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あくの博士の日常

作者:くらげ丸
 このお話の舞台は西暦2030年の日本になります。
 世界は相変わらず平穏でありました。
 そんな日本のとある地方に『あくの博士』と呼ばれるお爺さんが住んでいました。
 只今の時刻は丁度朝日が顔を出し始める午前6時になります。
 さて、彼の一日に注目してみましょう!

 午前6時
「ふははは、今日も良き一日の始まりじゃ!」
 陽の差し込まぬ暗い寝室、大声で叫ぶ事からあくの博士の一日が始まります。
「今年こそ世界征服を果たそうぞ!」
 このあくの博士、現役時代に天才と謳われた程の才能の持ち主でしたが、会社勤めの宿命と言いましょうか、その才能は全く生かしきる事無く定年を迎えてしまいました。
「ふはは、朝飯がわしを待っておる、いざ参らん!」
 あくの博士は老体に似合わぬ軽快な動きでベッドから起き上がると、寝室からリビングへ赴きました。
「博士、お早う御座います♪」
 なんとリビングには、あくの博士の孫ほどの外見の少女が朝食を用意し、彼の起床を待っていました。
「ふはははは、今日もワシの最高傑作『さとみちゃん』は絶好調じゃ!」
 はて? 今博士は目の前にいる少女を最高傑作と仰いました。
「わー、博士ありがとー☆」
 博士に褒められたさとみちゃんは、過剰な喜びの表現を示しました。
「ククク、ワシの貯金と退職金を全てはたいて作り上げた最高傑作だけはあるわい!」
 博士が満面の笑みを浮かべながら言いました。
 どうやらこの『さとみちゃん』と呼ばれる少女は、博士が定年退職をした際、手持ちの全資金を投入し作り上げたアンドロイドの様です。
 しかし、このさとみちゃんを作り上げた所までは良かったのですが、手持ちのお金を全て使ってしまったので収入源が年金しかありません。
 これではいつ世界征服が出来るのでしょうか? 博士だけが知っている事でしょう。

 さて、さとみちゃんお手製の朝食メニューですが、

・温かいご飯。
・油揚げと豆腐とわかめの入った合わせ味噌汁。
・焼き鮭。
・納豆、これなくして朝は語れません。

 どう見ても可愛い彼女から作ってもらいたい朝ごはんランキングに入ってそうなメニューですね。
 あくの博士は食卓に並べられた朝食をあっと言う間に平らげました。
「ふはは、今日も美味じゃったぞい!」
 あくの博士はさとみちゃんの頭を撫でました。
「そう言って貰えると、さとみちゃんも嬉しいですぅ~!」
 頭を撫でられて舞い上がったさとみちゃんは嬉しさのあまり博士に抱き着きました。

 午前7時
「わしは散歩に行ってくるぞい!」
 そして博士は、日課のお散歩へと向かいました。
「行ってらっしゃいませ♪ ご主人様☆」
 さとみちゃんがお散歩へ向かうあくの博士を可愛い仕草で見送りました。

 ブロロロロ……。
 博士が暫く散歩をしているとバイクの音が聞こえて来ました。
「博士、お早う御座います!」
 バイクに乗った男は爽やかな挨拶をし、いかにも好青年な笑顔を見せます。
「ふははは、今日も調子が良い様じゃのう!」
「はい! 身体の調子もバッチリですよ!」
 博士の問い掛けに対し青年が返事をしましたが、
「結構結構! 実に機嫌の良いエンジン音じゃ!」
 博士はどうも彼が乗っているバイクに対して問い掛けていたようです。
「あはは……それはそうとこの間の新聞の契約は……」
「うむ、今日も良き一日でありそうじゃ!」
 あくの博士は青年の事など気にも止めず散歩を再開しました。

 午前8時
 博士が朝の散歩から帰宅します。

 午前9時
 博士は着替えると研究室へと向かいました。
「ふはは、巨大ロボット製造計画も悪く無かろう」
 巨大ロボットを駆使し世界征服を目論む、確かに有りだと思います。
「じゃが、現状の資金ではちと厳しいか」
 博士は預金通帳を眺めながら言いました。
「資金が溜まった暁にはこの計画を実行しようぞ!」
 そんな事をおっしゃる博士でありますが、果たして巨大ロボットを建造する為に必要なお金は博士が貰える年金何年分なのでしょうか?

