Count.1.21 霊力
覚悟はできている。もう後には引き返せない。マキさんの明かす全ての“真実”が、たとえ笑って済ますことのできない“現実”だとしても、オレはもう、逃げない。もう逃げないからな。葉月。
マキがユリに目配せをする。ユリが一度だけ頷くとタカシを連れてどこかへ行ってしまった。
再びマキは真剣な面持ちへと変わる。しかしすぐには答えようとせず、ただじっと陽の眼を見続けていた。陽の眼もまたマキの眼だけを捕らえている。一度マキが葉月に目を向けてから、陽に視線を戻すとゆっくりと話し始めた。
「一つ目は、陽くん。落ち着いて聞いてね。」
「…はい。」
「…あなたが、この犬が見えるのは“霊力”という力があるからなの…。」
「…霊力……!?」
「そう…。私があなたたちと接触できたのも、あなたの力に引き寄せられたと言っても過言ではないわ。でもまだとても微弱なものよ。あなたの力がどれだけのものなのか失礼ながら試させてもらうべく、この犬の霊も一緒に連れて行った。そしてあなたたちを探し出し、あなたはさも当たり前かのようにこの犬の霊を霊視していた。あなたはまだ気付いてないけどその力は、もっと……強くなる………!」
「…………………。」
陽の頭は混乱しきっていた。
“オレに霊力…?今までそんなの感じた事もないぞ。
なんで急に…。
一体どうなってんだよ……。まさか…、この事件が引き金に………?。いや、絶対にそう決まった訳じゃないし、第一これは夢だ。そうだ。そうに決まってる。こんなこと実際にある訳ないじゃないか。電車事故も、マキさんが話した事も、マキさんという人自身も、全部夢だ。目が覚めたらきっと今まで通”
「陽……!!!」
我に返ると、葉月がオレの肩を掴んでいるのが目に入った。
「…葉月…。」
“オレは毎回毎回こいつに助けられて来た。オレが頼りない分、こいつがしっかりしてくれてオレが道を踏み外しそうな時には正しい道に導いてくれた。オレはお前と出会うまで友達とかって照れ臭いし面倒だとか思ってたけど、こいつは、こいつだけは本当に『友達』だって胸張って言えるんだ。”
「なんかオレ…情けねーな…。」
“バーカ。オレはお前が情けねーなんて思った事、一度もねーよ。高校入ったばっかの時、内気だったオレの事すげー気にかけて喋りかけてくれたの、あん時はうまく言えなかったけど、本当はすごく嬉しかったんだぜ?そん時初めて思ったんだ。『友達』っていいなって。なあ?陽、オレらの友情は一生モンだよな。”
マキが二人から目を離し沈痛な面持ちで俯く。
“……私がしっかりしないと……”