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第25話
「コインの交換か・・・。確か何箇所かにあったよな・・・」
 
 上下に動く箱乗り場の前でディランはこの建物の地図を睨んでいた。この階の拡大図と、建物全体のもの。コインの交換所は全部で5か所あった。

(レストランは20階だから・・・一番近くて21階。ホテルのロビーか・・・)

 『下』というボタンを押し、しばらくするとその箱が降りてきた。開かれた扉からはよく見知った顔が覗いている。

「・・・親父」

「よぉ。ディラン。リビアちゃんとはうまくやったのか?」

 ディランは無言のまま乗りかけていた箱から一歩退いた。そして、丁度ディランの目の前で扉は再び閉まる。

「おっ!おいっ!ディラン!」

 何故か慌てた様子のディランの父は、扉を再び開けた。

「すまんすまん。下だろ?乗れよ」

 じろりと睨むディランだったが、しぶしぶ彼はそれに便乗した。21階のボタンを押すと、ディランの父は足もとのパネルを踏む。すーっと音もなくそれは降りていった。
 二人の間を奇妙な静けさがまとう。ディランはそれから逃れるように、窓から近くなりつつある地面を見つめていた。こうして見ると先ほどの48階が随分高いところにあったのだとつくづくと思い知らされる。

「なぁ、ディラン」

 父親は光る文字パネルを見つめながら半ば独り言のように呟いた。

「お前、剣士の称号を貰ったんだってな。ロイドが言ってたよ」

「・・・そうか」

 30階の文字が点滅し、29階が今度は光りだした。箱の中で、奇妙な緊張感が親子を包んでいる。

「お前を自慢の弟だと、城の皆に自慢してるらしいぞ。父さんも鼻が高い」

 くるりと振り向いた父親に、しかしディランは冷たく言い放った。

「・・・やめろよ。そういう言い方」

 窓の外から視線を父親に移す。

「子ども扱いしないでくれ」

「ああ・・・そうだったな。すまん」

 父親は再びパネルの文字に目を向けた。ディランも再び外を眺める。
 いつもこうだった。
 父親に対して素直になれない自分がいる。それは父親に対してばかりではないのかもしれない。他人に対して心を開けないと言ったほうが正確なのかもしれなかった。

(ガキのままだよ、俺は・・・。ルークを泣かしたあの時のままだ・・・)

チン

 21階に到着した。父親が扉を開けて、ディランが出るのを待っているらしい。無言のまま、彼の前を通ると、ぽつりと彼は耳元で囁いた。

「お前はオレの自慢息子だ。自信、持てよ」 

 驚くディランに父親は二カッと笑い、手を振った。

「じゃあな、たまには帰って母さんを安心させろよ」

 扉は閉まり、箱はまた下へ降りていく。残されたディランはしばし呆然と降りていく箱を見つめていたが、小さく口の端を上げると換金所へと急いだ。




「コイン10枚が金貨1枚だから・・・コイン500枚はまず金だな」

 コイン交換マシーンの前で、ディランは頭を捻っていた。50枚の金貨をひとまず袋にしまう。

(残り1000枚弱か・・・・。景品は・・・魔除けのお札、呪いのかんざし、魅惑のめが
ね・・・・ってろくなモンないな)

 ため息をついて、景品一覧を見ていると、「すいません」と声をかけられた。振り向くと、そこには黒いフードをかぶった猫背の人物。顔はフードで全く見えなかった。

「あの・・・交換したいんですが・・・いいですか?」

「あ・・・ああ。先にどうぞ・・・」

 何に交換するんだろうかと思っていると、その人物は素早い動きでボタンを押した。そして、取り出し口に現れたものは―――『呪いのかんざし』

「ぐふふふ。これさえあれば、あいつは・・・・。ぐふふふ」

(・・・こういう景品って・・・アリなのか?)

 含み笑いをしながら喜んで帰っていくフードの人物を尻目に、ディランは再び一覧をチェックした。高価なものなら何かいいものがあるかもしれない。

「キャンディー1年分、媚薬、興奮剤・・・・ってなんかちょっとエロいな」

 思わず独り言を言い、ディランはその欄を飛ばした。

「なんでもバッグ、どこでもかばん、おしゃれナイフ、エロい財布・・・って何だよ」

 言いつつも、ディランはそれをルークにやるつもりだった。コインが余ったらの話だが。

「踊り子の服、魔道士の服、犬の着ぐるみ、熊の着ぐるみ、バニーガール・・・」

 一瞬、リビアのバニーガールを想像したディランだったが、すぐに頭からそれを追いやると、再び視線を一覧表へ戻す。

「ブーメラン、バスターソード、シルバーブレスレット、ゴールドブレスレット・・・ここらへんか?」

 コインの枚数は800枚ほどだった。

「・・・ワガママだからな、あいつは」

 ため息交じりにコインを投入し、シルバーブレスレットのナンバーを押す。ケース入りでそれは出てきた。

「あとは、リビアとルークと・・・」

 それぞれボタンを押し、ディランはそれを手に1階下のレストランへと足を進めた。
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