Count.1.18 真実
マキは何一つ顔色を変えないまま、あくまで事務的に話を進めようとする。
「とりあえず座りましょう。」
あまりにも淡泊なその言葉の響きに陽たちは少し戸惑っていた。
たった今、全身全霊でこの人たちを信じていこうと心に決めたばかりなのに、このマキという人はオレ達の心の中を見透かしているように態度をよく変える。
オレは冷静を装いつつ、ドアから少し離れたテーブルとイスの元へと歩き出す。
中央に四角いダイニングテーブルにイスが4脚。陽とマキが向かいあう形で席に着く。ユリとタカシもイスに近づく。葉月が陽の隣に座った。ハッとするユリとタカシ。二人に目配せするマキ。
「オ…オレはいいからユリちゃん座りなよ。」
「えっ…で、でも…。」
「いいから。」
「ご、ごめんなさい。」
残り一つの席にユリが座った。
葉月が気まずそうな顔をして口を開く。
「あっ…。すいません。タカシさん。よかったら、オレの席に」
全てを言い終える前にマキが口を挟んできた。
「大丈夫よ。葉月くん。葉月くんが気をつかうことないわ。こう見えて彼、体力あるから。ね?タカシさん。」
「えっ?あ、あぁ。大丈夫、大丈夫。何か立ってたい気分なんだよねー。ありがとう。葉月くん。ハハハ。」
葉月はタカシの目をじっと見続ける。
“この人もユリさんも、オレと目を合わせようともしない…”
重たい空気が流れる中、マキが口を切った。
「陽くん。葉月くん。今から全てを話すわ。どうして私があなたたちに近づいてきたのか。そして今、葉月くん自身が疑問に思っていること、」
葉月が目を見張る。
「二人が感じている違和感。……。でも、話をする前に、最初に一つだけ約束してほしいことがあるの。」
「……。はい……。」
二人の声が重なり、お互いに目を合わせる。
「これから話す 二人の“真実”を目を背けずに きちんと 受け止めてほしいの。」
マキは二人の眼を見て一言、一言、ゆっくりとそしてはっきりと告げた。
陽と葉月は心を落ち着かせるために一度、深く目を閉じる。再び開いた時には、二人は今まで見せたこともない力強い眼をしていた。そしてお互いを一瞥するとマキに視線をもどし、落ち着いた声で
「はい」
と告げた。