7−4
教室のドアをガラッと開ける。
さっきと同じように、俺にみんなの視線が集まった。
だから、この視線嫌いなんだって。
「ぅ〜」と言い、下を向きながら自分の席へ向かった。
まだ、視線が俺にきているのがわかる。
そんなに珍しいか?
この俺が。
教室にドアを開けて入ってくる奴が。
だったらどう入るんだよ…。
窓から入れというのか?
…視線。視線。視線。視線。
だからそんなに見るな。
俺が席へと戻ると同時に幸助が俺の前にやってきた。
すると、俺の顔をじっと見てこう言った。
「お前、大丈夫か?」
「何が?」
「何が? って、分かってないの?」
…は?
だから早く俺に用件を言え。
「お前を呼んださっきの人、2年生で最強と呼ばれている男の人達だったりするんだよ?」
…?
あぁ、さっきのか。
相当弱いのに、あいつが最強とは…。
この世の中も、終わってたりするんだな。
「へぇ〜」とだけ答えていた。
幸助が俺の元から去っていくときに「無傷かよ」と呟いていった。
―――――放課後。
「風紀〜帰ろうよぉ!」
そう呟いているのは、勿論凛である。
「俺に話しかけるな。よってくるな。俺は部活だ」
凛にそう言った後、俺は明日香を見つけ、そばに寄った。
「風紀、今日大丈夫だった?」が、明日香の第一声。
「…まぁ」
明日香は、前に俺の喧嘩を見て強さを知っている。
それほど、心配していないらしい。
その話もその時点で終わった。
特別教室へと向かう。
まぁ、簡単に言うと部活へと向かう。
「こんにちは〜」
いつものようにガラッとドアを開けた。
……。
「ど、どうしたんですか?」
俺がそう言ったのは、まぎれもなく俺に全員の視線が集中しているからだ。
「お前、あの最強の男やっつけたのか?」
びっくりだ。
いつも遅い龍先輩が珍しく早く居る。
…って、驚くべき所はそこじゃない!!!
「…え?」
何で知ってるんですか?
「今、何で知ってるんですか? とか思ったろ」
…う。
言い返せない。
「幸助が、みんなに言っているよ」
あいつか。
幸助を0.2秒で探し、呼び出す。
「おい、幸助。カモン」
「あ、あい」
幸助は怪獣を見たかのような顔をしながら俺に近づいてきた。
まぁ実際にその顔を見たこと無いんだけど。
その前に、怪獣を見たことはないし…。
「な、なんですか?」
何故か敬語。
「お前に言いたいことがある。ちょっと来いよ」
そう言い、俺は廊下に呼び出した。
「いやぁぁぁぁ!」
何か悪魔にどこかへと連れて行かれていくような悲鳴をあげる幸助。
まぁ俺は…いや、話が長くなるからやめておこう。
強制的に廊下へと引っ張り出す。
「ねぇねぇ幸助君。そのことはもう話しちゃ駄目よ?」
一応、笑顔で幸助に言う。
幸助はビビッて、俺の顔を見ることも出来ない様子。
「分かったら返事」
少し、冷たく言う。
「は、はい!」
……。
なんかそこまで怖がられると俺も嫌なんですけど。
まぁ…これも、これでいっか。
笑顔で幸助の顔を見て俺だけ教室に入る。
またもやみんなの視線が俺に集中。
やめてくださいよ…。
「こ、幸助は?」
悠太が俺の顔を見てそう言った。
まぁ怖がられるのも無理ないのかな?
「あぁ、なんか知らないが、外で魂放浪している」
意味不明な言葉を悠太に返すと、へ? みたいな顔を作っている。
いつも悪ふざけの挨拶をしてくる部長はというと…。
「おい! 馬鹿風紀! そんなことして、お前が退学になってみろ。続きが撮れないだろう
が!」
俺の身体をバシバシ近くに置いてある金属バットで殴ってきた。
…部長。
何でそんなものがあるのですか!?
意識朦朧としながらもそんなことを考えていた。
「ふ…き?」
何処からか明日香の声が聞えてくる。
「風紀…風紀…」
しっかりと聞えてきた。
目をばっとあける。
視界には四角の模様がいっぱい並んでいる。
まぁこの風景。
「保健室か」
大きな溜息を着いた俺。
「風紀…」
横で寝息が聞える。
ということは、こいつは今寝ているのか。
「明日香。待ってるなら、ちゃんと起きてろよな」
自分の体を起こす。
う…。
ちくっとする痛みが全身に走った。
「スースースー」
しかし、その痛みは一瞬。
明日香の方を見ると「可愛い顔してやがる」とうっかり呟いてしまう俺。
「明日香…起きろ」
耳元でそっと呟いてみる。
「ん…あと少し時間ちょうだいよぉ」
寝言なのか、本当に言っているのかよく分からない言葉が返ってきた。
「そんな、返事いらねぇ」
笑い堪えてそう言った。
その言葉に反応したのか、明日香がむくっと起きて目を擦り始めた。
「ん…風紀?」
「あぁ俺、風紀」
「だ、大丈夫なの!?」
「何が?」
そう答えた後、明日香は細かく教えてくれた。
俺が気絶したときのことを。
簡単に説明すると、部長が遊び半分で、金属バットで俺を殴っていたところ、明日香が止めに入って俺は気絶したらしい。
…もっと簡単に言うと、俺は明日香に抱きつかれて気絶したことになる。
恥ずかしい。
「明日香。帰るか」
大きく明日香は頷いた。
ぐ…まぶしいぜ、明日香。
その姿が、憎い位に可愛い。
「クソ〜〜〜!」
無意味に保健室で叫ぶ。
明日香は不思議そうな顔をしていたけど、俺はその顔を無視することにした。
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本日は2話更新となりました。
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