やることリスト
昨日は更新できずすみませんでした。
翌朝。
二日酔いで痛む頭を抱えながら朝食をご馳走になった。
頭痛はあったものの、気分は悪くない。やるべき『仕事』ができたことで身体の奥から活力が沸いてくるような気すらする。そういう会社員根性には嫌気がさしていたはずなのだが。
モーラが甲斐甲斐しく給仕をしてくれたが、イルドはその場に居なかった。
何組もの隊商を束ねる商人として、早朝から様々な仕事があるらしい。昨夜、あれだけ飲みまくったくせに元気だな……。
「それだけじゃなくって、朝からあちこちからお客もきてて……」
と、モーラは不審な顔をしていた。
まあ丁度良い。食事をしながら、頭の中身を整理しよう。
まず、私は暗鬼から人々を守りたい。
戦争や貧困など、確かにこのこの世界にもたくさんの不幸は存在する。それら全てを解決できると思うほど傲慢ではない。
だが、暗鬼。あれだけはダメだ。
直に暗鬼を見て、戦ったから分かる。あれは、自然の摂理とかそういう存在ではない。私のようなイレギュラーな存在を使ってでも、排除すべき『邪悪』だ。
ではそのためにどうするか。
暗鬼はいつどこに出現するか分からないので対策が非常に難しい。十分な戦力を維持したくても、資金が足りないのだ。騎士に払う給料の心配をしていたカルバネラ騎士団を見れば良く分かる。
対応策は大きく二つあるかも知れない。
一つは、各国が暗鬼の情報を共有し、有事には共同で戦える軍事同盟を作り上げること。もう一つは、国や勢力の垣根を越えて対暗鬼のために戦える組織を立ち上げることだ。
各国の暗鬼対策にも協力するべきだろう。私が直接戦えれば、だいたいどんな暗鬼にも勝てるとは思うが、私はあちこちに同時に存在することはできない。子供を兵士にする『魔術兵』は論外だが、私の技能や魔法を使って各国軍の戦力向上を手伝っても良い。
頭の中のメモに『対暗鬼軍事同盟の設立』『対暗鬼組織の設立』と、二つの大目標を記す。
続いて、『各国と交渉するために発言力を強化する』『スタッフを集める』……と、この大目標を達成するために必要な要素を書き出していく。
こうして並べてみると、実に……大事だな。
「むう……。拠点でマジックアイテムの開発もできるようにしないとな……」
「ジオさん、全然味わってないですよね?」
私が無意識に焼きたての黒パンを齧っていると、モーラが口を『へ』の字に曲げて睨んでいた。
朝食を食べ終わり、先にでかけようか……と思っていたら、イルドがやってきた。
「魔法使い様、昨夜は失礼いたしました。何か、ご用事ですとか?」
昨夜の醜態は影も形もない。
「すまないが、昨日の話に加えて、さらに頼みたいことができたのだが……」
「どんなことでも、仰ってください」
真剣そのものの顔で即答してくれた。
「貴方の人脈の範囲内で、もっとも評議会に近い人物と面会させてもらいたいんだ」
「それは……何のための面会でしょうか?」
イルドは顔をしかめて聞いてきた。む、少し難しい頼みだったか?
「レリス市の暗鬼対策について話を聞きたい。もちろん、必要なら私の力を貸すためだ」
当たり障りのない範囲で説明すると、イルドは一転して明るい顔でいった。
「そうでしたか! いえ、実は今朝からひっきりなしに使者がきていたのですよ」
「使者?」
「ええ、魔法使い様が我が家にお泊りになっていることを嗅ぎつけたのでしょうね。各ギルドや貴族、神殿……貴方にご挨拶したいから仲介してくれという内容ばかりです」
ありゃ、そうだったのか。悪いことをしたが、好都合ではあるな。
「それは面倒をかけたな。それでその中に……」
「ご心配なく、真っ先に使者を送ってきたのは商人ギルドの長にして評議長のブラウズさんですから。さっそく、彼との面会の日程を調整しておきます」
「そ、そうか。では、よろしく頼む。助かるよ」
「とんでもない! 娘の大恩人のためです。それに、今のお話を聞いてはレリス市民として協力しないわけにはいきませんよ」
「期待に応えられるよう努力しよう。ああ、それと……メモができる紙ももらえないか?」
今回の更新用に4000字前後書いたのですが、内容的にどうしても分割した方が良いと判断したため、二回に分けて更新します。