@you
ワタシはポリゴン2。ワタシはユウスケ君のポケモンです。
ワタシは普段、ポケモンボックスの中でのんびり生活しています。
ボックスの中は、そんなに悪いところではありません。
ワタシたちはデータ化されているので、暑くも寒くもありません。パソコンへ預けられると、状態異常のデータはボックスのシステムが消してくれるので、身体も至って健康。そして、身体のデータはずっと維持されるので、お腹も空きません。
ボックスの中は、ワタシたちにとって不都合は何一つない世界です。
ただ、ちょっとばかり暇なのが、玉にきずなのです。
ワタシがユウスケ君に外へ出してもらえない理由はただ一つ。
強くないから。
ユウスケ君は、チャンピオンを目指して旅をしていますから、そこが一番重要なポイントなのです。
いえいえ、ワタシだって、ちゃんと育てれば、強いんですよ?
ただ、ユウスケ君がワタシが強くなるまで、ちょっと待てなかっただけなんです。
ユウスケ君は、ポケモンで言うところの「せっかちなせいかく」なんです。
ですから、ワタシみたいに強くなれる前にボックスに預けられた子がいっぱいいるのです。
ワタシは他の子と違って、データの中を行ったり来たりできますから、どの子がどんな性格で、どんな才能を持っているかなんて手に取るようにわかります。
だから、ユウスケ君がどんなにもったいないことをしているのかも、ワタシが一番よく知っているのです。
この子たちをこういう風に鍛えれば、たとえチャンピオンとまでは行かなくても、もっともっとユウスケ君は強くなれるのに。
ワタシが人間なら、このことを教えてあげられるのでしょうか? いいえ、そもそも、ポリゴン2だから知ることが出来たのですから、意味がないでしょう。
ワタシは、そんなもどかしい気持ちを抱きながら、ボックスの中の仲間たちを眺めるのが日課でした。
あるとき、ワタシはちょっと足を伸ばして、インターネットの世界へと行ってみました。
おっと、普段は、ユウスケ君がいつポケモンボックスを起動しても良いように、ボックスの中で大人しくしているんですよ?
ですが、今は真夜中。ユウスケ君はぐっすり眠っているはず。絶好の脱走タイムなのです。
ワタシは時々こうやって外の世界へ遊びに行って、様々な情報を取り込むのが好きでした。どこそこの博士がポケモンのたまごを見つけただとかいうニュースから、どうこうするとポケモンが突然レベルが限界まで上がるとかいう噂話まで、いろんな話を読むのです。
そしてその日、見慣れない言葉をワタシは発見しました。
『Twitter』
調べていくと、140文字内で、独り言をただただ投稿したり、他の人の『つぶやき』に対して返事をしてみたりするという、BlogやSNSとはまた違ったツールのようでした。
その手軽さ故か、利用者も多く、また、情報の伝達スピードも今までのどのツールより速い。
もっともっといろんなことを知ることが出来るかもしれない。
ワタシはその欲求のままに、自分のアカウントを作成してしまいました。
各地の有名な博士。ポケモン製品を開発販売している企業。ユウスケ君があこがれているチャンピオン。地道にポケモンの戦法を考察しているトレーナー。
ワタシは手当たり次第、面白そうな人をフォローしてみました。
「7kamado 明日は学会。面白い話が聞けそうで楽しみだ」
「daigo_champ テンションが上がってうっかり変なことを言ったからってそれをツイートしなくて良いんだよ!」
「SylphCompany わざマシンの不具合に関するお詫びと今後の保証について……」
「b-354 特殊型ジュペッタって変かな? 結構いろんな特殊技は覚えるんだけれど……」
「pikapika.red @daigo_champ 有名税だと思って諦めてください」
ワタシのTLにいろんな人の独り言(中にはおしゃべりも)が現れ、ワタシは楽しくそれを読み耽りました。
大真面目だと思っていた人がフランクだったり、意外な人たちがお友達だったり、予想に違わずお堅い人だったり、それはそれは楽しいものでした。
しばらくしてワタシは検索機能に気付き、色々と検索してみました。
「mike_j ポリゴン2硬い!ぼろ負けだよ何連敗なの勘弁してよ(´;ω;`)」
というツイートで申し訳なくなったり、
「O_O- ポリゴン2ってまるまるしておまるみたいで可愛いよね!」
というツイートで喜んで良いのかちょっとわからなくなったり。
ふと、ワタシはユウスケ君が確か今タマムシの辺りにいたはずだと思い出して、「タマムシ」を検索してみました。もしかしたら、ユウスケ君とバトルをした誰かが呟いているかもしれない! と思ったのです。
「vs.jum_bot タマムシジムは草ポケモン中心。炎タイプ、毒タイプ、氷タイプ、飛行タイプなどがおすすめです」
「BUG タマムシデパートで釣りなう」
「love.erika エリカさんを一目見たくてタマムシジムに張り付いてるよ!」
「koratta56 変態だー!RT@love.erika エリカさんを一目見たくてタマムシジムに張り付いてるよ!」
検索結果がずらっと並びます。すると、今日のお昼過ぎのツイートに、
「U-suk タマムシジムに挑むために、ロコンをつかまえてみた。こいつ強いかな?」
と言うのを見つけたのです。
まさか、もしかして? と、ワタシが逸る気持ちを抑えて、U-sukさんのツイートを見てみました。
「ダメだ、少しレベル上げてみたけどあんまり使えない 14時間前 Tweetdogから」
「しょうがない、ごり押しで行ってみるか 14時間前 Tweetdogから」
「やっぱり対策してないと無理か…… 13時間前 Tweetdogから」
ワタシはとりあえず、U-sukさんをフォローし、あわてて戻り、後ろの方の番号のボックスを調べてみました。
すると、なんということでしょう! 確かに十四時間ほど前に、レベル16のロコンがいるではないですか!!
