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貧乳女子高生の疑問

作者:偏雑食
 ———私の胸は小さい。
 どれほど小さいかというと、貧乳を通り越してもはや無乳の域にある。

 曰く、滑走路のほうがまだ凹凸がある。
 曰く、男装すれば絶対にばれない。

 前者を言った友達には、コンビニで買ったパスタについてきたタバスコを鼻にぶち込み、後者を言った同級生の男子には空手で鍛えた右ストレートを食らわせてやった。
 初めて「貧乳」という悪態をつかれたのは中学一年生の時。身体測定でジャージに着替えた時、突然男子に言われたのだ。

「なあ、お前小さくね?」

「…身長の話?私はむしろ背が高いほうだと思うけど。」

「いや、そうじゃなくてその…胸が」

 は?と思い周りの女子を見ると、確かに発達した胸の持ち主が何人かいた。

「…個人差ってやつでしょ。私と同じぐらいの子もいるしこれから大きくなるわよ。それより、今度セクハラしたらぶち殺すからね」

 そう言って私は会話を切り上げた。自分の胸がこれから成長することに、何の疑いもなかった。
 しかし、現実はそうならなかったのである。

 二年生時、ほかの女子の胸はたいてい膨らみが出ていた。私は全く変わらなかった
 三年生時、ほとんどの女子の胸が平均的に成長した。私は全く変わらなかった。
 流石におかしいと気づいたのは三年生時で、それから私はこの呪われた平地を何とか山にすべくあらゆる努力をした。

 まず、今まであまり飲んでいなかった牛乳を毎朝飲むことにした。飲み過ぎで吐いた。成果はなかった。
 次に、豊胸トレーニングのために腕立て伏せをすることにした。右ストレートの威力が上がったが胸に変化はなかった。そうじゃねえよ。
 パッドを買った。しかしあまりの急成長ぶりに友達(巨乳)に一発でばれた。

「あんたもそんなこと気にすんのねえ。でもこういうズルは感心できないわね。これは私が責任をもって預かります。胸が成長したら取りに来なさい」

「あんたはもう出るもん出てんでしょうが!ていうかそれ絶対返す気ないでしょ!?」

 そして翌日しれっとパッドをつけて登校してきた。この野郎。

 そしてついには、吸引して無理やり大きくする機械に頼った。一時的には膨らむもののすぐに元に戻ってしまったが、そんなことも知らずに、テンションが変に上がってしまった私が膨らんだ胸をみせようと意気揚々と友人の家に行った時のことは今でも鮮明に覚えている。

「どうよ!私のこの二次関数的美しさを思わせる胸は!」

「…………………。」

「あら?驚愕のあまり言葉もでないかしら?まあ、わからないでもないわ。昨日まで馬鹿にしていた貧乳女が突然こんな峰不〇子ばりのナイスバディになったらね。」

「…………………。」

「しかし約束は約束よ!早く前に奪った私のパッドを返し—————」

「ねえ」

「て?」

「あなた、疲れてるのよ。今日は一緒にどこか食べに行きましょ。私の奢りでいいから。まあ、私も追い詰めすぎたわ」

 そういいつつ彼女が慈愛を込めた目を向けた先—————私の胸がいつもの大きさに戻っていることを確認し、私はゆっくりと上を向き、必死に涙をこらえた。

 そうして何の成果も得られないまま中学が終わり高校に入り、そこで一年過ごして二年生になったある日、登校中にふと思った。

 ——————そもそも、どうして貧乳ではいけないのか、と。

 一度そう思うと、不思議でたまらない。なぜ巨乳はよくて、貧乳はだめなのか。好みの差はあれど、なぜ大多数的には巨乳が良しとされるのか。
 そこに差を感じるのは間違っている。みんな違ってみんないい、それでいいではないか。

 なぜ、巨乳が好きなのか—————その問いを解決するため、私はまず同じ委員会でお世話になっている先輩に昼休みにでも聞いてみることにした。
 心の奥底の冷静な自分が、これはいわゆるすっぱいブドウというやつだなと気づいていたけども。

