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想い道
作:永富 予受子



第15話 賢治が来た理由


「で、何で賢治が来たのか知りたいんだけど」
 夕飯も半ば食べ終えた頃、やっと本題に入った。口火を切ったのは正人で、賢治がここにいる事は幸と卑硫も知りたい事だった。
「その前に昼間の事、聞きたいんやけど」
 麦茶を飲むと、賢治は聞き返す。
「何で?」
「連が妙にしんみりしとったけん」
 それは答えなのだろうか、と疑問視したのは卑硫。
「連に何処まで聞いたんだよ?」
「つい最近目が覚めたばかりの奴に、もう次が襲うものなのか。と私達の知らない所で何か動いているような気がする」
 賢治の言葉に正人は眉間にしわを寄せた。
「はい?」
「俺はそれしか聞いとらん。いらん事、気利かせてオムライス食べさせたけん、その後いつもの調子になって何も話してくれんかった。けど、来るには充分な理由やろ。話によっては、俺も動かんないかんやろうし…。何を心配しとるかは分らんけど、連が言うと当たるけん気になったん」
 気になったから来た、ただそれだけの理由。それで簡単に来れるあたり、やはり彼は妖である事を証明していた。
 仕方なしに正人は今回の事を一から、この場にいる幸と卑硫に話す事も含めて、出来るだけ詳しく賢治に教えた。
「ふーん。話は分かった。分かったけど、それ、今回が終わっても次があるっち事になるんやないと?」
 恐らく、連が気にしていたのはその事だったのだろうと賢治は思った。知らない所で動いていると言ったのは、連ですら霊獣の数を把握していないから。そして、神話の事を考えると霊獣だけで終わるのだろうかと、懸念しているせいもある筈。神話は霊獣の番人だけで終わりではない。続きがあるが、正人には教えていない為、それ以上言うのは連も賢治も自然と避けてしまっていた。言うべきか、言わざるべきか…。言えば混乱を招きそうな気がする。今は霊獣の事が先決だろう。
「あると思う」
 短く答えて、正人はそのまま黙ってしまった。
 賢治に言われて、考えざるを得ない。何が起こっているのか、それは何の理由があるのか、そして何がどう動いているのか。
「分かった。二〜三日の内に福岡の家は引き払ってくるけん、それまで待っとって」
「ちょっと待って、賢ちゃん。学校どうすんの?」
 賢治の言葉に驚いて聞き返したのは幸。
「辞めるよ。戸籍も一度消さんないけんね。そのままやったら住民票、移したりせんなやけん面倒やし」
 聞き返されて、賢治はあっさりと答えた。
「消して後はどうするんです?それに、こちらで住む場所も必要でしょうし、どこかで働かないと生活も出来ないでしょう」
 今度は卑硫が聞き返す。
「住むのはほら、隣で黙り込んどるけど、正人のとこ部屋空いとるし、働くところもこっちに知り合いがおるけん、そっちに頼む」
 頼むのはいいが、何の仕事なのだろうかと思う卑硫である。
「賢ちゃん…」
「幸の家やないよ。前、こっちに住んどった時に、住む場所を提供してくれた人。その代りこっちは依頼を受けて、っち言う事をしよったんやけどね」
 それは、つまり妖である彼だから出来る依頼であると言う事で…。
「妖怪退治とか言わないで下さいよ」
 卑硫が突っ込むと、賢治はにこぉっと笑みを見せた。
「さすが千葉君やね。それに近い事しとった」
「賢ちゃん…やっぱり変…」
 溜息混じりに幸が呟いた。それを他所に賢治は正人を見る。
「そーゆー事なんで、よろしく」
「へ?あ、あぁ」
 全く聞いていなかったせいか、生返事を返していた正人だった。












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