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終わってから気付くのでは遅いのです。愛情というものは気付きにくいものですから・・・。
楽しんで頂ければ幸いです。
作:ガイハン・ボシ


 ふと目を覚ました。何だろう、起きる直前の記憶がまったく無い。なぜ意識を失ったのかも思い出せない。
 今気づいたが、妙に視界が高い。すぐ右横に電灯がある。下を見てみると地に足が着いてない。例えじゃなく文字通りに。
(・・・!?!?!?)
慌てているといつの間にか着地していた。
 人がいる。街中なんだから当たり前だ。声を掛けてみたが全員に無視された。ちょっとムッとする。肩を掴んで呼び止めようとしたら手がすり抜けた。
(・・・???)
 さっぱり訳がわからない・・・というわけでもない。この状況からひとつの仮説が考え付く。非科学的だがそうとしか思えない。
 オレは、幽霊ってやつになってるようだ。まさか実在していようとは。
 ということは、オレは死んでしまったということになる。
もう一度飛んでみようとしたが無理だった。何でだ?まぁいいか。
「なんじゃ?死んだというのに能天気なやつじゃの。」
ん?声掛けられた。オレが見えてるってことは・・・
「霊能力者?」
「おしいがハズレじゃ。」
「じゃお仲間さんだ。っていうか先輩?」
「幽霊に先輩も後輩も無いと思うがの。その通りじゃ。」
ちなみに口調はおじいさんしてるが、外見は中学生くらいだ。高校生のオレよりちっちゃい。
「見た目は子供、頭脳は大人・・・?」
「・・・何か言ったか?」
「いや別に。」
ちょっと自分の中でややウケしただけだ。気にするな。
「確かに小さく見えるが、死んだ当時がこの姿だっただけで実年齢50歳くらいじゃぞ。」
「その年齢でもその口調はまだ早い気がするが。小さい子供が頑張って背伸びしているようにみえる・・・。」
「ほっとけ。」
わかった。この話題には触れないでおこう。
「それでぬしよ。死んだ、ということは自覚しておろう?悲しくはないのかの?」
「別に。オレが死んだって悲しむような奴なんかいないし。嫌われてるからな、オレは。オレも生きてて楽しくはなかったし。死んだってそんな困らねぇよ。」
親には文句ばっかり言われるし。
数学の城田もオレがいないほうが授業もやりやすいだろ。
昔は仲良かったメグとは喧嘩ばっかしてるし。
オレが死んでもなんともねぇ・・・よな?
「ほぅ・・・。まぁいいがの。ところでぬしよ。これからどうするつもりじゃ?」
「別に。何も考えてねぇよ。っつーかどうするべきかもわかんねー。」
「それなら自分の知り合いにお別れをしてくるのはどうじゃ?ほとんどのもんはそうしてからあの世へ逝っとるぞ。」
『お別れ』か・・・。オレには必要ねぇな。
「めんどくせぇなー。このまますぐには逝けねぇのか?」
「望めば逝けるはずじゃがの。ぬしよ、まだこの世に未練があるようじゃの。」
「バカ言うなよ。オレに未練なんかねぇって。・・・あっ、そういえばオレどうなって死んだのか覚えてねぇんだよな。死体も見あたらねぇし。」
「おぬしの死因は交通事故じゃよ。ついさっき、そこの交差点で轢かれとったわ。『身体』は今頃病院じゃろうな。」
なるほどね・・・。自分の死体を見る気にはならないが、ここでじっとしてても埒が明かないしな。行ってみるか。ついでに、親の顔でも拝んでおこう。この近くで病院といえば・・・あそこか。
「んじゃちょっと行ってくるか。じゃあな、チビ助。」
ゴッ。殴られた・・・。痛くないけど。幽霊は痛みも感じないらしい。


 病院に着いた。まだ手術とかやってんのかな?もうとっくに死んでんのに。
 突然、男が病院に駆け込んできた。城田だ。
 城田っていうのは数学の教師で、生活指導の顧問でもある。オレはコイツに散々お世話になっている。
 その城田がなんでここに?どうやら医者と話し込んでいるようだが。オレの話をしているようだ。城田の顔色は真っ青だ。
 おいおい、何でそんな顔すんだよ・・・。散々ひとのこと怒鳴り散らして、オレが居なけりゃ仕事が減るのにとまで言っていたあんたはどこへ行ったんだよ?何で、そんな悲しそうな顔してんだよ・・・。
 オレは居心地が悪くなって、そこから去った。


