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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

泥濘

早久良3

作者: いけちぃ

※前作の続きとなっています。




毎朝、仲間に囲まれて笑う姿を通りがかりに見て、休み時間には男子とばか騒ぎしている姿を目で追い、恋人をとても大切に慈しんでる彼を見かける。

保健室での遭遇以来、早久良は彼の輪にいる友人達を羨ましいと思うようになっていた。

建一を見つめて小さな発見をするたび嬉しくて楽しかった。




あんなに庇っていた右手を早久良はぱったり気にしなくなった。

やたら不安定だった精神も落ち着き払って、もう怠い学校に毎日顔を出さなくて済むと万々歳だった。

早久良に好きな奴が出来たと知るまでは。

隠す気がないのか、分かり易すぎてムカつく。

毎日飽きもせず同じ男を目で追いかけて、そいつを知るために来たくもない学校に通う羽目だ。

整った顔立ちで女は寄り付いて、人懐っこい性格が男子に受けている。

俺とは兎に角正反対な人間だと解った。

人に愛されて陽だまりの中心にいるような甘ちゃんを早久良が好きになったと思うと苛立った。

だから、面白くしてやろう。





「早久良、明日メシ食いにいかねぇ?」

「行かない」

当たり前のように早久良の家で夕食を取る万里からの突然の誘い。

考える余地無く断った早久良に、いつもなら引き下がる万里がしつこかった。

「毎日メシ作らせてるんだから、偶には礼くらいさせろ」

「だから、結構です」

「知り合いの店に呼ばれてるんだよ、つき合えって」

「他当たれば」

「ダチのとこで、どうして鬱陶しい女連れなきゃいけねぇわけ?」

一気に不機嫌になった万里。

お陰で自分を誘ってきた理由が解った。

確かに、嫌悪している相手と食事をしても美味しくない。

しかも行くのは友達の店だ。

最近、やっと男友達が出来てきたのだ。

良い傾向を無視するより、頼みを聞き入れた方が今後を思っても良いだろう。

全て万里持ちと約束して了承した早久良は、友達が出来たことに純粋に喜んでいた自分を後悔することになる。




本日休業の札がかかったカフェバーに案内された早久良は、店内にいた建一の存在に固まった。

「なんだ万里、生意気に女連れか」

「従妹だよ」

「のわりに似てないな」

「ああ。こっちは顔の作りに難あるからな」

完全に馬鹿にしている万里の台詞。

けれど早久良は反応できない。

奥で数人の友人と会話している建一が気になって、目が合うなり焦って顔を背けた。

「何やってんだ?座れよ」

既にカウンター席へ移動していた万里に呼ばれハッとする。

建一の存在に見向きもしない万里。

これは、単なる偶然だろうか。

「コイツ料理上手いから、不味いのは食べない」

「いきなりかよ、本当生意気なガキ」

「そのガキをナンパした奴が何言ってんだか」

ナンパ・・・万里は声を掛けられれば男相手でもフラフラついていくのか。

聞いて少し不安になった。

「妙な言い方するな。誤解してるだろう」

「今更だし」

「君、どれだけ私生活乱れてるの?」

動揺しない早久良と平然としている万里を見比べて、呆れたように項垂れる未だ紹介されていない店の主だろう男性。

「あっちの彼等もナンパしたんですか?」

純粋な疑問。

これに万里は吹き出し大笑い。

店主はポカンとして何を言われたのか解っていないようだった。

「何?上野はナンパされたんでしょ」

「お、おま、あははっ、マジ最高!」

何が最高なのか理解できず、寧ろ馬鹿にされているのかムッとする。

店主は弁解を試みているけれど、万里の笑い声で掻き消されて聞こえない。

「楽しそう、オレもまぜてよ」

「!?」

「隣いい?」

「えっ」

「ダメ?」

「えっ、あ、ど、どうぞ」

早久良をらしくないほど動揺させたのは、誰であろう建一だ。

万里の笑い声に誘われたのは言うまでもないけれど、自分の隣に座ったのは予想外、というかまた言葉を交わせるとは思っても見なかった。

同じ学年、万里も建一も有名人だ。

お互いのことを知らないはずはないのに、どちらも解ってないような気がする。

多分、同じ高校だという事すら気付いてないだろう。

「アンタ、この人にナンパされたんだろ?」

一頻り笑った万里が、早久良を飛び越えて直接建一に話し掛ける。

穏やかな口調と悪戯な笑み。

不快を感じない態度を取っている万里を初めて見た。

「ナンパ?・・・ああ、そうかも。あれってナンパだったんだ」

「君まで人聞きが悪い!」

「往生際が悪いぞ、おっさん。素直に認めろ」

「オレ、同性にナンパされたの初めてだなぁ」

わざとの万里と天然の建一に責められ、どうにも立場がない店主。

この和やかな空間に自分がいる事が躊躇われた。

しかも、隣に建一がいると意識するだけで熱が上がって居心地が悪い。

「ねえ、君さ、どこかで会ってない?」

「うえっ?!」

「何か見覚え有るんだよね」

気安い態度、けれど軽い感じはしない。

それだけに他意もなくじぃっと覗き込まれると困ってしまう。

万里が表情を無くしていると気付かずに余裕を無くす早久良は、同じ学校だからと伝えるので精一杯だった。

「あ、だからかぁ。そっか、成程、スッキリした。ありがと」

「い、いえ」

「てことは、そっちの格好いい彼も?」

「あっ」

すっかり存在を忘れていた。

慌てて万里を振り向き、一瞬、無表情を見た気がする。

「上野万里、1年。そっちは?」

「同学年なんだ、オレは高坂建一。宜しくな」

「・・・・・・」

「君は?」

