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  幻界創世記 作者:冬泉

リュオンが感じた追っ手とは・・・
第四章「光と舞と」
STAGE04◆「光と、舞と」-SCENE#5
■UNO学院/医療室→公園

「そのまま、話を続けて聞いていてくれ」

 さり気なく言いながらも、心の中では舌打ちする。オレとしたことが、抜かってたぜ──しっかり付けられていたとはな。
 おまけに、ここら辺は全く人通りがないと来ている。嬉しいこったぜ──何時仕掛けられても可笑しくない状況じゃないか。

「二人とも、走るのは得意か?」
「僕は苦手じゃありませんけど・・・」
「大丈夫よ」
「そりゃ、心強いな」
「突然、どうしたんですか?」
「解説は後でな。アオイ、ここから一番近くて広い場所、知っているか?」
「・・・私たちが出会った公園。それが近いわ」

 勘がが良いな、アオイは。皆まで言わなくても、今の状況を察してくれているみたいだ。
 
 「そりゃ都合がいい」

 アオイとは対照的に、ショウは怪訝そうな顔をしている。まぁ、ショウは素直のところが取り柄だからなぁ。

「二人とも。オレが合図したら全力で走れ。アオイ、その公園に向かって先導してくれ。」
「それって・・・」
「話は後でな。それっ!」
「えっ!」

 オレの合図と共に、アオイが全力で走り始めた。なんだかんだ言って、ショウも間髪入れずに後を追って走る。それでいい。
 周囲に気を配りながら、オレもアオイとショウを追っかけた。案の定、先程から感じていた気配も追いかけてくる。

「ショウ、アオイに置いていかれるぞっ」

 驚いたことに、アオイは予想以上に脚が早かった。それに比べて、ショウはもう息が上がってしまっている。

「はぁはぁはぁ」
「頑張れ! もうすぐだ・・・と思う」

 最後は小声で付け加えておく。土地勘がないから、おちおち気休めも言えないぜ。気休めだから、効果も皆無──まぁ、仕方がないことだが。

「翔くん! 遅れないで!」
「は、はいっ!」

 おぉ、凄いな。アオイの叱咤に、ショウは顔を真っ赤に染めてこれまでの三倍のスピード(翔比)に増速したじゃないか。
 人間、やればできるもんだな──って、感心している場合じゃなかったな。

「もう少しだから!」

 先頭を走るアオイも、流石に息が上がってきているようだった。
 先程で“力”のあらかたを持っていかれてることを考えると、華奢な躰のくせにここまで走れるアオイの潜在的体力は非常に高いものがある。

「そこの角を曲がれば!」

 アオイ、ショウ、そしてオレの順番で最後の角を曲がると、正面にくだんの公園があった。
 やれやれ、なんとか間に合ったか?
 公園の入り口を通り抜け様に振り返ると、空中に“グリフ”(魔法印)を描く。少しだけ、持ってくれればいい。

「リュオン!」
「ショウ、アオイを連れて下がっていてくれ。ちょいとお客があるからな」
「・・・手伝えることは?」
「剣を握って、待機しててくれ。すぐに出番が来る」
「わかったわ。翔くん、待ちましょう」
「は、はい」

 アオイは状況が緊迫するほど、冷静になるようだ。
 状況に付いていけなくて、慌て気味のショウを落ち着かせる手並みは大したものだ。

「来たぞ!」

 ズゥン、と鈍い音がして、公園全体が微動する。
 即席版のグリフ(魔法印)を可能な限り強化すると、オレはアオイとショウに向き直った。

「いいか、アオイ。お前だけがその剣を扱える。そして、その剣だけが『TOR』(門)を開くことが出来る」
「先程同様、力を込めればいいのね?」
「そうだ。目一杯剣に“想い”を込めてから抜いてくれ。そして、剣で“空間に門を切り開く”感じで振るうんだ」
「“想い”、ね」
「あぁ、頼んだ。」

 ズズゥン、とまた公園全体が振動する。先程よりも揺れの度合いが大きい。

「リュオン! 僕は何をすれば良いんですか!」
「いまんところは何も無し!」
「へ?」
「話は後だ! 来るぞ!!」

 ガギッ! と言う嫌な軋み音を立てた後、公園入口のグリフ(魔法印)は粉みじんに消し飛んだ。
 だが、既に次の一手を打っている。

「Allmaechtiger Herr(偉大なる王よ), gib mir deine Kraft um den Boesen in distanz zu halten(邪悪を寄せ付けない力を与えたまえ)。Kreis gegen den Boesen!(破邪の円)」

 光の輪が三人を取り囲む。

「アオイ、出来るか?」
「やってみる」

 アオイは頷いた。剣を握る拳が込められた力に白くなっている。流石に緊張しているんだろう。

「葵さん・・・」

 心配そうなショウに一瞬笑顔を向けると、アオイはFOUTUNE(命運)を引き抜いた。

☆☆ SCENE#6に続く ☆☆
 何時もお待たせしてしまって恐縮です。今回は、リュオンからの視点となります。魔導も戦闘も全く素人の翔と葵にとって、斯様な修羅場の経験者であるリュオンの協力は欠くことが出来なくなりつつあります。不真面目そうですが、その実、非常になる兄ちゃんです(笑)。


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