第五話:ベル・エルシエ
馬車に大量の食料と塩、麻の種、試作品の武器を詰め込んで出発の準備をしていた。まさかエリンから戻ってきてすぐに出発することになるとは思わなかった。
結婚式の準備をするつもりだったのに予定が台無しだ。
「どうして【俺】はここまで知識に制限をかけていた?」
出発の準備をしながら一人でつぶやく。
馬車に積みこんだ新兵器、これは今までの俺であれば作れなかったものだ。
今回、俺が取り戻した知識の一つにハーバー・ボッシュ法というものがある。
簡単に言えば、空気中の窒素を固定することで、水と石灰と空気を材料に窒素化合物……いわゆる硝石をつくる方法だ。
魔術を使わずに実施するなら非常に高度な工業技術が必要だが、ドワーフのクイーロで道具を作り、シリルに戻って道具の助けを借りながら風魔術を使えばどうとでも出来てしまう。
窒素化合物の用途は多岐に渡る、戦時中には火薬・爆薬になり、日常では化学肥料となる。
まだ天然の硝石に依存していた頃、採掘権を巡って戦争が起こり一国の経済が硝石の輸出で賄えていたほどその価値は高い。
この知識が最初からあれば、もっと楽に帝国と戦えていたし、たい肥作りに苦労することはなかったはずだ。
「シリル、こっちは準備出来たよ」
いつの間にかルシエが後ろに来ていた。
「ルシエ、ごめん。式が遅れちゃいそうだ」
「シリルが謝ることじゃないよ。うん、でもちょっと残念だとは思ってる。はやく終わらせて戻ってこよう」
ルシエが冗談めかした顔で言ってくる。
「でも、不思議だね。あれだけボロボロに負けたのにすぐに攻めてくるなんて」
「手紙だけじゃなくて、常駐させてるイラクサのメンバーが調べた結果も届いているんだが、奴らは本当みたいだよ。人数は千人ぐらいだけど、移動速度なんか前より速いぐらいだね。三日ぐらいでベル・エルシエにつく予想だ」
これだけの速度なら前回と同じ兵糧攻めは使えない。
その分、イラクサからの情報では、兵の数は少なく兵の装備も揃っていない上、砦を落とすのに必要攻城兵器すらない。普通に戦ってもエルシエを滅ぼすどころか、ベル・エルシエ……旧帝国の補給基地を落とすことすら難しい。
無謀を通り越して自殺行為にしか見えない愚かな行動。
ベル・エルシエの門を閉ざして立てこもり高台から石や矢を落とすだけでも勝てるだろう。
「シリル、前から思っていたけどベル・エルシエって名前はひどいんじゃない?」
「気にすることはないよ。エルフで学のある奴しかわからないし、あんまり実態と違う名前をつけるとわかりにくい」
ベル・エルシエ。俺がエルシエの支配する村としてつけた名前。
ベルはエルフの伝承に出て来るキャラクターの一人で、『ここは俺に任せて先に行け! 必ず追いつく』、そう言いながら多数の敵に向かって行った男の名前だ。
「シリルってたまにすごく怖いこと言うよね」
「そのために三百人分の食料と俺の時間を投資したんだ。ベルにちゃんと守ってもらなわないといけない。あそこが今後の命綱になるよ。エルシエは攻め込まれたら手の打ちようがないし」
エルフの村は簡単な木の囲いしかなく、火狐の住んでいる工房にいたっては囲いの外だ。帝国兵が辿り付いた時点で俺たちの負けとなる。
ちゃんとした外壁を作らないといけないが、それにさける人員がない状況だ。
春の種まきが終われば工事に入り、秋の収穫までになんとか実用性のあるものを作りたい。
その頃にはベル・エルシエで行っている、人員の選定も終わりまともな連中を引っ張って人手を確保できるだろう。
「シリル兄様! 遅くなってごめんなさい」
ユキノが息を切らして走ってきた。
今回は、イラクサのメンバー全員にクウとユキノを加えたメンバーで出発する。
ベル・エルシエには常に一チーム四人が出ているのでそれを除いたメンバーに声をかけている。
「ユキノ、その服はお仕事のときだけ着ればいいよ」
「いや。洗う時以外はずっと着る」