「えっ、あぁ、えっと、北方早久良です」

「上野君と北方さん。うん、今後とも宜しく」

彼特有の人懐っこい笑顔を向けられ早久良は当然真っ赤になった。

万里はそんな様子に気付いていないのか、珍しく自ら話題を振って喋っている。

女を横に置いて気分次第で冷たくあしらう万里しか見たことのない。

だから、こうやって気軽に話している男友達との交流は良い傾向のはずだ。

そのはずなのに、警告音がどこかで鳴っている。

気のせいだと良いのに、こうやって普通に笑う万里が真実なら良いのに。

なのに、早久良は一日、万里が宿している何かが気になって仕方なかった。



校内及び他校にまで敵を作っている男の天敵万里と、その甘いマスクと親しみある性格で交遊幅の広い建一。

どちらも女性関係は派手と言っていいのに、世間の評価が全く違う2人が“お友達”となって数日。

校内中が浮き足立っていた。

唯1人、早久良を除いては。



今日もまた、これ見よがしに廊下で話し込む姿。

万里と建一が友人になって以来、毎日見せられる光景は早久良を不快にさせてくれる。

別に嫉妬でもなければ、彼等の周りにいる女子への僻みでもない。

「よ、早久良」

問題はこれだ。

こちらの姿を確認するなり、片手を軽く上げて声を掛けてくる万里が問題だ。

「あ、お早う、北方さん」

続いて気が付いた建一が振り向き笑いかけてくれるのは実際の所嬉しいけれど、更に続く女子達の射殺さんばかりの視線は日々増加していく。

「・・・・・・」

「今日も行ってたのか?ご苦労だな」

にぃっと口端をあげて話し掛けてくる万里に他意はない、無いんだと言い聞かせて通り過ぎようとすれば、お見通しと道を塞がれる。

「お前の態度が悪いから、建一が嫌われてるんじゃないかって心配してんだけど」

他人には聞こえない声で耳打ちされ、一瞬、体が強張った。

チラリと建一を確認すれば、万里の言葉を裏付けるような悲しそうな表情をしてこちらを見ていた。

「挨拶くらいはしても良いんじゃねぇ」

「・・・だったら、上野が話し掛けてくるのやめてよ」

「はあ?何で?意味わかんねぇんだけど」

眉間に皺を寄せ訝しむ万里。

嘘はないと信じたい。

実際、嘘も何もない、ただ自分が1人良からぬ不安を抱いてるだけだとは解っている。

それでも、どうしても、2人の周りの女子のように踏み込めない。

「早久良?」

本気で不思議がる万里を疑ってかかる自分に問題があるんだ。

理由を聞かれても説明など出来るわけもない。

黙り込んだ早久良は、立ち塞がる万里を押し退けて通り抜ける。

聞こえるのは女子の批判の声と万里からされる謝罪の言葉。

本当に、普通に、友人と日々を楽しく過ごしているんだと安堵できる風景が後ろには存在している。

それならば尚更に万里とは一切の関係を絶つべきだ。

早久良は、再び頻繁に疼くようになった右手を抑えるために腕を強く掴んだ。



このところ不快にさせてくれているのは、万里に対する言い得ぬ不安だけじゃない。

「やっとお出ましか」

「・・・・・・」

温室の前で堂々煙草を吹かす傷だらけの上級生。

露骨に顔を顰めても鼻で笑い飛ばして無視される。

「寒いんだから、とっとと入れろ」

「もしかして、煙草吸いながら入ってくるつもりですか?」

そうだと頷いたら即、持っている弁当箱で殴ろうと構えた。

が、横暴で乱暴で近付きたくな男である“慎”は、不遜に笑い煙草を捨てると足で踏み付けたから、とりあえず計画は潰れてしまう。

「それ、持って帰って下さいね」

こんなところに煙草の吸い殻なんてあったら、問題を被るのは自分だ。

それは大いに迷惑だ。

一瞬、慎の影が被ってビクンと震えたけれど、黙って吸い殻を拾うから少し驚いた。

「何だ?」

「いえ」

「意外ですって顔に書いてあるなぁ、くくっ」

馬鹿にされてると解るから、早久良は早々に温室を開ける。

当然のように付いてくる慎にムッとすれば逆に睨み返された。

「大人しくしてやってるのに、何様だ?あ?」

伸びされた手が首を掴もうとする。

怯えた早久良は一歩早く飛び退いて青ざめたが、慎は笑うだけでそれ以上何かしてこようとはしなかった。

見るからに危ない人の慎は、万里に仕返しがしたくて付きまとっていると堂々宣言してくれた。

当然、そんな事に巻き込まれたくないから自分は関係ないと説明し、竹箒を振り回し、何度も力尽くで追い返したが翌日には温室が被害に遭う。

その繰り返しを数回。

恐怖と不快を押し込めて、自分が全て我慢すれば植物が無事でいられると悟った。

それで今に至っているわけだが、好んでこんな厄介者を許している訳じゃない。

「ちょっとばかし小耳に挟んだんだが、お前、嫌われ者なんだって?」

「・・・・・・」

「友達の男を取った性悪だって噂だぜ?」

温室内に設置されたテーブルで弁当を開けた早久良は、傍らで楽しげに話す声を前に食欲を失いつつあった。

「流石は奴の女だけあるよなぁ?」

「・・・そんな人間を追っかけ回すのは虫酸が走るんじゃないですか?」

「そーでもない。あいつが泣いて悔しがる様を見られそうだからなぁ」

下らない、そうは思っても口には出せない。

代わりにため息を付くと、煙草を手にしようとした相手を振り向く。

「中では止めて下さい」

「俺の勝手だろ?」

「勿論。でも、上野が泣いて悔しがる姿を見たいなら少なくとも私の気分を害さない行動をした方が良いと思いますけど」

「あ?」

「悪意の固まりしかないって知ってる相手に、誰も心開いたり友好的に接したりしませんよ、普通。つまりは、貴方が極悪人だって知ってる私が貴方に好意を示すわけもなく、それは上野が泣いて悔しがる結果に結びつかないと、そうゆう訳です」

