今日は8月26日、改方学園の夏休み最後の日。
夏休みの最後の日の過ごし方には2種類ある。
1つは宿題なんてとっくの昔に(又は計画的に進めて)終わらせて、最後の日(又は数日間)は漫画を読んだり、TVを見たりといったような自分の好きなことをして“優雅”に過ごす組、そしてもう1つは夏休みに遊びすぎて最後の日というのにシャーペンをカリカリ働かせている組、そしてここに後者でさっきからシャーペンをカリカリカリカリ働かせている改方学園の一人の生徒がいた。
午後2時頃・・・
「あぁ〜もう、オレとしたことが・・・。一番先に“やるべきやった”宿題をやってへんなんて。」
そう、後者でさっきからシャーペンをカリカリカリカリと必死に働かせている改方学園の生徒とは世間で“西の名探偵”と呼ばれ、新一とは“西の服部東の工藤”と並び称されている服部平次なのである。一つ、平次の名誉のために言っておこう。平次は数学以外の宿題は終わらせている。
「でもなんでやろ?数学の宿題はもろた時から最初にやろうと思っとったのに。それが全然やってへんなんて。やっぱ“数学は苦手や”っていう意識があるからなんやろか・・・。量は多いし提出は明日やし・・・。やらんと新野にどんだけ怒られるか・・・。それにオレは数学の成績がイマイチやから余計に・・・。そやから仕上げるしかないんや。それにしてもプリント5枚裏表はキツイわ。しかもB4サイズで手作りプリント・・・答えはなし。まぁ、らしいと言えばらしいんやけど・・・。せめてもの救いはそんなに“難しくない”ことやろか。しゃーない、頑張ろか・・・。」
英語は得意で他教科だって悪くても70点以上は取れるのだが、数学は50〜60点台のことがほとんどなのである。
とここで少し平次も口にしていた“新野先生”について説明しておこう。
新野先生は改方学園では“厳しい数学教師”で有名である。授業はわかりやすくていいのだが、宿題忘れや居眠りにとても厳しいのだ。平次も数度注意されたことがある。宿題はほぼ毎回のように出る。普段の宿題はワークの問題なのだが、こういう時には手作り(PC)なのである。そして答えはなし。休み明け最初の授業で宿題をちゃんとやったかの大まかなチェックをし、模範解答を配る。そして答え合わせ(間違った所は赤で書き直して)をして後日に提出。もちろん期日は厳守である。もし遅れてしまったら、一応受け取ってはもらえるが減点される。(特別な事情の場合を除いて)だから平次が必死になってやるのも当然だ。
平次は新野先生の厳しさを知っていた。だから最初にやるつもりでいた。だけどなぜかやるのを忘れていた。それに気づいたのはついさっき、明日の準備のため、明日提出の宿題やその他の必要な物を用意していた時のことだった。
平次が“一から”数学の宿題をやり始めて1時間と少しが経過した頃・・・
「あぁ〜、やっと1枚終わったわ。1枚でこんだけかかったら5枚やり終えるのにどんだけかかるんやろ?5枚全て同じペースってわけにもいかんやろし・・・。あんまり難しくないのはえーけど、“空欄禁止”やもんな・・・。」
そう、あんまり難しくはないけれど、空欄があってはいけないのだ。
「誰か見せてくれへんかな・・・。それでも自分で写さなあかんな。字が途中で変わってたらヤバイし。やっぱ自分の力でやらんと・・・。ん?なんや・・・オレがやってる宿題をこれから邪魔されるような嫌な感じは・・・。まぁええわ、宿題や宿題!」
平次がそう思った頃・・・家のインターホンが鳴った。平次の母−静華がその人物を招き入れた。そして静華と少し話した後平次の部屋へと階段を上ってきた。その足音に平次も気づいたようだ。
「まさか・・・そういえばさっきインターホン鳴ったな・・・。それにこの階段を上ってくる音・・・。」
やってきた人物の正体に気づいた平次は、やりかけの宿題を隠そうとしたが、それより先に部屋の扉が開かれてしまった。
「平次ィ、国語の宿題のワークなんやけどわからんとこあるから教えてくれへん?えっ・・・まさか平次、数学まだ終わってへんかったん?あとどれだけあんの?」
和葉は見てしまった・・・まだやりかけの平次の宿題を。平次も“見られてしまったものは仕方がない”ということで正直に話すことにした。
「あと4枚やけど・・・悪いか?」
「えぇ〜っ!!大丈夫なん、平次?新野先生の宿題やで?いったい今まで平次何しとったん?」
ということは和葉は数学の宿題は(いや、国語以外全て)終わっているのだろう・・・
「和葉こそ夏休み最後の日になんで“わからんとこ教えて〜”ってやってくんねん。もっと早よ来いや。オレやって1時間くらい前に全然やってへんことに気づいたんやから。」
「平次と同じや。アタシも今日で夏休みが最後や〜、チェックしてたら空欄がまだあることに気づいてん。わからんトコとばしてやっとったんやけど、それで全部やった気になってて・・・。答えはないし、提出明日やし、数学と一緒で“空欄がないように”やもん。まぁス学よりは権限弱そうやけど。平次もやるの忘れてたん?」
「そうや、最初にやるつもりやったけどなぜか全然やってへんかったんや。和葉が来る前に1枚終わったんやけどな。まぁしゃーない、オレに助けを求めてやってきたんやから教えたるわ。でもなんでオレの家に直接来たんや?女友達にでも聞いたら・・・。あぁそうかオレの方が頼りになるんやな?そうやとしても電話でもいけたんとちゃうか?」
確かにそうだ。電話で済まないことはない。
「え・・・。電話でやったら聞くだけやから間違うこともあるやろ?だから直接教えてもらおうと思ってん。(ほんまは平次に会って教えてほしかってん・・・)」
「確かに直接の方が間違いないもんな。」
平次は和葉にの説明に納得した。だが和葉がやってきた本当に理由はわかっていない。
「でも平次、そんなに残ってるのに大丈夫なん?」
「あぁ、別に構わへんで。オレは夜でも大丈夫やけど和葉はそうもいかへんやろ?」
ということで平次は和葉がわからない部分を教え始めた。
約40分後・・・
「ありがとうな、平次。おかげで全部埋まったわ。」
と言うと和葉はかばんから何かを取り出した。
「はい、平次。これあげるわ。ほんまは一緒に食べようと思って持って来たんやけどな・・・。アタシはもう帰らなあかんから・・・数学手伝われへんかってゴメンなこれでも食べて頑張ってな。」
と言って平次にクッキーを渡した。
「あぁ、ありがとう。」
そして和葉は帰っていった。再び平次は宿題をやり始めた。
すると・・・
「平次・・・平次・・・平次・・・」
どこからか平次を呼ぶ声がする。
次の瞬間
「平次ィ、もうばんごはんやで・・・。」
平次は目が覚めた。そう、平次は夢を見ていたのだ。
「わかったぁー、すぐ行くわ。」
返事をすると1階へ降りる前にある物をチェックした。
「あぁ、よかった全部終わってるわ。そうや・・・2時くらいにやっと数学が終わって1時間くらいゴロゴロしてたらいつの間にか寝てしもたんや。残り1枚必死になってやってたからあんな夢見たんやろか・・・。」
そして平次は1階へと降りていった。 |