いやいや、まだ断定は出来ません。同じ名前の人が、同じようにロコンを捕まえ、そして預けたのかもしれません。
もう少し彼のTLをさかのぼってみようかと思いましたが、気付けば明け方近く。ユウスケ君が朝早くからボックスを覗きにこないとも限らないので、ワタシは次の晩が来るのを待つことにしました。
「アーボックがボックスにいたから使ってみよう 16時間前 Tweetdogから」
「なんとか勝てた。最終的にやっぱりごり押しになった。……アーボックは壁になった。 14時間前 Tweetdogから」
「やっぱり根気よく育てるべきなのかなぁ 14時間前 Tweetdogから」
翌晩、ワタシはそのツイートとボックスの記録を照らし合わせてみました。
十六時間前、確かにアーボックが引き出され、その二時間後、また預けられていました。
間違いありません、彼は確かにユウスケ君だったのです。
「@U-suk 初めまして。唐突で申し訳ないのですが、手持ちのポケモンと、技の構成を教えていただけませんか?」
ワタシはそう、リプライしてみました。
きっと、心臓がワタシにもあれば、どきどきするあまり飛び出してしまうに違いないほど、ワタシは緊張していました。
しばらくユウスケ君の手持ちにいたときも、こんなに積極的にアピールすることがなかったワタシが、こんな大それたことを!
ああ、ユウスケ君から返事を待つ一晩が、まさかこんなに長いなんて……。
「@2nog はじめまして!今はレベル30のゴローニャが主力ですが他はテキトーです。技は、マグニチュード、いわおとし、はかいこうせん、ロックブラストにしてます」
リプライ!
リプライが来たのです!
ユウスケ君とワタシが、お話しできているのです!
ワタシはまだ一往復もしていないその会話を、何度も読み返しました。
オーバーかもしれません。でも、ワタシはそれぐらいユウスケ君とのふれあいが久しくて、嬉しかったのです。
「@U-suk なるほど、ありがとうございます。ゴローニャは物理攻撃力の方が強いので、破壊光線ではなく、わざマシン27で覚えられるおんがえしの方が良いかもしれません。主力にするぐらいずっと一緒なのですから、きっと破壊光線より威力が高いと思います。」
「@U-suk 続きです。また、Lv33で地震を覚えますので、レベルが上がったらマグニチュードと入れ替えると良いと思います。突然偉そうに長々とすみません。普段は見る専門なのですが、気になってしまって」
投げ返してもらったリプライを、ワタシはまた投げ返しました。
まったく呟かない人間(本当はポケモンですが)が、二回にわたるような長文のリプライをよこして、変に思わないでしょうか?
ワタシはまた眠れない晩を過ごしました。
「@2nog アドバイスありがとうございます!最近煮詰まっていたのでうれしいです!ちょうどわざマシン持ってたのでやってみます!」
「@2nog なんとかレベル33に上げて、技を入れ替えてみました!勝率がかなり上がった気がします!ありがとうございました!!あと、相談なんですけど、他にどんなポケモンを育てたら良いと思いますか?」
ワタシは飛び上がってネット上を駆け回りたい気持ちを抑えながら、データをまとめ、考察し、ユウスケ君にリプライしました。
「@U-suk ゴローニャは弱点が多いのが怖いので、それをフォローできるポケモンが良いと思います。個人的な好みになってしまうのですが、水対策に電気タイプを持っていて耐久の高いランターン、草、氷、鋼に強いドクロッグはどうでしょう?」
ユウスケ君は、きっとランターンとドクロッグを手持ちに入れるでしょう。
どうしてそう思うのかって?