嫌味を込めてご理解頂けましたかと肩を竦めれば慎は暫く黙っていた後、突然大笑いを始めた。

「確かにっ」

腹を抱えてゲラゲラ笑う人間を初めて見たけれど、正直馬鹿丸出しだ。

「お前、変な女!」

どこがだとは聞かず、無視で食事を始めた。

横では未だに笑う男がいるけれど、永遠無視していれば飽きて出て行くだろう。





新年を迎え久し振りに顔を合わせるクラスメート達。

中には休みの間に遊んでいた者達もいるだろうけど、孤立している早久良には無縁。

それに学校へ来る事態久し振りではない。

温室の世話に毎日通っていたんだから、年中無休で登校している皆勤賞ものだ。

けれど、お陰で薄らいだ事がある。

暇さえあれば訪れていた万里が、休みの間一度も家に来ることはなく、どこからともなく耳に入る噂では建一と毎日のように行動を共にしていたとか。

それは、ずっと抱いていた言い得ぬ不安を払拭してくれた。

万里はもう、自分を頼らずとも闇から抜け出す道しるべを見付けたんだとホッとした。




「あいつが心入れ替えるなんてあり得ねーわ」

万里と入れ替わりで温室の住人となりつつある慎の開口一番がコレだった。

慎もまた、女遊びがピタリと止み建一という親友を大切にしている万里の話を聞いたんだろう。

鼻で笑い言い捨てた。

「上野と話したんですか?」

「俺が?アイツと?何で?」

「なんでって、有り得ないって言ったのはそっちじゃ・・・」

「会うまでもねー。そんな話を信じてるお前の方がよっぽどどうかしてるねぇ」

寒いんだろう、赤くなりつつある鼻を啜って体を丸めている慎にグッと言葉を詰まらせる。

「今更ダチ必要なタマかぁ?」

「・・・上野は愛情に飢えてるから・・・」

だから?自問自答は慎に遮られる。

「人の女に手を付けた。そーゆーのがダチで救われるとでも?」

「上野のことよく解ってますね」

「俺が知るわけねーだろ、お前の方が詳しいんじゃねーのかぁ?」

これには答えず聞き流す。

「お友達ごっこがいつまで続くかはしらねーがなぁ」

「高坂君なら救えると思います」

万里は、だから彼に惹かれたんだろう。

もうずっと万里を見ていないけれど、最初から関わる気もなかった。

このまま過去と断ち切って振り向かないでくれれば助かる。

そうすれば、引きずり込まれる心配はないし、右手が二度と疼くこともない。

花たちと向き合って趣味に精を出して、平穏無事に過ごせる。

「この寒さ、何とか何ねーのか?!」

そう、後はこの男が消えてくれれば。

「暖房強くしろ、凍えて死ぬ」

「そんなことしたら植物に影響が出るんで嫌です。どうぞ出てって下さい」

「ナメテんのか。こら?女が我慢できて俺に出来ねーわけがない」

「・・・別に我慢大会じゃ・・・」

呆れていれば、意固地になった慎は更に体を丸めつつ本気で我慢大会を始める気だった。

「まあ良いけど、私は校舎戻りますから」

「あ?!」

凄まれて一瞬、身が強張った。

「だ、だって、私は別に我慢大会なんてしたくないからっ」

「お前がいねーのに俺がいて意味あるか?」

「し、知りませんよ、そんなの!」

睨まれて怖さのあまり小走りで温室を出れば、慎もまた後を付いてきた。

ドアを閉めれば自動で鍵がかかる。

「あれ?授業でないんですか?」

歩き出した慎が向かうは校舎とは真逆。

返事はなく、手をヒラヒラさせるだけの慎。

ああ、これは完全にサボりだろう。

あんなで進級できるのかと疑問を抱いたけれど、来期を思うと恐ろしいので止めた。




玄関先、靴を履き替えた直後、ビニール袋を下げた建一とはち合せしてしまった。

「っと・・・北方さん、明けましておめでとう」

他意のない純粋な微笑みに、早久良は一瞬で真っ赤になってしまう。

それを隠すために俯けば、気まずい空気が流れていた。

「えーっと、その、途中まで一緒に行く?」

「え?」

「教室戻るんでしょ?どうせ階が一緒だし、別々にいくのも変な感じじゃない?」

辛うじて頷くことは出来たけれど、建一が促してくれるまで足は進まなかった。

「そういえば、万里も一緒にいるけど最近北方さんに会ってないってぼやいてた」

「は?」

思わず顔を上げてしまう。

建一と目が合って慌てて視線を下げたけれど、出てきた人物と発言に抵抗を隠せない。

「従兄だって聞いたけど、あんまり似てないね」

「・・・よく言われます」

とは言え、校内で知ってる人間は少ない。

誰より自分が一番、万里とは似ていない・・・と言うか、顔の作りが悪いと自覚しているから改めて言われることでもない。

「オレが散々連れ回してるから。ごめんね、元旦とかもつい楽しくてさ」

困って照れたように笑う建一を見て、万里が充分好かれている事実を目の当たりにした。

「でもお陰で、北方さんの話も色々聞かせて貰ったし」

「私の・・・?」

「お人好しで付け込まれやすいから心配だって言ってたよ」

「上野が?」

「そう」

思うところは色々だが、とりあえず、快くなくて顔が歪む。

「あはは、万里の言うとおりだ」

「?」

「北方さんは、自分が絡むと変な顔になるって言ってたから」

それは、今、変な顔をしていたと、そう言われたんだろうか。

早久良はガーンとショックを受けつつ、登り終えた階段で一度足を止めた。

「北方さんも一緒にどう?仲間と馬鹿話してるだけだけど」

「私は、」

断りの意味で首を振れば、建一が傷付いた風に曖昧に笑う。

「万里もいるよ?」

だったら尚更、彼等の輪に加わるわけにはいかない。

もう一度ハッキリ頭を振れば、諦めたのかため息が聞こえた。

「・・・オレ、もしかして嫌われてる?」

「え?」

「だって、北方さんずっと下向いたままだし」

「そ、んなことは」

「オレと万里が仲良くするの気に入らない?」

「わ、私には関係ないから。それに、嫌ってるんじゃ・・・」

「ホント?」

首を傾げる動作が可愛くて頬が熱くなる。

