Count.1.3 再会
「葉月ー!葉月ー!」
オレはオレと同様に担架で寝ている人間、軽傷で済んだのか座っている人間を見回しながら必死で葉月の名前を叫んだ。
“こんなオレなんかのために誕生日プレゼント用意してくれたのか…”
涙があふれてきた。
“こんなことなら出掛けないで一緒に家でゲームでもしてりゃよかった。無理してこの電車に乗らずに次の各停でもよかった。そもそも何なんだよ。この事故は…”
「聞いた?運転手寝てたらしいわよ。」
「運転手も即死だったらしいわね。」
救助の手伝いに来ていた近所の主婦だろうか。オレの心の声が聞こえていたかのようにオレの疑問に答えてくれた。でもオレは
「ありがとう」
と言える心境じゃなかった。
“運転手が…寝てたか…”
なぜだかオレはその時だけ、その時一瞬だけ“悲しみ”や“怒り”というものを忘れたく皮肉にもどこまでも広がる青い空をほんの数秒眺めていた。
“葉月を探さなきゃ”
左足はたぶんひびが入っているだろう。でもオレは待てなかった。葉月の元気な顔を見ればこの痛みも吹っ飛ぶ気がした。
立ち上がろうとした陽だが、あまりの痛みによろけてしまった。
が、しかしよろける寸前に誰かがオレを支えてくれた。
「すいませ…」
支えてくれた“誰か”がオレの目に映った瞬間、オレの中から安心感とうれしさと涙がこみあげてきた。
「…葉月…。」
オレを支えてくれていたのは葉月だった。
オレは涙が止まらなかった。声をあげて泣いた。人目なんて気にしなかった。不安や寂しさ、大事な奴を失った時の怖さからやっと解放された。
泣いてる陽を葉月はただ強く抱きしめていた。
オレもようやく平静を取り戻し葉月に支えられながら近くのベンチに座る。
が、しかしオレは葉月が不思議でたまらなかった。