話し聞いちゃうよ?
俺は息を整えながらも立ち上がると、この部屋をうろうろし始めた。
木の長方形の少し古びたテーブル、丸イス、壁に沿って、剣立てでもいうのかな
剣を置いてける場所があって、いくつもの剣が刺さっている。
(…これ、爆弾かな・・?鉄の丸いボールくらいのものが数個あるな)
大きな本棚には、大小様々な本が並んでいる。
(…広さは結構あるよな・・30畳くらいありそう・・)
(…試験管・・?これで何つくるんだろ・・)
ピエールとアンリは疲れているのか、テーブルのイスに座っている。
アンリはテーブルにもたれかかって、顔を押し付けている。
「みんな、落ち着いたか・?」
顎鬚の男が俺達を見回すと、一言発した。
「ええ、まぁ・・なんとか・・」
適当に言葉を返す俺。
「じゃみんなテーブルについてくれ」
「色々話そうと思う」
「君達も聞きたいことは山ほどあるだろう」
俺はその言葉の通り、ピエールの横に座る。
顎鬚以外の5人の男達も椅子に座っていく。
「ピエール,大丈夫かい?」
「はい、拓様こそお怪我はありませんか?」
「うん、大丈夫だよ」
「それは良かった」
「拓様、勇敢でしたよ」
「お、俺が?」
「はい、初めて会ったときより、随分逞しくなられました」
「ほ〜」
少し俺には意外だった。
ピエールが俺の事に対して感想を述べるなんて・・
正直今まで、俺の事をどう思ってるのか、何考えているのか
さっぱり分からない、能面男としか思っていなかったが
ピエールなりに何かを思っているらしい。
ある意味発見だ。人形じゃなく、血の通った生き物だという事をこの時実感した。
「さてと、何から言えばよいのやら」
「とりあえず、自己紹介しようかな」
「俺はこの街でレジスタンスを組織するエンギルだ」
「他の5人は時計回りで順に、タバスコ、ハン、コーネル、ムール、キルだ」
男達は名前を呼ばれると、立ち上がり、俺達一人一人に各々自分の名前を言い、そして俺達も名前を名乗り、挨拶をして握手をすると、席に戻っていく。
「自己紹介は済んだな」
「さて、旅人諸君、俺達に色々質問があると思う」
「何でも聞いてくれ」
俺はそれを聞くと、ずーっとここへ来てから聞きたくて、うずうずしていた
質問を投げかけた。
「あの〜、さっき、この部屋に入ったときの、あの壁の」
「なんていったら良いのかな・・見えない入口・?」
「あれは一体何なんでしょうか?」
エンギルはヒゲを右手で一度さすると、快活な笑みを浮かべて語りだした。
「良い質問だ、あれはな、魔法だよ」
「この街には、所々に、この部屋に通じる魔法の入口が張ってあってな」
「逃げる時や、近道に、その入口を使うんだよ」
「この入口は特殊な魔法を施していて、人間だけが通れるようにできている」
「魔物は入る事はできない」
「なるほど・・」
(…便利な入口だな・・ワープゾーンみたいな物か・・・)
「すごい〜、魔法って本等にあったんだ!」
疲れた顔をしていたアンリに一瞬生気が宿ると、突然驚いた様子で目を輝かせ言った。
「あぁ、他にも色んな魔法があるぞ」
「炎を飛ばす魔法や、凍らせる魔法、空を飛ぶ魔法など色々な!」
「すごい〜!私も使えるようになりたいな・・」
「ハハハ、そのうち教えてあげるよ」
「やった〜!」
俺は大して魔法の存在に驚きはしなかった。何せ俺が作った世界だからな。
ま、実際にこの目で見てみたいとは思ったけどな。
アンリはすごく興味ありそうだ・・
あのお転婆娘に魔法・・・恐ろしいよ〜・・
「他に何かあるかな?」
テーブルで手を組み、その話を黙って聞いていたピエールが口を開いた。
「この街は魔物が支配しているように見受けますが」
「どういう経緯で、こういう事態になったんでしょうか?」
エンギルの顔がさっきまでの和やかな表情を、一変させて強張らせる。
「おっと、いきなり核心をついてきたな」
「当たり前といえば当たり前の質問だ」
「この話をすると長くなるが、重要な事なので心して聞いて欲しい」
エンギルは真剣な口調で話し始める。
聞いた感じを大まかに要約すると・・・・
この街は元々、人間達が平和に暮していた町だったそうな。
しかしある時、魔物の軍団がこの街へと突如やってきたかと思うと
その圧倒的な力で街の民を粛清すると、この街を支配下に置いてしまった。
街の民のほとんどは殺され、生き残った人々は、クリスタルタワーにある
捕虜収容所に捕まっているらしい。
エンギル達は魔物が襲ってきた時に、何とか逃げ切った人々が
集まって、いつか、街の民をクリスタルタワーから救い出し
魔物を街から追い出すために作った、赤いサソリというレジスタンスの組織の
メンバーだと言うことだ。
俺はこの話を聞いて、ふと疑問が頭によぎった。
その疑問をエンギルに投げかけてみる事にした。
「エンギルさん、話しは大体分かりましたが」
「一つ気になる事があります」
「ん?なんだい、拓、何でも言ってくれ」
「実は、私の聞いたところによると、この世界を支配する魔王は」
「優しい人格の持ち主だと聞いています」
「その優しい魔王の手下である魔物が・・」
「なぜこのような酷い事を行っているのでしょうか?」
「・・・・・」
一瞬俺の質問に沈黙をするエンギル。
「これまた、鋭い質問だな・・」
「その話をするなら、この世界の成り立ちから、話すしかないな」
エンギルは深く息をつき、一瞬目を閉じると、目を細く開け
少し遠い目をして、話しを続け始めた。
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