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頭脳警察 vs ニート革命軍 (ニート革命軍3)
湾岸太陽族
作:六角オセロ


広い荒野に〜♪ ぽつんといるよで〜〜♪ 涙が知らずに〜♪ あふれてくるのさ〜〜♪
福之助が窓の景色を見ながら、メランコリーな雰囲気で歌っていると、姉さんがやってきて福之助の顔を覗き込んだ。
「ま〜たまた、人間の真似なんかしちゃってぇ〜〜。」
福之助は目玉を姉さんの方向に移動させた。
『バレバレ?』
「無理無理、あんたの脳はCPUなんだから、いくら頑張ったってム〜〜リ。」
『わたしは、いったい何のために生きているんでしょう?』
「ま〜た始まった!あんたは、ただ動いてるだけなの。」
『そうなんだ。』福之助は溜め息をついた。『あ〜〜あ・・』
「その溜め息プログラム、なんとかならないの?」
きょん姉さんは、おからパンを食べていた。
『立って食べるなんて、お行儀悪いですよ。』
「時間が無いんだよ。」
テレビからラップのリズムが流れてきた。
『姉さん、あの甲賀しのぶがテレビに出ています。』
「ほんと?」

♪♪♪
俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪
 俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪
  あと50年で地球は酸欠地獄♪ 働いて何になる♪
   あと50年で地球は酸欠地獄♪ 勉強して何になる♪
 あと50年で地球は酸欠地獄♪ 訓練して何になる♪

『やってますねえ。』
「たいしたもんだなあ。」
『けっこう有名なんですね。』
「そうみたいだね。知らなかった。」
『わたしもです。あんまり興味がなかったもんで。』
「早く支度しろよ!」
『姉さん、そんなに急いで何処に行くんだすか?今日は土曜日ですよ。』
「あっ、土曜か今日は!」
『大丈夫ですか?寝ぼけてますよ。』
「・・・コーヒーでも飲もう。」
『そういえば、今日の午後2時からチャイナタウンの中央公園の中央広場でライブをやるそうですよ。』
「じゃあ、行ってみるか。」

チャイナタウンは海沿いにあった。海岸線を4車線の国道が走っていて、その国道の海側に中央公園はあった。

「いざ、出陣じゃ〜〜〜〜〜い!ところで、今何時かな?」
『よっ、鉄の女、アイアンメイデン!そんでもって、今10時15分20秒です。』
「ピンクの空中スクーターにまたがり、いざ出発だーー!お供は、ぐんじょう色のオンボロの空中スクーターに乗っかったイカれロボットの福之助〜〜〜!」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!でもって、いえ〜〜〜ぃ!』
「背高ノッポの雲は出てないみたいだねえ。」
『積乱雲のことですかい?』
「それそれ。」
『積乱雲は、だいたい午後から発生するんですよ。』
「ああ、そうなの。ちいとも知らなかった。行くぜぇ〜〜!」
『お〜〜〜!』

国道湾岸線を走っていると、後ろの方からビートクラクションが聞こえてきた。
ビビドド・ビビドド・ビビ〜〜〜♪
『姉さん、湾岸太陽族だ〜〜!』
「福之助、よけろ!」
空中スケートボードに乗った10人ほどの少年たちが、ビートクラクションを賑やかに鳴らしながら通り過ぎて行った。
ビビドド・ビビドド・ビビ〜〜〜♪
<ひゃっほ〜〜!> それは、大地を失ったアパッチインディアンの叫びでもあった。
『まったく、滅茶苦茶な連中だなあ!』
「まいった連中だよ。」
ウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜!
『姉さん、パンタです!』
少年たちの後方から、頭脳警察のパトロールカー、通称”パンタ”が追跡していた。
【 こちら頭脳警察 社会に迷惑を掛ける人間のクズは 直ちにゴミ人間箱に回収されます! 】

少年たちの落としたミュージックプレーヤーから、少年たちのテーマソング、荻野目ちゃんの湾岸太陽族(作詞:売野雅勇)がアスファルトの上で悲しく叫んでいた。

♪♪
クラクション叩きながら 追いかけてくわ
湘南かいがんへ抜けるチャイナタウン・ルート

You are gonna run away Seaside
淋しがりやの子は 昔話したがるね

You are gonna run away Seaside
他に絆確かめる 方法みちを知らなくて Get together

You are gonna run away Seaside
みんな同じロンリネス 笑いながら分け合ったね

You are gonna run away Seaside
嘘のつけない子たちが 青く傷つくの Pacific

Never you run away Seaside
みんないつの日か 星座から消える ガラスの Shooting Star ♪


傍らで走る真っ赤な空中スポーツカーから、甲賀しのぶのラップが流れていた。

♪♪♪
俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪
 俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪

