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闇夜の悪鬼

作者:馳河
 月のない夜。侍は刀をたずさえて、鬼の出現を待ち受けていた。月光の照らさぬ暗き闇夜には、鬼が現れ人を殺す。侍の妻もまた鬼に殺され、声なき亡骸なきがらとなった。

 目を閉じ、侍はしんと耳を澄ませる。どこからか、かわらの上を駆けまわる音。続いて、瓦の落ちて砕ける音。侍が目を見開くと、小さな子どものなり・・をした鬼の、狂喜をにじませた赤い顔が侍の眼前にあった。

 瞬間、抜刀した侍の刀と、鬼の刀がぶつかり合り、『ギャリリ』という金属音が虚空に響き渡る。鬼は器用にも、侍の刀を支点にして空をひるがえり、着地した。 

 と、再び鬼が走り出した。侍は、はかまを持ち上げすり足で追う。鬼は川に架かる橋までやってくると、突然身を反転させて刀を投げた。侍は間一髪、横に転がってそれをかわした。

 ケタケタと不気味に笑う鬼。背負っている数多あまたもの刀剣を引き抜き、一振りを口にくわえ、両手にも刀を持ち、三刀流・・・の構えである。

 鬼は、踊るような足取りで侍に襲いかかる。ふらりとつまづいたかと思えば、そのまま勢いをつけて三本の刀を宙に舞わせた。

 三つの軌跡を辿たどる刃を静かに見切り、侍は構えた一振りの刀ですべての斬撃を受け止めた。更に侍は鬼の足首を大きく払って橋の上に転げさせる。

 侍は鬼に馬乗りになり、両手で握った刀を眉間めがけて振り下ろす。が、鬼は首を左に折り曲げて躱し、逆に侍の手を取り、腹部を蹴り上げながら投げ飛ばした。

 欄干に叩きつけられた侍は、うめき声をあげて仰向けに倒れた。鬼はすぐさまに体勢を立て直し、無防備な侍にとどめを刺そうと渾身の一撃を振りかざす。

 自らの頭を真っ二つに引き裂こうかという鬼の攻撃を、侍は両のてのひらで挟んで止めた。僅かにでも見切りを誤れば、侍は死んでいただろう。

 足を大きく持ち上げ、それを勢いよく下ろした反動で侍は立ち上がり、同時に鬼の刀を川へと放り投げた。口に咥えた一振りを手に持ち直し、態勢を整えようとする鬼。

 しかし、眼にも留まらぬ速さで振り向き、侍が放った抜刀での一閃が、鬼の腹部を大きくえぐった。

 血が飛び散る代わりに、切り口からは朦朦もうもうと黒い霧が吹きだしていた。鬼の肉体そのものがどんどんと霧に変わっていき、最後には完全に姿が消え去った。


 侍は、鬼が消えた後に残された刀を拾い、近くの寺で供養してもらった。侍は決まった住処すみかを持たず、旅をしながら鬼を葬り、鬼に殺された無垢な魂たちをとむらい続けている。











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