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エピローグ:エルフ転生からのチート建国記

一年以上の間、お付き合い頂きありがとうございました!

エルフ転生完結です! みなさんの応援のおかげで最後まで完走できました

ちょこちょこ、後日談や補足話は投下するつもりです


そして、今週二巻が発売してます

 帝国との戦争が終わり数ヶ月が経った。


「ユキノ、もう少し火力をあげて」

「シリル兄様、こう?」

「もっと強くだ!」

「わかった、がんばる!」


 俺は新設した鍛冶場で槌を振るっている。

 剣を鍛えているのだ。

 俺が槌を振り下ろすたびに火花が散っている。


 一振り、一振りに魔術的な意味を付与していく。

 これは、ドワーフのクイーロが使う固有魔術を汎用魔術で模したものだ。

 クイーロほどはうまくいかないが、ただの剣ではなく、しっかりと魔剣として、新たな剣は生まれようとしていた。


 ◇


「ようやく、出来たな」

「シリル兄様、どう?」

「まだまだだね」


 俺は、壁に立てかけられている十二本の魔剣を見ながらつぶやく。

 この壁に立てかけられている魔剣はすべて、最後の【輪廻回帰】でクイーロが呼び出したものだ。


 通常、【輪廻回帰】で呼び出した物質は本人と共に消えるが、なぜかこれだけは残った。吸血鬼グラムディールの力で異常なまでに魔力が体を巡っていた影響かもしれない。


 だが俺は、クイーロが残したいと思ってくれたからだと信じている。

 あいつは、消え去る間際に言った。

『これほどの剣が作れるか、小童』

 きっとクイーロは、俺にお手本を残してくれたのだ。 


「シリル兄様の剣、こんなにすごい剣なのに……」


 ユキノが俺の鍛えた魔剣を手にとって首をかしげながら言う。

 魔剣が鈍く輝いた。

 斬撃強化の術式を込めた一品。確かにいい品ではある。


「いい剣だと思うけど。俺は、これに追いつかないといけないからね。だからまだまだだ」


 クイーロが残した剣のうち一本を手に取る。この剣を前にすれば、俺の作った剣など足元にも及ばない。だからこそ目指す価値がある。


「ユキノも一緒に頑張る!」

「ああ、頼りにしているよ」


 俺はユキノに微笑みかけて頭を撫でる。

 確かに、クイーロの存在は消えた。だが、彼の知識・技術は頭に残っている。そして、クイーロだった俺を経験したことで、俺の体が確かにクイーロの動きを覚えているのだ


 ユキノの炎の力を借りて、なんとか真似事ぐらいはできるようになってきた。

 だが、まだまだ遠い。いずれ、クイーロを抜き去って見せる。

 クイーロだけじゃない、グラムディールも、ディートも、シュジナも、彼らの存在を無駄にしてたまるか。


「シリル兄様、剣が作り終わったから、ユキノに鍛冶を教えてもらう時間!」

「ああ、いいよ。ユキノのおかげで随分と捗ったからね」


 ユキノのが目を輝かせながら催促をしてきた。

 俺一人では、魔剣を鍛えることができるほどの炎を作ることができないので、ユキノに力を借りているが、その代わり、ユキノには、俺の技術を教えることになっている。

 ユキノは筋がいい。いずれ、独り立ちして立派な鍛冶師になるだろう。


「その前に……ユキノに言わないといけないことがあったんだ。ちゃんとペンダントを使ってくれてありがとう」

「大事なときにちゃんと使うってシリル兄様と約束したから」


 ユキノは寂しそうな表情を浮かべて、首かざりを撫でる。その首飾りは宝石がついていた場所が空になっていた。

 そう、首飾りの宝石は使えば壊れる一度きりの通信魔術の媒体だった。

 ユキノは宝物にしていた首飾りを、エルシエのみんなのために使ってくれた。


「そんな偉いユキノのために、新しいプレゼントを送りたい。何がいい?」

「シリル兄様の赤ちゃ、……ううん、指輪がいい。シリル兄様、指輪がほしい。今度は絶対壊れないのが欲しい」


 ユキノはちょっとだけ、悲しさが混じった笑顔を浮かべてそう言った。

 

