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偉人

作者:佐和かける
とある王国の、西部に位置する港町。
ここは2年前に帝国の軍が攻めてきた土地だ。

小国である。中立である。資源も特筆すべきものはない。
この国を、帝国が欲した理由はただ一つ。
世界で唯一他の国全てに、「特別な国」であることを認められた聖王国。神との縁が深い国であるからだ。

当時港町を守っていたのは、町の自警団であった。
正しき人たちを、正しき暮らしを守るためだけに存在する有志の集い。そんな小さな組織だった。

結論をいうと、自警団の活躍によって帝国軍は退けられた。
町人からなる自警団が、幾百の兵を乗せた軍艦を追い返したのである。

後世の歴史家の間で、帝国の疲弊や当時の天候など、様々な議論が交わされることとなるこの奇跡の立役者となったのは、自警団の団長を勤めていた男であった。













団長が天寿を全うした数年後。彼の人の像が立てられた。
完成後の式には彼の妻が招待された。
像の感想を求められた妻は、満面の笑顔で言った。

とても立派なものですが
あの人とは似ていませんね

彼を知る人は、その像を瓜二つと絶賛した。
しかし妻だけは、その像が表すものが夫とは思えなかった。

あの人は誰よりも弱い人でした。
でも誰よりも優しかったから、
誰よりも強くあろうとしていました。

嫌な役目を大事な人に負わせたくないと、
自分で全て担う人でした。

でも、そうやって抱え込むくせに、やっぱり弱い人だから。
いつも嫌だと泣いていました。助けてくれたこともない尊い天の方に、助けを求めてぐずぐずと、涙を流していたのです。

戦に行く前もそうでした。ぐずぐず、ぐずぐず、泣いていました
ただこのときはいつもと違いました。尊い天の方に祈るあの人が、なぜか私に祈ってきたのです。たすけて、たすけて、たすけてって。
それが、私の知るあの人です。

私の夫は、誰よりも強くありたいのに、それができない弱い人です。
でも、弱さの中の強さも知っている人です。
自分の身よりも小さな私にすがり付いて、弱さを全て見せつけて。
それから、笑って、行ってきますと言うのです。

これは夫なのでしょう。おそらく、外での彼そのものです。
大層立派な、彼が目指した姿です。

私に見せることはなかった、彼の姿です。
私が知る彼は、泣いたあとの情けない顔で、無理矢理笑う人なのです。




妻は式後、縁者に苦笑いしたそうだ。
とうとう、あの人の秘密を明かしてしまった。
死後に会ったときに、恥ずかしくて泣いてしまったあの人に、きっとひどく怒られてしまうわね、と。

ずっと頭の中あった話で、どういう形であれ作品に仕上げないとと思っていた話です。語られない部分も多いので申し訳ないです。読んで下さりありがとうございました。

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