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番外編:大浴場と家族水入らず

「エルシエに大浴場を導入しようと思う。この村の全員が使えるような大きなものだ」


 エルシエの旧村長宅にある会議室で俺はそう宣言した。

 ここには、エルシエの方針を決めるときに呼ばれる、長代行のクラオ、精鋭部隊イラクサの隊長であるロレウ、そして副隊長となったルシエ、火狐代表であり俺の妻のクウ、そして古くからエルフの村を支えてきた長老たちが居た。


「大浴場? なんだそりゃ」

「名前の通り、大きな浴場だ。大きな桶にお湯をたっぷり貯めて、お湯の中に浸かる」


 俺が説明するが、なかなかロレウは理解できていないようだ。

 無理もないか、経験したことがないものは想像もできない。


「シリル、浴場作るんだ。あれ、いいよね」

「はい、私も大好きです。ぽかぽかになって、体が溶けそうになって」


 だが、すでに経験済のルシエとクウははしゃいだ声を上げる。

 地下水をポンプで汲みだし、火狐の火の力で温める浴場を俺の家には既に設置してあった。不具合がないことが確認できたので、大規模なものを作ろうと決めたのだ。


 長代理として、俺の不在時にエルシエを任せているクラオが手を挙げて口を開く。


「シリル様。大きな桶にお湯を貯めて浸かる設備ということは理解しました。ですが、聞いている限り、相当大規模なもので、それなりにお金も人手もかかると思います。それでも作るのはなぜでしょうか?」

「目的は二つ、エルシエの民の疲れを癒すためだ。心はもちろん、体も。大浴場があれば癒される。もう一つは、病気の抑止だな。不潔にしていれば、病気になりやすいってことは認識していると思うし、みんな水浴びは定期的にしている。だけど、どうしたって秋から冬にかけて水浴びが辛くておざなりになるだろう? あったかいお湯でならきちんと清潔さを保てる」


 生活を豊かにして、病気も抑止する。大浴場というのは非常に有用な設備だ。古代ローマでは、大都市に必ず一つは用意されていた。


「さすがはシリル様です。なるほど、それは金と人手をかけてでも導入する価値がありますな」

「でもよ、長。やっぱりピンと来ねえ。お湯に浸かって気持ちいいのか?」

「それは、口で言ってもわからないな。よしっ、今日の会議は終わりにして、今から風呂に入ろう。俺の家に試作型を作ってあるんだ。男三人、水入らずで浴場を経験しようか」

「長、面白そうだな。いいぜ」

「この、クラオ。シリル様と共にならどこにでも!」


 ロレウとクラオが快く同意してくれた。ほかのメンツは苦笑している。本当を言うと、全員で入りたいが、この二人でルシエやクウの肢体を見せることは許されない。


 ◇

「シリル兄様、準備できた。いつでも大丈夫」


 家に帰りすぐに、銀色の火狐であるユキノにお湯を沸かすように指示をした。


「ありがとう、ユキノ」


 ユキノの頭を撫でると彼女が気持ちよさそうに目を細めた。彼女は俺の家に奉公に来るようになっていた。さっそく、男三人で浴場に入る。この家に設置しているものは、将来的に子供が出来たときのことを考え、六人ぐらいは同時に入れるようになっている。


 ロレウとクラオはすでに全裸、俺の指示に従ってまず頭から湯をかぶる。ロレウは日に焼けた健康的な肌、徹底的に鍛え上げられ、筋肉が適度についた美しい肢体。クラオは色白く痩せぎすな体を晒している。なぜか、クラオが俺の体を見て生唾を呑んで、顔を赤くしている。うん、見なかったことにしよう。そして、いよいよ湯船に入る。


「ほう、これが浴場か、長、いいな、これ」

「さすがはシリル様の作られたもの、まさか、これほどとは」


 はじめての温泉に二人はすっかり満足したようだ。だが、ここからだ。


「シリル兄様、頼まれたものを持ってきた」


 ユキノがお盆にコップを三つ載せてやってきた。これは最近、エルシエで育て始めたブルーベリーで作ったジュース……少しアルコール入りの。それを湯船に置く、するとぷかぷかと水面に浮いた。熱い湯に浸かりながら、甘酸っぱい酒をきゅっと楽しむ。これも浴場の醍醐味だ。


「さあ、いっぱいやってくれ」

「おっ、気が利くね。くうううう、火照った体に染み渡るぜ」

「なんという、極楽。これは一刻もはやく作らねばなりませんね」


 二人は、美味そうにブリーベリー酒を煽る。湯船から上がるころにはすっかりと気に入り、すっかり機嫌をよくして帰っていった。また、使わせてくれと頼まれたので了解する。

 二人を見送ったあと、俺はにやりと笑って口を開く。


「男三人、水入らずも悪くはないな。だが、本当の浴場の楽しみはこれからだ」


 俺はにやりと笑う。ロレウとクラオには悪いが、まだ浴場の神髄は見せていない。

 その楽しみを今から味わう。


「シリル、お湯を張りなおしたよ」

「はやく、来てください。シリルくん」

「シリル兄様、飲み物もたっぷり用意した」


 そう、浴場の最大の醍醐味は混浴。好きな人と共に入ること。

 これは俺だけの特権だ。期待に胸を膨らませながら浴場に向かう。


 たしかに男三人水入らずも悪くないが、やっぱり美少女たちの肢体を楽しみながらのほうがずっといい。さあ、たっぷりとお風呂を楽しもう。

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