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18歳8ヶ月で逝ってしまったねこの思い出をつづります。
そのねこは、最高にかわいい容姿と最悪な性格をしていました。

ねこの思い出2「猫手傷をうける」
作:西宮尚


ねこを実際に家猫にしたのは、その前に飼っていたミーちゃんが交通事故で亡くなったためだった。
ミーちゃんは、甘えん坊で人になつっこい猫だった。
そんな猫が突然いなくなってしまった焦燥感から、兄の家の外猫であったねこを連れてきて飼うことにした。
ねこ1歳ぐらいの若い猫だった。
しかし、餌は人からもらうけれども、心は人のものにはならない野生っ気のある強い猫だ。
そんなねこをいきなり家に入れたのだから、ただですむ訳はない。
狭い場所から出てこない。無理やり出そうとすると容赦なく引っかかれた。
背中をなでるだけでシャーっと威嚇。それでも背中をなでていると、また容赦なく引っかかれた。
何が気に入らないのか、何もしなくても容赦なく引っかかれた。
とにかく、人になつかなかった。

でも、私は、ねこと一緒に寝るが好きだ。
ねこも頑固なら、私も負けないぐらい頑固だった。
触られるのが嫌いなねこの両手両足を押さえて、顔でお腹のふかふかした毛をスリスリするぐらいは平気でやっていた。
だから、そんなねこを押さえつけて、力技で布団に入れた。
ねこはあらゆる手を使って、その災難から逃れようとする。
そんなことを、寝る前に何十分も戦うが、結局は、私が眠くなってしまって負けてしまう日が続いた。

そして、その事件があった日も、私の負け戦であった。
私も眠いので、そのまま寝てしまった。
でも、今から思うと、もっとこのねこの性格を考えておけば、このようなことにはならなかったと思う…
何故、何もしていない時に引っかくのか?
そう。このねこは非常に恨みがましいのであった。
以前やられたことをしっかり根に持っていて、その復讐を行っていたのである!

ねこは、私が寝静まってから、1時間じっくり待ってから復讐に来た。
ツメを思い切り出して、ベットの上にある私の頭の高さまで飛んで来た!
そのツメは、私のこめかみに突き刺さった。
驚いて、飛び起きて、電気をつけたら、頭からボタボタと血が落ちた。
ねこは、ベットの上でシャーシャーと威嚇している。
これはねこの喧嘩と同じだ。
ねこと同等に思われているのと、血が出ているのとで、これは、しつけをしておかないといけないと思った。
私がベットから出ると、ねこは逃げ出したが、なんとか部屋の隅に追い詰めることが出来た。
そこで、ねこに鉄拳を食らわせたのであるが、まだ寝ぼけていたので加減がわからなかった。
鉄拳の半分は、ねこの後ろの壁に当たってしまった。
それでもねこは、私を恐れてものすごい勢いで暗闇に逃げていった。

さて、私。
こめかみからは血が流れているし、右手の指の中3本は第二関節のところの皮がむけて血がにじんでいる…
とりあえず、両親を呼んだのであるが、カラオケに行っていて帰ってきていなかった。
仕方なく、自分で救急箱の所に行って、止血して絆創膏をつけた。
そして、いろいろと痛かったが、とりあえず寝ることにした。

次の日。私は会社に行った。
朝、早めに起きられず、怪我の処置は昨夜のままだった。
会う人会う人に「なんで、こんなところを怪我してるの?」と尋ねられたので、私は正直に「ねこに引っかかれました。」と答えていた。
でも、その答えに納得しない人もいる。「ねこって名前の男にやられたんじゃないの?」という感じだった。

こめかみの絆創膏は、みんなに面白く思われるようなので、午後から会社にくるお医者さんに手当てしてもらうことにした。
「ねこにやられたのかー。むしろ乾かした方がいいよ。おーい赤チンぬってやって」
医者は看護婦さんに指示した。
看護婦さんは、手早く赤チンを棒に付いた脱脂綿につけた。
チョン、チョン、チョン、チョン。
こめかみに赤チンを塗られて、「プッ」と吹き出だすのを聞いた。
そして、看護婦さんは、「どうしましょう…これ…」と、私に鏡を差し出した。
赤チンをぬった部分は、長細い丸が4つ並んでいる。
この形は、まるっきり、ねこの肉球の形をしているのだ!

とりあえず、そのまま職場に帰って「男にやられたんじゃ」なんて言っていた人たちに、「ほらほら、本当にねこにやられたんですよ!」と見せた。
しかし、この赤チンがねこの手形にみえる傷のうわさで、他の職場からも見学に来る人まで出てしまった…

これが、「猫手傷」事件の全容である。
私は、この事件以来、どのような怪我をしても「ねこにやられたの?」と聞かれるようになった。
女としては何か失ったような感じがする…

その後の私とねこの仲というと…
私は、今までと変わらず羽交い絞めにしてねこにスリスリしたし、一緒に寝るのもあきらめなかった。
ねこは、やはり気が強かったが、私をひっかく頻度は減った。その分、噛む頻度は増えたけれど…
そんなねこも、一ヶ月もすると、人がそばにいることにも、撫でられることにも慣れた。
すっかり飼い猫らしくなってしまって、一緒に寝ようとすると、しぶしぶ一緒に寝てくれて、私が寝付くとベットを出て行くという、本当に飼い猫らしい芸当を身につけてしまった。

-(n.n)-














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