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第一話:新たな民

「無理だ! 帰れ、こんな時期に五十人も受け入れる余裕があるわけないだろう!」

「そうよ。ここはエルフの村よ!」


 村に戻るなりエルフたちが火狐族の女性を取り囲んで罵詈雑言を吐いている場面に出くわす。

 火狐たちは、五十人ほどいて若い女性ばかりで、上は四十代、下は十代前半のようだ。皆一様に疲れた顔をしており、服装もくたびれている。


 火狐たちは、概ね人間のような容姿だが、頭に大きな耳と、ふわふわの尻尾がついている。


「話を聞いてください。私たちは、この村しか頼るところがないんです!」


 そんな中、一人の女の子と言ってもいいような歳の火狐が声をあげる。

 身長は160cmほどで俺より少しだけ低いぐらいで、すらっとしていて胸も大きく、女性らしい体つきだ。

 顔つき自体は穏やかな感じだが、目に宿る知性の光と強い意志が弱弱しい印象を消し去り、力強く映る。

 そして、尻尾の毛並みの良さが他の火狐と段違いに良かった。

 よく知っている顔だ。俺の元許嫁、火狐の村長の娘であるクウだ。


「知るか! この村には五十人も養う余裕なんてないんだよ!」


 さきほどから、声を張り上げているのは村一番の力持ちのロレウだ。俺が居ないときは、彼が代理になる。

 腕っぷしがあるし、なんだかんだ言ってずっと街の自衛団と、狩り人のリーダーをしているので、人望がある。

 それに、親がエルフの村ではいい立場だったので、数少ない文字の読み書きができるエルフの一人だと言うことで俺が選んだ。


 正直に言うと、人望と読み書きだけを条件にするなら、巫女であり、人気と教養を兼ね備えているルシエを選びたいところだが、ルシエを選ぶと俺は確実に私情を挟む。

 彼女がどんなミスをしても許してしまうし、厳しく出られない。だから、ルシエには明確な役職は与えない。それが俺の村長としての責任だ。


「ただで、養ってもらおうとは火狐族も思っていません。ちゃんと働きますし、手土産も持って来ています。贅沢は言いません。ただ、飢えない程度の食事と、寒さを凌げる場所を用意してほしいのです」

「ダメだ。ダメだ。今すぐ出て行け、そもそもお前たちは、帝国に負けて逃げてきたんだろ! そんな奴らを匿えるか!」


 ロレウのその言葉に反応し、クウの後ろに隠れて居た十代前半の火狐の可愛らしい女の子が顔を出して、ロレウを睨み付け口を開いた。


「エルフさえ帝国に支配されなければこんな!」


 幼ないながらも、あまりの剣幕にロレウが一瞬怯む。


「黙りなさい。ケミン」

「でも、クウ様! エルフのせいで」

「私は黙れと言いました」


 有無を言わせない口調でクウが言い放ち、ケミンと呼ばれた少女は黙る。そうすると、ロレウは先ほどまでの勢いを取り戻してしまう。


「なんといっても絶対に追い払うからな!」


 ロレウが彼らを突き放すのも無理はない。

 まず、時期が最悪だ。もうすぐ雪が降り始める。そうすれば食料を手に入れることが難しくなる。


 もし、冬までに時間があれば、火狐たちに仕事を割り振り、食料の生産量をあげることもできたが、冬になれば、エルフたちすら仕事がなくなる。この時期に人員が増えるのはただの足かせだ。


 それに付け加えるなら、食料は、この村の人員が冬を超える分に加えて、多少の余裕はある。だが、村の人口の四分の一にあたる五十人を養えるほどの備蓄は今のところ存在しない。

 つい先日、各家庭に冬の間の食料を配給し終えたばかりで、火狐を受け入れるということは、その食料を分け与えることにつながる。

 そうすれば、十分な量の食料は残らないだろう。


 さらに、火狐たちの境遇も問題だ。若い女だけが逃げ出すような状況は一つしか思いつかない。

 それは、帝国との戦いで負けが確定したような状況だ。

 帝国が欲しがるのは、エルフや火狐の魔石。


 それらを長期的に確保するためには、その種族の数を増やし続けないといけない。そのためには女だけ残しておけばいい。母体と同じ種族が生まれるので、帝国に攫われた女性はそれこそ家畜以下の扱いを受ける。

