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どうして毎回毎回おなじ私がうまれるんだろう。

久しぶりに早起きしたと思ったら、もう遥花が家の前に立っていた。

もう、ずっとずっと前の話。
前の日の思い出

 夏が終わって少し肌寒くなりはじめた、そんな季節。


放っておいてほしいと願うのに、それでも扉からうっすら分かる遥花のが着ている藍色がぼやりとみえて安心する私。

「おはよう佐一」

そっと戸を引くと、遥花の肩が見えたと同じ時に遥花の緑茶みたいな声が聞こえた。
深くしみる声。

「お、は、よう」

どうして朝からそんなに笑えるんだろうって思うけれど、もしかしたら私がこんな性格だから、頑張って笑ってくれてるのかもっておもったら、申し訳なくなって肩よりも上を見れなくなった。


「あがってもいい?」
答えを返す前に、遥花はもう履物を脱ぎ始めていた。

「あ」

履物に目を落とすと、足の指に付いている細かい泥が気になった。
地面に着物がつかないように気をつけてしゃがんで、遥花についた足の泥に触ろうとした。

「触らないで」

触れそうだった左足を半歩下げてそれだけ言うと遥花は一度外に出て、ぱしゃぱしゃと音が聞こえたと思ったら、足がきれいになっていた。

「 きれいになったね」
触ってほしくなかったのかな、でも泥が付いてるんだから拭っても怒らないはずだよね。
内心びくびくしながら立ち上がって、さっと遥花から隠れるように家の中に入った。


この間遥花が作ってくれた机が部屋の真ん中に置いてある。それ以外にあるのは、早瀬が作ってくれたもの、買ってくれたもの。自分で買ったものも、選んだものも、何一つない、部屋。

「足をね」

「 はきもの、濡れてたね。」

触ってほしくなかったわけじゃないって、言ってくれようとしてるって、分かった。

「佐一、足をね、」

「遥花、触らないでって、言おうとしたんじゃないって、わたしちゃんと、分かってる」

遥花は、私がちゃんと誤解してないって分かるまで、言うと思った。
ちゃんとわかってるよ。

「佐一、そうじゃなくて」

「   触っちゃいやだった?」

思っていたことが違うって言われて、なんだろうって、胸がぎゅってなった。


「佐一。他の人の足に、触らないで。僕以外の誰も。」


僕以外って、ことは、遥花の足は触ってもいいってことだから、泥を拭ってもよかったのかな。


「足、触ったら、気持ち悪い、かな」

「佐一が、すき」

「      」

「佐一が、すき。だから、嫌じゃないし、触ってくれたら嬉しい。でも、遥花の手が汚れるのは駄目。でも、泥拭ってくれようとして、今、めちゃくちゃうれしかったからやっぱり拭ってもらえばよかったかもって、思ってる。」

遥花は私のことが嫌いじゃなくて、足も触っても良くて、でも手が汚れちゃだめで、でも拭ったら喜んでくれるはずで、でも今は足は綺麗、あれ。

ふいに遥花は、すたすた外に出ていき、さっきとは別の綺麗な布を持って戻ってきた。

「ん。お願いします」


ささっと差し出された布と、綺麗な足が目に入って、そのまま隣の部屋までとたっと走って戸を閉めた。



顔が赤いのを、見られちゃだめなんだって、知ってたから。



綺麗な布で綺麗な足を拭ったら、私のけがれが付いてしまうって分かった。


他の人の血で血まみれのはずの手なのに、今はこうして白いまま。

補色残像で緑になった血が、目の前を覆い尽くす。

顔の赤さが引いても、手に付いた真っ赤で緑の血は、永遠に消えない。






戸のすぐ前で、しゃがんで出てくるのを待っててくれる遥花は、私に、何を求めてるんだろう。

ぱたぱたと戸に当たる雨が、はやく止んで、泥もはねなくなって、遥花が早く私のもとからいなくなればいいと思った。


















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