8−2
某スーパーに男女合わせて6人のグループが居る。
「じゃあ、6人居ることだし、分担して買い物しようか」
当然なのだが、文化委員である幸助が仕切る。
その行動がどうしてか、イライラしてくるのは…気のせいだろうか?
それにしても、最初、買出しする人は三人だったはず…。
俺と、幸助と、明日香。
そう、3人だったはずなのに。
「ねぇねぇ、どうやって決めるの〜?」
あの無駄に気が強い沙希が居る。
「やっぱり、じゃんけんで決める?」
…なぜか凛もいる。
「まぁ、それが一番だな」
俺達のクラスとは別のクラスなのに何故か亮平もいるのだ。
摩訶不思議な面子だな…こりゃ。
「じゃあ、最初に勝った3人と負けた3人で」
また、幸助が仕切る。
う…仕方ない。ここはやっぱり、文化委員だからしょうがないんだ。
そう、仕方ない!
心に言い聞かせて、俺は右手を前に出した。
「最初はグー! ジャンケンポン!」
6人の声がそろう。
「お…綺麗に分かれたな」
幸助がボソッと呟いた。
因みに、
俺、グー。明日香、グー。亮平、パー。幸助、パー。沙希、パー。凛・・・グー。
…神様。
あなたはここまでして、僕を苛めたいのですか?
…神様。
どうか、どうか、このメンバーだけは避けて欲しかった。
あなたは、悪魔ですか?
こんな悲しい運では、僕は…もう…生きていけませぬ。
「なに、ボソボソ呟いてんだ?」
隣にいた亮平が俺に向かってそう言った。
知らぬ間に、口に出してしまっていたらしい。
まぁ、聞こえてなかったのならよかった。
「いや、別に…」
と、亮平に答えておく。
俺が、妄想癖ということは気付かれたくない。
…うん。
多分、知っているが。
「私、明日香についてきたのに、何で明日香と別行動取らなきゃいけないのよ!」
沙希が幸助の胸倉をつかみながらそう言った。
おぉ! これは天使の叫びか?
沙希がこのまま幸助を言い負かせて、こっちのグループに来ることがあれば、俺は男子達と行動が出来る。
しかし、幸助はそこで反論する。
いつもはしないくせに。
「仕方が無いことだよ。君が僕と共に行動することは運命だったのさ」
「何であんたと私が共に行動することが運命なのよ! 気持ち悪い」
沙希の腕に鳥肌が見えた気がした。
本気で気持ち悪かったのだろう。
…まぁ、沙希の言い分が正しいと俺は思っておこう。
「じゃあ…」
幸助はそっと、沙希の耳元に口を持っていき、何かこそこそと話している。
その話が終わったと思ったら、沙希の口からとんでもない言葉が。
「そ、それじゃあ仕方ないわね…」
何ぃ!! 何が仕方ないんだ!
俺は、男子等行動。女子等行動の方が良かったのだが…。
何を言ったんだ…あの幸助野郎。
「じゃあ、明日香ちゃんと凛ちゃんと風紀は、コレネ」
そう幸助に言われて渡されたのは一枚の小さな紙だった。
中をそっと覗く。
どうやら、買い物の品物らしい。
「メイド服18着、猫耳18個、細長い紙を大量、メニューが載るような紙を大量」
…。
細長い紙って何だよ?
メニューが載るような紙は、まだ分かる。
メイド服、猫耳18っていうのは、女子の人数だろう。
「なぁ幸助。細長い紙って?」
考えるのも面倒なので素直に聞いてみた。
「細長い紙って言うのは、オーダーを取るときに必要な紙さ。分かったかい? 風紀君?」
「はいはい。分かりましたよ」
やっぱり、仕切られるとむかつく。
あとで一発ぐらい殴っておこう。
「では、行ってらっしゃい!」
幸助が、俺たちに向かってしっしとした。
…今は、我慢我慢。
明日香と、凛を後ろに引き連れ、俺は歩く。
まぁ、当たり前のように無言状態だろう。
しかし、そんな俺の考えは甘いということを思い知らされた。
「ねぇねぇ、風紀ぃ〜!」
凛が話しかけてくる。
ここ何週間か一緒に居る機会が多いおかげか、大分この寒気にも慣れてきた。
しかし!
気持ち悪くなったりするのは、未だに直らず、やっぱり喋りたくない。
「風紀ってばぁ…」
…ぅ。
そんな甘えた声を出すんじゃない! 凛。
「な、何だよ!」
ぱっと後ろを向く。
すると、服売り場に明日香と凛が仲良く服を選んでる。
…いや前言撤回。
仲良くって感じではなさそうだ。
「これ、可愛くない?」
凛が俺に向いてニコニコしながらそう言った。
「可愛くない」
と俺は言い放つ。
まぁ、その言葉に凛がへこんだのは見なくても分かることだろう。
「お〜い。明日香行くぞ?」
3秒ほど時間があっただろうか?
その、3秒後に「う、うん!」と言って俺に近づいてきた。
しかし、凛は来ない。
「おい…早く行くぞ?」
手招きする。
俺がそうした瞬間、顔がパァと明るくなったのも…って、言うまでもないか。
「まず、メイド服を探すか」
メイド服なんて、普通売っていないだろう。
あの幸助の馬鹿は、何処で買えというのだ。
それに…このお金の量は何だ?
俺は、今までにここまで大金の金を持ったことは無いだろう。
軽く、50万はあるだろうか?
俺がお金をボーと眺めていると、明日香が俺の心境を察したかのように、このお金の多さの理由を話し始めた。
「予算は、クラスの文化委員でじゃんけんして決めたらしいよ」
どんな学校だよ…。
「勝った順に、値段が決まっているんだってさ。私達のクラスは2番で100万円寄付してもらったんだって!」
自慢げに話す明日香。
…ぅ。
明日香のその可愛さに俺は眼がやられるかと思ったよ。
それにしても、1番のやつらは何万円もらったんだろうか?
「えっと、因みに1番のクラスは500万だって」
…え?
ご、ご、ご、500万!?
なんじゃそりゃぁぁぁぁぁ!!!
俺等の学校の理事長は、金銭感覚が最早なくなってるのか?
たかが、学園祭の為に500万。
いや、俺たちと、その他大勢のクラスをあわせると、軽く1000万円ぐらいになるのだろうか?
もったいない…。
色々考えていると、大分前方の方から凛が俺の名前を呼ぶのが分かる。
「風紀ぃぃぃぃぃ!」
「何だよ…」と言いながら俺は凛に近寄る。
「これこれ!」
凛はそう言って、俺にある物を見させた。
「…」
「ど、どうしたのぉ?」
凛は俺の顔を覗き込む。
俺が黙ってしまったその理由は…。
「な、何であるんだよ?」
メイド服と思われる物体が凛の手の中にあったからだ。
それに続いて、猫耳と思われる物体も…。
「そこにあったよ〜」
「マ…マジ?」
「マジ」
…あるんだ。
メイド服と猫耳がここに。
おかしい…おかし過ぎるぞ。
昨日、更新をさぼってしまい、申し訳ございません。
どうしても、時間の余裕がなくて…。
読んでいただき、ありがとうございます。