 それを避けるために、最悪の状況になれば女たちだけでも逃がそうとする。


 そう、今の火狐たちのように。

 彼女たちは、ここで俺たちに見捨てられれば行くところなんてどこにもないだろう。

 魔石を宿す種族以外だと、むしろいい餌だ。殺して魔石を帝国に売れば、大金が手に入る。同じ境遇の俺たち以外は火狐族にとって敵と考えたほうがいい。


 感情的にも、エルシエの利益のためにも、これ以上は放っておけない。


「ロレウ、エルシエの今後に関わることは、独断で決めずに俺が戻ってくるまで保留にしておけと言ったはずだ。ここから先は、俺が話す」

「だけど、シリル村長」

「俺を信じて任せてくれ」

「まあ、おまえがそう言うなら」


 俺は、深呼吸して笑顔を浮かべ口を開いた。火狐と、エルフ。その両方の視線が俺に集まる。


「よく来てくれた。火狐の民よ。二度手間になってすまないが、君たちがなんのためにこの村に来たのかを教えてくれないか?」

「シリルくん?」


 クウが俺の顔を見て少しだけ驚いた顔をする。


「クウ、久しぶりだな」


 俺がそう言うと、クウが少しだけ表情を柔らかくしたあと、一瞬で元の張りつめた顔に戻る。

 その表情には責任感と悲壮感が溢れていた。俺がエルフの民の命を背負っているように、クウの火狐たちの命を背負っていることが伝わって来る。


「あなたが、交渉するんですか?」

「見ての通り、今はこの村……いや、この国、エルシエの長は俺だ」

「国ですか?」

「そうだ。帝国に喧嘩を売った以上、少なくとも俺たちは自分達の居るこの村を帝国に属する村じゃなくて、一つの独立した国だと思っているんだ」


 とは言っても、まだ自称に過ぎない。本当の意味で国となるには、帝国以外の国に認められる必要がある。他の国からみたら、帝国内の暴動を起こした村でしかない。

 それでも、俺たちはエルシエだと言い続ける必要があるのだ。


「わかりました。では、お願いがあります。火狐族の五十三名をこの国に住まわせてください。最低限の食料と、暖かい寝床。それだけ頂ければ十分です。対価も用意しました」

「対価? その前に確認するが、クウ、おまえはどういった立場で俺と話している。この国の代表として、それを聞かないうちに交渉はできない」

「シリルくん……いえ、シリル様。私は、クウは、火狐の族長です。私の言葉は火狐族の総意だと受け取ってください」


 声に覚悟と強い意志を込めて、族長だとクウは言い切った。


「そうか。了解した。代理ではなく、クウが族長ということは、族長は死に……火狐族は負けたんだな」


 俺が問いかけると、クウをはじめとした火狐族の面々は沈痛な面持ちになる。


「その通りです。戦える男は最後まで抵抗し、私たちが逃げる時間を稼ぎ、戦えず、旅に耐えることができないものは、帝国に魔石を利用される前に我らの手で永遠の眠りを与えました。その魂である魔石を持ち出しています。それがエルシエに差し出す対価の一つです」


 クウの絞り出す声。

 火狐族にとって苦渋の選択だっただろう。

 まず、子供を産める女は逃がして、男は戦う。そこまではいい。だけど、そこに含まれない幼すぎる子供や、老人たちが居る。


 エルフの村までは80kmほどの距離がある上に、途中でけわしい山や森を抜けないといけない。食料は少なく、帝国の追手から逃げるためにはお荷物は抱えることができない。


 だとすれば、村に残って帝国兵に捕まり心臓を抉られて利用されるか、そうなる前に死ぬかの二択になる。きっと、少しでも仲間の力になるために後者を選んだのだろう。


「そうか、すまなかった」

「どうしてシリル様が謝るんですか?」

「もし、帝国が火狐族を一方的に潰せるとすれば、圧倒的な兵数か、風の魔石を使った戦術以外に考えられない。先日、この村に五百人の兵士の襲撃があった。あの補給基地の人員数を考えると、五百人を失っておいて、火狐族を数で圧倒できる兵力を集める時間はなかったはずだ。なら、必然的に後者になる。それなら、風の魔石を奪われたエルフにも責任がある」

