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第29話→油断大敵。


「ふぉっ!?」


俺に迫ってきていた政宗さんが、突然視界から消えた。


背後から気配がしたので、急いで頭を伏せると、その場所で風を切る音がする。

「ほぅ。なかなかの感だな。流石、というべきか」


俺は体制を整えると、体を反転させて政宗さんを正面に捉える。


「・・・・本当に人間かよ・・・」


俺は思わず呟いてしまう。

人外になって、目はかなりよくなったと思っていたんだが・・・・影すらも捉えられなかったとは・・・ぶっちゃけ勝てる気がしない。


「よし・・・少し本気を出させてもらおう」


政宗さんはニヤリと笑いながら、再び姿を消した。


「っ・・・まじかよ・・・・」


今度は、先程までは少し感じていた気配すらも感じなくなった。


「・・・・!?っっ!?」

みぞおちに鋭い痛みが奔り、口から吐血する。


(気配なんて、相手が攻撃してくる一瞬しかわかんねぇぞ・・・・どうしようか・・・・・・)


「・・・・・・そこっ!」

神経を限界まで研いで、気配を詠み拳を振るう。


何かを少し擦ったような感触はしたが、たぶんダメージにはなってないだろうな。


「・・・・・ふむ・・・なかなか良い詠みだ。その若さでそれなら将来が楽しみなわけだが・・・・・・よし、もう少し試すか」


俺から少し離れた場所に姿を現した政宗さんは、そう言って手を前に突き出す。

「っっ!?お父様、それは!」


「大丈夫。殺しはせん」


立夏の表情から察するに、何かやらかす気だな。


「橘式、其の三十三。双雷〈そうらい〉」


バチッと音をたてて、政宗さんの両手のひらで青白い閃光が弾ける。


「・・・・・・へぇ」


俺は思わず口の端を釣り上げる。


あの閃光が魔術的なものなら、俺にも対処できるはずだ。


そんな俺の様子をどう捉えたのか、政宗さんはフンッと鼻を鳴らす。


「恐怖のあまりおかしくなったか?」


俺はその言葉に返事もせずに、政宗さんに走り込む。

大きな攻撃をするってことは、それなりに隙が出来るわけで。


余裕からくるものかもしれないが、政宗さんの腕の動きはしっかりと見えた。


俺は、閃光を纏った政宗さんの両手を掴む。


「・・・んなっ!?」


それを見た政宗さんは、慌てて後ろに下がろうとするが、俺がそれを許すはずがない。


政宗さんの閃光は、やはり魔力で形成されたものらしかった。


俺の能力は、吸収変換。


閃光は俺の手に吸収され、それが力に変わる。


俺は拳を下げて、スピードも威力も上がっているであろうその拳を、政宗さん顔めがけて振り上げた。


「おんどりゃぁぁぁぁあ!!」


まるでアッパーのような俺の拳は、政宗さんの顎にジャストヒット。


「・・・・・・見事、也」

政宗はそう呟くと、大きな音をたてて倒れた。


相手が油断してたとはいえ、よくやったよ、俺!


俺が自画自賛しながらニヤニヤしていると、立夏が俺に抱きついてきた。


「凄いじゃないか!お父様を倒すなんて!」


「まぁ〜、油断してたみたいだしな」


「いや、私や結花は、お父様がいくら油断していても触れることすらできないんだぞ?それをお前は・・・・流石だなっ!」


いやぁ〜。喜んでいるのはわかったが、抱きついてきてるせいか胸が当たってるの、気付こうね?


「いや〜、そこまで喜んでくれるとはな。まぁ俺も二倍嬉しいが」


政宗さんという、見るからに強い人に勝てたのは嬉しいし、それと同じくらい、立夏の胸の感触も嬉しい。

「・・・・見事だったな」

俺と立夏を見上げながら、政宗さんが声をあげる。


「!?お、お父様!!これは・・・その・・・・」


立夏は、政宗さんの声がすると同時に俺から勢いよく離れた。


こんなに早く目覚めるとは思わなかったのだろう。実際、俺も驚いた。


確実に脳震盪起こすレベルの当たり具合だったぞ?


何か、ぶつぶつと呟きながら顔を赤くしている立夏は、学校では見たことのない雰囲気で、なんか普通の女の子のようだ。


「政宗さん。立夏っていつもあんな感じなんですか?」


俺は、政宗さんの横に腰を下ろしながら質問する。


「いや、あんな立夏を見るのは久方ぶりな気がする。・・・・あんな、本気であたふたしている立夏はな」


俺はそれを聞いて思わず吹き出してしまった。


「立夏って、やっぱり家でも真面目な感じなんですか?」


「うむ。真面目も真面目、普段は自分の感情を押さえているみたいだしな。まぁ、頭が堅いのは母親譲りだ・・・・・・クハハハハハハ!」


政宗さんが笑いだすと、立夏は尚更あたふたしだして、それを宥めようと結花ちゃんもあたふた。


そんな二人を見ながら、俺と政宗さんはしばらく笑い続けた。





☆☆☆☆





「ところで、約束の件なんだが・・・・・」


俺と政宗さんはゆったりと座りながら、先程立夏が淹れてくれたお茶を味わう。


「・・・・あぁ。あれは冗談ですよ?」


俺が本気で結花と立夏を貰うと思ったのか?


「いや、むしろこちらからお願いしたい。立夏か結花をお嫁に貰ってくれないだろうか」


「ブフッ!?な、なんだって!?」


俺は口に含んだお茶を吹き出しながら、政宗さんに問う。


聞き間違いじゃなければ、嫁に貰ってくれって言ったような・・・・。


「いやぁ、なかなか跡継ぎが見つからなんだ。いい廻り合わせをしたものだ」


「ちょっと待ってください!俺まだ16ですよ?それにほら、本人たちの意志を尊重しないと・・・・・・なぁ?」


俺が二人に質問すると、二人は俺から目を逸らしながらボソッと呟く。


「わ・・・私は別に・・・・全然構わないぞ?」


立夏、そんな冗談いらないから。


「わ、私も・・・・お父様より強い義秋お兄ちゃんなら・・・・・・いいよ?」

結花ちゃんも、自分は大切にしないと。


「よくぞ言った、二人とも!ほら義秋殿。こうなったら両方と婚姻の義を・・・・」


政宗さんが、グイッと顔を寄せてきた。


「し、失礼しましたぁ!!」


俺は全速力で逃げ出した。

あの雰囲気、わりかし本気だったよな?


16歳の父なんて洒落にないよ、マジで。


そんな俺を追い掛けてくる人物は、誰もいなかった。

なんでだろ。




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