迷い込んだのは砂金の採れる白い森。
ガルグイユの石柱が到る所に朽ちていて、文明の栄光と衰退を象徴しているかのようで、ふと思えば見慣れた教室のようでもある。
木材で構成される机が規則正しく並んでいて、時々花が飾られる。
押しつぶされそうな圧迫と緊縛。
その中で少年たちがダンスを踊る。
みんな異様に白い肌をしていて、同じように小さな手のひらを持っている。
その中で私だけが、傍観者で、
「うるさい、ガキは失せろ」
と叫ぶ。
少年たちはクスクスと笑う。
首を傾げたり、こちらの眼を必死に覗こうとする。
すべてを見透かされそうで怖くなった私が嫌がる仕草を、まるで楽しむかのように笑う。
すると急に手足が縮み、教室が大きくなっていく。
私の身長は少年と同じになり
高等部の制服の中に埋もれる。
少年たちは、狂喜して私を取り囲む。
私はもはや傍観者では無くなっている。
「カヨチャン見っけ、どこに行ってたの?探したのにさ」
「えっとカヨは……」
と舌ったらずな声になり、それが嫌で黙る。
少年たちは無秩序に騒ぐ。笑う。
私はさっきまでの自信を失い泣きそうになり恐怖する。
誰かが誰かの花瓶を落として割る。呼応するように他の花瓶が割れる。
私は耳を塞いで無力にしゃがみ込む。
少年たちはいつの間にか高校のクラスメートになっている
私はもう見上げても見えない彼らの顔を窺って瞳を覗こうとしている
初等部の制服は体にぴったりと張り付いていて、不快感につつまれている
教室の窓は割れていて、冷たい風が吹き込む。
まるで私など見えていないかのように彼らは振舞う。
きっと教室を間違ったのだ。私の居場所はここじゃない。
名札の初等部1ねん7くみの横に私の名前を確認する。
7くみなんてあったか?記憶は曖昧になる。
ガルグイユの見せる幻想。
さらに奥に迷いこめば二度と帰れないかもしれない。
感触だけを頼りにして、出口を探り当てる。
鈍く音を立てて、ある筈のない石柱が倒れる。
夜と夜の間を一瞬に抜ける。思い出せ。
私は高等部を卒業した。
初等部は4くみまでしかない。
私はカヨではない。
傍を何かが通った気がした。
白い、まっ白い何か。
私は森を抜けていた、朝日が折り重なって倒れそうに注ぎ込む。
振り返ってみると、それはただの白い森だった。
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