「いいよ。近いうちに造って贈るね」

「シリル兄様、一生、大事にする」


 ユキノが俺の胸に飛び込んで抱きついてきた。


「それじゃ、鍛冶の勉強をしようか」

「うん!」


 ユキノが喜んでくれてなによりだ。

 素敵な指輪を造らないといけない。

 俺は、ユキノに鍛冶を教えるための準備を始める。

 すると、扉を叩く音が聞こえた。


「シリル兄様、クウ姉様とルシエ様が呼んでるの!」

「もう、約束の時間です。急いでください」


 扉を開けると、黄色いの火狐のケミンと黒い火狐のクロネが居た。

 俺を呼びに来たのだ。

 

「そういえば、今日だったな。ユキノ、鍛冶を教えるのはまた今度だ」


 俺はユキノの頭を撫でながら、そうつぶやく。


「わかった。シリル兄様、約束だから。戻ってきたら絶対教えてね」

「うん、約束するよ」


 そう言い残し、俺は火事場を後にする。

 後ろを振り向くと、ユキノが大きく手を振っていた。


 ◇


「シリル様、お疲れ様です」

「こっちでの生活は慣れたか」

「ええ、エルシエは過ごしやすいですね」


 俺はエリン方面の門に向かう最中に、一人のクワを担いだ男に声をかけられた。コボルト族のヨハンだ。

 彼を含めた何人かがベル・エルシエからエルシエに移住してきている。

 今はまだ、ごく少数だが少しずつエルシエもエルフや火狐以外も受け入れ始めた。

 エルシエは色んな種族が別け隔てなく共存する国。そこに向かって前進している。

 

「それは良かった。がんばれよ」

「はい、シリル様がせっかく呼んでくださったんです! ご期待にそえるように頑張らせていただきます!」


 コボルト族のヨハンは元気よく返事をすると、クワを担ぎながら、エルフたちにまじり農地に向かって走っていった。

 これから、エルシエも人が増えて、どんどん活発になっていくだろう。


 ◇


「シリル、遅いよ」

「そうです、もうアスールさんが来てますよ」

「悪い、ちょっと今日のうちに、作りかけだった剣を完成させたくてね」

 

 エリン方面の門についた途端、俺を見送りに来たルシエとクウが口を開いた。

 俺は、今からアスール達と共にコリーネ王国の王都に向かって出発する。

 余裕をもって来れば良かったのだが、魔剣を仕掛りのまま、エルシエを出るのは気持ち悪かったので、ぎりぎりまで作業していた。

 魔剣が完成して本当に良かった。


「ほら、ライナ。パパですよ」


 クウが胸に抱いている赤ん坊に声をかける。

 すると、その子が俺に無かって手を伸ばしてきた。

 クウが産んだ双子の片割れの男の子だ。クウと同じ金色の髪とキツネ耳。

 俺はその子に向かって手伸ばす、すると小さな手が俺の指を掴んだ。

 その、瞬間とてつもない愛おしさがわいてきた。

 なぜか、となりに居るルシエが慌て始めた。


「うっ、うえええええんん」

 