早久良はブンブン頷いて後退ると、これ以上引き留められる前に深々と一礼した。

「じゃ、じゃあ、」

「あ、北方さん!」

建一の教室と自分の教室が反対方向なのが救い。

踵を返し駆け出すと、振り向くことなく教室へ駆け込んだ。




温室へ行けば、何だかんだ絡んでくる上級生。

教室では居心地が悪い。

1人落ち着ける場所がないと知った早久良は、未だ雪がちらつきそうな寒空を覚悟で屋上に身を潜めていた。

「はぁ~」

寒い、滅茶苦茶寒い。

でも考え事をするには最適な環境だ。

建一を前にすると頭が真っ白、体温は上昇、動揺しまくりの情けない己だから、彼を踏まえた物事を冷静に思考するには寒いくらいが丁度良い。

解ってるのは、万里が凄く想われているって事。

嫌々ながらそれに付き合ってる万里も、建一を大切に想ってるって事。

それがハッキリしたから、自分は万里を徹底的に排除する。

「・・・それだと目の保養が出来なくなる・・・」

今後建一を目で追うことも出来なくなるのが心残り。

でも、まあ、それがいい。

どうせ最初から建一と関わる事はなかったんだから、会話が出来ただけ有り難い、いい思い出にしてしまおう。

「戻れよ、鬱陶しい」

「何よぉ、万里が誘ったんじゃない」

いつ来たんだろう。

突然聞こえた人の声をボーっと聞き流していた早久良は、数秒遅れで反応した。

わざわざタンク裏にまで登って来たりはしないだろう。

物陰を幸いに下を覗き込めば、暫く振りに見る万里と腕に絡み付いている女子生徒がいた。

「誘った覚えないんだけど」

「そうじゃなくて」

ふふっと笑い体をすり寄せる女子に、万里は何も言わない。

「ねぇ、万里・・・」

正面に回り込んでいた女子は、クスクス笑いながら万里の首に腕を回し唇を寄せる。

微動だにしない万里がされるがままなのは嫌な記憶を連想させた。

こういう光景を覗き見る趣味はないので物陰に凭れかけ空を仰ぐ。

このまま情事に発展したらどうしようかと考えつつ、それは非常に嫌だと眉が寄る。

「どうしたの?」

「・・・・・・お前さ、建一に悪いとか思わないわけ?」

「今更何言ってるの?万里が誘惑したくせに」

ギョッとした。

声が漏れそうになって両手で塞ぐ。

「万里だって同罪じゃない。それとも・・・独り占めしたいの?」

「・・・・・・」

何なんだろう、この沸き立つ冷や汗は。

甘えた声を出す女子に対して、万里が恐ろしいほど冷ややかなのは見ないでも解るのに。

彼女はそれに気付かないんだろうか。

心臓が早鐘を打ち、いても立ってもいられない。

そんなわけはないのに、万里から黒い靄が迫ってくるようで怖い。

緊迫感。

それを壊したのは、女子の携帯音だった。

「はい、建一?ううん、1人だけど・・・・・・解った、直ぐ戻るね」

ピッと通話を切り、万里を振り向いた彼女は冷静だった。

「私先に戻るから、また後でね」

チュッと頬に口付けて屋上を出て行った女子を追うこともせず、万里はただ黙って立っていた。

「・・・気色悪ぃ・・・」

吐き出された言葉。

早久良は凍り付き、万里が屋上を去るのを見送ってやっと全身の力を解いた。

ドッと吹き出す汗と、疼く右手。

万里の表情が見えなかったことは、自分にとっての救いだった。




あれは何かの間違いで、そうであるべきだと言い聞かせる。

万里を救い出せるのは建一だ。

だからこそ、万里は彼の傍にいる。

だから全ては自分の妄想で思い違いだ。

見ない・聞かない・言わない、今度こそそうする。

でないとまた、後悔する羽目になる。

これっぽっちも良いことはないのに、自分が損ばかりするんだ、二度と御免。

だから、何もかも知らない。

万里にもそう言ったはずだ。

手助けはこれきり。

もう考えることも止めよう。

温室と趣味に勤しんで、たまに帰ってくる父を大切にして、母との思い出を守っていこう。






無事二年に進級した早久良は、相変わらず温室通いをしている。

「あれ?ミッチーだ、お早う」

通りの草むらから出現したピアス男、こと“充”は傷だらけ男の慎と連んでる1人だ。

もう1人ガタイの良いタトゥーだらけの“歩”と3人でよくいるけれど、その中では一番顔立ちが良い。

「何でそんなとこから出てきたの?」

「知りたい?」

ニヤリと嫌らしい笑みを向ける充に悪寒が走る。

下手にモテるだけあって、女好きのタラシだから基本的に近付きたくはない相手だ。

「結構です」

「何で?手取り足取り実践付きで事細かに教えてあげたのに」

「・・・ミッチーといると脳みそ腐るから、呼び止めてゴメン、朝っぱらから」

「あはは、バイクを隠してただけだから心配無用。女がぞろぞろ出てくるって事はないよ、安心して」

何の安心だと思ったが、これ以上相手にしないのが身のためだ。

興味無しで聞き流せば、何故か後ろを付いてくる。

不審な目を向ければ、横に並んだ充に肩を抱かれる。

「あの」

「ん?」

「いや、手。というか、別に付いてくる必要が全くない」

「女性をエスコートするのは僕の勤めだから気にしない」

「・・・殴っていい?」

「それよりも2人きりで何処かに行きたいな」

ソッと耳元で囁かれ、全身鳥肌。

青ざめ蹴り飛ばそうと決めた途端、体が宙に浮いたから、別の意味で焦る。

「歩、からかってるんだから邪魔しないで欲しいね」

「・・・・・・・・・」

「わかってるよ、慎がいない間に妙なことはしないから」

「・・・・・・・・・」

早久良の腰を掴んで未だ宙に浮かせている歩と信用のない充の睨み合い。

「あ、あの、降ろしてぇ!」

色んな意味で辛い体勢に悲鳴を上げれば、ただでさえ怖い顔の歩がジロリとこちらを向いて体が震えた。

青ざめつつ、殴られることを覚悟したら、足が地に着いていた。

しかも、思い掛けず優しく降ろされた事実に驚愕させられる。

「歩はこう見えて女子供には優しいから」

「は、はあ、」

「・・・・・・・・・」