「シリル様、もう少し詳しく話してもらえますか?」


 若干声を固くしながらクウが聞いてくる。


「もし俺が帝国の兵を指揮すれば、火狐とは、徹底的なアウトレンジで戦う。エルシエを責めるときに不要で余っている弓兵と魔法使いの兵士を残らずつぎ込むだろうな。

 帝国の弓兵のロングボウは有効射程が100m、狙いを付けられるのが50mほどだが、火狐相手なら十分だ。炎は気難しくて、相性がよくてもせいぜい、30~40mが制御できる限界だから一方的に外から攻撃できる。しかも森を焼くのが嫌な火狐族は見晴しのいいところで戦おうとするだろうからより弓が生きるな」


 クウは拳を強く握りしめる。


「それでも火狐族は、数十メートルも距離を詰めれば、帝国兵を炎の餌食にできる。犠牲を覚悟すれば、攻撃を届かせる距離に届くだろう。

 なら、その対策として弓兵の隣に魔術師を配置させればいい。風の魔石で強化すればそれなりに強い風を操れる。確かに炎は保有するエネルギーはすごいが、質量がない。風で簡単に吹き飛ばせる。そして炎を剥がれて無防備な火狐をゆっくり弓で狙いうてばそれで終わりだ」


 火は風との相性が悪い。

 それでも、複雑な術式を汲んで、爆発に力を変えたり、いっそのこと、プラズマ化現象を引き起こすところまで熱量を上げれば、風を無視できるが、それを火狐たちに求めるのは酷だろう。


「シリル様。その通りです。ですが、どうしてそのようなことを口に出されたのですか? 交渉の場でエルフの過失を自ら切り出す必要はなかったのでは?」

「その通りだけど、クウがさっき、エルフのせいだと言った女の子を止めただろ? だからフェアに行こうと決めただけだ」


 それは表向きの理由だ。

 俺はなんとしてでも火狐族をこの村に引き入れたい。

 そのためには、他のエルフ達に罪悪感をもって欲しいのだ。


「前置きはそれぐらいにして、交渉に入ろうか。要求は聞いた。なら対価として何を差し出す」

「一つは、死んだ仲間が残した火の魔石です。人間と違って、火狐もエルフも、属性魔術の相性を水増しすることはできませんが、いざと言うときの力になるはずです。それを差し出します。帝国に一矢報いることができれば、死んだ仲間も浮かばれます」


 魔石には使い方が複数ある。

 代表的なのは、人間のような属性相性が低い種族が、触媒にして相性を高める用途。

 魔石にこめられた魔力を全て一度に開放し、使い捨ての強力な魔術を発動させるという使いかたもある。

 火の魔石は、あるいはこれを有効に使えば火狐たちが帝国に勝てたかもしれないほどの威力を持つ。


「もう一つは、塩の採掘権です。持てるだけの塩はもって来ました。ですが、そんな申し訳程度の量ではなく、火狐族が先祖代々守ってきた岩塩の採掘地の場所を教え、そこでの採掘を許します」


 エルフの村にとって非常に魅力的な提案だ。

 塩という必需品なのに拘わらずこの村では手に入れようのないものだ。それを安定してただで手に入れられるのは素晴らしい。


「最後に、私たちの命です。この国の民になれば、労働しますし、戦場に出ます。ただし、あくまで私たちを人道的に扱っていただけるならという条件で」


 炎の属性魔術を使える火狐の戦闘力、そして俺が考えているこの村の特産品には、火の魔術を使える人材が必須である点、そして、新しいことをはじめるのに人手が足りていないことを考えると渡りに船だ。


