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かくれんぼ
作:叶愛夢



第五話、まみこ



「おはようございます」


次の日、私はいつもより早く家を出て保育園に向かった。


そして、長期勤務している先輩保育士に黒原みみこの事を聞いてみる事にした。



以前、三國先生には聞いてみたが知らないみたいだったから四年目以上の保育士を当たってみよう。


いろいろと想定し、職員用ロッカーに向かう。



時計は、まだ9時を指していて私が働く時間にはまだ一時間はある。

そのせいか、まだ他の保育士も来ていなく混み合う更衣室が広く感じた。

遠くから早く来てる子供達と早番保育士の楽しげに笑う声が聞こえて来た。


とりあえず、ジャージに着替えて髪を二つに結わえた。


その直後、更衣室のドアが開き、誰かが入ってきた。
反射的に振り向く。

「あら、白崎先生。早いのね?今日は。」

主任が入ってきて一気に空気が重く息苦しくなる。



「お、おはようございます!」

何故か、緊張してしまう。

「おはよう。」

素っ気ない返事。会話が途絶え気まずい沈黙が漂う。
「私のロッカー奥だから通してもらえる?」

そう言って私の方にやってきた。


私は、すみません。と慌てた口調で端っこに寄った。


「……………」

「……………」

外に出た方がいいのかなと思った。

しかし、何となく席を立ちにくい。


何か、会話をしなきゃと私は頭を働かせ何か良い話題を探した。



「あっ」

意外にもそれは早く呆気なく見つかった。



「主任、つかぬ事をお聞きしますが、うちの保育園に“黒原みみこ”って名前の女の子居ましたか?」



主任はこの保育園の古株だ。きっと何か知っているはず。

私は、直感的にそう思い主任に問い掛けた。


その言葉に、彼女の動きはピタッと止まった。




「あのぉ……?」

反応のない主任に私は覗き込むようにして声を掛ける。


「……ら?」

ポツリッと言葉を落とすが聞き取れず、はい?と聞き返した。


「誰から?その事を?」

主任は険しい表情で私を見据える。

「えっ?…誰からっと言うか……」

まさか、本人から。なんて言えるワケがない。私は曖昧な事を口走ってごまかした。

けれど、主任のこの様子だと何か知っていそうだ。



「……今から、十年前になるのかしら?私がまだ新米保育士の頃……。そんな名前の女の子がいたわ。色白で髪の長い女の子。彼女はかくれんぼが大好きでよく友達と遊んでいたわ。」

主任は静かな口調で語りはじめた。


「けれど、ある日その日もかくれんぼをしていたけどみみこちゃんだけが見つからなくなってしまったの……」



「当時の保育士と警察と一緒に探したけど、結局見つからず……捜査は断念。」


主任は辛そうな表情で語っていた。十年というとても長い歳月を経ても痛みは消える事はないのだろう。


「その一週間後、一家は原因不明の火事で亡くなったわ。私の知っている事はこれくらいよ……。」



一気に胃が重くなった。



この日はずっとみみこちゃんが頭から離れなかった。


けど、見つからなかったって………。


……どうして……?


現にみみこちゃんは自分を見つけて欲しいから私の前に現れたのだ。


なら、何か手掛かりがあるはず。


黒原一家の原因不明の火事も気になった。

私は休憩時間を利用して図書館に向かった。


そこで昔の新聞を読み漁る。
今から十年前の事件。


私は時間が許す限り調べた。



『〇〇年〇月×日都内某所にある保育園で園児一人が行方不明になる事件が起きた。』

新聞の三面にひっそりと書かれた小さな記事が私の目に付いた。

これだ。

私は手を動かすのを止め、せわしなく眼球を動かしその記事を読んだ。



『園児の名前は黒原みみこちゃん。当時、四歳。友達とかくれんぼをして遊んでいたが、いつまで経っても彼女だけが見つからず、不審に感じた園児が保育士に話した。その後みみこちゃんの捜査をしたが三日が経過しても一向に見つからず、捜査を断念した。』

記事を持つ手がガチガチと震える。


『その際、事故直前まで一緒に居た双子の姉まみこちゃん(四歳)はただ泣きじゃくるだけで話しを聞ける状況ではなかった。その一週間後、まみこちゃんと両親も火事で亡くなってしまい、事件は謎に包まれてしまった。』



「まみこ……?」



私は、顔を上げてポツリとそう呟いた。



――…お姉ちゃんに伝えて―……


彼女(みみこ)はそう言っていた。




お姉ちゃんとは、まみこの事なんだ……。

何故か、急に背筋がゾクッとした。

ふと時計に目を向ける。



針は3時50分を示している。


あと10分で休憩時間が終わってしまう。



「いけない!」

私は読み散らかした資料を片付け、図書館を後にした。












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