Count.1.4 地獄
「なぁ…葉月…。」
「ん、何?」
「おまえ…」
葉月の体に目を向けた後、言葉を続ける。
「おまえ、どこも怪我してないよな?」
オレは足も痛むし、服には自分のものではないが血液がついている。あとは打撲だろうか、腰等が痛い。葉月は怪我どころか服にも事故以前と変化が見られない。乗客も何人乗っていたのかは知らないが死者も多数いるようだ。言葉は悪いがそれに比べればオレのこの怪我も幸運と呼ぶ他に何もない。それ以上に葉月はツいていたのだろうか。
「うん。何かわかんないけどオレはこの通り。目が覚めた時も痛みはなかった。それよりも陽の事が気になって気になってしょうがなかったからな。」
「葉月…」
「それに…」
「……。」
「オレが怪我してたとしてもおまえのこと見つけるまでは必死になって探してたよ…。おまえみたいにな…。」
陽は涙目を葉月に気付かれぬよう遠くを眺めるふりをした。
数分だろうか、二人の間に沈黙が続いたが陽が口を切った。
「何かオレら怖いぐらいにこの状況を冷静に受け止めてるよな。」
「実際はこんなもんなんじゃないか?」
少し間を空けて陽が言葉を続ける。
「葉月が…。」
陽に目を向ける葉月。
「葉月がオレを助けてくれたんだよな…?」
葉月は目線をゆっくりと下に落とす。
「声が聞こえたんだ。」
「声?」
「ああ。おまえの声が。」
「ん……んっ……。」
目を覚ます葉月。しかしそこはさっきまで何気ない会話を交わしていた電車の中とは思えなかった。窓ガラスは割れ、ぐったりとしている人間、血の匂い。まさに地獄だった。