「いいだろう。それだけの対価があるのなら、受け入れよう」

「待てよ、シリル村長!」


 せっかく、エルシエの国と宣言したのに、相変わらずロレウは俺を村長と呼ぶ。


「どうした? 何が不満だ」

「食い物も、五十人も住むところもないんだ。俺たちは嫌だぜ、火狐の連中を家に入れるのも、ただでさえ少ない食料を分けるのも。

 それにあいつらが出した条件だって、魔石なんていらねえし、塩なんて帝国が攻め落とした村の近くとかアブねえし、それでも塩を取りにいくなら、勝手に奴らの村の周り探せば見つかる。

 労働力なんて、俺たちだけで事足りるからいらねえし、戦力だってこの前の戦いだってエルフだけで勝てた。俺たちだけでいいじゃないか」


 ロレウが必死に言い募る。

 理論的な部分の他に、エルフだけで暮らしてきて今更他種族を受けれたくないのだろう。

 こう見えて頭がいいので色々と考えているようだ。だけど、その申し出を受けるわけにはいかない。


「住む場所は村の郊外にある俺の工房に一時的に火狐たちにまとまって住んでもらうから、エルフの皆には迷惑をかけない」


 30m×30mで大きく、しかも煉瓦つくりなので暖かい。プライバシーの問題に目をつむれば上等な住処だ。

 それにもともと火狐たちとの塩の交換ように作った防寒着があれば寒さは凌げる。

 人数分はないが、二、三人で一つ使ってもらえば足りる。


「食料だって、みんなに配った分を返せなんて言わない。俺がなんとかする」


 もう既に、冬の分の食料の分配は終わっている。それを回収しなければとりあえず、エルフたちの不満は出ないだろう。


「なんとかってどうするんだよ!」

「一か月分の食糧は、今から山でイノシシを狩るのと、ルシエと二人で作っていた作物があるから大丈夫だ。その一か月の間に、商業都市エリスで追加分を買うさ」


 900kgのジャガイモ、それにイノシシの肉があれば、なんとか一か月はしのげる。俺が本気を出せば、雪が降るまでにかなりのイノシシを取りだめ出来る。

 

「火狐のために村の金を使うのか!」

「そうだ。だけど、冬の終わりに作れるようになるエルシエの特産品。それを作るには火の魔術がいる。火狐のみんなにはその仕事についてもらう。そうすれば、使った金の何十倍も稼ぐから元は取れるさ。確かに、冬に仕事はない。だけど、俺がこの村を豊かにするための仕事を作る」


 強く言い切る。

 俺が一人でやり遂げるつもりだったが、それではできる量がたかが知れていた。だが五十人の火狐が居ればかなりの量を用意し金に出来る。


「それに、もともと商業都市で俺はヤギを買ってくるつもりだった。食料の購入はそのついでだよ。ヤギの世話を火狐たちに一任する。特産品の製作もヤギの世話も、俺たちだけじゃ手が回らないだろう」


 手持ちの金貨五十枚と、身代金が手に入ればヤギを買っても、食料を買う金が残るだろう。

 