『姉さん、りゅうじからのメールです。読みます。』


Don't Believe A Word 子供たちよ 言葉を信じるな!
みんな仲良しだった昔 子供たちは生きていた 死んではいなかった
僕らは大地に引きこもる デジタルな風景は 僕らの求めるものではない


「相変わらずの詩人だねえ〜。」
『はっ?』
「りゅうちゃん、わたしが必ず救ってあげる。」
『はっ?』
「またライブに行こう、りゅうちゃん!」
『はっ?』

「もうじき正午だね。海苔弁でも食べるか!」
『ま〜たですか。貧しい人生だなあ〜〜。』
「じゃあ・・がんばって、特上の海苔弁にすっか!」
『姉さん、せっかくチャイナタウンに来たんですよ。』
「そんだねえ・・」
『なんだかなあ、海苔弁ばかり食べてる変な人間だなあ・・』
「あんたは、どうせ食べないんでしょう。」
『そりゃあ、そうですけど。貧しそうで見てて悲しいですよ。』
「大きな御世話だよ。」
『なんだかなあ・・悲しい人だなあ・・』
「じゃあこうしよう。肉まん食べながら、ウーロン茶飲みながら、海苔弁。」
『なんか、もっと高級なの食べれば?』
「高級なやつ・・・、あんまり食べたことないからなあ・・」
『とにかく、中華街に行ってみましょう!』
「行ってみるか。でも、中華は太るからなあ・・」
『なに、ぶつぶつ言ってるんですか。』

スクーターを降りると、2人は中華街に向かった。

「わあ、凄い人だねえ・・」
『人間だらけですねえ!』
「ロボットの来るところじゃないよ。」
『やっぱり、わたしは美味しそうなバッテリーのあるバチバチの電気街の方がいいですね。』
「あっ、ロボットもいるよ。」
姉さんが指差した方向に、宣伝ロボットがいた。頭の上に宣伝ディスプレイが乗せてあった。まんじゅうが映っていた。
宣伝ロボットが何か喋っていた。

ほわほわカスタードまんじゅう。厳選された卵と、上質なコンデンスミルクで作ったカスタードはしっとりあっさり。
甘さ控えめなので、甘いものが苦手だという方にもおすすめです。
お子様からお年寄りまでおいしく召し上がっていただけます。きっと病みつきになること間違いなし!

「おいしそうだねえ。」
『そうですかねえ。』

他の宣伝ロボットが前の方から近づいてきた。

香港で人気の、医食同源の健康デザートが、この亀苓膏(グィレィコウ:亀ゼリー)です。
中国や台湾では"熱気"が体内に溜まると、便秘や吹き出物、体調不良の原因になると考えられてきました。亀ゼリーはその"熱気"を冷ますといわれており、健康・美容によいとして人々の間で人気があります。

「ふ〜〜ん・・」
『人間はいいなあ、いろんなのを食べられて。わたしって、いったい何のために生まれてきたんでしょう・・』
「ま〜た、始まったよ。ロボットの溜め息ブルースが。」
『わたしは、はたして此の世に存在しているんでしょうか?』
「はっ!?」
『われ思う、ゆえにわれあり。』
「おまえ、回路は大丈夫か?」

姉さんは、メランコリーな雰囲気の小さな店で、カスタードまんじゅう2個と、マンゴープリンを食べた。それから、ウーロン茶を飲んだ。
『姉さんは、大きな店が嫌いなんですね。』
「野に咲く1輪の花がすきなの。急ごう、もうすぐ2時だよ。」
2人は、スクーターに乗り、中央公園に向かった。

中央公園の中央広場には、約5千人ほどの人が集まっていた。
『凄い人ですねえ。』
「凄いねえ。人気があるんだねえ。」

お待ちかね、かねかねかね〜〜〜!
ラップ界の新星〜〜 甲賀しのぶ〜〜〜!
そして〜〜曲は、ヒットナンバー〜〜俺たちに明日はない〜〜〜!
ラップのリズムが流れ、甲賀しのぶと相棒のイトチンが踊りながら現れた。
一斉に歓声があがった。
しのぶが歌いだした。♪俺たちに明日はない〜〜♪
相棒のチビのイトチンが後を追って相槌を打つように歌った。♪何がある〜〜♪
観衆が一斉に答えるように合唱した。♪今日がある〜〜♪