 待合室には、メグがいた。いつも通り怒った顔をしている。
「こんなことで死んだら承知しないわよ・・・。ちゃんと、生きてかえってきなさい。頼むから・・・生きててよぉ・・・。」
 メグが・・・泣いてる。
 訳が分からない。あれだけ嫌ってたのは何だったんだよ。顔も見たくない、どっか行けとか言ってたのはどこの誰だよ・・・!好きな女にそんなこと言われて、結構ショックだったんだぜ?今さらそんな表情見せんじゃねぇよ!!
 初めて、メグを殴りつけた。もちろん、オレの拳はすり抜ける。もう、彼女に触れることすらできない・・・。
 零れ落ちる涙を拭ってやることもできず、オレはその場を離れるしかできない。もう彼女の涙を見ることに、耐えられなかったんだ。


 手術室の前に母さんがいた。ずっと、祈るようにして手を組んで目を瞑っている。泣き腫らして涙も出ない様子だ。もっと出来のいい息子が欲しかった、とこぼしていたのは本心じゃなかったんだと、今さら気づかされる。いつもは理由を探してでも喧嘩していたのに、今はなぜか、母さんのために何かしてあげたかった。
 親父がそわそわと扉の前を行ったりきたりしてる。あんた、仕事はどうしたんだよ・・・。いつも息子のことよりも仕事を優先してきたじゃねぇか。いつから息子のことでそんな情けない顔するようになったんだよ!


 何なんだよ・・・。なんで皆いつもと違うんだよ・・・。なんでそんな顔してんだよ・・・。
オレが死んで悲しむような奴はいない、オレは誰にも愛されてなんかいないんだと思っていた。でも違ってた。全部オレの思い込みだったんだ・・・。
失って初めて大事なものに気づくと、よく言う。
オレは、命を失って初めて皆からの愛に気づいた。気づいた時には、もう手遅れだった。
涙を流しながらつぶやいた。
「何でオレ、死んじまったんだろう・・・。」
「おぬしは、自分からトラックに飛び込んだんじゃよ。」
振り向くとチビ助がいた。何でこんなところに・・・?いやその前に、今こいつなんて言った?
「オレは・・・自殺したのか?」
言った瞬間、全部思い出した。オレは、自分の孤独な人生に嫌気が差して自分で命を断ったんだ。
「何てバカなことを・・・。」
「後悔、しておるか?」
「オレは、人からこんなに愛されてたなんて、ちっとも気づかなかった・・・。他人の身になって考えようとせず、いつも自分のことばかりで・・・。だから、こんなバカな事をやってしまったんだ・・・!クソッ!!」


 突然、手術室の扉が開いた。
「先生!うちの息子は・・・・?」
母さんがすかさず医者に詰め寄った。
 オレは・・・恐怖した。結果は分かりきっている。オレが幽霊として出ている以上、オレは死んでしまってるんだ。結果を聞いた時の母さんの絶望した表情を見るのは、怖かった。それでもオレは見届けなければならない。オレにはその義務がある。
 医師は答える。
「手術は・・・成功です。息子さんは生きています。」
 何だって?どういうことだ!?
「ただ、意識が回復しません。もう取り戻してもいいはずなんですが・・・。原因は不明です。」
 どうなってるんだ・・・?
「おい!これはどういうことなんだ!」
「ふっ。ぬしはまだ死んどらんということじゃよ。ぬしの今の状態は、俗にいう『幽体離脱』というやつじゃ。」
「『幽体離脱』・・・?・・・!じゃあオレは、『身体』に戻ることが、生き返ることができるのか!?」
「もとより死んでおらんがの。また『身体』に戻ることはできる。」
ふっ・・・と、全身から力が抜けた。
 本当に・・・よかった。
「『身体』に戻れば今のことはほとんど忘れるじゃろう。それでも、その気持ちだけは忘れぬようにな。」
「・・・ああ。早速戻ることにするよ。世話になったな。元気でな。」
「おぬしもな。」
オレはすぐに『身体』に戻った。瞬間、意識が溶けていくような感覚におちいり、意識が途絶えた。



 ふと目を覚ますと、そこは病室だった。
 オレは今まで、何してたんだったかな・・・?なんだか、胸の奥が温かいもので満たされたような気分だ。
 部屋の扉が開いて、メグが入ってきた。俺を見て一瞬うれしそうな顔をして、すぐに怒った顔で詰め寄ってきた。
「あんたねぇ!なに事故ってんのよ!あたしらがどれだけ・・・!」
メグの言葉は途中で途切れた。オレに抱きしめられたからだ。
「ゴメン。でも、なんだかこうしていたい気分なんだ・・・。」
メグはしばらく硬直していたが、そのうちにオレの背中に手を回してきた・・・。




「ふむ。これなら大丈夫そうじゃの。二度と同じ過ちはおかすまい。」
わしは彼を救うことが出来たようで、満足した。
 わしはわしと同じ過ちを冒す者を、一人でも減らそうと努力している。また、一人の道を正すことができた。
 さて、また過ちを冒そうとする者を探すかの。


愛情とは見えないものなのだと思います。
彼が気付いてくれてよかった・・・。
読んでくださり、ありがとうございます。あなたにも何か得るものがあったなら、それを大事に生きてください。













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