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Double Life  作者: Toki.
32/60

6−4





凛目線です。







この高校。


風紀が居る高校なんだ。


たまたま、クラスの名簿を見たときに香坂風紀という名前を見つけた。


たまには、親も役に立つよね。


あの悲劇から私は一度、どん底に落ちた。


あんなことをしなければ…。


後悔しているのは、もう遅いかもしれない。


初めて教室に入った日。


風紀がいた。


最初、入るのを躊躇したの。


だって、あんなに可愛い女の子が隣に立っているんだもん。


何やら話している。


先生が「どうしたの?」って聞いてきた。


「なんでもないですよ?」


と笑みを作って教室のドアを開けた。


一瞬、風紀がこちらを向いた。


それにつられて、女の子も私を見る。


風紀の顔…。


何ヶ月ぶりだろう?


はっきりとこの目で見たのは…。


その顔が、酷い表情だった。


私を見て、酷い表情を…した。


その数秒後、ドアが開く音。


風紀がこの教室から居なくなった。


…気になる。


女の子と風紀の関係が。


一歩一歩近づいてみる。


女の子は私を見たまま呆然としていた。


「ねぇねぇ」


はっと我に返ったようで、何!? みたいな顔をしている。


とりあえず、一応確認。


「さっきの風紀…香坂君だよね?」


一応彼女だったら、名前で呼ぶのは失礼と思ったから、上の名前で。


「はい」


冷たい返事。


なんか嫌だな、この子。


「付き合ってるの?」


一番気になっていることを聞いた。


そこの子は「付き合っては無いですけど」という。


…けど なんだ?


結構、その曖昧な返事が気になる…。


「そっかぁ」


そう言って、その子との会話を終わらした。


また廊下に向かい、風紀を探す。


居たら、なんて言おうか。


「けどねぇ、香坂と明日香ちゃんって仲いいんだよ?」


…せっかく終わらそうとしたのに、またこの話題を持ち出すんですか先生よ。


それにしても、仲がいい…か。


実は、付き合ってたりするのかな?


こんな可愛い子だったらライバル多そうだし、内緒の関係っていうのもあるかもしれない。


私は一度、担任室へ行った。


この先生はよく分からない。


担任室に行き、ソファーらしきものに座った。


なんとなく居心地が悪い。


落ち着かない。


…この学校に風紀が居ると思ったら。


はっきり言うと、私はまだ風紀への気持ちを吹っ切れていない。


智也とも喧嘩して関係が終わった。


…なんで、私は二人に手を出したのだろう。


もう、嫌だった。


いろんなことを考えていると涙が出てきた。


「ど、どうしたの木村さん!?」


近くにいる、何組の先生か分からないが私の名前を呼ぶ。


「な、何もないです!」


涙を拭いてしっかりと答えた。


タイミングよくチャイムが鳴った。


担任の…なんていう名前の先生だっけ? その先生が私を引き連れて廊下を歩く。


まだ多少生徒が居るのだが、先生を見ると直ぐ教室に入っていく。


一応不良っぽいのだが、そういうところは可愛らしいね。


教室をガラッと先生が開けた。


それに続いて私が入る。


やはり転入生。


「おぉぉぉ!」と言う歓声が起きるのは当然か。


確か、風紀はあそこの席だったような。


空席。


その隣にはあの女の子、明日香という女の子が居る。


先生にいきなり、自己紹介しろという命令が下った。


最初、この予定は無かったはずじゃ?


しかも、そんな中途半端なフォローはいりません。


好きな子を言うとか、部分とか…。


って、部分ってどういう意味ですか!?


みんなの注目が私に集まる。


う…厳しい。


「え、え〜と。この学校のある一部の人とは知り合いです。例えば…香坂君とか」


ザワザワっとしたのは気のせいだろうか?


その中に、「また、可愛い子に手を出しているのかよ」という声が聞えたのも…気のせいだろう。


ホームルームが終わり、先生に「風紀君は?」と尋ねると「保健室だよ」との返答があった。


保健室へと向かおうとしたが、転校生を物珍しそうにしている生徒達に阻まれ結局今日一日いけることは無かった。


いや、行こうと思えば行けた。


私は、風紀と会うのを怖がっていただけ。


最初の学校も遠い遠い場所にした。


けど親が「戻っておいで」と泣きながら言うので仕方なくこっちの街に帰ってきたのだ。


学校も終わり、家に戻る。


親から「おかえり」という言葉があった。


私は「ただいま」と呟き、部屋にこもる。


へなっと力が抜けて座るような形になった。




そして、涙を流す。




…風紀。




今日だけで、心の中で何度呟いただろう?




……。








頬を流れる涙が忘れられないと呟いた。


痛むこの心が今でも好きなんだと呟いた。
















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