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Double Life
作:盗鬼



9−6



バタン!



朝、8時。

俺は家の異変に気づいた。

「明日香…?」

明日香の部屋の私物がなくなっている。

所謂、夜逃げ。

って、違う。

明日香は、昨日の夜に何処かに行った。

全く音はしていなかった。

俺に気づかれないために、そこまでするか。

「だから、違うって言ってるだろ」

無性に寂しくなり、俺はテレビや箪笥等以外無い明日香の部屋でそう呟いた。



今日は学園祭3日目。

土曜日。

俺は、何をするでもなく、制服に着替えて学校へ向かった。

外はいつも通りの朝。

人は殆どいなくて、時々通る車を避ける。

たかが数分の道のり。

俺の中ではいつも通りではなかった。

明日香がいなくて、この道が何時間も長く感じた。

準備中という看板がかけられた、猫耳メイドカフェに着く。

もしかしたらここに、明日香がいるかもしれない。

会ったらなんと言おう?

「戻って来いよ」とか、人前では絶対いえないし、他に言う言葉も見つからない。

けど、勘違いしたまま明日香は飛び出した。

まずその誤解を、とかなくては。

店の中に一歩踏み入れた。

「風紀遅〜い!!」

幸助が右手に持っている物体で俺を殴ろうとする。

ぱっと見ハリセンだな。

俺は、その場を冷静に判断し、ハリセンの軌道からずれハリセンを避ける。

そして、そのまま幸助の右手をつかみハリセン没収。

体制を崩している幸助の頭に、そのままハリセンを振り下ろす。

バシコーン!

と、言う音とともに「痛ぇ〜!」という幸助のさび声が上がった。

「ハ、ハリセンってそんなに痛かったのか…」

幸助の痛み具合によると、HPが97減っただろう。

「ごめんごめん! ちょっと、寝坊してな」

痛みを抑えながら、幸助が俺の方に向き周りを見渡す。

「あれ? 明日香ちゃんは?」と、言った。

俺は、何も答えることができずに、着替える部屋へと歩いていく。

勿論、ハリセンを持って。

俺が部屋に入るときに「ハリセン!」という幸助の叫ぶ声がしたような気がしたのは、気のせいだろう。

着替えが終わった俺は、厨房に入る。

開店まではあと少し。

そのとき、沙希が俺の所までやってきた。

顔が少し曇っていた。

そして、紙が一枚握られていた。

「風紀」

その一言だけ俺に投げかけて、紙を一枚俺に渡す。

ピンク色の紙。

ラブレターという言葉は一切思いつかない。



文化祭終了後、校門前で。



達筆で書かれていた。

言っちゃ悪いが、あいつが書くと恐いな。

今日は一日、厨房に入らなければならない。

明日、一日休みという条件付で。

何故、明日一日休みなのかというと、映画公開日。

一日限定。

一回限りの大イベント。

右手にあった紙をポケットに突っ込み、大きな一息着く。

何故大きな一息つくかというと、明日香が居ないからだ。

いつものあの笑顔が無い。

不思議がっているやつ等も居る。

明日香は、仕事をサボるような奴じゃないから。

クレープ仕事に、手がつかず今日一日ボロボロだった。

注文は間違えるし、クレープの生地を焦がすし、火傷はするし。

泣きそうだった。

明日香が居ないだけで、俺はこんなにもボロボロに。

明日香が居ないだけで、俺は、泣きたくなるほどに。

今日一日の仕事が終わり、着替えて校門前へ行く。

そこには沙希が待っていた。

「おっす」

俺は沙希に近づき挨拶をした。

だけど沙希の顔は曇ってる。

沈黙の風が流れた。

「何だよ?」

まだ、沙希の顔は曇ってる。

「それは、こっちのセリフ」

…へ?

「明日香に何したのよ?」

「いや、明日香には何もしてない」

「嘘付け! 明日香は昨日私の家に来て、ずっと泣いてたんだ! 朝まで泣いてたんだ!」

沙希が勢いで俺の胸倉をつかむ。

「何したんだって聞いてんだよ」

沙希さん? 少しばかり…。

いや、少しどころじゃない、すごく恐いんですけど。

俺は、昨日の出来事を一字一句間違えずに沙希に説明した。

数秒置かれた後、沙希は一言、言って俺をその場に置き去った。



「…馬鹿」



と。




















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