 *

「というわけで先輩、一つ質問してもいいでしょうか」

「何がというわけで、なのかわからないんだが。まあ言ってみろ」

「先輩はおっぱい好きですか?」

「疲れてるんなら保健室に行け。」

 おっと、あまりに唐突すぎたか。
 なんとか真面目な質問だと理解してもらうため、まず経緯を話すことにした。

「えっとですね。私って貧乳じゃないですか。」

「…おう」

 少しのフォローもなしかよ。
 舌打ちしたい気持ちを抑え、それでですね、と会話を続けた。

「私はそのことでずっと悩んでたんですけど、今朝登校中にふと思ったんですよ。なぜそんなに巨乳が持てはやされるのかと。貧乳じゃいかんのですかと。」

「ふむ。」

「そこで最初の質問に行き着くわけです。おっぱいは好きですかと。好きなら、なぜ好きなんですかと!」

 なるほどねえ、と納得した様子の先輩。数秒ほど考えこむように黙りこくっていたが、何か思いついたようにおもむろに口を開いた。

「答える前に、一つだけいいか?」

「なんでしょう?」

「お前のそれって、もしかしなくても合理化ってやつじゃ———————」

「さあ先輩、どうなんです!お答えください!」

 先輩が言い切る前に大声で答えを促した。いま冷静になってしまうと取り返しのつかないことになってしまう。
 無理やり会話を中断された先輩はいささか不服そうながらも、なんとか切り替えてくれたらしく、再び考え込んだ。感謝。

「…まあ好きかと聞かれればもちろん好きだし、嫌いな奴のほうが少ないだろう。しかし、なぜ好きかと聞かれれば確かになあ…」

 ふーむ、と考え込んでいた先輩だったが、ふと近くを通った生徒をおい、呼び止めた。

「なあ君、ちょっと変な質問するけどいいか?」

「な、なんすか?」

「おっぱいは好きか?」

 生徒は一瞬怪訝な顔をしたが、先輩の真剣な眼差しをみてどうやらふざけているわけではないと思ったのか、何秒か考え、答えた。

「そりゃまあ好きですけど…」

「本当か?なんで好きなんだ?」

「なんでって言われても…まあ強いて言うならエロいし…」

 そうポツリポツリと答えながらも、彼自身納得のいく理由を見つけられないでいるようだった。先輩もやっぱそうなるよなあ、と頭を掻きながら同じようにその理由を探していた。
 そうしていると、私たちに一人の男が近づいてきた。確か、先輩の友達だったはずだ。
 どうやら私の記憶は正しかったらしく、彼は親しげによう、といいながら会話に加わってきた。

「ずいぶん悩んでるようだけど、なんかあったのか?」

「いや実はな——————」

 そういうと先輩はこれまでの経緯を話し始めた。なんかくだらない話がかなり拡大してしまっているような。
 一通り説明が終わったところ、先輩の友人は呆れたように肩をすくめた。まるで、簡単な問題を解けない子供に呆れる親のようだ。
 そんな態度を見た先輩はむっとしたようで、友人に意見を言うように促した。

「そんなことは簡単だ。まず、やわらかくて触ったら気持ちよさそうってのが一つ。あとはまあ一般的な男には夢の象徴みたいなもんだし、元も子もないこと言えばおっぱいだからって理由も十分理由になると思うぞ」

「最後のはともかく、男の夢ねえ…。確かにそれはあるかもしれんな」

「ああ、自分もなんかそんな気がしてきたっす。」

「いや、それはただの日和見なんじゃないのか?あくまでそれぐらいしか思い当たらないからその意見に妥協してるだけで自分でこれが好きってのが見つからないと真におっぱいが好きとは言えないんじゃないか?」

「いや、そもそも好きってことに理由は必要ねえだろ。理由ってのは思うに自分の本能に従ってるうちにだな…」

 いけない、どんどん元の議題から離れて行ってしまっているような気がする。
 雑に管理した釣り糸ばりにこじれてしまったこの話はいったいいつ終わるのかと不安に思っているとちょうど昼休憩が終わるチャイムが鳴った。自分から聞いておいてなんだが、とんでもなくめんどくさいことになってるしとりあえずこの場は離れることにしよう。
 そういうことで、私は白熱する議論を横目に、自分の教室のに戻ることにした。
 ちなみに聞いた話によると三人の議論は次の授業が終わるまで続いたらしい。白熱しすぎだろ。

