Count.1.2 葉月
「ねえっ!ここにケガ人がいるの!早く助けて!」
「ここが現場です。とても見るに耐えられないという状況です。」
騒がしい声にオレは目を覚ました。
“生きてる…痛い…”
オレの上に何人もの人間が乗っかっていた。しかしおかしい。窓の外には空しか見えない。その時オレは気付いた。
“電車は、オレらの乗ってた車両は横転したんだ。あの時オレに向かって飛んで来た奴もそういうことだ。”
何かを思い出したのか辺りを見回す陽。
“葉月…。葉月は?…”
確かにこの“事故”が起こる前までは隣にいた。しかし近くに見当たらない。
“動くに動けない…。足が痛む…。”
上に乗っている奴らが動く気配がない。気絶しているのだろうか。それとも…。そもそもオレは一体どのぐらい気を失っていたのだろう…。
その時、おもむろに晴れた空を映し出していた窓のドアが軋む音を出しながらゆっくりと開いて行くのをオレの目は確認した。
「おーい!生存者は返事をしてくれ!」
“助かった…”
救急隊の人だろうか。何人かの人が入って来てオレの上に乗っている人たちをどけていく。やはりもう意識はないのだろうか…。オレは下敷きになっていたオレ自身が生きているという事に驚いていた。
オレは救急隊の人に担架で運ばれ外に出た。そのまま救急車に乗せられるかと思ったらそうではなかった。オレもそれを望んでいた。他に大勢いる重傷の患者が優先らしい。オレはかつて乗っていた、今は見るも無残な電車から数十メートル離れた草むらの上に担架ごと寝かされた。
人間とは醜いものだ…。オレは今になって本気で葉月のことが気になった。葉月はオレの親友だ。本当に大事な奴だ。それなのに…それなのにオレは、自分が助かる事で精一杯だった。もしかしたら葉月はまだ車内にいるのかもしれない。許してくれ、葉月。
“今、行く…。”