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妄想ライブラリー 作者:廣瀬 るな
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1 これから「妄想」の話をしよう

このお話は100 %フィクションです。
実在の人物とは絶対に! 関係ありません。
……怒らないでね。
事の起こりは、大島優子(仮名)だった。
『悪いんだけど、明日の放課後、図書委員会に私の代わりに出席して。そのとき、委員長選出が有るんだけど、うちのクラス(つまり私って事だけど♥)がやりますって、みんなの前で完璧に主張してね』
「はぁっ?」
俺は携帯電話を手に、スパムだと思って消そうとしていたメールに指を止めた。
 大島優子(仮名)は俺の高校のクラスメートだ。どうして仮名かというと、俺が彼女の本名を知らないから。でも、笑った顔がタレントに似ているってことで、みんながそう呼んでいるから、大島優子(仮名)。まぁ、俺と彼女はそれ程度の付き合いだ。そんな大島優子から、なんでこんな
“ご依頼”
メールが来るんだ? 彼女の
“熱烈な”
お友だちに頼めば良い事なのに。俺は首を捻った。
 俺の名前は、篠崎陽介。18歳、高校生。身長180センチの自称爽やか系サッカー少年。
 この俺には悩みが有る。そう、彼女の事だ。俺の彼女は、超可愛い。マジで、可愛い。大体男がこういう事を言う時は、アバタも何とやら。たいした事無かったりするモノだけど、俺の朝香あさかは違う。本気で、可愛い。
 いつもは地味なジャージに眼鏡に三つ編み。まるでオタクアニメの萌えキャラみたいな格好で、別の意味でヤバい彼女。ぶっちゃけ
“健全な男子高校生向けアイドルキャラ”
じゃない。でも、俺といる時は特別なんだな。
 朝香は大げさに笑わない。俺を見上げながら、ゆっくりと微笑む。眼鏡の上の隙間から大きな目を覗かせ、優しく瞬きし、口元をそっと綻ばせる。なにかもの言いたげに膨らむ唇に、俺は頭を下ろし、彼女の声を聞こうと耳を近づける。
「何だよ」
すると
「馬鹿っ」
って彼女は囁くんだ。朝香の吐息が俺の耳を通し全身に流れ、パブロフの犬みたいに俺は彼女を抱きしめている。
「俺、馬鹿だから」 
何も考えられなくなる位、朝香の事が好きだ。髪の顔を埋め嗅ぐシャンプーの香りも、スベスベした頬に俺の頬をすり寄せる瞬間も。
「凄ぇ、好き」
彼女は、
“分かっている”
みたいな感じで、俺の背中に細い腕をまわす。でも、いや、分かってないなって思う瞬間が有る。それは、俺は彼女の事を独占したいのに、朝香はそれを許してくれないからさ。
 嫌みじゃなく、俺は普通にモテる。でも、どうやら変な人間に好かれる傾向に有るらしい。だから、今まで付き合っていた女の子達は、訳の分からない嫌がらせに合う事が妙に多かった。別に俺のファンが何かをしているって言う確信は無いけど、兎に角嫌な雰囲気が有るのは確かだ。そんな思いを朝香にさせたくなくて、
『周りには内緒にしておこう』
と言い出したのは俺の方。彼女も納得し、というか、その方が良いって言ってくれ、最初はそれで良かった。でも、俺の方がそろそろ限界だった。
 男ってさ、独占欲の塊みたいなもんでさ。俺の朝香に誰かが無駄にメールをしてきたり(念のため言っておくが、メールを盗み読みしたりはしていないぞ。彼女の反応から、何となく同じ男からしつこいメールをもらっているんじゃないかな〜って、感じる事があるわけよ)平然と男友達としゃべっていたりすると、何か胸の奥がすっきりしなって、
『俺の彼女に手を出すな!』
って言いたくなるんだ。でも、できない。なにしろ俺が、
“周りには内緒宣言”
してしまったモノだから。
 当然、校内ですれ違った時にちょっかいを出したり、目線を合わせて頷くのもNG。キスハグ厳禁、手さえつなげない。どこかで待ち合わせて一緒に帰る事も一度もした事が無い。たまの休日は、俺のサッカーの練習で潰れ、マネージャー席で他の選手の世話をする朝香を見ているだけ。
 こんなに好きなのに、何この距離感? なんとかえっちまでこぎ着けたけど、体許せても,心は許せない? みたいな違和感も合って、俺は不満たらたらだった。
 しかもだ。先週、運良く彼女の兄貴が出張で外泊し(彼女はお兄さんとの二人暮らしなんだ)朝香の家で久々に二人だけで過ごせるようになった時の事だ。俺のこのもやもやしている気持ちに気づいているみたいな感じの彼女が
『今晩は、朝まで陽介のしたい事、していいよ』
なんて、ハート満載な事を言ってくれ、超はりきって妄想膨らませていたはずが、いきなり夜の9時過ぎにメールが届き、あいつの兄貴が帰ってくる事になってしまってさあ大変。
「これから駅前で一緒に飯食おうって言われてもな」
と困った顔の朝香を責める訳にも行かず、俺は泣く泣くあいつの家を後にした。
 一緒にお風呂に入ろうって、言ってくれたんだぜ? これ、初体験だったんですけど。それから、パジャマ姿の朝香を膝にのせ、テレビ見ながらいちゃいちゃする予定だった。夜も濡れあって、朝には一緒にご飯食べ。まるで誕生日のイベントみたいに最高な夜を過ごすはずだったのに……。全て、パァ!
 だからこそ、俺は明日の金曜日に賭けていた。午後からは雨が降る予定でグラウンドは使えない。こんな時、サッカー部の練習は廊下を使った自主トレに変更になる。ある程度のノルマをこなせばさっさと帰っていい事になっているから、あいつの兄貴が帰ってくるまでの数時間を、朝香の家で過ごそうって魂胆だった。そしてこの前できなかった欲望を、しっかり叶えさせてもらおうと思っていた。
 だから、
『嫌だ。断る』
大島優子(仮)にメールを返信する。すると速攻返事が返ってきた。
『駄目。もう先生に代理届けた。内申点無くしたくなかったら、出た方が良いよ。でさ、私が委員長にならなかったらどうなるか、覚悟しといてね♥♥♥』
だと。……ふざけるな!!
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