♪♪♪
俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪
 俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪

  あと50年で地球は酸欠地獄♪ 働いて何になる♪
   あと50年で地球は酸欠地獄♪ 勉強して何になる♪
 あと50年で地球は酸欠地獄♪ 訓練して何になる♪


『凄い人気ですねえ。』
「凄いねえ。」

その曲が終わって、甲賀しのぶは観客に告げた。
『今日の特別ゲストを紹介しま〜〜す!』
一斉に歓声があがった。
『尺八りゅうじ〜〜〜〜〜!』
一斉に歓声があがった。
虚無僧姿のりゅうじが現れた。左手には尺八を持っていた。
甲賀しのぶが彼の新曲を紹介した。
『尺八りゅうじの新曲、”われわれは大地に引きこもる”で〜〜す!』
一斉に歓声があがった。
福の助が姉さんを見て言った。『姉さん、あの虚無僧、この前の!』
姉さんは驚いた。「りゅうじ!?」
『なんでこんなところにいるんでしょう?』
「ほんとうに、りゅうじなの?」
『こんなところに現れますかねえ?』
「それもそうだねえ。」
尺八りゅうじの演奏が終わると、20人ほどの同じ緑色の服を着た者達が現れた。
そして、尺八りゅうじが演説を始めた。

【 われわれは ニート革命軍です! 】

場内は急に静かになった。

【 われわれは、日本デジタル帝国に対し、天罰を与えるべく立ち上がりました! 】
【 今、日本は人間を育んだ大地を失いつつあります! 】
【 我々は、地球環境のために自らの欲望を犠牲にして、大地に引きこもりました! 】

福之助が言った。『やっぱり、りゅうじだったんですね!』
姉さんが叫んだ。「りゅうちゃん、すてき〜〜!」
福之助は姉さんの顔を覗き込んだ。『はっ!?』

【 大気中の二酸化炭素濃度が2%程度で、血圧や心拍数等の変化が現れ、中毒症状が出てきます! 】
【 濃度が 3〜4% を超えると頭痛・めまい・吐き気などを催し、7% を超えると炭酸ガスナルコーシスのため数分で意識を失い、この状態が継続すると麻酔作用による呼吸中枢の抑制のため呼吸が停止し死に至ります。 】
【 二酸化炭素は、大気中の他の気体より重く・・・ 】

ウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜!

突然、サイレンが広場内に鳴り響いた。頭脳警察のパトロールカーだった。
【 こちら頭脳警察 ”民衆の心を惑わす罪”により 現行犯で直ちに逮捕します! 】
5機の拘束ロボットが広場内に入ってきた。
姉さんは、りゅうじに向かって叫んだ。
「りゅうちゃん、逃げて!」
広場は騒然となった。
「ああ、歯が痛い!」
『どうしたんですか?』
「思い出した。今日4時から歯医者に予約しておいたのよ。」
『そうなんですか。』
「今、何時?」
『ええっと、3時12分55秒です。』
「まだ、間に合うな。」
『いいんですか、りゅうじさんは?』
「そんなの、どうでもいいよ。」

【 こちら頭脳警察 この場所での自分勝手な行動は処罰されます! 指示に従って行動してください! 】

「あんなやつ、捕まればいいのよ。」
『りゅうじさんと、何かあったんですか?』
「なにもないわ、あんなやつ・・」
『・・・』
「みんないつの日か、星座から消える ガラスの Shooting Star ・・」
『はっ?』

「エンジン始動!急がないと痛くて大変だ〜〜!」
『お〜〜〜っ!』
「健全な自分あっての世界なのだ〜〜!」
『お〜〜〜っ!』
「行くぜぇ〜ポンコツ〜!ロックンロールな風が吹いてるぜぇ〜!」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!っでもって、お〜〜〜!』

姉さんの瞳は、なぜか涙で潤んでいた。心には荻野目ちゃんの曲が流れていた。


サキソフォン泣くみたいに 吹いたねリズム&ブルース
 沖から明けてく海見ながら 悲しい恋のことを 何も聞かない その優しさ切なかったの

You are gonna run away Seaside 淋しがりやの子は 昔話したがるね
 You are gonna run away Seaside
  他に絆確かめる 方法みちを知らなくて Get together

 Never you run away Seaside
  みんないつの日か
    星座から消える ガラスの Shooting Star



【 第3話 おわり 続きは、第4話 ハル(ニート革命軍4) 】











♪ 荻野目洋子 湾岸太陽族

☆ 六角オセロゲーム

☆ 頭脳革命・ドラゴンリバーシ





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