Count.1.7 アシスタント
少し歩いた所に一台のワゴンが停まっていた。
「さあ、乗って」
「ちょっ!ほんとにどこに連れていく気ですか!?」
ちょうどその時ワゴンの扉が開く。中には二人の男女が乗っていた。
「オレはタカシ。」
運転席の男が言い、後部座席の女が続く。
「私はユリ。」
「二人は私のアシスタントよ。大丈夫。目的地に着いたら全て話すわ。」
「…………。」
無言のまま陽は葉月と目を合わせた。
戸惑いながらも仕方なくオレと葉月は言われるがままワゴンの1番後ろの席に乗り込むと、そのワゴンはすぐにどこかへ向けて出発した。
オレは不安でしょうがなかった。この人たちは誰なのか。このマキという人は誰なのか。ただあの時マキさんが言った
「私を信じて。」
よく解らないけどあの言葉に力を感じた。悪い人じゃない…。そう感じたんだ。葉月は…何を感じてるんだろう…。
「とりあえず先にその足をどうにかしましょう。」
数分間の沈黙を破りマキが口を切った。
「大丈夫。ただのねんざですよ。きっと」
さっきユリと名乗った女が振り返りオレを見てにこりと笑う。
「ああ、そうですか…。」
“きっと”が少し気になるが正直オレはほっとした。
「君。君。」
タカシがバックミラー越しに陽に話しかけてきた。どうやら話し掛けるタイミングを探っていたらしい。バックミラー越しに目を合わせる陽。
「そこの席に何枚かTシャツが置いてあるだろう。」
確かに几帳面にたたまれたTシャツが何枚か置いてあった。それを手に取って見せる。
「オレのだけど良かったら着替えたほうがいい。」
少し照れているらしい。以外と口下手なようだ。
今着ている他人の血液のついたTシャツを自分で改めて確認してみる。
「ありがとうございます。」 陽はその場で着替える。
「あなたたち、本当に運がよかったわね…」
「いったい…あの電車には何人ぐらいの人が乗っていたんでしょうか…」
葉月がか細い声で問い掛ける。
「そうね…。ラッシュの時間帯じゃなかった事だけが救いね…。何人乗ってたかまでは解らないけど、死者は確認されているだけで100人近くはいるそうよ…。」
「…………。」
陽と葉月はとても何かを言える心境ではなかった。
タカシとユリは複雑な表情をしている。
そして、どこか遠い所を見続けるマキの目はどこか哀しみを帯びていた…。