 午前10時
 博士は研究室に籠ったままです。
「ふむ……これは」
 どうやら何か閃いたらしく、博士はそのアイディアをメモしました。
「予算は……」
 と呟きながら出した数値は、
「ワシの年金2ヵ月分であろう、ならば現実的じゃ」
 そう言って近日発明リストへと登録したのでした。
 はて? 年金2か月分と仰いましたが、これではお金を使ってしまい巨大ロボット建造費が溜まる日が来るのでしょうか?

 午前11時
「ふはは、飯の時間じゃ」
 博士はそう言って再び外出しました。
「あ、博士、こんにちわー」
 博士が向かった先はかつ丼専門チェーン店でした。
「ふはは、かつ丼を2つ頼もうぞ」
「有難う御座います、お持ち帰りで宜しかったですか?」
「うむ」
「では、商品が出来上がるまで暫くお待ち下さーい」
 店員との応対を済ませ待つ事5分。
「お待たせしましたー、かつ丼2つになります」
「うむ」
 博士はかつ丼を受け取るとお店の外へ出ました。
「有難う御座いましたー」
 かつ丼を手にした博士は再び自宅へ戻ったのでした。

 正午
「博士、大丈夫ですか~?」
 さとみちゃんが心配そうに覗き込む先には、あくの博士がお昼ご飯として用意したカツ丼が置かれていました。
 このカツ丼、ご年配の方々には結構ヘビーな食べ物であると思われます。
「ふはは、無論大丈夫じゃ!」
 博士は自分が発明した『負担かるくなーる』と言う名称のパウダーをかつ丼に少々振りかけました。
 このパウダーを掛けた食べ物は、本来の味を残したまま胃腸に対する負担をおかゆレベルまで低減してくれます。
「コイツでヘビーな食べ物もイチコロじゃ!」
「博士、流石ですぅ~☆」
「ククク、世界征服目指すものとしてこれ位朝飯前じゃ!」
「さとみちゃんもお腹が空きましたぁ~」
「ふはは、お主の分もあるぞい!」
 博士はさとみちゃんの分のかつ丼に、先程のパウダーを掛けました。
「わ~い☆ いただきまーす」
 さとみちゃんは嬉しそうにかつ丼を食べ始めました。
 この『負担かるくなーる』と言う発明品、実はアンドロイドであるさとみちゃんが食べても全く問題が無くなってしまう効果もありました。

 午後1時
 お昼ご飯を食べ終えた博士は再び研究室へ籠りました。

 午後2時
 この時間も博士は研究に熱心な御様子です。

 午後3時
「博士~出来ましたよ~」
 さとみちゃんが明るい声で3時のおやつを運んで来ました。
「ふはは、実に素晴らしき水ようかんじゃ!」
 博士はさとみちゃんが用意した水ようかんを口にし、舌鼓を打ちました。
「えへへ、頑張ったんですよ♪」
 さとみちゃんがにっこり微笑みながら続いて抹茶を差し出しました。
「うむ、ご苦労」
 博士が抹茶を受け取り一口飲むと、
「ふはは、この苦みが何ともたまらぬ!」
 さとみちゃんが作ったおやつを堪能した博士は研究を再開しました。

