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ジーテイアス城 中期その3

 帰還したイルドとセダムは、予定通り多数の人材を獲得してきてくれた。


 まずは兵士。

 前回同様、募集をかけたところ多数の応募があり、百二十名を採用している。


 これで、ジーテイアス城の戦力はかなり強化されたはずだ。

 もとからいる兵士が三十三名。シュルズ族の戦士が五十名。戦族戦士は十名。もと賊徒が十三名。

 編成はこれから考えなければならないが、各村と街道の巡回任務にも余裕が出るだろう。


 なお、今回の賊徒の襲撃事件の反省から、森の中に巡回の拠点となる駐屯地を建設する予定だ。


 兵士も含め、新しく城の仲間になった人々に個別に挨拶をしたかったのだが流石に今回は難しい。

 後で時間を見て、顔と名前だけは一致させておこうと決意しておく。


 兵士たちの世話や城の雑用をこなす使用人は二十名を新たに雇用。


 また、職人と助手も新たに多数雇用している。

 鍛冶師、家具職人、毛織職人、革なめし工、革細工師、パン焼き職人……。多数の人間が生活していく上で必要な職種はおおむねカバーできた。

 しかも、職人たちは自分が所属するギルドから脱退している。

 つまり出向ではなく完全にジーテイアス城に帰属してくれるということだ。


 このあたりの交渉や調整には、イルドが大活躍してくれたらしい。

 職人たちも、安定したギルドでの立場を捨ててジーテイアス城のために家族や助手ごと移住してくれるのだ。ありがたい話である。


 最後に、宿屋を営業するために必要なスタッフ。

 オーナー一名、事務係一名、会計一名、料理人二名、給仕十五名、下働き十名。

 彼らの雇用には、意外なことにセダムが中心になって動いてくれたという。

 というのも。


 「お久しぶりです、魔法使い様」

 「こんにちは!」

 「こ、こんにちはっ」

 「よろしくおねがいしまぁす!」


 セダムが紹介してくれたオーナーは、茶色の髪の美しい女性。

 ぶっちゃけセダムの奥さんだ。

 三人の子供も元気そうで何よりだ、が。


 「あ、ああ。うむ?」


 どういうこと? と目を向けると、セダムは珍しく照れたような笑みを浮かべていった。


 「実はうちのかみさん、前職は酒場の歌い手でな。マスターの一人娘だったから、経営や管理のやり方も心得てる。俺と結婚して店も畳んでいたんだが、ちょうど良いと思ってな」

 「な、なるほど」


 酒場の美人歌姫とイケメン冒険者のカップルか。かっこういいな。別にうらやましくなんかないけどな。

 事務係や会計などのスタッフも、以前奥さんの店で働いていた縁で引き抜いてきたそうだ。


 「しかし子供さんの世話は大丈夫なのか?」


 長男君が六歳くらいか? きゃわきゃわとはしゃいでいる小さな子たちには和まされたが、少し心配になる。


 「子供たちの世話はかみさんの妹に頼むことにしてる。彼女の日当は俺が自分の給料から出すよ。あんたの迷惑にはならないようにするが……」

 「なるほど、それなら大丈夫だな。というか」


 私の表情を誤解したのか、言い訳するように早口になったセダムの肩を抱き寄せる。


 「そんなこと気にするな。君の家族とその仲間ならこれ以上ない人材だろ。だったらお子さんの面倒くらい城で見るさ」

 「……そうか。なら、甘えさせてもらおうか。……ありがとよ」


 礼を言うのはこっちの方だ。

 それにしても、彼一人でなく家族全員も城で預かるとなるとますます責任は重くなるな……。




 「いやあ、なかなか楽しい仕事だったぞ!」

 「世話になった」


 長らくジーテイアス城の拡張工事に尽力してくれた、ドワーフのごつい手をしっかりと握る。

 建築の家ダウロンのヴァルボは、にかっと爽やかな笑みを浮かべた。


 見渡せば、拡張部分『下の中庭』には、まだまだ空き地が多い。

 だが、跳ね橋を備えた城門から続く大通りにそって、宿屋、倉庫、馬屋が並び、商人や隊商を受け入れる用意は整った。兵舎や家畜小屋、職人の工房に住居など城の運用に必要な建物も全て完成している。


 また、もともとの城部分も大幅な改修と増築が終わっていた。

 居住棟は取り壊し、仲間や使用人、そして来客のための立派な城館を建てた。

 私は相変わらず主塔住まいだが、外観は綺麗に整え大きな『導星』の紋章を掲げている。


 「あとは、戦斧郷のトンネルと、フィルサンドまでの街道の整備だけだな。ここまで工期が短縮できるとは思わんかったぞ?」


 残りの工事は戦斧郷とフィルサンドを中心にすすめるので、ヴァルボも城を離れることになっているのだ。

 城から戦斧郷までの街道は、あと一ヶ月ほどで完成するらしい。トンネルは二ヶ月。フィルサンド側の街道整備はさすがにもう少しかかる。

 ちなみに、工費は当初金貨三百五十万枚だったのが、私が呪文で石材や鉄、労働力を提供したことで三百万枚まで削減している。

 このうち、二百万枚はすでに支払っていた。

 残り百万枚については、大量に伐採しまくった材木や労働力としての巨人の貸し出しなどで支払っていくことにしていた。


 「それは、貴方達ドワーフの技術力と熱意あってのことでもあるがね」

 「まあそうだな! しかし……あんたは魔術……魔法使いってことを除いても、面白い御仁だ。人間なのに風呂が好きだったり、やけに技術に詳しいしな」

 「風呂については、今後セディア全体にひろめたいと思っている。是非、協力してくれ」

 「おお、任せておけ!」


 風呂については半ば冗談、半ば本気というところだ。しかしドワーフたちとの協力関係は末永く続けたい。

 そのうちまた、戦斧郷へ挨拶にいくとしよう。




 なお、現在のジーテイアス城の施設をまとめると以下のようになる。

 最初、モーラと二人でこの城を脱出した時には、まさかこうなるとは思わなかったなぁ。



『上の中庭』

主塔メインタワー (三階建て)

 地下1階 倉庫、武器庫、酒蔵

 1階 広間(謁見室、食堂兼)

 2階 司令室 資料室

 3階 寝室、書斎(私室)、宝物庫

 屋上 見張り台、風呂


城館(三階建て)

 個室 十部屋

 使用人用小部屋 二十五部屋

 大部屋 二部屋

 厨房

 大食堂

 小食堂

 食料庫、倉庫(地下)、酒蔵

 寝具、衣服庫


その他敷設

 武具工房

 厩舎

 井戸(洗濯場)

 軽作業場

 錬金工房

 大浴場

 城門、防御塔

 倉庫

 戦族用敷地

 地下牢獄



『下の中庭』

宿屋(酒場併設)

厩舎

倉庫

大浴場


各種工房

住居

兵舎

治療院

薬草園

家畜小屋

菜園

城門(跳ね橋有り)、防御塔、見張り塔


『城外』

練兵場

処刑場


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