Count.1.15 不信感
「いたいた!大丈夫?」
突然の声に驚き、陽達は声が聞こえてきた方に振り向く。
陽はその‘相手’に驚いてというよりは少し不信感を漂わせながら、ぼそり。と呟いた。
「タ、タカシさん……。」
「なかなか来ないから心配したよ。なにしろ真っ暗だしさ。」
ひょうひょうとした態度と‘真っ暗’なのが、さも当たり前かのようなタカシの発言に陽は少しムッとした口調で話す。
「何でここ、こんなに暗いんですか?」
「えっ…?えっと……それは……。」
「葉月も何か言ってやれよ。」
その瞬間タカシの表情が強張る。
葉月が何か言葉を発しようとした時、先にタカシが口を開いた。
「分かった!とにかくマキさんの所へ行こう。話はそれからだ。」
陽は納得のいかない様子でタカシを睨みつけた。しかしタカシはわざと気付かない振りをして歩き出す。 真っ暗な階段をタカシに続いて上っていく二人。
タカシは平然とすたすたと歩いて行く。
「ちょっと!歩くの速いんですけど。」
「あ…ごめん。君…、陽くん、怪我してるもんね。」
さっき、その事を葉月と話したばかりなので、もうその事には触れたくないのか陽は答えようとしなかった。
「あのう、マキさんて…一体何なんですか…?」
葉月が尋ねたが、タカシは反応しようとはしない。
「シカトですか。」
陽が口をはさむと今度はちゃんと慌てて反応をするタカシ。
「えっ。何?」
「葉月が聞いてるじゃないですか。」
ほんの一瞬、タカシの表情に焦りが見えた。
「ごめん。ちょっと考え事をしていて聞いていなかったよ。もう部屋に着くから。」
タカシは笑ってごまかす。
陽は、足を止めた。
「タカシさん。」
さっきまでの声と明らかにトーンが違ったので陽が真剣な話をしようとしていると気付いたのだろう。タカシも足を止め、陽の方へ振り返った。
「……。何だい…?」
お互い、一歩も譲らず眼を離そうとはしない。