Count.1.12 恐怖心
“自動ドア…。電気は通ってるんだ…。”
三人の後を追い、マキの後ろにいたあの犬もビルの中へと入って行った。
「あれ?なぁ葉月。さっきの犬、車にいたか?」
「えっ。さぁ?乗ってたからここにいるんじゃん?」
「まぁ…、そうだな。。」
そして陽たちもビルの中へと足を運んだ。
中へ入り、まず驚いた事は想像以上に暗いということだ。いや、というより真っ暗だ。もう日も沈みかけてはいるが、夕日の光りくらい差し込んできてもいいはずだ。その上マキたちの気配も既になかった。
「マキさーん。タカシさーん。」
陽は隣にいる葉月にしか届かないような声のボリュームで呼び掛けた。
人間というものはやはりこう暗い場所だと警戒心というものを持ってしまうのだ。そのため自然と声も小さくなってしまう。
もちろん、そんなか細い声で気配さえも感じられない人間に届くはずもなく二人は自力で三人を探すことにした。
とりあえず、一階にある数部屋のドアの一つを開けてみた。
案の定、部屋の中も真っ暗だった。窓ぐらいついているはずだ。まだ夜でもないのになぜ光が差し込まない。
陽は電気を付けようとスイッチを探す。電気が通っていることはさっきの自動ドアで確認済みだ。
壁を手探りしているとスイッチを見つけた。カチ。スイッチを入れてみる。しかし、付かない。何度も入れ直してみるが、やはり付く気配すらない。蛍光灯でも切れているのか。暗闇の中にカチカチという音だけが響く。
次第に陽の中には恐怖心が生まれてきた。
「葉月。電気つかないし。何でこんな真っ暗なんだ!?ってかあいつらどこだよ!」
「陽、落ち着けよ。たぶん遮光カーテンか何かじゃないのか。」
“カーテン?でも外から見た時カーテンなんか付いてたか?いや、外見のインパクトに圧倒されていちいち窓まで見てなかった。”
「何でカーテンなんか閉まってんだよ。」
仕方なくオレたちは上の階へ移動することにした。