苦笑した充に曖昧に頷けば、歩の手がポンと頭に乗せられる。

ピアスだらけにタトゥーだらけ、流石は慎と連んでるだけあってヤバイ見た目の2人。

何故、そんな人達とタメ口宜しく仲良くなってるかと言えば、平穏を心に固く誓った瞬間にこちらの意志ではどうにも出来ない存在がいたと思い出したためだ。

この際、全てに目を瞑り開き直ればいいと。

そんなわけで、ちょっと変わった人達と友達になったと考えることにした。

「基本的に悪い人ではないし」と言った早久良に慎は大爆笑した後、二度と温室を傷付けないと約束してくれた。

そんな慎は、今、怪我のために入院中らしい。

その間、お目付役として2人が宛われたらしいけれど、とりあえず意味は不明である。

ただ、こちらを気遣ってか校舎では絶対に接触してこないから、やっぱり悪い人じゃないと思う。




クラス替えの掲示を見たときは、それはもう、逃げ出したかったけれど、決めたんだから今更何があっても揺るがない。

予鈴と同時に教室へ入った早久良は、窓際の日当たり良好な席で突っ伏して眠る万里を視界に入れた。

自分の席は、その一つ前で否が応でも見えてしまうから仕方がない。

鞄を机にかけ、中から小さな小瓶を取り出すと振り向いた。

「上野、起きろ」

ピクリともしない。

この分じゃ、昨日も夜遊びしていたんだろう。

「上野」

耳をこらさないと聞こえない寝息。

死んではいないらしい。

殴っても良かったけれど、人目があるからそれは止めた。

相変わらず万里は女にモテるし、自分は嫌われ者だ。

妬まれてはいても虐めは止んでいるんだから、わざわざ自らそうされる理由を作りたくはない。

ジッと万里の頭を眺め、陽に当たり色の変化する細い髪に手が伸びた。

男のくせにやたらサラサラで柔らかな髪質。

手グシでも引っ掛からない。

羨ましいと思う半面、触れる心地良さに気付かぬ内に撫でていた。

万里はパーツでも人を魅了させられるのだから、当人にしてみれば不幸だ。

「おはよー」

教室全体に浸透する建一の声。

早久良はパッと手を引いていた。

こちらに気付いて笑顔で近付く彼には未だ慣れない。

「お早う、北方さん」

「お、おはよう、」

「何事?」

「えっ?」

建一に示されて視線を戻せば、掴まれている己の手首と怠そうに顔を上げた万里がいた。

舞い上がるあまり、手を掴まれてることすら気付かなかった自分に呆れてしまう。

同時に、髪を撫でていた万里への気まずさが込み上げる。

「止めんな」

「は?」

「気持ちいい」

言われて早久良は手を振り払っていた。

ムッとした万里へ話題を逸らすために小瓶をかざして。

「んだよ?」

「新作。いらないなら良いけど」

途端、眠気を飛ばした万里は完全に起き上がると小瓶をかっさらっていた。

ゆっくり蓋を開け、コルクに染み付いた匂いをかぐ。

「気に入った?」

確認するまでもなく、万里の眼は喜々としていた。

「今までで一番好きだわ、コレ」

「・・・うん・・・」

「サンキュ」

子供同然に無邪気に笑う万里を直視できずに視線を下げた。

「もしかして、それって北方さんが作ってるの?」

瞬間、万里から表情が消えたのは気付かないふりをした。

興味深げに問うてくる建一を仰ぎ、否定も肯定もしないでいたら何となく空気が微妙になる。

「えーっと?」

「チャイム鳴るぜ、早く席つけよ」

「あ、ヤバ」

口うるさい担任のお小言は聞きたくないと建一は焦って廊下側の席に戻っていく。

万里は既に興味など無く、欠伸と伸びをしていた。

自分も前を向こうと体を回し、寸前で髪の毛を強く引かれる。

痛みで睨めば、万里はニィッと口端をあげていた。

「クセになんだろ」

「は?」

ポカンとすれば、万里が己の髪を掴んで見せる。

お陰で言いたいことが理解できたが、取り乱す気はサラサラ無い。

「言えばいつでも触らせてやるぞ?」

挑発されても真っ直ぐ見返しただけで反論しなかった。

チャイムが響き、これを言い訳に向き直れば万里もそれ以上しつこくしてこない。

何を考えていようが、思っていようが、しようが、一切関わりたくないのだ。

その為ならするべき事としないことの区別くらい冷静に対処してやろう。

二度と万里に付け込まれないために。




面白くなるはずだった。

気付いてない早久良をアイツと引き合わせて、従兄のダチってポジションを利用させてやろうとしてた。

最初は、抵抗こそあれ早久良もそれに甘んじていた。

何たって、テメーが想いを寄せる男とお近付きになれるんだ、誰だって期待して舞い上がる。

逆にそうでない女を見たことはない。

早久良が今や親友と位置する男に惚れたと知った瞬間から決めた。

有頂天にさせて落としてやろうと。

追い込んで奴と自分達とは違うことを知らしめてやる、それが目的だった。

他人を騙すなんて、イカレタ女を相手にするより簡単。

適当に同意して適当に時間を共有してやれば信用される。

早久良だって例外じゃなかったはずが、一体どうしてこうなった?

2年に上がり、都合良く役者が全員同じクラス。

掲示板を見たときは思わず笑ったほどだ。

建一を連れ立って教室にいた早久良に声を掛けた次の瞬間、拒絶だとハッキリ判る一線が引かれていたことを知った。

それを緩めるために連れていた建一ごと。

早久良は以前と全く変わりない。

俺を邪険に扱い、建一には赤くなる。

でも、確実に俺を排除したがっている。

いつからだ?の疑問より先に、本能が俺のすべき事を全て塗り替えてくれた。




「改めて思ったけど・・・」

昼休み、何故か教室にて早久良・万里・建一の3人が顔を突き合わせ昼食。

弁当を突く早久良は不本意そのもので黙々箸を動かしていた。

誘ってきた建一に断ろうとしていたのに、万里が「場所を変えてもいいぞ」と脅してきたため、強制的にこの面子でしかも教室で食べることになったのだが、この不快さは隠せるわけがない。

