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エルフの惑星 -Planet of the Elves- 作者:霧瀬ミツル
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#1-1 妹

-西暦2045年


 ガタガタン・・・・ゴトンガタンゴトン・・・・

 速見晶こと晶は、夕方の人が疎らな揺れる電車に乗り、流れる窓の風景を眺めながら黄昏てた。

 『・・・・・・・・・・・』

 今日も、唯一の肉親にして病弱な妹のお見舞いに中央の大きな病院に通っていた。
 妹の速見舞こと舞は数千万人一人の割合で発症する体が硬化する難病に苦しんでいる、担当医の説明では遅くても半年後には全身の硬化が進み臓器不全に陥るとのこと。
 そこで担当医は妹を冷凍睡眠を受けるよう薦めてきた、いまの医療技術では治療できなくとも遠い未来の医療技術で,妹は助かるかもしれないと説明を受けた。

 自分が生きてる間2度と妹に会えないとしても・・・、もし未来で妹がまた元気な姿で生を謳歌できる可能性があると言うのなら・・・。

 俺はその提案に署名をした、妹はもちろん猛反対し、動き辛い体でわんわん泣いてたが、それをなんとか舞を説得し、現在帰路についてる。

 『・・・・・・・・・・・』

 明日担当医との冷凍時期の打ち合わせもあることを考えると憂鬱だ。

 『・・・・・・・・・・舞』


 『では次のニュースです、巷で現在注目されてる四ッ菱重工開発の新世代思考生体アンドロイド エルフ のお披露会の中継の様子です』

 電車のアナウンステレビでは最近世間を賑わせてるアンドロイドのが映像写し出されている、映像に出てるアンドロイドと紹介されたビジネススーツを着た女性は、耳が長いこと以外はどこからどう見ても人間のそれだった、
 記者からの質問も流暢に受け答えが出来、SF作品でよく言われるロボットの不気味の谷というものをまったく感じさせない自然さだ。
 技術の進化もここまで進んでるのだと素直に関心したしまった、このような科学の進歩を身近に実感してると、あながち未来の技術で舞を治療するが不可能じゃないような気がしてくる。


  ピピンピピポン♪


 『ん?』

 突然スマフォの着信が鳴った、発信者は妹の舞だ。

 『なんだマ・・・』
 『お兄ちゃん!私まだ納得してないんだから!』
 『お前また看護士に無茶言って電話掛けさせてもらったのか、それにその話はさっきしただろ、俺はお前のこと思って・・・』
 『うぅうわかってるよ!でもぉ・・・でもぉ!うぅうう!お兄ちゃん・・・!』
 『泣くな、また顔が痛くなるだろ・・・』
 『痛いよ!顔がすごく痛いよ!でもっ!でもっ!』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 やっぱり冷凍睡眠に署名したことに納得してない舞が、電話越しで硬化症の痛みに耐えながら泣いてるのが判る
 『・・・・・・私が治っても、・・・お兄ちゃんはもう居ないかもしれないんだよ・・・』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・舞』
 『私・・・お兄ちゃんの負担になってるのは判ってる・・・でも・・・お兄ちゃんにもう逢えないの・・・私、嫌だよ・・・だから私死んでも構わないよ!』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 母親は妹の舞を出産時に命を落とした、父親は仕事中の事故で帰らぬ人となった。
 二人で親戚の家を転々としてたが、妹が病気を発症してから治療費のため俺は高校を中退し働き始め、妹の介護もしてた、そのことに妹はずっと気にしてたのも知ってる。
 それでも舞は血を分けた、たった一人の肉親だから、苦を感じたことを一度たりとてない。

 『バカ言うな、負担とかお前が考えることじゃない、それにもしかしたらたった数年で硬化症の治療技術ができるかもしれないだろ、』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・お兄ちゃん』
 『それに知ってるか、なんでも最近はアンドロイドとかも出始めてるらしいぞ、なんでも《エルフ》て呼ばれてるらしい、お前が完治して戻ってきたらさ、エルフを雇って、休日は家事洗濯全部任せて、お前の大好きな動物園つれてってやるからさ!だから、それまですこしだけ寝てればいいんだ、なぁ舞・・・』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 希望的観測を語ってるのは判ってる、それでも妹には希望を持って欲しかった。

 『・・・・・・お兄ちゃん』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
 『お兄ちゃん・・・ほんとにそれでいいの?』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 いいわけがない、唯一の肉親にもう逢える保障がないんだ。
 それでも俺は、妹には生きてもっと幸せな人生を歩んでいて欲しい・・・。

 『私ね・・・兄ちゃんに言いたかったことあるんだ』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだ?』
 『私兄ちゃんの事ずっと・・・・・・・・・・・・』
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん』

 妹の言葉を遮るように何か巨大な音が電車内を響かせる

 ギギギギギッッギギギッギギギ
 ガシャガシャギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ


 『?!』

 鳴り響く耳障りな音。
 歪む視界。
 閃光と火花。
 窓のガラスが割れ。
 空間が捩じれて。



 気付いたら闇。


 『お兄ちゃん!どうしたの!?何があったの?!大きな音が』
 『カハッ――――カハ』
 『お兄ちゃん!お兄ちゃん!!!』

 舞・・・そんな大声を出すんじゃない、硬化症で大声出すと顔の筋肉が痛むんだろ。

 『カハッ   スハ・・・カハ・・・』

 何かを喋ろうにも肺にガラスが刺さって上手く喋れないし、恐らく脱線して対向車線の電車にぶつかったであろう電車の変形した装甲が下半身を押し潰してる、あらぬ方向に曲げられた腕に握られたスマフォから妹の叫びが聞こえる。

 『お兄ちゃん!・・・ちゃんっ!・・・・・!・・・・・・・・・・・・』

 電話越しで妹の声が遠のく・・・意識が落ちていく・・・。



---



 『ちゃんっ!』


 妹の声がした。


 『お兄ちゃん!!』



 朦朧となった意識の中微かに見えた、何人もの白衣に囲まれた中、妹の舞が隣で俺に呼びかけてる・・・そうか、同じ病院に運ばれたのか・・・。

 『お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!』

 だから、そう叫ぶな、顔痛くないのか?舞。
 『速見さん、どうしますか?細胞の壊死が始まります、もう猶予がありません早めにご決断を・・・』

 手術医の一人が何か舞に説明をしてる、そして舞が何かの書類にサインと拇印を押してるのが見えた。

 『カハ――スハッ――カハッ――――スッ』

 なんだ?舞・・・何に署名したんだ?。
 喋ろうにも肺から空気が、声が出ない。


 舞・・・舞・・・舞・・・。



 何かを注射された感覚。
 体が凍りつく感覚。
 そして意識が落ちていく感覚。


 意識が落ちる瞬間聞こえた妹の声。



 『お兄ちゃん・・・遠い未来で・・・また逢えるよね?』




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