ユキノは珍しく俺の言葉に逆らい首を振る。
彼女が着ているのは紺色のワンピースにフリルのついたエプロンを組み合わせたエプロンドレス。家事手伝いをするならと、機能面と俺の趣味で細かくオーダーを出して作った服だ。
紺色と銀の髪や尻尾とのコントラストが大変すばらしい。
「そんなに気に入ってくれたんだ」
「シリル兄様が選んで買ってくれた服だから」
ユキノはプレゼントした日からすごく喜んで着てくれている。洗った後も魔術ですぐに乾かしてその間何も着ないで乾くのを待つ徹底っぷりだ。
「でも、汚れたり、破けちゃうかもしれないよ」
「汚れたぐらいなら、ちゃんとお洗濯するから大丈夫。破けることもない。ユキノは絶対に引っ掛けたりしないし、誰にも触れさせない。銀の火狐の誇りにかけて」
その言葉に有無を言わせない迫力があった。
確かに本気になった彼女に触れられる者はそうそう居ないだろう。
「シリル、ユキノちゃんがその服着るようになってから抱き着こうとしたら避けるようになったの。ぎゅっとしたいのに……」
ルシエが涙声でぼやく。
そして後ろからがばっとルシエが飛びつくがユキノは涼しい顔をして死角からの抱擁を最小限の動きで回避する。
今まで抱き着かれたらされるがままになっていたが、服を守るためにルシエを全力で避けるようにしているのか。
今も銀色の狐耳がぴくぴく動いて周りを警戒している。
「えい!」
だったらと、試しにユキノに抱き着いてみる。……普通に抱き着けてしまった。避けてくれると信じていたので、かなり大胆に抱き着いてしまっている。柔らかくていい匂いがする。
「……ユキノ、避けないんだね」
「シリル兄様は特別」
ユキノは自分からも抱き着いて来て俺の胸に鼻を押し当ててくんくんしながら尻尾を振っている。
「ああ、シリルずるい!」
そんなにユキノが気に入ってくれたなら着替えも、今度買ってプレゼントしよう。不便で可哀相だ。今度こっそりと抜け出して買いに行けばきっとばれない。
そうこうしている内に皆が揃って出発した。
◇
魔改造した馬車を使おうとも、イラクサのメンバーなら走ったほうが早い。
なので武器と食料を満載にした馬車を一チームに任せて残りは俺が先導して先を急ぎ、なんとか半日でベル・エルシエに辿り付くことが出来た。
城壁のエルシエ側の門の見張りに向かって俺は口を開く。
「見張りご苦労様。俺がわかるか?」
「もちろんです。恩人の顔を忘れるわけがありませんよ。シリル様」
朗らかな声で見張りの男は笑いかけてくる。三十代前半のしっかりとした印象を与える青年で、帝国の残党に村をめちゃくちゃにされたコボルト族の族長だ。
全体的にくすんだ茶色の毛が生えた耳と尻尾をしている。
「さっそくで悪いが、五大長を集めてくれ」
「はっ、ただいま。声をかけて参りますのでシリル様は先に作戦室でお待ちください。おい、ビアンナ、お前はシリル様たちを案内して一番いいお茶と、つまみを用意しろ」
「了解です。ヨハン様! さあ、エルフと火狐の方々こちらに」
コボルトの族長の指示で一緒に見張りについていたコボルトの女性が俺たちを案内する。ヨハンと同じぐらいの年齢の落ち着いたコボルト族の女性だ。
二人は夫婦だと聞いている。
夫婦ならもう少し対等な形になると思ったが、コボルト族は皆こうらしい。家族内でもきちんと上下関係が決まっている。
「新しい暮らしはどうだ?」
案内されている間暇なのでそれとなく聞いてみる。
「すごく大変ですよ、やっぱり色んな所から人がいっぱい集まっているので、みんなの当たり前が全然違うし、言い合ったり殴り合ったりの喧嘩も日常茶飯事で、食料の分け方とか仕事の割り振りとかも揉めに揉めて全然進まなくて、そもそもここに来る前から仲が悪い村同士だったりして……」
マシンガンのように口から不満が出て来る。
俺は苦笑いしていた。よく俺の立場を知っていてよくここまで言えるものだ。