「万里は本当に北方さん大好きなんだな」

空気が悪いと知っていて、堂々発言する建一の根性は大した物だ。

が、話題も発言内容も早久良の機嫌を更に悪くさせた。

いつもの事ながら、突拍子もない恥ずかしげもない男を万里は一瞥する。

「いや、だって、始業式の日さ、凄かったなぁと」

「あぁ」

「・・・・・・」

真新しい記憶に興味のない万里と、一層頑なになった早久良。

チラリと見た早久良は、おかずにグサリと箸を突き立てて僅かに怒りを鎮め、それからは重い空気を纏ったまま食べ続けている。

始業式終了後のHRでの出来事を万里は思い返した。

クジで決められていく席順。

全て終わり、移動を終えた直後に万里は離れた席に決まった早久良を己の傍に指名したのだ。

つまりは、現在早久良の席となっている万里の前に。

呆気にとられるクラスと静まりかえった教室。

「北方さんには災難だったと思うよ」

同じく記憶を反芻していた建一が苦笑して言った。

静まった教室、最初に口を開いたのはチェンジを言い渡された席にいた女子。

泣きそうな「なんでぇ?」と縋る声。

建一と付き合っていたくせに、万里に乗り換えたと噂されていた生徒でもあっただけに、殊更周囲の興味を煽ったんだろう。

何を言っても無反応の万里に女子は涙ながらに、矛先を早久良へと変える。

昼ドラばりの修羅場展開にギャラリーの半数は楽しんでいただろうが口を挟もうとする人間はいなかった、教師も含め。

妙な緊迫感。

早久良から漏れたため息はこの場にそぐわなかった。


「元はオレ等の所為みたいなもんだから」

「本当にな、女の教育くらいしとけ」

「あのなぁー、フラれたの!オレは!」

やり取りを見る限りでは女を取り合った険悪さは微塵も感じない。

2人の間では彼女の存在自体どうでも良いことのように聞こえる。

「あそこでオレが割り込んでたら可笑しいだろ!」

「あっそ」

既に話に飽きたらしい万里は、視線を窓の外に向けていた。


あの時も、女が泣き付くのをこんな風に無視していた。

収拾がつかないと悟った早久良は、己の鞄を取って早々席を移動したが、当然、彼女がそれを許すわけも素直に譲るわけもなかった。

早久良の姿を認めるなり「邪魔」と言い放ったのは万里だ。

ガンっと前の椅子を蹴り移動を促せば、怯えた女子は恨みがましい視線を万里に向け、乱暴に鞄を持つと早久良に向かって振り上げていた。

予想の範疇だったし、これを我慢して受ければ今後、彼女から面倒をかけられることはないと早久良は避けなかった。

寧ろ、今済ませておこうと思いがあったから。

が、万里は見過ごさない。

早久良の腕を引き移動させると、虚しく鞄を振り回す女子を冷め切った目で見上げたのだ。

それはもう、殴られるよりも罵声を浴びせられるよりも恐ろしく身の竦むダメージ。


「格好良かったよね、あの時の万里」

ね?と同意を求められ、早久良はグッと言葉に詰まる。

いきなり覗き込んできた建一に驚いたのと、同意しかねる内容に。

「北方さん?」

更に近付く建一に体温が上がる。

心臓に悪い人だと身を引き、いきなり重みを感じた弁当箱を落としそうになった。

見れば割り箸がおかずの卵焼きに突き刺さっていた。

そうしている万里を睨み付けると、重みが消えると同時に卵焼きが奪われる。

「味はまともだな、形は歪だけど」

「大きなお世話」

一年も経っていないのに、以前のように手を使えていたら苦労などしない。

万里の口に消えた卵は諦めるとして、それ以上のツッコミも纏めて拒絶した。

「北方さん、自分で作ってきてるんだ?凄いね」

「?別に普通だと思いますけど・・・」

母がいた頃は任せっきりな部分はあったけれど、いなくなってからは必然にやるしかなくなっていた。

父が何度キッチンを丸焦げにしてくれたことか。

思い出すだけでも泣けてくる。

「ママ死んじゃったしな」

「え!?」

「マザコンの早久良には辛ーい現実だよなぁ?」

「その言葉そっくりそのまま上野に返すよ」

「ハッ、俺がマザコン?」

「ママの愛情に飢えてるからねー」

「・・・喧嘩売ってんのか・・・?」

「どっちが」

軽口を叩いていた万里の眼が本気になったのも気付いた。

薄ら笑いの下で、激情を押さえ込んでいるのも知っている。

見えない苛立ちが取り巻いても、平然と切って捨ててやれると態度で示すために。

「好きな人、出来るといいね」

「チッ・・・出来るわけねーだろ」

半分を残したまま弁当箱をしまうと、それを持って立ち上がる。

「それじゃあ、ごゆっくり」

もう付き合う気もないから、温室で食べることにする。

ふて腐れた万里が止めることもないから、形だけ断りを入れて早久良は教室を出た。

「い、良いのか?」

「何が?」

「何って、北方さん、行っちゃうぞ」

どうしてコイツが慌ててるのか。

うざくて眉を寄せれば、建一は一度口を閉ざす。

やっぱり早久良は傍観を決めたらしい。

こっちの魂胆を見抜いたわけではないくせに、無駄に警戒心が強い。

「・・・違うか・・・」

「何か言った?」

独り言に反応する建一を無視で、窓を眺めながら思い出す。

修羅場に巻き込まれたのに、ため息だけで済まし、挙げ句、女の妬みを受けようとした潔さ。

あれは、単なる打算だ。

早久良を庇ったときは気付かなかったが、今考えれば断言できる。

人が墓場まで持っていこうとした秘密を打ち明けたときと同じ、自分には関係ないと言い切った早久良だ。

絡め取ってやるつもりが、振り出しだ。

また手を差し伸べさせるところまで持ってこなくてはならない。

一度は手を貸しておいて、その先は知らないと放り出す残酷さ。

今更、放り出されてたまるか。

そんな事はさせる気がない。

こんな甘ちゃんを好きにならなきゃ、耳を貸すだけの従妹でも許してやったのに。





仲の良い従兄同士、単純にそう思っていた。

双子の姉妹から産まれたから、普通の従兄より仲が良いのも当たり前の環境にいたんだろうと安易に考える。

事実、万里は妹のように早久良を可愛がっているし、早久良も迷惑そうにしながら万里を受け入れているんだと見えたから。

だから、昼間のやり取りは、2人に抱いていた印象を覆せざるを得ない何かを垣間見た気がした。

「北方さん!」

放課後、早々に教室を出て行ってしまった早久良を追いかけた建一は、靴を履き替えた直後に呼び止めることが出来た。

振り向いた早久良が、僅かに表情を歪めたのを見逃せない。

「きょ、今日のことだけど、オレ、なんか無神経なこと言ったみたいだから」

「?」

全くそんな覚えがない早久良は首を傾げた。

「昼にさ、お母さんがその、亡くなったって話」

「そんな話した?」

本気で覚えがない。

申し訳なさそうにしている建一を前に、その件はどうでもいいとしたけれど。

「別に気にしてないけど。覚えてないし」

「いや、だって、そのせいで万里と言い合いになってたし」

「・・・驚いた?」

「え?」

「上野が普段どうかは知らないけど、いつものことだから」

建一は、万里があの後帰ってしまったことに責任を感じているんだろう。

その必要はないと言い切り踵を返せば、何故か腕を掴まれていた。

当然、早久良は真っ赤になって思わず腕を振り解いていたが。

「あ、ごめん、えっと・・・もうちょっと話がしたくて」

「う、上野のことは上野に聞いてっ」

「そんなつもりは、オレは北方さんのことが知りたいんだけど」

「わ、私の?!べ、別にこれ以上教えることなんてないからっ」

掴まれた場所が熱を持ってるようで落ち着かない。

目を泳がせ焦っているのを不信に思われないか不安に思いつつ、建一が悲しげに目尻を下げた姿に良心が痛む。

どうしてもっと、普通に接することが出来ないのか。

「万里がいないと話せないなんてオレは嫌なんだ。折角こうやって知り合ったんだし、仲良くしたいだろ?北方さんには迷惑かもしれないけどさ」

「い、い、今のままで私は充分!」

「やっぱり迷惑?」

迷惑とかではない、そんな簡単な問題ではないのだ。

それを吐き出せたらどんなに楽か。

気兼ねなく・・・羨ましく感じていた彼等のように建一の輪に加われるなら、この先の学校生活は楽しいと思う。

チャンスはぶら下がっているのに、掴めるわけがない。

でも、このままにすれば建一を傷付けて、顔を合わせるたびに悲しげにされては堪らない。

最大の譲歩として早久良は意を決す。

「と、とりあえず、クラスメイトとして宜しく」

キョトンとした建一を直視できず、今度こそ早久良は駆けだした。

「北方さん!ありがとー、また明日!!」

響き渡る声が追いかけて、早久良は更に居たたまれず走るスピードを上げた。

本当に、どうして彼とも同じクラスになってしまったのか。

万里の本音が見え隠れするたび、気付かないふりをするだけで大変なのに。

建一を知れば知るほど、見たくないものを見せられる。

それが早久良には堪らなく苦しかった。




身を潜めるに最適の場所となった屋上のタンク裏。

建一と一歩お近付き宣言をして翌日には、朝の挨拶すらストレスになりつつある。

あの人懐っこい笑顔、感情を隠さない真っ直ぐさ。

人を見付ければ所構わず声を掛け、手を振ってくる無邪気さ。

「堪んない」

仰向けに空を眺め、下手に温室へ逃げ込めない現実にため息を吐く。

「何が堪んないって?」

これが万里だったら飛び上がるほど驚いた。

以前、ここで嫌なものを見てしまった後ろめたさもあったからだが、実際梯子を登って来たのは慎だったから特別反応もしないで済んだ。

「退院できたんですか」

「してきて欲しくなかったって聞こえるんだがなぁ?」

「・・・・・・」

「しかも、上級生に対して寝たまま対応か、あ?」

軽く腰を蹴られ、早久良は渋々起き上がる。

「何で此処が解ったんですか?」

「来たらいたんだろう、お前が」

それはつまり、ここは慎のサボり場所だと言うことか。

早久良が体をずらすと、コンビニの袋を下げた慎が無遠慮に腰を下ろした。

「・・・花の世話は良いのか?」

「もう済ましました」

「ふーん」

「慎さんこそ、随分早く来ますね、改心したんですか」

通常より一時間早く登校した早久良は寝不足気味で欠伸を1つ。

こうやって座っていると眠いせいか頭が重くなった気がする。

ボーっとしていると、隣から差し出された温かい缶のミルクティ。

受け取ってからハッとする。

「良いんですか・・・?」

「甘いの嫌いだからな。」

「・・・・・・慎さん、温室行ったんですか?」

「無駄足だったがな」

「それは・・・どうも済みません、それとありがとうございます」

恐怖の対象に今でも変わりないのに、慎といることに抵抗が無くなりつつある。

それはそれで問題だろうけれど。

「で?」

「はい?」

聞き返せば睨まれ、思わず身を竦めた。

「手癖の悪い彼氏はまだ男に入れ上げてるのか?」

「またそれですか、しつこいですよ、いい加減」

元は、早久良を手込めにして万里を泣かせてやりたいと下らない計画を持っていたんだから、話題に上がるのは仕方ないとしても未だに本気でそうしようとしてるなら馬鹿にしても足りないくらい大馬鹿だ。