 そんなことがありつつも今日の最後の授業が終わり、特に部活にも入っていないし、放課後どこかに行く予定もないので大人しくまっすぐ下校しているとあることに気が付いた。

 ———————うちの母親も貧乳じゃん。

 そう、遺伝なのかなにかは知らないが、母の胸は私と同じように真っ平だ。ともすれば、私以上に。
 そんな身近に同じ悩みを持つものがいながら、なぜ最初に聞かなかったのか。
 家に着いたら、母に胸のことを聞いてみよう。そう思いついた私は、いつもより早めに足を動かした。

 家に着くと、母はテレビで録画していたドラマを見ていた。内容は知らないが、画面を見ると夕飯用の皿になぜかたわしが添えてあった。どんな状況だ。
 私が家に帰ったのを見ておかえりーと呑気でいたが、私の改まった空気を感じたのか、テレビを消音にしてどうしたの?と聞いてきた。

「いや、そんな大したことじゃないんだけどね?私とお母さんってどっちも変態じゃない?」

「…この子ったらどうしてお互いに傷つくようなことを…」

 よよよ、とあからさまに嘘泣きをするものの、目線はドラマから全く離さない母にぶれないなあと思いつつもそれでね、と畳みかけた。

「お母さんって自分の胸についてどう思う?悩んだり、どうして巨乳はよくて貧乳はだめなのかって思わなかった?」

「あんたもだいぶスルースキルが上がってきたわねえ。それにしてもあんたが胸のことで悩んでいるのは知ってたけどここまでこじれてるとは思わなかったわ」

「こじれてるって?」

「その巨乳はよくて貧乳は悪いみたいな考え方よ」

 その言葉を聞いて、私は狼狽した。そんな私の様子を尻目に、母は伸びをしながら当然のように話し続ける。

「そりゃ、私も若いころはもっと胸が大きければなんて思わなかったわけでもないけど、それで自分の価値がどうのなんて考えなかったわ」

「で、でもみんな貧乳とか絶壁とかって胸が小さいのをみんな馬鹿にしてくるし…」

「そんなの本気で言ってるのはごく一部の人だけよ。胸も魅力の一つには違いないけど、結局人は、人を好きになるものなのよ。その証拠に、ほら」

 そういって母は左手を掲げて、指輪を見せた。銀色に輝く、いつも大事に手入れをしている結婚指輪だ。

「私は胸はなかったけどこうやって素敵な人と結婚できたわ。胸の大きさに良いも悪いもないの。大事なのは自分が好きかどうかってことよ」

 そして宝物をしまい込むように手を胸の前で組むと、笑いながら優しく言ってくれた。

「だからまずは、胸をはって生きることから始めなさい。大事なのは大きさじゃなくて、中身なんだから」

 *

 次の日の朝。今日は真夏日になるらしい。思わずうなだれそうになるが、気を取り直して学校へ向かう。
 昨日の母の話から、少しは前を向こうと決めたのだ。いきなりは難しくても、もう俯かずに、胸を張って生きると。
 そう決意を新たに歩いていると、おっす、と私からパッドを奪った友人が声をかけてきた。正直そこそこ高かったのでいい加減返してほしいのだが、今日は見逃しておいてやろう。

「ありゃ、めずらしい。いつもは会うたびにまずパッド返せっていうのに。それになんか、背筋ぴんってなってない?」

「まあね。いろんな人に相談してみて、とりあえず胸張って生きることが大切って気づいたから。そういうことじゃないってのはわかるけど、まずは形からね」

 そう、まずは形からだけでもいいのだ。少しづつでも、自分を好きになって自信を持てるように——————

「でも、遠くから見たとき新しい豊胸トレーニングかと思ったよ。悲しいぐらい胸が出てなかったけど」

「あんたのせいで台無しだよ」








思い付きで書いてしまったやつ。

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