だが、幸せです。不満はありません。なんて言われるよりずっと納得できるし好感が持てる。
しばらく不満が続いて、それからゆっくりとビアンナは最後に言葉を付け加えた。
「それでも、お腹が膨らんで、ちゃんと仕事があって、暖かい寝床が用意されていて、明日の不安がない。だから、すっごく感謝しています」
「それは良かった。それが続くように、俺は頑張るし、君たちも頑張ってほしい」
「言われるまでもありません。ベル・エルシエは、もう私たちの故郷ですから」
◇
作戦室に案内される。
俺はロレウを残して他のメンバーには来客用の部屋で休んでもらうように指示した。頭を使うのは俺とロレウだけで十分だ。
「長、話し合いなんてめんどくせえ。なんでこんなことをするんだ? 長が命令してそれで終わりでいいだろう」
ロレウが退屈そうにお茶を啜り、出されたつまみ、乾燥させたクルミを食べていた。
「ベル・エルシエはエルシエの支配下にあるけど、ちゃんと自治権もある。皆で決めないとだめだよ。そうしないと誰も従ってくれない。それも、今回は他種族相手なんだ。エルフや火狐相手とは勝手が違う。頭も一つじゃないしね」
ベル・エルシエは難民たちが集まって出来た村だ。
だからこそ、まだうまく統率がとれていない。俺が上から何か言ったところで言うことは聞かせられない。
現状、難民の中で同郷者の数が多い五つの村から代表者をだし、彼らがある程度面識のある少数派の村を吸収し責任を持って管理・統括することでなんとか指示系統をまとめている。
今のところ、この五人が協力すればベル・エルシエはある程度まともに運営ができる。
もし一人を選んでそいつが代表だ! なんて言っても大多数はそっぽを向くだろうし、その一人になろうとベル・エルシエの中で内乱になりかねない。
付け加えるなら、自分たちの種族に対する優遇なんてこともはじまる。面倒でも頭を分散させる必要があった。
「飯も住む場所も恵んでやってるのに生意気だな」
「みんな命からがら住み慣れた村から逃げ出してここに来たんだ。戸惑いもするし不安にもなるよ。それにね。恵んだわけじゃない。俺は必要だから投資した。
俺たちは対等なんだ。彼らがここに住んでいることがエルシエの安全に繋がる。もし、彼らが住んで居なければとっくに帝国に奪い返されていた。エルフだけでこの補給基地を帝国から守るのは不可能だよ」
ここまで言ってようやくロレウが納得してくれたようだ。
このあたりの話は、エルシエに残しているクラオのほうが呑み込みが早い。ロレウも頭が悪いわけではないので、根気よく話していけば理解してくれる。
「それにね、ここは俺の夢をかなえるための拠点になるんだ」
まだ、誰にも言っていないが将来的にはここをエリンのような商業都市にしてしまいたいと思っている。
もともと帝国への侵入を防ぐと同時に、周囲の村から税を取り立てる目的で作ってあるので外壁は堅牢で立地的にも守りやすく、多数の村の中心に位置しており交易がしやすい。
その上、ありとあらゆる種族が一緒に生きているという実績が現在進行形で出来ている。
五年先か、十年先かはわからないが文化と商業の中心にしてみせる。
◇
「シリル様、大変お待たせしました。五大長、全員が揃いました」
しばらくして、コボルト族のヨハンが四人の中年から初老の男性を連れてきた。
ベル・エルシエをまとめている五人が揃った。
コボルト族のヨハンの他に、人族、白兎族、猿人族、虎人族がこの街の多数派になる。
「皆集まってくれてありがとう。今日集まった理由はわかるな」
「もちろんですシリル様。憎き帝国の連中がやっと得た我らの安息の地を奪いに来るのですね」
「シリル様の情けを無駄にしやがって」
「俺たちのシリル様の優しさに付け込むなんて万死に値する」
「最後の一人まで皆殺しにしてやる!」
五大長がそれぞれ血気盛んな言葉を吐く。
少し、弄りすぎたか?