それは、ユウスケ君のボックスにはちょうど、お友達と交換してやってきたランターンとグレッグルがいたのです!
しかもそのランターンは耐久の才能にあふれているし、グレッグルもバトルに向いた性格。
ユウスケ君が諦めずに育て続けてくれたら、きっと活躍してくれるに違いありません。
ワタシは、今まで抱いていたもやもやを、みんなみんなTwitterで伝えて、ユウスケ君の道しるべになろうと決心しました。
もう、データの中をさまよって、もどかしい思いをしなくて良いのです。ワタシに、Twitterという口が、できたのだから。
それから、ワタシは一夜越しにユウスケ君とリプライを飛ばし合いました。
ランターンの技構成。グレッグルの育て方、立ち回り方。
メタグロスにこてんぱんにされて、エスパーポケモンの対策がしたい、と言いだしたユウスケ君に、ブラッキーを勧めたこともありました。
ボックスにいたのは、防御能力に優れてはいるものの、生まれたばっかりの幼いイーブイだったので、せっかちなユウスケ君は投げ出してしまうかもしれない、なんて、ちょっとだけ心配だったりもしました。
「わんぱく坊主の荷物を漁る癖がなおらない件について 10時間前 Tweetdogから」
けれど、ワタシのアドバイスで目に見えて勝率が上がったのが大きかったのか、わんぱくなちびっ子にへとへとにされながらも、なんとかブラッキーに進化させていました。
ユウスケ君は、時間とともにめきめきと実力を付けて、
「十連勝なう! 12時間前 Tweetdogから」
そんなツイートができるまでになりました。
この頃からでした。ユウスケ君が、ワタシに頼ってばかりではなくて、自分なりにポケモンを育成するようになったのは。
「@2nog ドクロッグのクロスチョップを毒突きに変えてみました!ちょっと冒険かな、と思ったけど、予想外に具合が良かったのでこのままつっぱしります!」
「@U-suk 確かにクロスチョップはちょっと的中率に難がありますし、安定した毒突きも良いと思います! 頑張ってください!」
「@2nog 今度はエアームド育ててみたいと思うんですけど、ドリルくちばし、鈍い、鋼の翼、羽休めはどうでしょう?」
「@U-suk 防御を上げる構成はブラッキーがいますし、同じ上げるなら剣の舞で攻撃・素早さを上げてみてはどうでしょう?」
そんな風に、だんだんと、ユウスケ君へアドバイスすることが減ってきた、ある日。
「よっしゃあああああああバッジ全部そろったぜーーーーーー!!! 11時間前 Tweetdogから」
とうとう、ユウスケ君が、ポケモンリーグの予選権をを得たのです。
そして、そのツイート共に、
「@2nog 最後にもう一体入れたいんですけど、どうにも思い浮かばないんです」
こんな相談が、ワタシの元へと届いていました。
ワタシはユウスケ君のボックスのデータを、今のユウスケ君のパーティと照らし合わせながら、何度も何度も見返しました。
しばらく考えて、結論に達したワタシは、それを実行するための情報を収集し、ユウスケ君にリプライを送りました。
「@U-suk 今のパーティだと、物理攻撃力、物理・特殊防御面に優れていますが、特殊攻撃の決定打がありませんね。ですから……」
***
「ユウスケ選手! チャンピオン挑戦権獲得おめでとうございます!」
「ありがとうございます!」
「今の気持ちを、一番伝えたい人は誰ですか?」
「そうですね、親とか友達とかもいるけど……一番はやっぱり俺のポケモンの先生です」
「おお、先生ですか!」
「はい、先生って言っても、Twitterのつながりなんで、顔も声も知らない人なんですけれど」
「へええ! なかなか変わった関係ですね!」
「はは、そうですね」
「それじゃあすぐに今の試合結果を呟かないと!」
「いやぁ、それが、その先生リーグ戦が始まる前に仕事が立て込んだとかでTwitterやめちゃって」
「えっ、それじゃあ連絡が」
「もうわからないですね……」
「でも、Twitterは見てなくてもテレビは見てるかもしれないですよ! さあ、先生へメッセージを」
「そうですね! ……俺に色々教えてくれた『2nog』さん! 決定打は最後にアドバイスを貰ったポリゴンZでした! これからこのパーティで、チャンピオンに挑戦してくるので、見ててください!」
評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。
ついったーで読了宣言!
― お薦めレビューを書く ―
※は必須項目です。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。