 突然、ルシエが胸に抱いている赤ん坊が泣き出したのだ。

 こっちは双子のもう一人、女の子のほうだ。この子も金色の髪とキツネ耳をもって産まれてきた。


「シリルがライナくんだけにかまうから、ソラちゃんが怒っちゃったよ」

「ああ、すまない」


 ルシエがこっちに近づいてきたので、開いている左手をソラのほうに伸ばすと、ソラは泣き止み、そして笑って俺の指を握った。


「シリルくん、いいお父さんになりましたね」

「うん、シリルはすっごく、この子たちになつかれてる」


 俺は、二人の子供に指をされるがままにさせる。

 自然に頬が緩む。


「私もはやく産みたいな」

「確か、あと半年程度で産まれるんですよね」

「うん、楽しみ。シリルに名前考えてもらってるんだ」


 ルシエが満面の笑みを浮かべる。

 そう、ルシエも妊娠している。もうすぐ、三人目の子供が産まれる。


「あっ、ライナとソラ、寝ちゃいましたね」

「やっぱり、寝顔も可愛いね。二人とも、シリルじゃなくて、クウに似だね。本当に可愛い」


 二人の子供は安心してぐっすり眠った。

 俺は二人を起こさないようにそっと、手を引く。


「それじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃいシリル」

「できるだけ早く帰って来てくださいね。シリルくん」

「もちろん、そのつもりだ。可愛い奥さんと子供が待ってるからね」


 俺はルシエとクウとキスをして、二人……いや、四人に見送られエルシエの外に出た。

 そこには、エリンのお嬢様のアスールと、その付き人のじいが居るはずだ。


 ◇


 外に出た俺は、アスールとじいに遅いと文句を言われながら馬車に乗った。

 俺を乗せた馬車はエリンを通り過ぎ、コリーネ王国の王都に辿り着いていた。

 王都では、コリーネ王国の友好国を集めて、同盟を結ぶための会議が開かれる。


 以前、コリーネ王国によってエルシエが一つの国として認められるように書状が出されたが、直接俺が他の国の代表と話す機会は今までなかった。

 アスールがちょうどいい機会だと俺をこの集まりに呼んでくれたのだ。


 ◇


 王城の一室で会議は始まった。

 一国の代表者たちが、一人ずつ立ち上がり、同盟に参加することを表明し、それが終われば座ると言った流れで会議は進行している。

 外交官ではなく、代表が来ることからこの会議の重要性がわかる。

 なぜか、その中にはアシュノの姿があった。

 彼女は、俺の傷が癒えたあと、突然姿を消したのだ。まさか、ここで会うとは思っていなかった。

 そして、俺の番が来た。


「はじめまして。私がエルシエの代表シリル・エルシエです」


 この時代、姓をつけるのは貴族だけだ。

 この場で姓がないのは格好がつかないと言われ、俺はエルシエを家名とした。

 だから、シリル・エルシエと名乗る。

 それが一番俺にふさわしい名前だ。


「この場に呼んでいただき感謝します。エルシエは同盟に入り、共存共栄を目指したいと考えております」


 各国の代表者からざわめきが聞こえる。

 エルシエのうわさを聞いているからだろう。

 圧倒的小国でありながら帝国を打ち破った奇跡の国。

 封印が解かれ溢れ出る魔物を一掃した化物と、封印を修復できる神話級の魔術師が居る国と。


「エルシエが同盟に加わることに賛成のものは拍手を」

 

 コリーネ王国の王がそう言うと、すべての参席者が拍手する。

 俺は少しだけだが、頬を緩めた。

 これで完全にエルシエは一つの国として認められ、しかも大国の後ろ盾を得たのだ。

 さあ、気を引き締めよう。

 もう一つの仕事が俺にはある。


「みなさん、迎え入れてくださってありがとうございます。さっそくですが、世界の平和のために提案をさせていただきたいことがあります。その提案は、かつて大魔導師シュジナが施したエルナの封印について。なぜ、提案が必要になるかと言うと、あの封印は近いうちにすべて壊れるからです」


 俺がいきなり投げ込んだ爆弾に、この場にいるアシュノ以外の全員が腰を抜かす。

 そして、驚きが過ぎ去ったあと、俺の言葉を疑う声が出始めた。


「その人のことが言っていることは本当、私が保証する」


 しかし、アシュノの一言で全員が俺の言葉を信じた。

 さすがは五百年前から封印を守っている英雄様だ。

 みんなが、俺に続きを話すように促す。


「封印が解かれた際に被害を出さないために、どうすればいいか提案します。この場に居るすべての国の協力が必要になりますが、不可能ではありません。どうか、力を貸して頂きたい」


 俺は封印について語り始める。

 アシュノがエルシエに居た間、シュジナたちが残してくれた知識とアシュノの経験を合わせて、俺とアシュノは今後、封印をどうするかを語り合った。 

 その結果をこの場で共有する。


 やっと手に入れた平和を守るため、また新たな戦いがはじまる。

 これからも俺は、大好きな人たちがいる国……俺が仲間たちと作り上げたエルシエを守り、そして大きく豊かに育てていくだろう。

 やることは山積みだ。だけど、そのことがたまらなく幸せだった。

 

 



最終回!

後日談は、番外編として投稿予定です。シリルの固有魔術や、弱った帝国との一悶着、アシュノがヒロインになる章、アスールお嬢様が大活躍する話、新たに敵対する大国との戦い等を書きたいなと思っています


また、書籍版のほうはこっちより先の話も書きますし、違った道をたどると思います。そこにたどり着く前に打ち切りにならなければですけどね!


できれば、ブクマは外さないでくれると嬉しいかな、死にたくなるから

最後に評価をつけてもらえると嬉しいです

他にも、月夜さんの別作品、チート魔術で運命をねじ伏せる

http://ncode.syosetu.com/n8925cq/

は本作の未来の話になりますので、シリルくんたちのその後がわかったりします


それでは、ここまでお付き合い頂きありがとうございました!

ここまで続けられたのはみなさまのおかげです! エタらずに完結できて良かったです

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― 新着の感想 ―
[一言] 最高にクールな物語でした。嫁たちの可愛いことや。あとお子さんが無事に生まれてよかった。
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