内心で自問自答する。
ベル・エルシエを運営するために、多数派種族の協力を得ることは必須だった。
せっぱ詰っていた彼らは俺がここに住んでいいこと、衣食が揃い、農地と種籾を用意すると言ったらすぐに飛びつき協力すると言った。
だが、俺は彼らを信じきれなかった。例えば帝国の使者がくればあっさりと寝返るかもしれない。例えば自分達の種族だけよければと考えて他の種族を追い出すかもしれない。ベル・エルシエを発展させるより中での派閥争いのほうがよっぽど力を入れるかもしれない。
不安をあげればきりがない。
だから俺は族長とその補佐の頭をイラクサのメンバーにしたように弄った。
イラクサのメンバーにやったものよりも少し強くしてある。
弄ったのは三つ。
・帝国に対する憎しみの水増し
・俺の考えに従うことに快感を覚える
・俺の考えに背くと不快感を覚える
たったこれだけだ。これがあるから味方と判断して背中を預けられるし、重要な情報を開示できる。
「みんな、落ち着いて建設的な話をしよう。敵は今の見込みだと三日後に到着だ。兵は千人程度で速度重視だから、この基地の外壁を打ち破るだけの武器をもっていない。梯子でもかけて外壁をよじ登ろうとするだろう」
帝国の守りの要で作った砦だけあって、通常の装備ではまずベル・エルシエの外壁を壊すことは不可能。必然的に乗り越えるしかなくなる。
「シリル様が来たと言うことはエルフの力をお借りできるということですよね?」
ヨハンが手をあげて質問をしてきた。
「その通りだ」
「なら、特に捻った策は必要ないかと思われます。エルフの風の力があれば高台の兵が落ちることはありませんので」
梯子や縄を引っ掛けて壁を乗り越える場合、必ず兵は無防備になる。そこを狙い打つのは簡単だ。そうさせないために、高台に居る兵たちを弓矢で殺す、もしくは牽制し身動きできなくするのがセオリーだが、エルフが居る風で矢が届かないので効果が薄い。
エルフが居るだけで守りは数段硬くなるのだ。
そのため、常に四人はイラクサのメンバーをベル・エルシエに常駐させている。
「その通りだ。おそらくこの戦い、普通にすれば普通に勝てる。だけど、それだとどうしても戦いが長引く。それは不安定な情勢のベル・エルシエへのダメージになる。みんな帝国に追われてここに来たから不安なはずだ。一度、快勝してここは大丈夫だと意識付けをしたい」
立てこもって来る日も来る日も迎撃する。
非常に疲れるし時間の無駄だ。
「ならば、こちらからうって出るのでしょうか? 高台から矢で射れば遠くまで攻撃できますが、角度の問題で頭上に盾を構えられればそうそう打撃は与えられません。打撃を与えるにはそうする必要がありますが……千人相手に砦の守りなしに戦うのは辛いかと思われます」
「そっちは大丈夫。もうすぐ馬車で新兵器が届くから」
大量に得た人工硝石を使った武器の試作品。
その利点は圧倒的な威力の他に、コストの低さと、量産のしやすさ、猿でも使える扱いやすさがある。
「シリル様のこのまえいらっしゃった時に言われていたものが出来たのですか!」
「それは心強いですぞ」
「それさえあればエルフが不在のときでも、我らだけで戦えますな」
みんなが盛り上がる。
俺がいない時の防衛について話し合いをした時新兵器の構想について共有していた。
それを思い出したのだろう。
「シリル様の武器があるなら、普通の作戦でも……門を閉ざし高台から、新兵器を投げつけるもしくは、矢に括りつけて放つだけで、一瞬で大打撃を与えて短期決戦に持ち込めます」
