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第12話
 ディランの故郷<マトゥーラ>の西にはゴーダ山脈と呼ばれている山々が連なっている。どの山も険しく、登山家さえ好き好んで登らないような山ばかりである。
 しかし、その山をマトゥーラの村人は好んでいた。夏は、山からの涼しい風が、冬になると山で雪を降らせ、乾いた風で村を包み込んでくれる。農業には最適だった。

「ねぇ、次はどこ行くんだっけ?」

 シャンヌはディランに訊いた。いつの間にか4人はノース・ファロ・フォーレストに入っていた。うっそうとした葉の間からは眩しい光が差し込んでいる。

「次は<ディヤルバルク>だ。地図で見ただろ?」

 言い、ディランはシャンヌが地図に落書きをしていたのを思い出した。小さくため息をつく。すると、前を行くルークがディランを振り返った。

「それより<ラゼルム>行かねぇか?」

(ラゼルム?聞いたことの無い町だな・・・)

 ディランが眉間に皺を寄せていると、ルークは後ろ向きで歩きながら、楽しそうに付け加えた。

「<ラゼルム>ってのは、ちょっと前に出来た<カジノ>さ。オレとリビアはデートで1回行ったくらい――」

「デートじゃなくて、単なる暇つぶしでしょ?相手は誰でも良かったくせに」

 リビアはルークの赤い頭をぺしっと手のひらで叩いた。ルークは「いてっ」と叫び、へへへと笑う。

「なぁ、行こうぜ?ここから一番手っ取り早いのは<船>で行くことなんだけどよ。俺らみたいな貧乏人は森をぐるっと回って行かなきゃなんねーんだけど・・・。ぜってーおもしろいからっ!」

「船か・・・」

(ってことは、ソルト湖の中心に出来たってことか・・・?船じゃなく<渡し舟>みたいな感じなんだろうな)

 頭の中で地図とにらめっこをしているディランの腕をシャンヌは引っ張った。

「ねぇディラン。カジノ行こうよ〜〜。おもしろそう!」

「・・・少し・・・遠回りだぞ?」

「いーじゃねーか。んな固いこと言うなって。な?シャンヌちゃん」

 ルークの声にシャンヌが「うん!」と大きな声で返事をした。そしていつものようにはしゃぎだす。

(こうなったら・・・もう行くしかないな・・・)

 ため息をつき、頭を左右に振る。すると、ニヤニヤ笑っているルークと目が合った。彼はすすすっとディランの横に来て、耳元で囁く。

「すっげーキレーなねーちゃんがいっぱいいるから、楽しみにしとけよ」

「・・・お前、それが目的だろ?」

 ジト目で睨むとルークは「当たり前だろ」とさも当然のように言い放った。ディランは呆れ果て、ルークの頭をリビアがしたように叩く。

「ってーなー!」

「おめでたいヤツだ」

 言い、一人前を行くリビアに視線を戻し――異変に気がついた。

「リビア!」

「分かってる!」

 何かが木々の間からやってきていた。ディランはシャンヌを庇うように立つと剣を抜き放つ。
 そして、それは現れた。――ラージ・リザード4匹。

「いいかっ!助けが必要だったらすぐに俺を呼べ!」

「そーんな必要、無ぇと思うけど?」

「そうよね」

 ディランの心配を鼻で笑い、ルークは手をポキポキと鳴らし、リビアも腰のブーメランを取っていた。

ギャワァッ

 リザードたちがディランたちを囲う。そして、

「行くぞっ!」

 叫ぶと同時に、ディランは目の前のリザードに切りかかった。リザードの長く鋭い舌がディランに迫る。それを左にかわすと、ディランは剣を思い切り振り下ろした。

ザジュッ

 首から上を失くし、それはゆっくりと地へ横たわる。

(2匹目・・・)

 思い、体を反転させたその時、

「『爆破魔法ブレイス』」 

ごぉぉぉん・・・

 リビアの澄んだ声と共に、爆風がディランの髪をなびかせた。そこには、もはやラージ・リザードの姿は無くなっていた。

「・・・すごい」

 シャンヌは思わず呟いていた。ディランの強さもさることながら、ルークとリビアも十分に強かった。

(これなら、ディランに助けを求めなくても良さそう)

 リザードの数はいつの間にか2匹減っていた。

「でぇぇやぁぁ!!」

 掛け声と共に、ルークは両の拳でリザードの眉間を殴りつけた。ぶしゅっと赤い血が噴き出す。

「おらっ!」

 ルークは左手を軸に、今度は回し蹴りを決めた。それはリザードの腹に命中し、まともにリザードを吹き飛ばす。ルークは尚も追いかけると、

「とどめっ!」

 ジャンプをし、右ひざでリザードの首を折った。これで残りは1匹。

「ディラン!何、ぼーっとしてるのよっ!あと1匹!!」

 リビアに言われ、ディランは我に帰った。リビアの魔法のあまりの威力にしばし呆然となっていたらしい。すぐに残りのリザードへと駆け寄る。長い下が地面をえぐった。ディランは素早くそれの懐に潜り込むと、腹に剣を突き立て、真上へと引く。

ギュワァァッッ・・・

 長い悲鳴。そしてほどなく、それは絶命した。
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