「あ?」

「す、凄んだって無駄ですよ!」

鋭い眼をしているからか、迫力に呑まれるも早久良は意地で返す。

顎を掴まれ力尽くで振り向かされても、気力だけでしっかり目を合わせる。

「低脳な仕返しやめれば、ゆ、有意義に時間も使えるじゃないですかっ」

「お前、人馬鹿にしたって気付いてるか?」

「一応っ、これでも発言に責任は持ってるつもりです」

「へぇ?」

「もう、これ以上上野の事で巻き込まれたくないんです!」

その為なら多少の痛みも我慢する。

覚悟はあっても、いざ、慎を前にすると恐怖で全身がガチガチになっていた。

暫く慎に射竦められた状態が続き、突然顎を掴む手が離れていった。

怒ってどこかに行くのかと思ったが、動く気配もない。

コンビニ袋をあさって中からおにぎりを取り出していて、今から朝食なのかと茫然とする頭の片隅で理解した。

次から次におにぎりを向いて食べる慎を何故かジッと眺め、その体勢から動けなくなっている早久良は何をどうしていいかも解らない。

「何がしたいんだ、お前は」

「・・・私は・・・」

買ってきたもの全てを腹に収めた頃、静かに問われた言葉。

「・・・普通に高校生活を送りたいだけです」

「送ってるじゃねーか」

尤もな返しに言葉が詰まる。

「拘ってるのは俺じゃなくお前だ」

「そ、んなの・・・」

言われなくても解ってる。

一々区切りと境界線を作って、神経をすり減らして無駄な時間を過ごしてるのは自分だ。

自然体でいられるならそうしてる。

結局何も言い返せず、予鈴が鳴るまで早久良はその場所を離れられなかった。




教室へ入るなり視界に飛び込んできたのは万里と建一と見慣れない美少女。

「おはよう、北方さん」

「・・・おはようございます」

流石に建一の親しさにも慣れて来たけれど、道を阻むように万里の机を囲まれては困る。

謝りつつ道を空けてくれたから何も言わなかったけれど、2人と並んで見劣りしない女子の存在は些か気になった。

「建一の女」

嫌な笑いで万里が教えてくれた。

「あぁ」

納得。

スッキリしたしで鞄をかけ席に座れば髪を引かれた。

「痛い、上野」

「当たり前じゃん」

喧嘩売ってるんだと悟った。

このまま受けて立っても良かったけれど、万里の手を払って振り返るだけはしてやった。

「何か御用でしょうか?」

「全然」

「それなら前向いても良いですかね?」

「良いぞ」

髪を一房しっかり握った状態でさわやかに笑う万里。

構って欲しいのは解ったし、完全遊ばれているのも解った。

どう相手をしてやろうかと考えて、万里の手首辺りからの香りに気付く。

髪を掴む手を掴み返して鼻先へ持っていけば、先程よりも確実に判る薔薇の香り。

自分の行為が三者からどう見えているのか頭にない早久良は、驚愕して硬直する面々に気付かない。

手を外し身を乗り出して今度は首筋から項辺りに鼻を寄せた。

香水は付けてから変化する。

早久良は純粋に匂いを調べていただけだが、“万里の手と頬へ口付けしている”と認識されても仕方ない行動だった。

僅かな振動。

万里が声を殺して笑っていると知った早久良は、ようやく身を離す。

「もうちょっと甘い方がいいかもね」

「クックックッ、早久良ってホント自滅する人種だよなぁ」

「は?」

何がツボだったのか、机に突っ伏して肩を震わせる。

意味も解らないし、これだけ笑ってるなら相手を必要とされないだろう。

前へ向き直ろうとして、建一と目が合った。

奇異な物でも見ている驚きようが自分に向けられてると知って、早久良は逆に「え?」と首を傾げる。

良いのか悪いのかチャイムが鳴ったため、建一達は席に戻っていったけれど、早久良には蟠りが残ったまま。

万里はまだ笑っているし。

こうなれば、気にしないのが一番だと結論付けて授業に集中することにした。





身動きの取れない泥濘。

這い上がろうと藻掻けば藻掻くだけ深く埋まって息が出来なくなる。

取り巻いているものを例えるならそんな所だ。

手を伸ばしたところで誰も気付かない、全身埋まって見えないんだからそりゃ仕方ねぇだろう。

ただ、早久良が作った香りは何故か自分を落ち着かせてくれる。

包まれる感覚と安堵。

酸素が戻ってきて、全身を覆う薄い膜か何かが寝返り程度は出来るようにしてくれる。

ごく最近では、視界もクソもない真っ暗だった世界に針の穴程度の微々たる光が差すようになった。

それがまた、温かいようなくすぐったいような、心地良いもんだから。

近付くか穴を広げるかしようとすると目が覚める。

そうすると決まって、髪に触れ撫でている手が在るわけだ。

今日も、例外なく、早久良が動物にするように撫でていた。

「・・・・・・」

起きているとバレれば止んでしまう行為。

名残惜しくてこれまた必ず寝たふりを続けるが、何故か早久良には気付かれる。

「上野、もう放課後だよ」

スルッと逃げていく指先。

万里はゆっくり顔を起こし、夕日の差す外を見て教室を見渡した。

「よく一日寝てられるね」

呆れを含ませため息をついた早久良は机上に置いてある鞄を手にした。

「あー・・・寝不足」

「ふーん。私帰るけど、上野は?」

「もう少し寝てくわ」

「あっそ」

寝不足の理由も、行動に関しても、一切口を出してこない。

これが普通の女なら、何で?と問い家に帰れと言っただろう。

「送ってやろうか?」

「サヨナラ」

「無視すんな、おい」

既に教室を出て振り向きもしない。

もう血縁者って事ではアイツをどうにも出来ないらしい。

それなら、追い詰めてやるまでの話だが。

中途半端に期待させた方が悪い。

こっちはもう、針穴の光に縋るしかないと思ってしまった。

唯一あるものを掴まない馬鹿はいないだろ。





何だかんだで結局は自分は甘いと痛感してる。

「お前らやっぱりデキてんじゃねーか」

「は?」

「教室で堂々キスして誘ったんだろ?」

「・・・・・・」

朝から鬱陶しい視線と噂。

その根源を持ち出してくる慎には怒る気もない。

ただ、話題の不快さに露骨に顔を歪めたのは事実だし、それを見て大笑いする慎を一瞥したのも確か。

「相手されなくて寂しいんだって?」

笑いながら問うて来る。

コチラの心情を知っていて馬鹿にしてくる慎が腹立たしくなって拳を握り込めば「ホラ」と差し出されたジュース。

いつも通りに屋上タンク裏。

いつもと違うのは、今が授業中だということくらい。

早久良は素直にそれを受け取ると、当たり前に隣へ腰を据えた慎に小さな溜息を零した。

「良いんですか、授業」

「誰に物言ってんだ、あ?」

「遠回しに放っておいて下さいってお願いしたんですけど、通じてませんか」

「俺が従う理由あんのかぁ?」

「・・・そうですね・・・」

どうでもいい、そう投げ出したい。

いや、そうするはずだったのに。

早久良は数日前、この噂の元となった己の行動を思い返していた。

どうりで万里が大笑いしてたはずだ。

健一が驚いて自分を凝視していたはずだ。

香水の匂いをかいでいただけが、周りにはそう見えていたなら、自分の阿呆さ加減を恨みたい。

ここで慎に普通に学校生活を送っているだろうとハッキリ言われて、今更解り切ってる事実にぐうの音も出なかった。