「うん、それでいい。難しいことは考えるな。五大長が鍛えてくれているとはいえ、まだまだこっちの練度は低い。複雑なことを指示しても実行できないよ」
そうして、帝国との戦いに関する話し合いは終わった。
「帝国に対してはこれで終わりだ。あとはベル・エルシエの運営についてだ。ここに来るときに中を見てきたが、人口が増えてるな?」
前に来たときは三百人ほどだったが今は四百人ほどに増えていた。
もともと数千人単位が常駐できる基地なのでスペース的には問題はない。
「はい、シリル様の予想通りです。曲がりなりにも私たちが安定した暮らしができ、仕事にもありつけているので、その噂を聞いてやってきたのでしょう。残党にやられた村以外にも純粋に貧しい村からも来ているようです」
「言いつけは守ってあるな」
「もちろんです。ちゃんと字が書けるものに名簿を作らせ、必ず五大長のどこに所属するかを明記し、行動に問題があれば追い出すようにしております」
「人数はまだ増えそうか?」
「いえ、最近は落ち着いてきました」
「よろしい。なら、予定通り五百人までは受け入れろ。そこから先は心を鬼にして切り捨てろ。これ以上は養いきれない」
「はい、かしこまりました」
五百人が今年面倒を見れる限界だ。
もう種まきがはじまるが、それ以上の人間が食える分の種籾がないし、余った土地に麻を全て植えても五百人居れば人手が足りてしまう。
それ以上はベル・エルシエで仕事を割り振れない。
食べ物を育てる以外の仕事を作るのはもう少し先だ。そっちの産業を軌道に乗せられればそのときはまた人を増やす。
「人が増えて渡した種籾だけだと人手が余るだろう。余った農地を全て使って新たに育てて欲しい作物の種がある。食べられる実と葉もつけるが収穫後は全てエルシエに納めてもらう」
「……大恩あるシリル様の命令なら従いますが、ただ働きですか。みんなにどう説明すればいいのか悩ましいです」
コボルトの族長は頭を抱える。受けた恩を返すためと自分は納得できるが、生きて行くだけで精一杯の村の一人一人を納得させられるかは別問題だ。
「ただでなんて言わないさ、前払いで馬車にいっぱいの小麦と大麦、それに塩を持って来たし、今年の春に産まれたヤギを何頭か譲ろう」
「そこまでしてくださるのですか! 是非受けさせてください! 本当のことをいうとこれ以上、人数が増えれば収穫前に食料が尽きると不安でしかったがなかったのです」
「うちもやる」
「もちろん私の所も。シリル様のお願いならただでも受けてましたわ」
「おまえ、調子いいこと言いやがって」
「ありがとう。農地と報酬の割り振りははこっちに届いた種を見てから五人で決めてくれ。ちゃんと話し合いで決めてくれよ」
俺がそう言うと、五人が頷き。そこで話し合いがはじまった。
みんなそれぞれ長い間自分の村を治めていた実績があるだけあって指針さえ示せば放っておいても話を進めてくれる。
戦いの経験があるものも多く、それらが長を中心に種族を跨いで協力しあって訓練しているので時間さえかければ練度もあがっていくだろう。
いい傾向だ。
これで、三か月もすれば大量の麻が手に入る。俺が手を加えた悪魔の麻が。
「帝国に隠し玉がなければいいが」
このタイミングで、砦があるにもかかわらず少数での突撃を選んだその意味。
それがわからないことだけが唯一の不安だった。