 午後4時
 博士は研究の息抜きに公園へとやって来ました。
「あ、博士だー」
「ほんとだー」
「わーわー、またアレやってよー」
 あくの博士が公園にやって来た途端、砂場で遊んでいた子ども達が嬉しそうに博士の下へとやって来ました。
「ふはは、よかろう!」
 子ども達に囲まれた博士は、嬉しそうに懐から何かを取り出しました。
 それはまるでおもちゃの光線銃のようです。
 そしてそれを子ども達が遊んでいる砂場に向けると、トリガーを引きました。
「「「おおー!」」」
 その直後、子ども達の歓喜の声が青空に響きました。
 博士の光線銃から発射された光線が砂場を包み込むと、あら不思議! 砂が動き出してお城へと形を変えます。
 更に博士がトリガーを引くと、砂が可愛い兎さん、カッコイイロボットへと変化したではありませんか。
「「「わーい、博士ありがとー!」」」
 子ども達は大はしゃぎで砂で出来た物へと向かっていきました。
「ククク、子ども達の心を掴むのも世界征服への一歩じゃ!」
 博士は満面の笑みで子ども達を眺めながら『砂BA銃』を懐へ収めました。
 実はこの砂BA銃、無邪気に遊び回る子供達にお願いされて、あくの博士が発明したものです。
 博士曰く、年金1ヵ月分を費やして出来たそうですが世界征服に一歩近付く為の投資と豪語し、本人的にも納得の一品だった様です。


 午後5時
 帰宅して研究を再開します。
 時折何かを閃いたのか研究室から叫び声が聞こえてきますが、家の中にはさとみちゃんしか居ないので誰も気にする人はおりません。

 午後6時
 さとみちゃんが晩ご飯の準備を始めました。

 午後7時
 晩ご飯のお時間です。
 朝、昼と大まかな流れは変わりませんのでここは省略しましょう。

 午後8時
 あくの博士は明日食べるご飯の食材を買い出しに行きました。
 向かう先は歩いて10分『スーパー〇×△』です。
「さぁ戦いの時ぞ、いざ出陣!」
 博士はそう言うと急ぎ足でスーパーの惣菜コーナーへと向かいました。
「よし、目標発見!」
 博士は素早く惣菜を手に取るのですが、例のシールが貼られていません! 博士は立ち止まり、時計を確認しました。
「なんと! まだ戦の時では無い!」
 そう言うと博士は店内をうろつき始め、食料品以外で必要な物をカゴに入れました。
 そして来たる8時28分、再び博士は惣菜コーナーの前に戻って来ました。
「指揮官確認!」
 博士の視界に値引きシールを手にした店員の姿が映りました。
 8時30分、時計を確認した店員が値引きシールを惣菜品に張り出しました。
「見える!」
 博士はターゲットをロックオンし、店員がシールを張った瞬間を狙います――が、
 スカッ!
 残念ながら獲物は他の方に取られてしまいました。
 博士は高齢のご老体、若い人と比べて反応速度で勝てないのは仕方がありません。
「しからばっ!」
 1回の負け位で諦める博士ではありません。
 すぐに狙いを次に移し――。
 スカッ!
 やっぱり取られてしまいました。
 それ等を4回ほど繰り返した所でやっと戦利品を手に入れる事が出来ました。
「ふん、今日はこの位にしといてやろう」
 博士がそう負け惜しみを言ってその場を離れました。
「いざ、帰ろうぞ!」
 明日の食糧の調達を済ませると博士は帰宅しました。

 午後9時
「よし! 風呂に入ろうぞ!」
 帰宅した博士がさとみちゃんに言いました。
「は~い☆ お風呂の準備は万端ですよ~」
 さとみちゃんが上機嫌で返事をします。
 そして数十分後、博士はお風呂から上がって来ました。
「ふはは、さぁ明日に備えて眠ろうぞ!」
 寝間着に着替えた博士は、恒例である寝る前の世界征服体操を始めました。
「は~い♪」
 さとみちゃんも一緒に世界征服体操を始めます。
 数分後、世界征服体操は無事に終わりました。
「zzzz」
 世界征服体操が終わると、あくの博士はあっという間にベッドで寝息を立て始めました。
 この辺はご老体ですから。
「……おやすみなさいませ☆」
 続けてさとみちゃんもスリープモードへと移行します。
 これであくの博士の一日は無事終わりです。
 あくの博士が世界征服を達成する日はいつになる事でしょうか。

 つづく

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