別に何も考えていなかったし、新たに気持ちを切り替えたわけでもなかった。

万里を切り捨てる事は揺るいでなかった。

でも、でも、だ。

落ち着いた頃に教室に戻って、万里と対峙して、アレ以来初めて素でいられた。

不本意でも、慎が何かしらの影響を与えてるのは早久良自身、笑えない事実として認識している。

そうするんだから拘る必要がない、全くその通りだと憑き物が落ちたみたいに心は少し晴れた。

疼いて仕方ない右手は少し治まった。

その矢先、普通にした結果がコレだ。

冗談ではない。

周りを利用して万里が距離を詰めて来ようとしてる。

それが一番大問題なのだ。

「従兄とは結婚できるんだと」

だからなんだと慎を睨めば、ニッと口端が上がった。

「お前、その調子だと一生男出来ないぞ」

冗談含みの言葉にズキンと右手が痛む。

「余計なお世話です」

手首を押さえ、痛みに眉を寄せ、早久良は唸るよう呟いた。

拒絶だと気付かない鈍い人ではない。

なのに、痛みで疼く右手を掴んで乱暴に引き上げてきた。

目が合って、嫌な笑い方をした。

振り解こうとした瞬間、感覚の乏しい掌に温もりが触れ、慎が傷跡に口付けてる様を目の当たりにさせられた。

愕然と思考が停止して、一瞬後、体中の血が沸騰する。

揶揄なら罵声浴びせて殴り飛ばした。

けれど、向けられる目に体が竦んで見透かされる恐怖を隠せなかった。

出来たのは、拘束が緩んだ隙を突いて場を逃げ出すことだけだった。






終了を告げるチャイムと同時に教室に入った早久良は、机に伏せて眠る万里を視界に捉えた。

屋上からココまで全速力だったから息は上がっているが、騒がしくなる周囲に構わずピクリともしない万里を見た途端、自分を覆っていた恐れが消えた。

代わりに込み上げる想い。

諦めに近い溜息をついた早久良は、眠る万里の隣で歩みを止めて髪に触れた。

細く柔らかで触り心地抜群。

難点は・・・こうしてしまうと万里が目を覚ましてしまうことくらいだ。

挙句に狸寝入りをかまして身動ぎひとつしない。

「・・・・・・・・・」

毎度これなのだ。

そうまでして撫でて欲しいのかと突っ込み所は数多。

が、それを許し、あまつさえ望んで求めてくる万里を拒めない自分が一番駄目なんだろう。

早久良は手を引くと席に着いた。

万里を撫でていた事で向けられる視線と耳障りな小声が突き刺さる。

耐えられなくて抜け出したのに、さっきのように苛立たしさは感じなかった。

そんな変化にやはり慎は良くも悪くも自分に影響を与えてるんだと思う。

決して、嬉しくはない。

受け入れがたい。

けれど有難い。

塞がっていた視界が戻ってきているから。

それが己の首を絞める結果に繋がってたとしても。

早久良は持参の弁当を取り出してから未だ伏せたままの万里を振り向いた。

「上野」

反応はない。

「昼だよ、いいの?」

呆れを含ませれば、やっと、酷く気だるそうに顔を起こした。

無駄に色気を振り撒いて、無駄に艶っぽいから性質が悪い。

こいつが髪をかき上げる動作で何人の女子が頬を染めているのか。

「・・・何処いた?あそこには居なかったろう」

「上野が来るの分ってて行くわけないんですけどね」

「今回のは俺に落ち度はないぞ」

「分ってる。それにもう気にしてない」

「あ?」

「私が上野に手を貸さないのは変わらないから」

「・・・あいつがいるからか?」

目を見開いて、直ぐに表情を凍らせた万里。

「あんまり関係ない。確かに上野を押し付ける気は満々だけど、最初から関わるの嫌だって言ったはず」

アレ以来、付け入れられる要素を自ら作っていたんだから万里の言わんとしてる事は想像できる。

これを突然だと思ってるなら、万里は随分と買い被ってくれてる。

「今更、んなもん通るわけないだろう」

強く掴まれた右手首。

「だったらこんな傷残してんなよ」

「最高に後悔してる」

心の底から。

万里に手を差し伸べたことをこの先永遠後悔し続ける。

「万里、北方さん、一緒に昼食べよう。あ、彼女も一緒だけど良いかな?」

幸せオーラ全開で横に美少女を置いて側に来た健一に万里は目もくれない。

流石に揃って無視は出来ないと視線を向ければ、険悪な空気に気付いてか不思議そうに首を傾げていた。

「お邪魔だった?」

掴まれている手、それから無言の万里、最後に早久良へ視線が向く。

しかし、自分に話を振られても迷惑で溜息混じりに万里を見る。

「離せ」

「足掻いたって結果は同じなの解ってんだろ」

「その間に誰かが助けてくれれば万々歳」

「無理に決まってんだろ」

「・・・好きな人、できるといいね」

「早久良っ!」

「今まで通り、聞くだけはする」

押し問答に疲れた早久良は無理に掴む手を外すと弁当箱を持って立ち上がった。

「き、北方さん?」

「約束あるから」

「え?でも・・・」

「お前、友達いないじゃねーか」

主にお前の所為で、と言い返したいのを堪えてタイミングよく図体のでかいタトゥーだらけの先輩を見つけた。

何故二年の教室にいるかと疑問は浮かんだけれど、これを利用しない手はない。

「あの人と」

揃ってドアの方へ視線が動き、誰もがギョッとする。

見るからに危険人物が教室を覗き込んできたからだ。

これには早久良も嫌な予感がした。

案の定、タトゥーだらけの歩と目が合った。

続いて聞こえた声に眩暈までする。

「いた?」

などと歩を押しのけつつ顔を覗かせたピアス男の充。

「あ、いたいた、早久良ちゃん」

ハート乱舞にゲッソリしつつ、行かないわけにもいかずに彼等の側まで移動する。

痛い視線など完全に無視。

「デートのお誘いなんだけど、来てくれるよね」

さり気に回された腕を叩き落とすも、少しも動じない。

流石は充だ。

「どーゆー事ですか?」

「ああ、慎がね、大っぴらに君と仲良くしてもいいよって許可くれたから早速来てみたんだよ」

「嫌がらせか・・・」

「違うよ、失礼な。親切心だよ」

「は?」

校内一、お近づきになりたくない№1の人達が人目も憚らず態と声をかけてきた事の何処が親切なのか。

「楽しい学園ライフを謳歌させてあげる為のね。例え短くても」

「っ・・・流石に、慎さんと付き合ってるだけあって嫌な性格だね、ミッチー」

「優しいとはよく言われるんだけどね、女の子には」

「歩さんの方がよっぽど優しいと思うけどね、私は」

「だって。良かったね、歩」

「・・・・・・・・・」

「デートは有難くお受けするんで、早く移動してもいい?」

聞き耳を立てる周囲と、何より万里の静けさが恐ろしい。

あの絶望しか映さない瞳が何を思ってるかなど、知らないほうが身の為だ。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ドロドロした感じが最高に好きです! 最初に1から見た時、視点の切り替わりに混乱しちゃいましたけど理解できると堪らなく面白かったです。 二人の関係性が絶妙。それに憧れの人の存在、不良くんたち…
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