「わかったけど、でもなんでそんなに火狐どもを村にいれたがるんだ? おかしいぞシリル村長は」


 一応渋々ながらロレウは頷きつつも、声に不満がある。


「確かに、俺は火狐族をこの村にいれたがってるよ。ロレウ、エルフの皆、俺たちはこの前の戦いで五百人の兵士に勝った」


 唐突に前振りなくはじまった俺の話に皆が目をシロクロさせる。


「相手が千人でも勝てるだろう」


 俺は言葉を続ける。


「相手が二千人になれば、死傷者を出しながらかろうじて勝てる」


 そう、それが【輪廻回帰】を使わない場合のかなり確度の高い予測だ。


「だが、三千人が来た瞬間、なす術もなく蹂躪される。帝国が本気になれば、一万の兵を集められる。エルフだけだと未来がないんだ」


 俺の言葉にエルフたちが顔を歪める。

 俺がはじめて言ったネガティブな言葉。


「だが、エルフだけで戦う必要はどこにもない。見てほしいものがある」


 俺はそう言いながらクウの隣に立つ。

 そして、クウにだけ聞こえる小さな声でひそひそと呟いた。


「昔やった遊び覚えてるだろ? あれをやろう。ただ全力で右手から火を出してくれ」

「……シリルさん。はい、わかりました。あれですね」


 クウがほんの少しだけ、子どもの頃の無邪気な笑顔を見せてくれた。

 クウが目を閉じ集中して周囲の火のマナに呼びかける。

 すると凄まじい勢いでマナが集まってきた。

 火狐の火の相性値は100で、最高の相性を誇る。


「【狐火】」


 その言葉と同時にクウの右手から火柱が上がる。

 それをゆっくりと、帝国に続く道の方角に向けた。そっちには誰も居なく、燃えるものもない。

 炎は40m先まで届く。

 俺はそっと左手を前に突出し、風のマナを集める。

 そして、クウの【狐火】を包み込むように風を発生させた。


「【突風】」


 空気に包まれた炎はよりいっそう燃え上がり勢いがまし、さらに風に乗り倍の80mほどまで届く。

 もし、これが戦場であれば、帝国兵を一気に焼き払えるほどの苛烈な炎が唸りをあげる。


「これが、炎と風が一つになった力だ。俺たちエルフの弱点は、距離を詰められること。そして、火狐族の弱点は射程が短いこと。

 もし、エルフと火狐が協力すれば、風で敵の長距離攻撃を無効にして、300m先からクロスボウで一方的に攻撃、距離をつめられても、80m先から一気に焼き払える。帝国兵が風の魔術で妨害しようと、俺たちならそんな付け焼刃の風、どうにでもできる」


 そこまで言い終えると、クウに目線を送って炎を止めさせる。

 エルフの代表である俺と、火狐の代表であるクウの二人の魔術は、その場の全員を唸らせるだけの価値があった。


「エルフの皆、俺たちは強くなった。だけど俺たちだけじゃダメなんだ。それに、感情的なことを言うと、俺は帝国に苦しめられている仲間を見捨てたくない。俺たちがここで手を差し伸べなければ火狐たちはいずれ死ぬか、帝国に捕まる。

 みんな、考えてほしい。もし、俺たちが本当に困ったときに回りに助けを求める。ここで火狐を見捨てるような連中に、誰が手を差し伸べてくれるんだ?」


 俺は、いずれ帝国に苦しめられている他の村にも声をかけ戦力を充実させる。

 困った仲間を助けた実績が欲しい。


「火狐の皆。俺は君たちを受け入れよう。だけど、勘違いしないでほしい。俺たちは君たちを客人としてもてなすわけじゃない。仲間として受け入れるんだ。この国のルールは受け入れてもらうし、ちゃんと指示は守ってもらう」


 それは受け入れてもらわないといけない。

 火狐たちには、火狐たちの習慣やルールはあるだろう。だが、あくまでこの国のルールに従ってもらう。そうしないと秩序が守れない。


「受け入れて頂けるなら、火狐族の族長であるクウはそれを承認します」

「わかった。エルフの皆もそれでいいな?」


 最後に確認する。

 力押しでもきちんと、みんなの合意という形にしておかないといけない。


「配給された食料が減らないなら……」

「そうね、住む場所も村長が用意するならいいし」

「村長がきっちりと監視するなら構わない」


 エルフたちは消極的な賛成と言ったところだ。

 今は、これで良いだろう。だが、将来的には火狐族にもちゃんとこの村に溶け込んで欲しい。

 無理に推し進めると反発を招くのでしばらくは、村の外の工房を中心に生活させ、あまりエルフたちと接触しないようにさせ、少しずつ慣らしていこう。


「みんなありがとう。それじゃ、この場は解散だ。それぞれの仕事に戻ってくれ」


 俺が手を叩くとエルフたちがそれぞれの持ち場に戻る。


「それで、火狐の皆。まず最初にやることがある」


 その言葉で火狐たちが体を固くする。

 俺のことを警戒しているようだ。


「長い旅で疲れてるし、何よりお腹が空いてるだろ? 君たちの家に案内して、暖かい食事を用意するよ」


 俺はそう言って、微笑みかけた。


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