Count.1.13 夜の学校
暗闇の中、コツ、コツと靴音を鳴らし階段を踏み締める。
陽は暗闇の中の恐怖と三人に置いて行かれた怒りで少し興奮気味だ。
「なぁ。つうかさ、ここ何なんだよ。何でこんな暗いの?まさかここ全体さっきの部屋と同じ状態なのかよ?ってかあいつらこの真っ暗な中普通に進めるわけ?ってか普通置いてく?」
葉月は陽とは真逆で冷静沈着だ。
「落ち着けって。オレが知るわけないだろう。暑いんだからべたべたくっつくなよ。」
もはや陽は葉月にくっついている状態だった。一瞬陽は葉月から手を放したが数秒とたたないうちにまたしがみついていた。
呆れたように葉月が鼻で笑っている。
一歩ずつ、一歩ずつ前へ進む。階段をのぼる。暗闇にも目が慣れてきた。
「なぁ…」
葉月がぼそりと口を開く。それだけなのに陽はあせってしまう。
「なっ、なんだよ。」
「学校の怪談みたいで楽しいな。」
陽は呆気にとられ、少し間をおいてからぼそりと呟いた。
「…。学校じゃねーし。」
「でもさ、陽。学校って昼間は楽しいとこなのに何で夜になると怖いとこになるんだろうな?」
「えっ…。本気で学校の話かよ…。そうだな…。やっぱりさっき言ってた映画とかの影響があるんじゃないか?」
「まあ確かに。つまり夜の学校=怖い場所にしたのは映画ってことか?だったらあんな映画がなかったら夜の学校=怖い場所の定義が成り立たないって事だよな?」
「うるせーなぁ。おまえはいちいち理屈っぽいんだよ?いいか学校とか場所なんて関係ないんだよ。重要なのは“夜”だろう。学校が怖いんじゃなくて夜だから怖いんだよ。それにそもそも夜間学校だってあるんだから要は明るさだろ。明るいお化け屋敷なんてないじゃないか。」
「ははは。納得。」
「要するに明るさがあれば切り抜けられるんだよ。どんなことも。苦しい時も悲しい時も前向きに考えれば明日は晴れる。笑える。今日の事故だってそうだ。ただ1番大事なのは生きてること。今オレもおまえもちゃんとここにいることだ。これからもな。」
葉月は何も言わずに一度だけ頷いた。どこか遠い目をして。