に立った私を睨む・・・赤い外套を纏った小さな悪魔が存在した。
「・・・もう朝か」
幽香と紫を両脇に『朝日は罪なものだ』と、私は目を擦りながら晴れ渡る空を見上げて、深く深く思った。
―――昨日の夜から、実に踏んだり蹴ったりだ・・・
まさに青天白日と呼べる天気も、私の心までは白日の下に照らしてはくれないようだ。
何があったのかは詳しく言わないが、朝から酷い目にあった。
それもこれも、全てが紫のせいだと言える。
幽香の逆鱗に触れたのも・・・その結果として、ポカポカと叩かれながら『嫌い』を連呼されたのも全て、紫がことの発端なのだと言えるだろう。
しかもその後、幽香の機嫌を取るのにどれだけの労力を要したか・・・
―――クソ、こればかりは恨むぞ・・・
っと、
「疲れた顔なんかして、どうかしたのかしら?」
脇に立つことの発端(紫)が、私の隣で膨れる幽香を横目に済ました顔で言う。
「どうかしたのではないぞ紫・・・これは君のせいだろ?」
さらに言えば、紫が膝上を占領して朝まで寝ていたおかげで、私は寝ることが出来なかった。
確かに人外の私に、睡眠はあまり必要ないと言えよう。
だが、当たり前に存在する疲れがある。
それは精神の疲れ・・・肉体的な疲れとは違い、心は無休ではいけない。
感情とは日々浮き沈みを繰り返し、毎日が苦悩の連鎖だ。
ならばこそ肉体の安らぎとは別に、心の安らぎを得るための睡眠と休息は必要不可欠。
つまり何が言いたいのかと言えば、長いこと紫を抱いていたことに、酷い気疲れを覚えた。
「あら、そうなの?」
初耳だと言いたげな顔で、紫は首を傾げた。
「・・・まぁいい」
紫の表情に私はただ飽きれ、隣でオドオドする幽香の頭を撫でる。
「さて幽香、こんなふざけた大人は忘れることにして、せっかくだから朝食でも食べるかね?」
「ねぇ、お父さん・・・」
幽香は私の外套を握りながら、不安げな顔で聞いてきた。
「ここ、何処なの?」
「あぁ、それは・・・」
幽香の質問に答えることが出来ない私は、無言で紫へと目配せをする。
「えぇ、もちろんお答えしますわ・・・」
私の視線に紫は得意げに胸を張ると、
「じゃあ、着いてきてちょうだい」
そう言って、森の一角へと歩き出した。
「ふむ・・・」
次第に遠退く紫の背中を少しのあいだ眺めた後、私は幽香へと目を向ける。
「さて幽香、どうやら紫が状況説明をしてくれるようだ・・・あぁ、それでなのだが、私は彼女に着いて行こうと思う。君には寝起きのところをすまないとは思うが、私と一緒に彼女に着いて行かないか?」
「・・・うん。お父さんが行くなら、私も一緒に行く」
幽香はハッキリとした声で応え、私の手を強く握った。
「そうか、では一緒に行こう」
だんだんと小さくなる紫の後ろ姿を、私は幽香の手を引きながら早足に追う。
空は晴れ渡り天候は良好。
わずかに吹く風は乾燥していて、この場に気持ちの良いそよ風を贈る。
―――これから先、私達はこの目に何を見るのか・・・
さわさわと揺れる枝と風に香る緑を全身に感じながら、私は心の内でそう呟いては息を大きく吸い込み、幽香の手を引いて森の中へと進んでいった・・・
16歳の風見さん・・・何故かしらんが、『世話好きな幼なじみ』と変換される。

こんな表情で、『まったく貴方って男は』って言ってもらえるように頑張ろう。
・・・いい大人が、何をやってるんだろう・・・
+注意+
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